人事評価面談とは?目的や効果的な進め方のポイントをわかりやすく解説!

人事評価面談は、従業員の評価や処遇を決定する重要な場であり、適切に行えばモチベーションの向上や人材育成、上司と部下の信頼関係構築にもつながります。しかし、「どのように面談を進めるべきか」「どのようにフィードバックすればよいか」といった課題を抱える方も多いでしょう。

本記事では、評価面談の目的や進め方、実施時のポイント、よくある失敗例、さらには面談を効果的にするための質問やフィードバックの具体例を解説します。面談の質を向上させたいと考えている人事担当者、部下を抱える方は、ぜひご参考にしてください。

人事評価面談とは?

人事評価面談は、従業員の評価を決定するために上司と部下が話し合う場で、企業によって評価期間ごと(四半期や半年、一年ごとなど)一定のサイクルで実施されます。面談では、部下の目標達成状況や課題、今後の目標について話し、上司がフィードバックを行いながら評価を進めます。企業によっては評価者が複数人参加したり、人事担当者が同席することもあります。

この面談の内容は多くの場合、直接的に人事評価に反映されるため、従業員の生産性や離職率にも影響するので重要性が非常に高いです。面談の進め方や目的をしっかり理解したうえで実施し、工夫を凝らすことで、人材育成の成功や従業員のモチベーション向上に役立てることができ、非常にメリットが大きいものになります。

1on1ミーティングとの違い

上司と部下の面談には「人事評価面談」「1on1ミーティング」がありますが、この2つは異なる目的と形式を持っています。1on1ミーティングも上司と部下の1対1の場ですが、評価面談とは大きく異なります。

人事評価面談は、従業員の評価や処遇を決定・通知し、フィードバックする場として設定され、主に評価に関する話題で進行します。一方、1on1ミーティングは、日常的なコミュニケーションを目的にしており、その内容は業務の悩みや課題、キャリア相談など、さまざまなテーマがその都度自由に話し合われます

また、面談の頻度にも違いがあり、人事評価面談は半年〜1年に1回など評価期間ごとの節目に実施されることが多いのに対し、1on1ミーティングは週1〜月1回程度と日常的なサイクルで行うのが一般的です。


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人事評価面談の目的

人事評価面談は、従業員の評価を行うことが主な目的ですが、実施することで得られる意義は他にもあります。
ここでは、人事評価面談の主な目的を4つに分けてご紹介します。

現状の認識を揃える

人事評価面談の1つ目の目的は、「現状の認識を揃える」ためです。

面談を通して従業員の目標達成状況を把握し、現在の評価結果を基に今後の行動計画を共に考える場として活用します。この際、単に評価を通知するのではなく、従業員の成長や目標達成を支援するための方向性を共に模索することが重要です。
また、自己評価がある場合は、その内容から従業員が自身の業績をどう認識しているかを確認し、自己評価がない場合でも評価に対する認識を尋ねましょう。

さらに、従業員の進捗に加え、上司のマネジメント方法にも改善点がないかを振り返り、双方が評価を通じてより良い関係性と成長を目指せるような機会とすることが重要です。

人事考課の結果と理由を伝える

人事評価面談の2つ目の目的は、「人事考課の結果と理由を伝える」ためです。

人事考課は、従業員の能力や成果を評価し、昇給・昇格や賞与などの処遇を決定するための基準となります。評価を適切に行うためには、営業成績などの数字や上司の印象だけでなく、従業員側の意見や実態も把握し、お互いの認識をすり合わせることが重要です。

また、考課内容は個々の待遇に関わるセンシティブな情報であり、社内でも非公開とされることが多いため、面談の場で上司が評価の理由を丁寧に説明し、納得感を得られるようにすることが大切です。

人材育成のためフィードバックを実施する

人事評価面談の3つ目の目的は、「人材育成のためフィードバックを実施する」ためです。

適切なフィードバックを通じて、従業員の成長を促す機会となります。面談では、当初の目標に対して達成できた点や課題となっている点を確認し、今後の取り組みについて具体的に話し合います。

また、従業員によっては自己分析が不十分な場合もあるため、上司が客観的に強みや弱みを指摘し、現状を正確に把握できるようサポートすることが重要です。さらに、現状の評価だけでなく、今後会社が期待する役割や目標も伝え、一緒に方針を決めることで、従業員の成長を後押しし、人材育成につなげることができます。

