人事評価制度は、従業員のモチベーションや生産性の向上につながる制度です。しかし、人事評価で低く査定されると、自分は認めてもらえていないと感じ、人事評価に不満を持つ原因になることがあります。
人事評価に不満を抱く社員は退職率が高くなる傾向にあり、退職を防ぐためには制度自体の見直しや、評価後に社員に対して適切な対応を取ることが大切です。
そのため、この記事では、人事評価が低いことで社員が辞める理由や、人事評価を理由とした退職を防ぐために対策すべきことについて解説します。本記事を参考にすることで、人事評価でやる気を失ったり、退職に至ったりする社員への効果的な対処に取り組んでみてください。
人事評価が低い社員が辞める理由
社員が人事評価に対する不満を抱いていることの根拠として、以下のデータをご紹介します。
厚生労働省の「就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」(令和5年3月時点)によると、現在勤めている職場の「人事評価・処遇のあり方」に対する満足度は、正社員で、17.7%と低い数値になっています。
また、エン転職によると「退職を考え始めたきっかけについて教えて下さい」という質問に対して、「評価や人事制度に不満があった」という回答が全体の37%を占めています。
これらのデータから、人事評価が低いことにより、離職を考える社員が多いことは確かであり、多くの企業がそのリスクを抱えていると言えます。では、人事評価が低い社員が辞めてしまう理由としては、何が考えられるのでしょうか。主な要因について以下に3点取り上げ、ご説明します。
人事評価に納得がいかない
人事評価が低い社員が辞める理由の1つ目は、「人事評価に納得がいかない」ことです。
人事評価が適切でないと感じ、納得できない場合、従業員が退職を考えるきっかけとなることがあります。アデコ株式会社によると、「人事評価に不満を感じる理由を教えて下さい」という質問に対して、「評価基準が不明瞭」「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」といった回答が多く見られています。
評価制度への不満は、どう頑張れば、何を達成すれば評価されるのかが見えないまま解決できず、社員のモチベーションダウンに陥ってしまいます。こうした状態が続くと、「自分は認められていない」「自分はこの会社に合っていない」と感じ、最終的には退職を選ぶことが増えてしまうでしょう。
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努力が報われないと感じる
人事評価が低い社員が辞める理由の2つ目は、「努力が報われないと感じる」ことです。
人事評価が低いと退職を考える心理的背景には、思った評価を受けられずに、努力が報われないと感じてしまうことが大きく影響しています。特に、成果主義の人事評価制度を運用している場合、高難度の業務に挑戦しても、結果次第では評価されないことがあります。
「自分なりに努力したのに人事評価が低かった」と感じる従業員は、努力が無駄だと感じ、結果としてモチベーションやエンゲージメントが低下してしまいます。そのため、上司は人事評価が低い理由を明確に伝えるとともに、どうすれば評価を向上させられるかを具体的に説明する必要があります。また、数値に表れない貢献や努力もしっかりと評価される基準を設け、努力が無駄になっている従業員がいないかを確認することが重要です。
給与が上がらない
人事評価が低い社員が辞める理由の3つ目は、「給与が上がらない」ことです。
エン転職によると、「退職を考え始めたきっかけを教えて下さい」という質問に対して、「給与が低かった」という回答が男女ともに1位を占める結果となりました。仕事の頑張りが給与に反映されなければ、モチベーションやエンゲージメントが低下し、離職の要因になることは明らかです。
評価理由を説明することは必要ですが、人事評価から給与への連動性も検討する必要があります。基準を設け、評価に応じて給与や待遇に反映させる制度をつくることが有効でしょう。また、給与が上がらない従業員へのフォローアップ体制を整えることも重要です。
社員が不満を感じる人事評価の特徴
人事評価制度は、従業員のキャリアや待遇に大きな影響を与えます。そのため、基準や運用に課題を抱える企業は、できるだけ客観的かつ合理的で、公平性のある制度を構築し、運用することが求められます。
特に、不満が生じやすい人事評価制度としては、以下のような特徴があります。
評価基準が不明確
不満を感じる人事評価の1つ目の特徴は、「評価基準が不明確」なことです。
人事評価の基準が明確でなければ、従業員は何を目標にすればよいのかわからず、不満の出る原因となります。
評価基準が不明確である環境としては、以下のような例が考えられます。
- 評価基準が上層部の暗黙知として扱われており、明文化されていない。
- 評価基準は明文化されているが、従業員に公開されていない。
