人事評価の目的とは?評価の基準や種類についてわかりやすく解説!

「人事評価」は企業における人事制度の基盤であり、従業員の賃金や配置、人材育成といった多岐にわたる分野と密接に関わっています。 公正かつ明確な評価基準を設けることで、企業理念やビジョンを従業員に伝える手段にもなります。しかし、その目的を正しく把握せずに、不適切な評価をしてしまうと、従業員に不満が生じ、職場全体のモチベーション低下につながる可能性もあります。

この記事では、重要な「人事評価」について、その意味や目的をはじめ、評価基準の例や制度の導入手順、さらに効果的な運用方法や注意点などをわかりやすく解説します。後半では、最新の人事評価の手法や具体的な企業事例も取り上げていますので、ぜひご参考にしてください。

そもそも人事評価とは?

「人事評価」とは、従業員が一定期間内に遂行した業務の実績や能力を評価し、その結果を給与や賞与、昇格・昇進に反映させる仕組みのことを指します。 また、評価結果は従業員の育成方針や人材配置を決定する重要な材料にもなり、企業の人事管理の基盤として機能します。

また、人事評価は従業員の実績や能力を評価する行為そのものを指すのに対し、「人事評価制度」は、この評価を公平かつ円滑に実施するための仕組みのことを指します。人事評価制度には、評価の基準や方法、報酬への反映、実施頻度などが明確に定められており、企業ごとに内容が異なります。例えば、四半期ごとや半年ごとなど、評価のタイミングも企業の運営方針に応じて設定されます。

人事評価は従業員の成長を促進するものであり、企業全体の発展を支える重要なプロセスです。その実施には公平性と客観性が求められ、効果的な制度設計が不可欠です。

人事評価を行う目的

人事評価の目的は、企業の経営戦略や事業戦略を実現するための重要な基盤として機能することです。具体的には、経営戦略を支える人事戦略を推進し、従業員の育成を通じて組織全体の目標達成を目指すことが主な目的と言えます。

人事評価は単なる業績評価にとどまらず、企業全体のビジョンや方向性を実現するために欠かせない役割を担っています。そのため、評価制度は従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、経営戦略に沿った人材を育成する仕組みとして設計されるべきです。

また、人事評価を通じて従業員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンス向上につなげることも期待されています。適切な評価基準や運用方法を整備することで、個々の目標と組織の方向性を一致させ、長期的な成果を生み出す効果が期待できます。

適切な人事評価制度の運用による効果

人事評価を行う目的を正しく理解し、適切な人事評価制度を運用することで、様々な効果が期待できます。
ここでは、適切な人事評価制度の運用による効果について、4つの観点からご説明します。

効果的な人材育成を行うことができる

適切な人事評価制度の運用による1つ目の効果は、「効果的な人材育成を行うことができる」です。

人事評価は、人材育成において欠かせない役割を果たします。目標設定やフィードバックを通じて、従業員は自身の能力と企業が求めるスキルや役割とのギャップを把握できます。その結果、不足している能力を認識し、キャリアプランを具体的にイメージしやすくなります。また、管理職にとっても、従業員の成長を支援する育成プランを構築するための重要な情報源となります。

さらに、評価基準に基づいた適切なフィードバックを行うことで、従業員のモチベーションを高める効果が期待できます。評価が昇給や昇格といった具体的な結果につながることが従業員に明確に伝われば、自らの意識や行動を変え、評価向上に向けた努力を促進できるでしょう。

このようなプロセスを通じて従業員の能力が向上し、企業が求める人材育成の達成が期待できると同時に、従業員の仕事への意欲やエンゲージメントが高まり、キャリア形成の良いきっかけとなります。

適切な人員配置や処遇を決定できる

適切な人事評価制度の運用による2つ目の効果は、「適切な人員配置や処遇を決定できる」です。

人事評価を活用すれば、データをもとに、従業員一人ひとりの得意分野や経験、成果を把握し、客観的な基準に基づいて適切な配置が可能になります。特に、年功序列に頼らず個人の能力や実績を重視する傾向が強まる中で、評価制度は役職や責任を公平に割り当てるための重要な仕組みです。

例えば、評価結果を基に次世代リーダーを選定し、重要なポジションで経験を積ませることができます。また、埋もれていた優秀な人材を発掘し、適切な役職に登用することで、組織全体の活性化を図ることも可能です。

