▼ この記事の内容
人事評価制度を廃止した企業の多くは、制度全体ではなく年次評価やレイティングを見直しています。廃止後も報酬・昇格・配置・育成・納得感の5機能は残す必要があり、代替運用と面談品質で判断します。
人事評価制度を廃止した企業事例を見ると、GE、Adobe、カルビー、Microsoftの4社はいずれも評価機能そのものをなくしていません。年次評価やレイティングを見直し、継続的な対話やフィードバックへ移行しています。
評価制度への不満が強いと、制度をなくせば現場の納得感が高まるように見えます。しかし報酬・昇格・配置・育成の判断基準まで曖昧になると、かえって不公平感や説明不足が表面化します。
この記事では、人事評価制度を廃止した企業が何をやめ、何を残したのかを整理します。自社で廃止すべきか、見直しにとどめるべきかを判断するための基準を示します。
読み終える頃には、制度名に振り回されず、残すべき評価機能から見直し方針を考えられるはずです。
廃止事例を自社に当てはめる際は、制度名ではなく、報酬・昇格・配置・育成・納得感をどの運用で担保するかを先に確認します。
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目次
人事評価制度を廃止した企業事例と「何を廃止したのか」【コア回答】
人事評価制度の廃止は、評価機能を消す判断ではなく、評価方法を変える判断です。代表企業の事例を見ると、年次評価・レイティング・相対評価をやめ、継続的な対話と目標運用へ移行しています。
人事評価制度の「廃止」は4つに分かれる
人事評価制度の廃止は、制度全体の廃止、レイティング廃止、年次評価廃止、数値目標評価の廃止の4種類に分かれます。まず自社が何をやめたいのかを特定する必要があります。
本記事では、この整理を「評価廃止4分類」と呼びます。評価そのものを消すのではなく、報酬・昇格・育成に使う判断材料をどこから得るかを分けて考えます。
人事評価の目的や基準が未整理なまま廃止を検討すると、判断軸が失われます。評価の役割を確認したい場合は、人事評価の目的と基準を先に整理すると判断が安定します。
たとえば「レイティング廃止」と「年次評価廃止」では、残す運用が異なります。レイティング廃止なら報酬テーブルの再設計が必要になり、年次評価廃止なら四半期や月次の面談サイクルへの移行が先決です。自社の不満がどの分類に当たるかを特定しないまま他社事例をなぞると、解決すべき課題と導入する施策がずれます。
廃止企業4社の事例|各社が廃止した対象と代替した運用
GE、Adobe、カルビー、Microsoftの事例では、主に年次評価やレイティングが見直されています。各社は評価をなくしたのではなく、面談やフィードバックの頻度を高めています。
代表例を整理すると、廃止対象と代替運用の違いが明確になります。制度名だけを見ると似ていますが、実際には職種、企業規模、評価文化に応じて移行先が異なります。
| 企業名 | 見直した対象 | 代替した運用 |
|---|---|---|
| GE | レイティング中心の評価 | 継続的な対話とタッチポイント |
| Adobe | 年次評価とランキング | Check-inによる定期対話 |
| カルビー | 従来型の人事評価 | ノーレイティングと1on1 |
| Microsoft | スタックランキング | 成長志向のフィードバック |
この表から分かるのは、廃止の対象が評価機能全体ではない点です。企業事例は「何をやめたか」と「何で代替したか」をセットで見る必要があります。
参考:GE Replaces Annual Performance Reviews With an App|Fortune
参考:Check-in|Adobe
参考:ノーレイティングとは?人事評価の新手法 – メリットと導入方法・企業の事例|BOXIL Magazine
参考:Stack Ranking Ends at Microsoft, Generating Heated Debate|SHRM
廃止企業に共通するのは「制度をなくした」のではなく「評価方法を変えた」こと