モチベーション向上につなげる

人事評価面談の4つ目の目的は、「モチベーション向上につなげる」ためです。

面談は人材育成に加え、従業員のやる気を高め、前向きに仕事に取り組むための重要な機会でもあります。日々の業務に集中するあまり、従業員が仕事の意義や長期的な目標を見失ってしまうこともありますが、評価面談を通じて、改めて自身の理想像やキャリア目標を再認識し、意欲を取り戻すことができます。

この動機形成の役割を果たすためには、業務における大義や目指すべき長期的なビジョンを共有し、従業員の考えや意見を引き出して言語化するなど、従業員に合ったアプローチが必要です。また、上司が部下をしっかり理解し、「自分のことをよく分かってくれている」と感じてもらうことで、面談によるエンゲージメント向上が期待できます。そのためには、人材情報の可視化から始め、従業員個々の特徴や強みを把握することが大切です。

人事評価面談の進め方

では、実際に人事評価面談をどう進めていけばいいのでしょうか。以下は、人事評価面談の流れをまとめたものです。

 1. 被評価者の評価結果やフィードバック内容を整理しておく
 2. 落ち着いて話せる場所を確保する
 3. 30分以上の面談時間を確保する
 4. 被評価の話を丁寧に聞く
 5. 評価者がフィードバックする
 6. 課題の共有・改善案の検討を行う
 7. 今後の期待を伝える

以上の人事評価面談の手順に沿って、各手順におけるポイントをご説明します。

STEP1:被評価者の評価結果やフィードバック内容を整理しておく

人事評価面談の1つ目のステップは、「被評価者の評価結果やフィードバック内容を整理しておく」ことです。

面談を効果的に進めるためには、限られた時間を有効に活用することが重要です。そのため、事前の準備が欠かせません。まず、従業員に自己評価を提出してもらい、それを事前に確認しておきます。その上で、どの点について話すべきか、どのようにフィードバックを行うかを考えておくことが大切です。

事前の用意により、面談がスムーズに進み、建設的な話し合いができるようになります。

STEP2:落ち着いて話せる場所を確保する

人事評価面談の2つ目のステップは、「落ち着いて話せる場所を確保する」ことです。

人事評価面談では、評価に関する重要な内容を話すため、静かな個室やオンラインミーティングの環境を整えることが必要です。特に、評価結果は個人情報に関わるため、他のメンバーに聞かれないよう配慮することが求められます。会話に集中できる場所を提供することで、部下がリラックスして話しやすくなり、より効果的な面談が実現します。

また、フィードバックを行う際には、部下に納得してもらえるような配慮が重要です。そのため、評価結果を無責任に伝えたり、不誠実な態度を取ることは避けなければなりません。上司の言葉一つ一つが部下の信頼に影響を与えるため、慎重な言動が求められます。


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STEP3:30分以上の面談時間を確保する

人事評価面談の3つ目のステップは、「30分以上の面談時間を確保する」ことです。

人事評価面談では話すべき内容が多いため、余裕を持って30分以上の時間を確保することが重要です。評価結果やフィードバックの内容を丁寧に伝え、部下としっかり話し合うことで、双方の理解が深まります。

また、面談中に話が盛り上がり、想定より時間が長引くこともあるため、次の予定が詰まっていないか確認しておくと安心でしょう。

STEP4:被評価の話を丁寧に聞く

人事評価面談の4つ目のステップは、「被評価の話を丁寧に聞く」ことです。

面談が始まったら、まず従業員の自己評価をしっかりと聞き、相互の認識をすり合わせることが重要です。自己評価を聞くことで、従業員の視点や考えを理解し、どの部分に努力を注いだか、どのように感じているかを把握できます。

評価が一方的に伝えられるだけの場にならないように、従業員が緊張せずに自分の意見や本音を述べやすい環境を作り、対話を通じて納得感を高めることが大切です。

STEP5:評価者がフィードバックする

人事評価面談の5つ目のステップは、「評価者がフィードバックする」ことです。

このステップでは、上司が自身の評価を部下に伝えます。ただし、評価結果をすべてオープンにする必要はなく、課題の共有や改善策を話し合うために重要な内容に絞って伝えることが大切です。例えば、キャリア形成の進捗について、もし評価にギャップがある場合は「自分としてはもっとできたはずだと思っている」といった具体的な意見を伝え、相互理解を深めます。