- そもそも明瞭な評価基準が存在しない。
従業員側から見て評価基準が不明瞭であいまいなものであると公平に感じられず、その評価に納得感があるものとはいえないでしょう。何を重視して評価しているのか、好き嫌いや価値観の不一致など主観的な感情に基づいているのではないのか、と不信感を感じさせてしまっている可能性もあります。
評価基準を明文化したり、目標達成度と紐づけるなど、納得感を得られやすい状況にすることが求められます。
プロセスが評価されない
不満を感じる人事評価の2つ目の特徴は、「プロセスが評価されない」なことです。
「どんな役割を担ったか」という行動プロセスが評価されない場合、従業員のモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。例えば、成果主義による評価の場合、成果を重視して、プロセスや能力などの評価の要件が軽視されてしまうことが考えられます。
この場合、仕事のプロセスや難易度などと人事評価が連動しなければ、「大変な仕事をやり切ったのに評価してもらえないのなら、今後はもうやりたくない」と従業員の不満を生んでしまう可能性があります。「大変でも成果が目立たない働きでは評価が低くなる」という傾向があると、人事評価制度に対して従業員が不満を抱くことにつながってしまうでしょう。
フィードバックが不十分
不満を感じる人事評価の3つ目の特徴は、「フィードバックが不十分」なことです。
フィードバックをすることで従業員は「どういった点を改善すれば評価が上がるのか」を理解できます。しかしフィードバックが不十分な場合、改善することは難しいでしょう。
例えば、「考課査定が行われた後、昇給・降格などの結果のみ通知される」というケースが考えられます。
人事評価が昇給や昇格などにつながる場合、「何が悪かったのかわからない」状態のままにすると、人事評価だけでなく組織に対する不信感まで高まってしまいます。評価結果の内容についてのフィードバックが不足していると、従業員に「評価内容が適切なのか?」と不信感を抱かせてしまうとともに、「評価」そのものが目的となってしまう恐れがあるでしょう。
評価と待遇が連動していない
不満を感じる人事評価の4つ目の特徴は、「評価と待遇が連動していない」なことです。
人事評価において高い評価を得たものの、給与や待遇に反映されていない場合、従業員のモチベーションや従業員エンゲージメントは低下します。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 従業員が自身の頑張りに対して「正当な待遇が得られていない」と感じている。
- 評価結果が、昇給や昇進・昇格などの待遇に反映されていない。
このような問題は、人事評価の結果が報酬システムや等級制度と連動できていない場合に起こりがちです。本人の頑張りが待遇や処遇面という形で反映されなければ、従業員の意欲の低下にもつながってしまいます。ただし、報酬の反映を目的とした人事評価制度にする場合は、報酬に無関係な業務はしなくてもよいとの認識を与える可能性があります。そのため、企業も従業員も納得できる評価制度の設計が重要です。
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法
ここまでご説明してきた通り、人事評価が低い社員がやめてしまう理由、そして、社員が不満を感じてしまう人事評価の特徴・デメリットとしては、様々なポイントがあります。では、人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐには、どのような注意点に気をつければよいのでしょうか。
以下に、6つの対策方法をご解説します。
評価基準を明確にする
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法の1つ目は「評価基準を明確にする」ことです。
人事評価を行うのはあくまでも人間であり、完璧な評価を行うことは難しいです。評価基準が曖昧であると評価者の主観が強く反映されやすくなり、評価にバラツキが生じる原因となります。例えば、営業成績の評価を行うとき、その基準が曖昧であれば、営業担当者AとBが同じ成績をあげても、評価者の主観で評価が異なることになります。この場合、低い人事評価の場合にも減給の幅が異なることになり、評価の公平性が失われ、社員の信頼を損なうことになります。
そのような問題を防ぐために、具体的な評価項目を明確に定義し、それを評価者に徹底して提示することで、バラツキを解消し、基準に基づいた客観的な評価が可能になります。評価基準が明確であれば、不公平な人事評価の発生を抑制し、公正な評価を浸透させることができます。
評価エラーがないか確認する
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法の2つ目は「評価エラーがないか確認する」ことです。