廃止企業に共通するのは、評価機能を消さず、評価方法を変えている点です。報酬、昇格、配置、育成の判断は別の運用に移されます。
【専門家の見解】
制度廃止と評価機能廃止を混同すると、現場は「何を基準に判断するのか」を失います。廃止判断では、評価の名称ではなく、残す機能を先に決める必要があります。
通説では、人事評価制度を廃止すれば不満が減ると見られます。しかし条件が整わない企業では、基準の不明確さが残り、面談で説明できない評価が増えます。
制度名を変えるだけでは、現場の納得感は高まりません。次に見るべきなのは、企業がなぜ年次評価やレイティングを手放すのかという理由です。
企業が人事評価制度を廃止する理由【コア回答】
企業が人事評価制度を廃止する理由は、運用工数、事業変化への遅れ、育成との分断に集約されます。廃止で解決する問題と、廃止しても残る問題を分けると判断を誤りにくくなります。
評価運用の工数と不満が限界を超えている
評価運用の工数が管理職と人事を圧迫すると、制度廃止や簡素化が検討されます。評価会議、目標調整、評語のすり合わせに時間を使い、育成の時間が削られるためです。
営業マネージャーなら、期末に案件レビュー、予算会議、評価コメント作成が重なります。部下から評価理由を問われても、半年前の行動記録が残っていないと説明が弱くなります。
廃止で減らせるのは、評語づけや相対順位づけの工数です。一方で、報酬や昇格の説明責任は残るため、判断材料を日常的に残す運用が必要になります。
年次評価では変化に追いつけない
年次評価が変化に追いつかない企業では、評価サイクルの短縮が必要です。半年から1年に1度の評価では、期中に変わった目標や役割を評価へ反映しにくくなります。
本記事では、廃止判断を「解決する問題」と「残る問題」に分ける見方を「廃止判断マップ」と呼びます。年次評価の遅さは解決できますが、判断基準の設計は別に残ります。
| 論点 | 廃止で解決する問題 | 廃止しても残る問題 |
|---|---|---|
| 評価頻度 | 年1回の遅れを減らす | 対話の質を保つ必要がある |
| 目標運用 | 古い目標への固執を減らす | 目標変更の記録が必要になる |
| 報酬決定 | 評語づけの負担を減らす | 給与判断の根拠は残す必要がある |
変化が少ない定型業務では、年次評価でも機能する場合があります。変化の速い部署から試行し、全社一律の廃止を避けると制度変更の失敗を抑えられます。
評価と育成が分断し、成長実感がない
評価と育成が分断している企業では、制度への不満が強くなります。評価結果を伝えるだけで日常のフィードバックがない場合、社員は何を改善すべきかを把握できません。
期末面談で部下から「なぜこの評価なのか」と聞かれ、管理職が具体例を出せない場面は珍しくありません。制度廃止は不満の入口を減らしますが、日常対話がなければ育成課題は残ります。
成長実感を高めるには、評価面談だけでなく、1on1や目標進捗の記録を評価材料に接続します。次に、廃止によって得られる利点と、同時に残るリスクを切り分けます。
人事評価制度を廃止するメリットとリスク【コア回答】
人事評価制度の廃止には、工数削減、チームワーク改善、フィードバック頻度向上というメリットがあります。一方で、報酬・昇格・配置・育成・納得感の5機能を失うリスクがあります。
廃止によって得られるメリット3つ
人事評価制度の廃止で得られる主なメリットは、評価工数の削減、チームワークの改善、フィードバックの即時化です。特に相対評価をやめると、順位づけのための調整負荷が減ります。
実務では、管理職が評価コメントに使っていた時間を1on1や目標支援に移せます。営業部門なら、期末の評価作業よりも、月次の案件改善や行動支援に時間を使えます。
- 評価会議や評語調整の工数を減らします。
- 相対順位による社内競争を抑え、協力行動を促します。
- 期末評価ではなく、日常のフィードバックへ移行します。
メリットは、評価の代替運用がある場合に限って成立します。制度をやめるだけでは、管理職の判断負担が見えにくい形で残ります。
廃止すると残る5つのリスク