さらに、人事評価による公平な処遇決定は、従業員のモチベーション向上や不満の軽減につながります。明確な基準に基づく報酬や昇格の決定は、従業員の納得感を高め、人材の定着にも寄与します。

このように、人事評価は人材配置や処遇を現状維持ではなく成長を促す方向へと導く重要なものであると言えます。

従業員のモチベーションを高められる

適切な人事評価制度の運用による3つ目の効果は、「従業員のモチベーションを高められる」ことです。

人事評価が適切に行われ、従業員が評価に見合った処遇を受けられると、個々のモチベーションが高まります。特に、評価基準が明確で公平であるほど、従業員は納得感を得やすく、仕事に対する意欲ややりがいを見出しやすくなります。

近年では、キャリアプランの形成やワークライフバランスの充実といった要素が従業員のモチベーションに大きく影響しています。単に処遇を改善するだけでは十分ではなく、従業員が自身の成長や働きがいを実感できる評価制度の設計が求められています。

納得感のある評価を通じて、従業員は能力やスキルの向上を目指し、主体的に行動するようになります。その結果、組織全体の活性化につながり、企業の成長にも寄与します。

経営理念やビジョンを共有できる

適切な人事評価制度の運用による4つ目の効果は、「経営理念やビジョンを共有できる」ことです。

人事評価は、従業員の業績を評価するだけでなく、企業の方向性や目標を示す重要な指標として機能します。評価基準には、企業が従業員に期待する役割や行動指針を反映させることで、従業員が「何を目指し、何をすべきか」を具体的に理解できるようになります。これにより、企業の方針やビジョンを組織全体で共有し、一体感を醸成することが可能です。

ただし、漠然としたビジョンを掲げるだけでは、従業員が日々の業務に具体的に落とし込むのは難しいでしょう。そこで重要なのが、明確で具体的な評価基準の設定です。評価基準に経営理念やビジョンを組み込むことで、ビジョンを実現するための理想的な従業員像を描きやすくなります。

さらに、評価基準を通じて従業員と経営者の認識を一致させることができます。人事評価は、経営者から従業員へのメッセージとして機能し、企業全体が同じ方向を向いて進むための土台となります。


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人事評価制度を構成する3つの要素

ここまでご説明してきたように、人事評価は適切な運用により様々な効果が期待でき、企業が従業員に対して公平な人事管理を実施するうえでは、不可欠な制度といえます。

そして、この人事評価制度には、下記の3つの重要な機能があります。

  • 評価制度
  • 等級制度
  • 報酬制度

それぞれが、人事評価制度の構築においてどのような役割を果たしているのか、詳しく見ていきましょう。

評価制度

「評価制度」とは、企業の掲げる目標や方針に対して、各従業員がどの程度貢献しているかを評価するための仕組みです。この制度を通じて、従業員一人ひとりの成果や行動が、自社の価値観や目標にどの程度一致しているかが判断されます。

例えば、多くの成約を獲得した営業担当者が高い評価を受けるケースなどが考えられますが、評価の基準は企業ごとに異なります。そのため、企業は何を重要視し、どのような行動や姿勢を評価するのかを、従業員に明確に伝えることが必要です。これにより、従業員は何を指針として仕事をすべきかを理解しやすくなります。

一般的な人事評価制度では、この評価の度合いが従業員の等級や報酬を大きく左右します。評価制度がしっかりと整備されていないと、従業員が成果を上げても正当な評価を受けられないため、モチベーションの維持が困難になる可能性があります。また、評価基準が不明確であると、従業員間の不公平感や不満を生み出し、組織の士気が低下するリスクもあります。

そのため、企業は評価制度を公正かつ透明性のあるものにすることが重要です。これにより、従業員が自らの努力が評価されると感じられる環境を整え、企業全体のパフォーマンス向上や目標達成に寄与することが期待されます。

等級制度

「等級制度」とは、従業員をランクや役割に応じて分類するための制度です。具体的には、各従業員の職務内容、成果、能力などに基づき、等級や職種を設定し、企業内での序列を明確にします。この仕組みによって、従業員の評価や報酬が大きく左右されるため、人事制度の中で非常に重要な役割を果たしています。

等級制度のメリットは、従業員にとっての成長指標となる点にあります。等級ごとの基準が明確になることで、従業員はより高い等級を目指して自身のスキルや能力を向上させるための目標を持ちやすくなります。また、どのようなステップでキャリアを積み重ねていくのか等のイメージが見えやすくなり、長期的なキャリアプランを描く助けとなります。結果として、従業員のモチベーション向上や、企業内での成長を促進する効果が期待できます。