評価エラーとは、企業の人事評価において、部下を評価する立場の人(評価者)が、自身の無意識のバイアス・先入観・認知のゆがみなどに左右され、誤った評価をすることを指します。
評価エラーを回避するには、エラーの意味を理解し、誰もが評価エラーに陥るということを理解することが求められます。低い評価を与えられた従業員が辞めるのを防ぐために、これらのエラーが実際に起こっていないか事前の確認が重要です。
評価エラーは下記の通り、11種類あります。
- ハロー効果
- 中心化傾向
- 寛大化傾向
- 逆算化傾向
- 論理誤差
- 対比誤差
- 期末誤差(近接誤差)
- 極端化傾向
- 厳格化傾向
- 親近効果
- アンカリング
それぞれの概要と例について、以下に記載いたします。
評価エラー1:ハロー効果
「ハロー効果」とは、ある人物に対する全体的な印象が、その人物の個々の特徴や特性に対する判断に影響を与える際に生じる認知バイアスのことを指します。
例)マネジャーが従業員に好印象を持つと、その従業員の業績を正当化されるよりも高く評価してしまう。
評価エラー2:中心化傾向
「中心化傾向」とは、人事評価において従業員の「スキル」や「ポテンシャル」の状況にかかわらず、全体的に評価が中間値に偏る傾向を指します。
例)5段階評価の場合に評価が主に「3」に集中してしまう。この傾向は、評価者が自身の評価に自信がない場合や、周囲に過度な配慮をしてしまう場合に発生することがある。
評価エラー3:寛大化傾向
「寛大化傾向」とは、人事評価において全体的に評価が甘くなる傾向を指します。
例)評価者が被評価者に好意を持っている場合や、共同作業の中での協力関係がある場合、通常よりも甘い評価がされる。
評価エラー4:厳格化傾向
「厳格化傾向」とは、寛大化傾向とは逆の評価エラーで、必要以上に厳しい評価を与えてしまう傾向を指します。評価者自身のこれまでの実績やスキルを基準にすることが原因で起こりやすくなります。
例)上司が自分の実績や経験と比較し、頑張っている部下に対して必要以上に厳しい評価を与えた
評価エラー5:逆算化傾向
「逆算化傾向」とは、先に評価結果を決めたあとに、帳尻合わせのために意図的に評価を調整することを指します。賞与や昇格を反映させるため、実態と違った評価になりがちです。
例)企業の都合による場合や、「煩雑な評価が面倒だ」といった背景から、意図的に評価を調整する。
評価エラー6:極端化傾向
「極端化傾向」とは、評価が「平均値に偏る」点を気にするあまり、必要以上の差をつけてしまう傾向を指します。
例)部下の評価にメリハリをつけるために、5段階評価で「1」や「5」などの最低値や最高値のみを選択する。
評価エラー7:論理誤差
「論理誤差」とは、事実とは関係なく評価者の憶測などによって評価をくだすことを指します。独立した評価項目にもかかわらず、似たような事柄を関連付けて、事実とは違った判断をしてしまいます。
例)被評価者の出身大学や所属団体から、職務遂行能力の高低を判断し評価に反映させてしまう。
評価エラー8:対比誤差
「対比誤差」とは、自分と被評価者を比較して評価をしてしまうことを指します。
例)自分の得意分野には厳しい評価をつけ、苦手分野には甘い評価をつける。
評価エラー9:期末誤差(近接誤差)
「期末誤差(近接誤差)」とは、評価期間の期末に生じた出来事に、評価全体が影響を受けることを指します。
例)同じ業務ミスであっても、発生時期が期首か期末かで評価が変わる。
評価エラー10:親近効果
「親近効果」とは、共通点がある人に対して評価が甘くなる傾向を指します。
例)「出身大学が同じ」や「同じ趣味をもつ」などの理由で被評価者に親近感を抱いている場合に発生する。部下とプライベートでつきあいがある場合にも、生じがちである。
評価エラー11:アンカリング
「アンカリング」とは、最初の印象によって、評価結果が影響されることを指します。
例)一度部下に高い評価をつけると、他の部下に対しても同様に高い評価をつけがちになる。
評価制度を見直す
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法の3つ目は「評価制度を見直す」ことです。
人事評価制度による退職を防ぐためには、従業員の納得度を高め、評価者によるばらつきを排除し、信頼性と公平性の高い制度を確立することが重要です。そのためには、評価制度を見直し、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの要素を自社に最適化して設計することが効果的です。
それぞれの要素の概要は下記の通りです。
- 「等級制度」…従業員をランクや役割でわけるための制度
- 「評価制度」…指針に対する貢献度を評価する制度
- 「報酬制度」…等級や評価にもとづいて従業員への報酬を決める制度
上記の各要素を自社の状況に応じて最適化することが重要です。例えば、それぞれの要素は下記のような関係性を持っています。
- 「等級制度」✕「評価制度」→ 評価によって等級が決まる