お互いの評価の差を埋めることが目標であり、この過程で上司が見落としていた事実や視点があれば、それを柔軟に見直し、評価の妥当性を確認します。

STEP6:課題の共有・改善案の検討を行う

人事評価面談の6つ目のステップは、「課題の共有・改善案の検討を行う」ことです。

評価内容が共有された後は、今後の課題や改善策について話し合います。まず、従業員が改善すべき点、強化すべき点を明確にし、それに対する具体的なアクションプランを検討します。この段階では、部下の意見を尊重し、彼らの自主性や気づきを引き出すことが重要です。例えば、上司が「業務の対応範囲を広げるために資格取得が必要」と考えている場合でも、まず部下がどのような問題意識を持ち、今後どのように取り組むべきかを聞き出します。これにより、部下の自発的な成長意欲を引き出すことができます。

また、部下と上司の間で課題と目標が一致したら、次回の面談に向けて具体的な目標を設定します。この際、目標達成に向けた計画を立て、必要に応じて後日提出を求めることもあります。こうしたやり取りを通じて、部下の成長を促し、上司と部下の信頼関係をさらに強化することができます。

STEP7:今後の期待を伝える

人事評価面談の7つ目のステップは、「今後の期待を伝える」ことです。

評価面談では従業員の課題や改善点を指摘することもありますが、面談の最後はポジティブなメッセージで締めくくることが重要です。今後の成長に対する期待や、どのような目標を達成できるかについてアドバイスなどを明確に伝え、部下に前向きな気持ちを持たせるようにしましょう。

評価面談が後ろ向きな雰囲気で終わると、モチベーションが低下する可能性があります。逆に、将来に対する希望や期待を伝えることで、従業員は自分の成長に対する意欲を新たにし、ポジティブな気持ちで次の段階に進むことができます。

人事評価面談の成果を高めるポイント

ここまで、人事評価面談の目的や効果的な進め方についてご説明しました。それでは、面談の成果をさらに高めるためには、どのような工夫が必要でしょうか。

以下に、効果的な人事評価面談を実施するための2つの重要なポイントをご紹介します。

人事評価面談の目的を伝える

人事評価面談の成果を高めるポイントの1つ目は、「人事評価面談の目的を伝える」ことです。

人事評価面談の目的をしっかり共有することは非常に重要です。特に新卒社員や中途採用者の中には、評価面談の目的を十分に理解していない場合があります。例えば、「評価面談は仕事の悩みを上司に相談する場」と誤解していることも考えられます。こうした誤解を防ぐためには、面談の目的や意義を事前に丁寧に説明することが大切です。

また、評価シートや評価基準が変更された場合には、その理由や変更による影響を全員にしっかりと伝え、理解を深めてもらうことが重要です。

業績評価・能力評価・情意評価を使い分ける

人事評価面談の成果を高めるポイントの2つ目は、「業績評価・能力評価・情意評価を使い分ける」ことです。

人事評価面談をより納得感のあるものにするためには、適切な評価要素をバランスよく使用することが重要です。具体的には、以下の3つの種類の評価要素を使い分けることが効果的です。

  • 業績評価
  • 能力評価
  • 情意評価

それぞれについて、どのように従業員に伝えるべきかをあわせて詳しくご説明します。

業績評価

人事評価に必要な評価要素の1つ目は、「業績評価」です。

業績評価を伝える際は、単に数値目標の達成状況を示すだけでなく、達成に至るまでのプロセスも評価対象となっている場合はプロセスも評価していることを明確に伝えます。

例えば、「個人売上や営業訪問件数」といった結果に加え、それを達成するために行った具体的な努力や工夫も評価に含まれることを説明しましょう。従業員が結果だけでなく、プロセスも大切にして仕事に取り組めるよう、評価のポイントが「成長と成果の両面にある」というメッセージを伝えることが大切です。

また、部署や役職に応じたウェイトの違いも伝え、評価が個々の職務に合わせた形で行われていることを強調すると理解が深まります。

能力評価

人事評価に必要な評価要素の2つ目は、「能力評価」です。

能力評価では、必要な能力やスキルをただ示すだけでなく、「どう業務に活かし、成果を出したか」が重要であることを伝えます。例えば、営業職で求められる「顧客管理」について、単に知識や資格があるだけでなく、日々の業務でどのようにそのスキルを活用しているかが評価されることを説明します。