さらに、等級制度は企業にとっても有益です。従業員の能力や成果に応じた適切な配置や昇進を実施できるため、組織全体のパフォーマンス向上につながります。また、公正な評価基準があることで、従業員同士の不満を軽減し、組織内の一体感や働きやすさを向上させる効果も期待されます。

報酬制度

「報酬制度」とは、等級や評価に基づいて従業員への給与や賞与などの報酬を決定するための制度です。この制度は、従業員のモチベーションに大きな影響を与える重要な役割を果たします。

報酬制度が適正でない場合、たとえ従業員が能力を発揮し、努力して等級や評価が向上したとしても、その成果が報酬に反映されなければ、不満や不公平感を抱く原因となります。そのため、報酬制度は等級制度や評価制度と密接に連携し、これらの制度で評価された内容が報酬にしっかりと反映される仕組みであることが求められます。

適切な報酬制度を設けることで、従業員は自身の成果や能力が正当に評価されていると感じることができ、さらなる努力や成長意欲を持ちやすくなります。また、公平で透明性のある報酬制度は、企業全体の士気向上にもつながり、長期的な組織の安定と成長を支える要素となります。

このように、報酬制度は企業が従業員に対して評価と報酬のバランスをとるための不可欠な仕組みであり、その設計と運用が企業の成長に直結するものといえるでしょう。

人事評価制度の導入手順

人事管理に不可欠な人事評価ですが、公正な人事評価の実現には、適切な評価制度を構築し、運用していくことが求められます。
ここでは、人事評価制度の導入手法について、順を追ってご説明していきます。

STEP1:目的を明確化する

人事評価制度の導入における1つ目のステップは、「目的を明確化する」ことです。

制度導入の目的を明確にしないまま、「他社が導入しているから」という曖昧な理由で始めてしまうと、評価基準が定まらず失敗する可能性が高まります。評価制度は、企業理念やビジョンを踏まえたうえで、「何のために評価を行うのか」を具体的に定義することが重要です。

業種や職種、求める人材像によって評価制度の目的は異なるため、自社に合った評価方法を選ぶためには、経営陣を中心に目的を社内で擦り合わせておく必要があります。他社の事例を参考にするのも有効ですが、最終的には自社の状況に合わせた目的を明確に設定することが成功の鍵となります。

このように、導入の目的を具体的に決めることが、人事評価制度を有効に機能させるための第一歩です。

STEP2:評価制度を検討する

人事評価制度の導入における2つ目のステップは、「評価制度を検討する」ことです。

導入目的が明確になったら、次に行うのは具体的な評価制度の選定です。評価制度を選ぶ際には、企業のビジョンや理念を実現するために適した内容であるかどうかを慎重に比較検討することが必要です。制度が企業の方向性や従業員の成長をサポートするものであるかを見極めましょう。

また、制度の設計には従業員の意見を取り入れることが重要です。アンケート調査を実施して、現状の課題や問題点、従業員の要望を把握することで、実際の職場環境に合った制度を構築できます。従業員が納得感を持てる制度を設計することで、運用のスムーズさや制度の継続性が高まります。

評価制度を決める際には、企業の規模や業種、職種ごとの特性を考慮し、柔軟かつ実効性のある仕組みを選ぶことが成功の鍵となります。

STEP3:評価項目を決定する

人事評価制度の導入における3つ目のステップは、「評価項目を決定する」ことです。

評価制度を検討した後は、具体的な評価項目を設定します。評価項目は、職種や役職、業務内容に応じて異なるため、各従業員の役割や責任範囲を基に適切に設定する必要があります。

評価項目を役職ごとに分けることで、業務内容や責任に見合った評価が可能となり、従業員の納得感を高めることができます。これにより、評価制度のスムーズな運用と持続的な活用が期待できます。

また、評価項目を明確にするだけでなく、評価基準(「どのように評価するか」)も設定し、評価者間での判断基準のばらつきを防ぐことが重要です。そのために、職種や部署ごとの特性に合った基準を整備し、評価マニュアルを作成することが効果的です。

評価基準や項目が曖昧なまま制度を導入すると、評価の信頼性が低下し、形骸化につながる可能性があります。そのため、導入前に十分な検討と確認を行い、実態に即した評価項目と基準を構築することが不可欠です。