- 「評価制度」✕「報酬制度」→ 成果、能力に応じて、報酬が変化する
- 「報酬制度」✕「東急制度」→ 等級の違いが報酬に影響
このような関係性を理解したうえで、自社に最適化して設計することが効果的です。
また、昇格や昇給をコントロールするために「相対評価」を用いている企業では、高評価を受けられる人数が限られるため、従業員の自己評価とのギャップが生じやすく、不満の原因となりがちです。そのため、賃金制度との連携を考慮しつつ、目標を達成した従業員に高い評価を与える「絶対評価」の導入も検討することがおすすめです。
フィードバックを強化する
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法の4つ目は「フィードバックを強化する」ことです。
低評価による退職を防ぐためには、人事評価のフィードバックを充実させることが効果的です。
フィードバックの例としては、以下のような観点が挙げられます。
- 評価基準の説明
- 改善すべき点
- 次回までの目標
- 具体的なアドバイス
- 期待していること
各従業員に個別の面談を設け、上記のようなポイントを伝えましょう。評価に必要な情報を提供することはもちろん、より適切なフィードバックを実践することができます。本来、人事評価の目的は、評価を通じて仕事のやり方を見直し、従業員の成長を促すことであり、人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐためにも、適切なフィードバックが欠かせないと言えるでしょう。
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評価者教育を実施する
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法の5つ目は「評価者教育を実施する」ことです。
「評価基準を明確にする」でもお話ししましたが、評価エラーは誰にでも起こりうるものです。評価者の中には、不確かな方法で評価している評価者がいる場合があり、その影響で評価の公平性が保つことに失敗する恐れがあります。公正な人事評価を機能させるには、評価基準や評価方法などの知識を評価者が正確に理解し、共通認識を持てている状態が望ましいです。
そのために、社内の有識者や外部のセミナー・サービス等を利用して評価者研修を行うことを検討してみてはいかがでしょうか。評価者の育成を通して、評価基準や評価方法などの情報を評価者が正確に理解し、認識を共有できている状態を目指しましょう。マイナス評価においても、その目的や注意すべき点、正しい考え方について学ぶことで、より公正な評価の取り組みが可能になります。
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日々のコミュニケーションを大切にする
人事評価が低い社員が辞めるのを防ぐ方法の6つ目は「日々のコミュニケーションを大切にする」ことです。
人事評価を行う際には、従業員との積極的なコミュニケーションが重要です。日頃からコミュニケーションをとることで、より適切なフィードバックも可能になります。
評価項目に含まれる従業員の目標や価値観、仕事のプロセスなどは、従業員から直接聞き取らなければ十分には把握できません。また、従業員が評価に納得しない場合も、コミュニケーションを通じて評価理由や双方の考えを明確にすることが必要です。
査定の時期に限らず、頻繁にコミュニケーションをとり、期初に設定した目標に対する進捗状況や期末に向けて取り組むべき課題についてフィードバックや助言を行いましょう。これにより、評価者と被評価者の間の信頼関係を築き、人事評価が低い社員が辞めることを抑制することができます。
納得感のある評価を実現する5つの手法
納得感のある人事評価制度を実現するためには、自社の組織文化や目的に最も適した手法を導入することが必要です。ここでは、従業員の離職率を低下させ、評価制度の課題を解決するための5つの対処法をご紹介します。
MBO(目標管理制度)
納得感のある評価を実現するための手法の1つ目は「MBO(目標管理制度)」です。
目標管理制度(MBO)とは、「Management(管理)by Objectives(目的)」の頭文字をとったものであり、従業員自身が組織目標とリンクした個人目標を作成し、その進捗状況や達成状況に応じて評価する仕組みのことを指します。
目標管理制度(MBO)の運用メリットとしては、自己管理によるマネジメントが可能になることや、従業員のモチベーションが向上することが挙げられます。
従業員は自分で自分の仕事を把握し、管理するため、決定した目標を達成するために強い責任感のもと、自主的かつ自律的な姿勢で行動することが期待されます。
また評価に対する納得度が高いというポイントも目標管理制度(MBO)の特徴です。従業員の目標達成は、同時に企業側の目標達成にも通ずるため、両者がともに成長していける評価制度と言えます。
OKR