人事評価制度を廃止すると、報酬、昇格、配置、育成、納得感の5機能がリスクにさらされます。現行制度がこの5機能を担っている企業では、代替設計なしの廃止は危険です。
本記事では、この確認軸を「5機能リスク診断」と呼びます。制度をやめる前に、各機能を何で代替するかを決めると、廃止後の混乱を抑えられます。
| 残すべき機能 | 廃止後に起きるリスク | 代替に必要なもの |
|---|---|---|
| 報酬 | 給与判断の根拠が弱くなる | 等級・役割・成果の基準 |
| 昇格 | 抜てき理由を説明しにくい | 職務要件と行動基準 |
| 配置 | 異動判断が属人化する | スキルと実績の記録 |
| 育成 | 改善点が見えにくい | 1on1と目標進捗の記録 |
| 納得感 | 不公平感が増える | 日常データと説明責任 |
5機能のうち1つでも代替先がない場合は、廃止ではなく段階的な見直しが適しています。次に、廃止後の代表的な代替策を整理します。
廃止後の代替策|ノーレイティングと継続的フィードバック【コア回答】
廃止後の代替策は、ノーレイティング、1on1、OKR、MBO、バリュー評価を組み合わせて設計します。単一の手法で評価制度の全機能を置き換えるのではなく、目的ごとに役割を分けます。
ノーレイティングは「評価不要」ではない
ノーレイティングは、ランクや評語をなくす制度であり、評価を不要にする制度ではありません。管理職が高頻度で対話し、成果と行動を記録する前提で機能します。
管理職のフィードバック品質が低い状態で導入すると、評価基準が見えにくくなります。評語がない分、面談の説明力と日常データの蓄積がより強く求められます。
ノーレイティングの考え方を詳しく確認する場合は、ノーレイティング評価の基本を合わせて読むと、廃止後の設計を整理しやすくなります。
導入の順序としては、まず管理職向けのフィードバック研修を実施し、月2回以上の1on1を3か月間定着させてからノーレイティングへ切り替えるのが現実的です。面談記録が蓄積されていない段階で評語だけを外すと、昇給・賞与の根拠を説明できず、かえって社員の不信感が高まります。
1on1・OKR・バリュー評価の使い分け
廃止後の代替策は、目標設定、面談運用、行動評価の3軸で分けます。OKRやMBOは目標を扱い、1on1は対話を扱い、バリュー評価は行動基準を扱います。
本記事では、この組み合わせを「代替3軸」と呼びます。変化の速い部署ではOKRと1on1を強め、安定業務ではMBOと行動評価を組み合わせます。
| 代替策 | 主な役割 | 適した条件 |
|---|---|---|
| OKR | 挑戦目標の設定 | 目標が頻繁に変わる部署 |
| MBO | 個人目標の管理 | 成果指標が明確な職種 |
| 1on1 | 対話と進捗確認 | 管理職が継続面談できる組織 |
| バリュー評価 | 行動基準の確認 | 成果だけで判断しにくい職種 |
MBOの設計は目標管理制度の基本で確認できます。1on1と目標を結びつける場合は、1on1で目標設定を進める方法も参考になります。
組み合わせを決める際は、部署ごとに「目標の変動頻度」と「成果の測定しやすさ」の2軸で判断します。たとえば開発部門は四半期OKR+隔週1on1、管理部門はMBO+バリュー評価という分け方が実務では機能しやすい構成です。全社一律で1つの手法を選ぶより、職種特性に合わせて併用するほうが運用の定着率が高まります。
評価制度の見直しに必要な準備と導入ステップ
評価制度を見直す準備では、現行制度の課題を分解し、廃止する部分と残す機能を分けます。次に、代替運用と管理職の面談スキルを同時に整えます。
進め方は、現状把握、廃止範囲の決定、代替策の設計、試行、全社展開の順です。いきなり全社廃止に進むより、部署単位で検証すると失敗を抑えられます。
評価制度の見直しを検討している段階では、廃止案と改善案を並べて比較する必要があります。人事評価の納得感を高める運用設計について詳しく知りたい方は、以下の資料をご確認いただけます。
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自社で廃止してよい条件と危険な条件【失敗回避】