STEP4:従業員へ周知する

人事評価制度の導入における4つ目のステップは、「従業員へ周知する」ことです。

評価制度の詳細が決定した後は、従業員全体に制度内容を共有することが重要です。適切な説明がないまま運用を開始すると、制度への不信感や不満が後から噴出する可能性があります。そのため、文書での通達に加え、説明会を実施して従業員との共通理解を深めることが必要です。

説明会では、評価項目や評価結果が処遇にどのように反映されるかなど、制度の目的や運用方法を丁寧に説明し、従業員からの疑問に答えましょう。また、アンケートを実施して従業員の意見を収集すれば、制度運用前に潜在的な問題点を発見し、改善に役立てることができます。

さらに、公平で客観的な評価を実現するためには、評価を行う側の研修も欠かせません。評価基準や評価方法を評価者にしっかり理解させることで、制度への信頼性を高めるとともに、適切な運用を促進できます。

従業員への周知と評価者の準備を十分に行うことで、人事評価制度のスムーズな導入と運用が可能になります。

STEP5:評価・フィードバックを行う

人事評価制度の導入における5つ目のステップは、「評価・フィードバックを行う」ことです。

従業員への制度周知が完了したら、実際の評価とフィードバックの段階に進みます。このステップでは、目標が達成されたかどうかだけでなく、「どの程度達成できたのか」や「目標達成の過程でどれだけ成長したのか」といったプロセスにも注目することが重要です。こうした視点は、従業員の努力や成長を正当に評価し、納得感を生み出します。

評価後には個別面談を実施し、上司が評価結果を基にフィードバックを提供します。この際、評価内容を単に伝えるのではなく、従業員が課題を理解し、次のステップに向けた改善や成長の方向性を見つけられるよう配慮することが求められます。フィードバックは、モチベーション向上や能力開発を促す建設的な内容を心がけましょう。

さらに、評価者自身が公平性を保ち、従業員の成長を支援する姿勢を持つことが、評価制度の信頼性と運用の成功につながります。


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人事評価を効果的に運用するためのポイント

ここまでご説明してきたように、人事評価制度には適切な手順があり、目的を正確に理解したうえで制度を構築することが重要です。さらに、人事評価制度をより効果的に運用するうえでは、意識すべきポイントがあります。

ここでは、人事評価を効果的に運用するためのポイントについて、5つの観点からご説明します。いずれも評価制度の信頼性や妥当性を高めるために欠かせないポイントです。人事評価の効果を高めるために、意識すべき点を把握しておきましょう。

評価基準を明確にする

人事評価を効果的に運用するための1つ目のポイントは、「評価基準を明確にする」ことです。

人事評価を行う上では、評価基準を明確化することが重要です。人事評価を行うのはあくまでも人間であり、評価基準が曖昧であると評価者の主観が強く反映されやすくなり、人事評価エラーが生じる原因となります。

例えば、営業成績の評価を行うとき、その基準が曖昧な場合、営業担当者AとBが同じ成績を上げても、評価者の主観で評価にバラツキが出てしまうことになります。こういった問題を防ぐために、具体的な評価項目を明確に定義し、それを評価者に徹底して周知することで、基準に基づいた客観的な評価が可能になります。

評価基準が明確であれば、不公平な人事評価の発生を抑制し、公正で納得感のある評価を浸透させることができます。

評価後のフィードバックを充実させる

人事評価を効果的に運用するための2つ目のポイントは、「評価後のフィードバックを充実させる」ことです。

従業員が人事評価に不満を感じている場合は、評価後のフィードバックを充実させることが効果的です。フィードバックの例としては、以下のような観点が挙げられます。

  • 評価基準の説明
  • 改善すべき点
  • 次回までの目標
  • 具体的なアドバイス
  • 期待していること

各従業員に個別の面談を設け、上記のようなポイントを伝えましょう。評価に必要な情報を効率的に把握することはもちろん、より適切なフィードバックを実践することができます。人事評価の目的は、評価を通じて仕事のやり方を見直し、従業員の成長を促すことであり、納得感のある評価を実現するためにも、適切なフィードバックが欠かせないと言えるでしょう。

1on1ミーティングを導入する

人事評価を効果的に運用するための3つ目のポイントは、「1on1ミーティングを導入する」ことです。

1on1ミーティングでは、1on1シートなどを活用し、ミーティングの記録をとります。そして期末に1on1の記録を振り返ることで、社員がどんな目標を達成を立てているのか、達成したのかどうか、目標に対してどんな創意工夫をしたのかなどの進捗をチェックすることができます。また、評価期間中でも、現在のままで進んだ場合に、どういう評価になるのかを社員に伝えることができるため、納得感の低下原因である「自己評価とのずれ」が起こりづらくなります。