納得感のある評価を実現するための手法の2つ目は「OKR」です。
OKRとは、「Objectives(目標)and Key Results(主要な結果)」の頭文字をとったものであり、大きな目標とその達成を測るための具体的な指標を設定し、評価する手法です。企業が目指すべき目標と社員個人の目標をリンクさせ、すべての社員が一丸となって同じ方向を向き重要課題に取り組むことを目的としています。
特徴は、個人と企業の目標をリンクさせて、目標設定・進捗確認・評価という一連の流れを高い頻度で行う点にあります。OKRは、社員および企業全体がモチベーションをアップさせるために、「容易には達成できない高い目標」を掲げ、達成率が60〜70%程度となるのが理想とされています。
組織と従業員の目標を連動させ、進捗確認や成果に対する評価を頻繁に実施することで、一体感をもって計画的に業務を推進できるというメリットがあります。
360度評価
納得感のある評価を実現するための手法の3つ目は「360度評価」です。
360度評価とは、上司のほか同僚や部下など、関係する複数の従業員が評価者となり、評価対象者を多面的に評価する制度のことを指します。上司や人事担当者など上の立場の人からだけでなく、同僚や後輩なども評価者に含まれます。
公正な評価のためには、多面的な意見を取り入れ、偏りを防止することが重要です。1人の評価者による評価の場合、評価者の主観やバイアスが評価に影響を与えることで、公平性が保たれなく恐れがあります。
それに対して、360度評価では、多くの人が評価に関わるため、客観性が担保されて公正な評価になりやすいと言えます。評価対象者にとっても納得しやすい評価となるのでモチベーションの維持向上にもつながるでしょう。
ただし、「従業員数が少ないと誰が評価者かわかってしまう」「全評価者の情報を集約しなければならない」「評価者間で馴れ合いが生じる場合もある」などのリスクが考えられるため、注意が必要です。
コンピテンシー評価
納得感のある評価を実現するための手法の4つ目は「コンピテンシー評価」です。
コンピテンシー評価とは、仕事において優れたパフォーマンスを発揮する従業員の行動特性(コンピテンシー)を基準とした人事評価です。コンピテンシーをもとに、評価項目を設定して評価を行います。成果を出している人材の行動特性をもとに評価を行なうことで、同じように優秀な人材の育成を成功させることを目的としています。
下記は、コンピテンシー評価の基本的な評価要素の一覧です。
- タイムマネジメント
- リスクテイクの判断
- 対人交渉能力
- 説明責任を果たす能力
- ストレス管理
上記の評価要素を踏まえ、優秀な人の態度や行動、価値観などの共通点を抽出し、それをもとに判断するという手順のため、評価の公平性を担保しやすいメリットがあります。また、コンピテンシー評価の導入は、社員のパフォーマンス向上や適切なキャリアパスなどに効果的です。納得感のある人事評価制度づくりにもつながるため、人事評価が低い社員が辞めるのをを防ぎ、効率的な人材育成を実現させることにも役立ちます。
1on1ミーティング
納得感のある評価を実現するための手法の5つ目は「1on1ミーティング」です。
1on1ミーティングとは、定期的に実施する上司・部下間の1対1の面談手法です。上司が部下の現状を把握してフィードバックして、成長を促す目的で行われます。1on1ミーティングでは、1on1シートなどを活用し、ミーティングの記録をとります。そして期末に1on1の記録資料を振り返ることで、社員がどんな目標を達成を立てているのか、達成したのかどうか、目標に対してどんな創意工夫をしたのかを、まとめてチェックすることができます。
また、目標以外でも「最近、会社に貢献していることはある?」と聞くことで、社員から「実は後輩を育成しようと思っていて、毎日30分相談に乗っている」などというように、普段の業務ではわからない情報も評価に組み込むことができます。
このように、1on1ミーティングの機会を設けることで、社員の評価の根拠が明確になり、より効果的で納得感のある評価を行うことが可能になります。
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まとめ
この記事では、人事評価の低い社員が辞めてしまう原因とその対策について解説してきました。
人事評価が低いと、社員が退職を考える原因になります。適切に評価されていないと感じると、社員は自分が過小評価されていると考え、会社に対して悪い印象を抱くこともあります。
社員の退職を防ぐためには、自社に合った公正な人事評価制度を導入することが重要です。現行の自社における課題を整理し、評価制度の導入事例を参考にすることで、より最適で戦略的な評価制度を設計できます。
本記事を参考に、適切な人事評価を実施し、社員が辞めることのない環境づくりに努めましょう。
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