人事評価制度を廃止してよいかは、企業規模、成果の見えやすさ、報酬連動、面談品質、評価データの蓄積で判断します。条件が弱い企業では、廃止より運用改善を優先すべきです。
廃止が成功しやすい5つの企業条件
廃止が成功しやすい企業には、成果が見えやすく、面談運用が定着し、報酬ルールが評価制度と分離されている特徴があります。管理職が日常データを使って説明できることも条件です。
本記事では、この判断軸を「廃止条件マトリクス」と呼びます。50名以下で職種が近い組織は試行しやすく、300名超で職種が混在する組織は段階導入が適しています。
| 判断条件 | 廃止しやすい状態 | 慎重に見る状態 |
|---|---|---|
| 企業規模 | 50名以下で運用をそろえやすい | 300名超で職種が多い |
| 成果の可視性 | 営業数字や成果物が見える | 貢献が間接的で見えにくい |
| 報酬連動 | 等級や役割で決められる | 評価点が給与に直結する |
| 面談品質 | 1on1が定着している | 管理職ごとに差が大きい |
| 評価データ | 日常記録が残っている | 期末面談だけに依存する |
5条件のうち複数が弱い場合は、制度廃止を急ぐ必要はありません。廃止の前に、面談記録と評価基準を整えるほうが現場の納得感につながります。
廃止してはいけない企業の特徴
等級や報酬が評価点に強く依存している企業では、人事評価制度の廃止は危険です。評価基準が未整理なまま廃止すると、給与や昇格の説明が属人的になります。
現場が「評価されない不公平」を感じている場合、廃止は不満の解消になりません。期末面談で説明責任を果たせない状態では、評語をなくしても納得感は高まりません。
評価基準そのものが弱い場合は、人事評価基準の作り方を確認するのが先です。制度課題の全体像は、人事評価制度の問題点と解決策でも整理できます。
廃止ではなく「評価運用の改善」で解決できるケース
評価基準の不明確さ、目標設定の弱さ、評価者訓練不足が原因なら、制度廃止より運用改善が適しています。制度を残したままでも、納得感を高められる余地があります。
たとえば、MBOの目標があいまいで評価者ごとの基準が異なる場合、廃止しても問題は残ります。目標設定、1on1、評価会議の進め方を直すほうが効果的です。
制度を残して改善する選択肢は、人事評価制度の見直しで整理できます。評価運用の具体策は、人事評価の運用改善も参考になります。
よくある質問【FAQ受け皿】
人事評価制度を廃止した日本企業にはどのような特徴がありますか?
日本企業では、年次評価や相対評価への不満が強く、1on1や行動評価へ移行できる企業が廃止を検討します。報酬や昇格の基準を別に残せることが条件です。具体的な進め方は組織の現状に応じて調整します。
人事評価制度を廃止すると社員のモチベーションは上がりますか?
制度廃止だけでモチベーションは上がりません。日常のフィードバック、目標の見直し、評価理由の説明がそろう場合に、納得感と成長実感が高まります。まずは現状の課題を整理することから始めます。
人事評価制度を廃止した後に報酬はどう決めますか?
廃止後の報酬は、等級、役割、成果、行動基準を組み合わせて決めます。評語をなくす場合でも、給与判断の根拠は文書化して残す必要があります。定着には週1回の振り返りが効果的です。
まとめ
人事評価制度を廃止した企業の多くは、制度全体をなくしたのではなく、年次評価やレイティングを廃止して継続的フィードバックへ移行しています。廃止後も、報酬・昇格・配置・育成・納得感の5機能は別の形で残す必要があります。
自社で廃止してよいかは、成果の見えやすさ、面談運用、報酬ルール、管理職の説明力、評価データの蓄積で判断します。条件が整わない場合は、廃止ではなく評価運用の改善から始めるのが現実的です。
人事評価制度の廃止や見直しを検討している場合は、制度名ではなく残す機能を先に整理します。人事評価の納得感を高める方法について、詳しくは以下の資料をご覧ください。
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