また、目標以外でも「最近、会社に貢献していることはある?」と聞くことで、社員から「実は後輩を育成しようと思っていて、毎日30分相談に乗っている」などというように、普段の業務ではわからない情報も評価に組み込むことができます。

このように、1on1ミーティングを導入し、記録を残すことで社員の評価の根拠が明確になり、納得感のある評価を行ったうえで、被評価者への説明も簡単にできるようになります。


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評価者教育・評価者研修を実施する

人事評価を効果的に運用するための4つ目のポイントは、「評価者教育・評価者研修を実施する」ことです。

社内での評価基準を一定にするために、評価者教育や評価者研修を実施することが効果的です。評価者の中には、不確かな方法で評価している評価者がいる場合があり、その影響で評価にばらつきが生じ、公平性が保たれなくなる恐れがあります。

公正な人事評価を実施するには、評価基準や評価方法などの知識を評価者が正確に理解し、共通認識を持てている状態が望ましいです。

そのために、社内の有識者や外部のサービスを活用して評価者研修を行うことを検討してみてはいかがでしょうか。人事評価の目的や注意すべき点、正しい考え方について学び、評価スキルを総合的に向上させることで、より公正かつ納得度の高い評価を遂行できます。

定期的に評価制度を見直す

人事評価を効果的に運用するための5つ目のポイントは、「定期的に評価制度を見直す」ことです。

評価制度は定期的に見直すことがおすすめです。人事評価制度は、一度導入して終わりではなく、継続的な運用と改善があってこそ効果を発揮します。現在の評価制度が会社の理念や目標と一致しているか、市場の変化に対応できているか、社員が納得しているかといった観点で、定期的に見直すことが重要です。

理想的には、制度を常に見直すことが望ましいですが、評価制度の変更や事前の社員への周知には時間がかかります。制度を見直した結果、変更が必要な場合は、少なくとも3〜4ヵ月前には新しい制度の内容を固め、社員への説明を行うようにしましょう。

評価制度を定期的に見直すことで、社員は「自分たちの声が反映されている」と感じ、仕事へのモチベーションが向上します。不満を解消することで、評価に納得できない社員が減少し、組織全体のパフォーマンスも向上するでしょう。

人事評価制度の種類

ここでは、最新の人事評価制度についてご紹介します。
主な人事評価制度は下記の5種類です。

  • コンピテンシー評価
  • MBO(目標管理制度)
  • OKR
  • 360度評価
  • ノーレイティング

それぞれの評価方法と特徴について、以下にご説明します。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、仕事において優れたパフォーマンスを発揮する従業員の行動特性(コンピテンシー)を基準とした人事評価です。コンピテンシーをもとに、評価項目を設定して評価を行います。成果を出している人材の行動特性をもとに評価を行なうことで、同じように優秀な人材を育成することを目的としています。

下記は、コンピテンシー評価の基本的な評価要素の一覧です。

  • タイムマネジメント
  • リスクテイクの判断
  • 対人交渉能力
  • 説明責任を果たす能力
  • ストレス管理

上記の評価要素を踏まえ、優秀な人の態度や行動、価値観などの共通点を抽出し、それをもとに判断するという流れのため、評価の公平性を担保しやすいメリットがあります。
また、コンピテンシー評価の導入は、社員のパフォーマンス向上や適切なキャリアパスなどに効果的です。納得感のある人事評価制度の設計にもつながるため、社員がやる気をなくすのを防ぎ、効率的な人材育成を実現させることにも役立ちます。

MBO(目標管理制度)

MBO(目標管理制度)とは、「Management(管理)by Objectives(目的)」の頭文字をとったものであり、従業員自身が組織目標とリンクした個人目標を決め、その進捗状況や達成状況に応じて評価する制度のことを指します。

MBO(目標管理制度)のメリットとしては、自己管理によるマネジメントが可能になることや、従業員のモチベーションが向上することが挙げられます。従業員は自分で自分の仕事を管理するため、決定した目標を達成するために強い責任感のもと、自主的かつ自律的に行動することが期待されます。

また評価に対する納得度が高いという点もMBO(目標管理制度)の特徴です。従業員の目標達成は、同時に企業側の目標達成にも通ずるため、両者がともに成長していける評価制度と言えます。