従業員が具体的な業務に即して自分の能力を振り返るよう促し、「どのような能力が今後の成長につながるか」という観点で考えられるような対話を心がけましょう。特に、評価の際には、業務上の行動や取り組みがどれだけ目標達成に寄与しているかも具体例を交えながら示すと効果的です。

個人の能力状況によって、来期に身につける能力についても話し合うことが大切です。

情意評価

人事評価に必要な評価要素の3つ目は、「情意評価」です。

情意評価では、抽象的な表現にとどまらず、従業員が具体的な行動や態度に基づいて評価されていることを伝えることが重要です。例えば、「積極性」を評価する場合には、単に「積極的な姿勢」と評価するのではなく、「新しい業務に自主的に取り組んだ」といった行動に基づいて判断していることを説明しましょう。

また、情意評価は会社の価値観と合致しているかどうかを測る側面もあるため、評価基準が明確であり、全員が理解・実践できるものであることが大切です。定期的に評価基準を見直し、共通理解を図る場を設けるとともに、日常の業務の中で自然に意識できるよう促すことも効果的でしょう。

人事評価面談でのよくある失敗例

ここまでご説明してきたように、人事評価面談は適切な進め方やポイントを押さえることで、効果的に運用することが可能です。
しかし、正しい方法を把握できていないと失敗してしまう可能性も否めません。

ここでは、人事評価面談で陥りやすい失敗事例をケース別に4つご紹介します。

十分な時間を確保できていない

人事評価面談でのよくある失敗例の1つ目は、「十分な時間を確保できていない」ことです。

面談の時間が短かったり、事前準備が不十分だと、従業員の評価や育成に繋がる有意義な話し合いができません。特に年度末は業務が忙しくなるため、面談のスケジュールは余裕を持って確保し、内容を事前に準備しておくことが重要です。直前に慌てて調整すると、面談が形式的になりがちです。

また、限られた時間でも充実した面談を行うためには、日常的にコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことも大切です。普段から話しやすい関係を作っておけば、面談の場でも率直な意見交換がしやすくなり、より実りのある評価と育成が可能になります。

効果的な会話ができていない

人事評価面談でのよくある失敗例の2つ目は、「効果的な会話ができていない」ことです。

面談の目的は、従業員の評価や育成につながる有意義な対話を行うことです。しかし、準備不足や時間の制約から、表面的な会話で終わってしまうことがあります。このような場合、従業員が自分の成長を実感できず、フィードバックを受け入れることが難しくなります。

効果的な会話を実現するためには、まず事前に評価のポイントやフィードバック内容を整理し、面談時には従業員の意見や思いにも十分に耳を傾けることが大切です。また、日頃からのコミュニケーションを通じて、従業員との信頼関係を築いておくことも、面談をより実りあるものにするための鍵となります。

従業員が評価に納得していない

人事評価面談でのよくある失敗例の3つ目は、「従業員が評価に納得していない」ことです。

従業員が評価に納得できないまま面談が終わってしまうのは、大きな問題です。もし評価が一方的に伝えられ、従業員の意見や質問が無視される場合や、評価が上司の主観や感覚だけで決められており、具体的な根拠が示されない場合、従業員は不満を感じやすくなります。

面談では、従業員の意見にも耳を傾け、評価に対する疑問点や気になる点をしっかり確認することが大切です。こうした姿勢で臨むことで、納得感を高め、評価を受け入れやすくなります。

人事考課と報酬が連動していない

人事評価面談でのよくある失敗例の4つ目は、「人事考課と報酬が連動していない」ことです。

評価と報酬が連動していない場合、従業員のモチベーションが低下する原因となります。例えば、面談で高く評価されたにもかかわらず、給与や昇進がなかったり、仕事内容に変化がなかったりすると、従業員は評価が形骸化していると感じ、面談に対する真剣さが欠けてしまいます。

このような問題は、人事考課の基準と報酬制度(給与、昇進、賞与など)が整合性を欠いていることが原因です。人事考課の結果が報酬に反映されないと、評価制度自体の信頼性が低下し、従業員は評価面談に対して重要性を感じなくなります。人事考課と報酬制度を一貫性を持って設計し、評価に見合った報酬が支給されるようにすることが、従業員のモチベーション維持に重要です。

人事評価面談が失敗してしまう原因

また、人事評価面談が失敗してしまう原因としては、大きく2つの理由が考えられます。

面談の目的と重要性を把握していない

人事評価面談が失敗してしまう1つ目の原因は、「面談の目的と重要性を把握していない」ためです。

面談に関わるすべての当事者、特に上司と従業員は、人事評価面談の目的とその重要性をしっかり理解している必要があります。目的が不明確だと、事前準備をおろそかにしたり、面談中に有意義な会話ができなかったりすることが多いです。また、上司が面談の重要性を理解していても、従業員がその意義を認識していなければ、面談の効果は薄くなります。

もし人事評価面談がうまくいかないと感じた場合、まず自分自身が面談の目的と重要性を本当に理解しているかを振り返りましょう。その上で、従業員に対しても面談の目的を丁寧に説明し、共通の理解を持って臨むことが重要です。

先入観によってフラットな目線を持てていない

人事評価面談が失敗してしまう2つ目の原因は、「先入観によってフラットな目線を持てていない」ためです。

自分では上手く面談を進めているつもりでも、従業員から納得が得られない場合、評価に偏りが生じている可能性があります。これを「評価エラー」といいます。評価エラーでは、先入観などに基づいて思考や判断が偏ってしまいます。例えば、1つの良い評価が他の評価項目に影響を与えたり、最近の出来事に過度に重点を置いたりすることがあります。

人事評価面談で評価エラーを完全に排除することは難しいですが、事前にどんなバイアスが生じやすいかを理解しておけば、ある程度はコントロールできます。評価の公平性を保つためには、意識的にフラットな視点を持ち、全体的にバランスの取れた評価を心がけることが大切です。

人事評価面談で失敗しないための工夫

ここまでご説明してきたように、人事評価面談では失敗に陥ってしまう場合もあります。

そこで、人事評価面談で失敗せずにより効果を高めるための工夫が必要です。
ここでは、人事評価面談で失敗しないための工夫について、4つのポイントをご紹介します。

1on1ミーティングを実施する

人事評価面談で失敗しないための工夫の1つ目は、「1on1ミーティングを実施する」ことです。

1on1ミーティングでは、1on1シートなどを活用し、ミーティングの記録をとります。そして期末に1on1の記録を振り返ることで、社員がどんな目標を達成を立てているのか、達成したのかどうか、目標に対してどんな創意工夫をしたのかなどの進捗をチェックすることができます。

また、評価期間中でも、現在のままで進んだ場合に、どういう評価になるのかを社員に伝えることができるため、納得感の低下原因である「自己評価とのずれ」が起こりづらくなります。

また、目標以外でも「最近、会社に貢献していることはある?」と聞くことで、社員から「実は後輩を育成しようと思っていて、毎日30分相談に乗っている」などというように、普段の業務ではわからない情報も評価に組み込むことができます。

このように、1on1ミーティングを導入し、記録を残すことで部下のデータが集まり、社員の評価の根拠が明確になり、納得感のある評価を行ったうえで、被評価者への説明も簡単にできるようになります。

適切な目標設定を行う

人事評価面談で失敗しないための工夫の2つ目は、「適切な目標設定を行う」ことです。

面談前に、従業員が設定した目標が現実的かどうかを確認しましょう。目標が高すぎて達成困難であったり、逆に簡単すぎて挑戦が少ない場合、どれだけ面談を丁寧に行っても従業員が納得できる評価をすることは難しくなります。

そのため、人事評価面談ではまず従業員の現状を正確に把握し、能力に見合った目標設定を行うことが不可欠です。適切な目標を設定することで、従業員のモチベーションを高め、次回の面談がより効果的になるとともに、成長を促進することができます。

普段から従業員を観察しておく

人事評価面談で失敗しないための工夫の3つ目は、「普段から従業員を観察しておく」ことです。

人事評価面談の場だけで従業員を評価することは難しいため、日頃から従業員の働きぶりを観察し、その上で感じたことを整理して伝える機会として面談を捉えましょう。

特に、査定の時期に限らず、頻繁にコミュニケーションをとり、期初に設定した目標に対する進捗状況や期末に向けて取り組むべき課題についてフィードバックやサポートを行うことも重要です。これにより、評価者と被評価者の間の信頼関係を築き、評価に対する認識のずれを調整することができます。