OKR

OKRとは、「Objectives(目標)and Key Results(主要な結果)」の頭文字をとったものであり、大きな目標とその達成を測るための具体的な指標を設定し、評価する手法です。企業が目指すべき目標と社員個人の目標をリンクさせ、すべての社員が一丸となって同じ方向を向き重要課題に取り組むことを目的としています。

特徴は、個人と企業の目標をリンクさせて、目標設定・進捗確認・評価という一連の流れを高い頻度で行う点にあります。OKRは、社員および企業全体がモチベーションをアップさせるために、「容易には達成できない高い目標」を掲げ、達成率が60〜70%程度となるのが理想とされています。

組織と従業員の目標に関連性を持たせ、進捗確認や成果に対する評価を頻繁に実施することで、一体感をもって計画的に業務を推進できるというメリットがあります。

360度評価

360度評価とは、関係する複数の従業員が評価者となり、評価対象者を多面的に評価する制度のことを指します。上司や人事担当者など上の立場の人からだけでなく、部下や同僚なども評価者に含まれます。

公正な評価のためには、多面的な視点を取り入れ、偏りを防止することが重要です。1人の評価者による評価の場合、評価者の主観やバイアスが評価に影響を与えることで、公平性が保たれなく恐れがあります。
それに対して、360度評価では、多くの人が評価に関わるため、客観性が担保されて公正な評価になりやすい仕組みであると言えます。評価対象者にとっても納得しやすい評価となるのでモチベーションの維持向上にもつながるでしょう。

ただし、「従業員数が少ないと誰が評価者かわかってしまう」「全評価者の情報を集約しなければならない」「評価者間で馴れ合いが生じる場合もある」などのリスクが考えられるため、注意が必要です。

ノーレイティング

ノーレイティングとは、等級や階級による評価(レイティング)を行わない人事評価制度のことを指します。この制度では、従業員に「A」評価、「B」評価といったランクを付ける代わりに、頻繁にフィードバックを行い、その都度評価を積み上げていくことで目標の軌道修正を行います。

ノーレイティングは、評価者と被評価者の対話を重視しており、相互のコミュニケーションが活発化する特徴があります。常に認識をすり合わせているため、双方が納得できる評価が可能となります。また、細かい評価項目が固定されていないため、環境の変化に柔軟に対応できる評価制度とされています。

人事評価制度の導入事例

最後に、人事評価制度の導入事例をご紹介します。
今回は、下記の3社の人事評価制度についてご説明します。

  1. サッポロビール
  2. ディー・エヌ・エー
  3. Amazon

サッポロビール

サッポロビールは2020年に人事評価制度を大幅に改革し、「ノーレイティング」と呼ばれる新しい評価方法を導入しました。この制度では考課ランク付けを廃止し、従業員が自発的に目標を設定できる仕組みを採用しています。従来の管理型評価から育成支援型の評価制度へと転換を図りました。

さらに、1on1ミーティングを通じて従業員との対話を重視し、個々の成長を支援するマネジメントスタイルを実践しています。このアプローチにより、従業員の主体性を引き出し、成長を促す環境づくりを目指しています。

ディー・エヌ・エー

ディー・エヌ・エーでは、「シェイクハンズ制度」を導入し、本人と異動先の合意があれば、人事部や現上司の承認を経ずに異動が可能な仕組みを整えています。

さらに、従業員のやりがいを把握するアンケートや、マネージャーに対する360度フィードバックを実施することで、組織内のコミュニケーションの活性化と職場環境の改善に取り組んでいます。

Amazon

Amazonでは、相対評価を用いてローパフォーマーを特定し、その社員を「コーチングプラン」や「PIP(業務改善プログラム)」といった研修プログラムの対象にしています。これらのプログラムは、業績が主要な評価基準である外資系企業を中心に導入されており、最近では多くの企業が注目し、実際に採用し始めています。

相対評価によってパフォーマンスの低い人材を特定し、特別な支援を行うことで、業績の向上と組織全体のパフォーマンス改善を図ることができます。

まとめ

この記事では、人事評価の目的について、評価の基準や種類に加えて、実際の事例のご紹介を踏まえて解説してきました。

人事評価は、企業と従業員の信頼関係を築き、成長を促進するための重要な仕組みです。人事評価の目的を理解し、評価制度を正しく運用することで、公正な評価を実現し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

本記事で紹介した評価基準や導入手順、運用のポイントを参考に、効果的な人事評価制度を構築しましょう。

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