コーチングスキルを習得する

人事評価面談で失敗しないための工夫の4つ目は、「コーチングスキルを習得する」ことです。

人事評価面談では、単に相手に正解を教えるのではなく、相手の話をしっかり聞き、自分で考えさせる場面が多くなります。こうした場面で、評価者のコーチングスキルが非常に役立ちます。
コーチングは、対話を通じて相手に気づきを与え、主体的な行動を促す手法です。これは、一方的に指導する「ティーチング」とは異なり、相手が自分で解決策を見つけ出せるようサポートすることを目的としています。

コーチングスキルを身につけることで、従業員とのコミュニケーションがより効果的になります。例えば、従業員が自分の強みや改善点に気づき、目標設定や課題に対して主体的に取り組む姿勢を引き出すことができるようになります。これにより、面談が単なる評価の場ではなく、成長を促進するための対話の場となり、従業員のモチベーションやパフォーマンス向上にもつながります。

人事評価面談での効果的な質問の仕方

人事評価面談においては、部下が自己評価をうまく伝えられない場合があります。その際、上司から質問をすることがありますが、注意が必要です。特に、誘導尋問のような質問を避けることが重要です。もし上司の考えに合わせた質問をしてしまうと、部下の本当の自己評価を引き出せなくなり、また部下が不信感を抱く可能性もあります。

部下から効果的に自己評価を引き出すためには、次の2つの質問方法を活用することをおすすめします。

  • 拡大質問(オープンクエスチョン)をする
  • 肯定的な質問をする

それぞれの質問方法について以下にご説明しますので、部下の自己評価を正確に引き出し、面談の質を向上させるために活用してください。

拡大質問(オープンクエスチョン)をする

人事評価面談での効果的な質問の仕方の1つ目は、「拡大質問(オープンクエスチョン)をする」ことです。

まず、部下に質問する際には、「はい」か「いいえ」で答えられるような簡単な質問は避けるべきです。なぜなら、こうした質問では会話が深まらず、面談が進展しづらくなるためです。さらに、部下にとっては尋問されているような印象を与えかねません。

代わりに、部下が自分の考えを自由に話せるような「拡大質問(オープンクエスチョン)」を活用しましょう。例えば、部下が自分の評価で改善点を挙げた場合、「次回同じ状況になったとき、どのようにアプローチを変えたら良くなると思う?」といった形で、具体的にどう改善するかを考えさせる質問を投げかけます。このように話を広げることで、部下が自分の考えを深く掘り下げ、今後の行動についても自発的に意見を述べやすくなります。

このアプローチにより、部下が問題点や今後の課題について自ら考え、発言できる場を提供できます。また、部下にとっても自己評価を深く掘り下げる機会となり、面談がより有意義なものになります。

肯定的な質問をする

人事評価面談での効果的な質問の仕方の2つ目は、「肯定的な質問をする」ことです。

部下に質問する際、ネガティブな言い方を避けることが重要です。否定的な問いかけは、部下に非難されていると感じさせ、対話がうまく進まなくなる可能性があります。たとえば、期日を守れなかった場合、「どうして期日を守れなかったのか?」と尋ねると、部下は自己防衛的になり、話しづらくなることがあります。代わりに、「どうすれば期日を守れるようになるか?」と質問することで、相手に解決策を考えさせ、建設的な議論を促すことができます。

このように、肯定的な質問を通じて、部下が自分の改善点に対して前向きに取り組む姿勢を引き出すことができます。反省点や改善点に焦点を当てる際には、常に解決策を探るような質問を心がけ、非難することなく部下と協力して問題を解決する方法を見つけましょう。

まとめ

この記事では、人事評価面談について、その目的や効果的な進め方のポイントを解説してきました。

人事評価面談は、上司と部下が直接対面して従業員の評価を決定する重要な場です。評価だけでなく、従業員の育成やモチベーション向上など、多岐にわたる目的を持っています。
評価においてはどうしても意見の相違や誤解が生じることもありますが、適切な手順やコミュニケーション手法を活用することで、面談の効果を高め、スムーズに実施することができます。

本記事を参考に、適切な人事評価面談の実施に努めましょう。

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