人事評価は運用までが重要 失敗しないためのシステム選びとは

▼ この記事の内容

  • 運用の課題:人事評価制度は「制度3割・運用7割」といわれ、運用で失敗しがちです。 社員の半数近くが「評価基準が不明確」「給与への反映が分からない」ことに不満を抱いています。評価シートの配布・集計などの「運用負荷の高さ」も大きな課題です。
  • 解決法のトレンド:「人事評価システム」から「パフォーマンスマネジメント」へ移行しています。 従来のシステムが「効率化」を目的としていたのに対し、パフォーマンスマネジメントは1on1やリアルタイムフィードバックを通じて、日常から「育成」と「評価材料」の収集を重視します。
  • 成功の鍵:日常的なコミュニケーションログを蓄積し、客観的な根拠にすることです。 半年に一度の査定だけでは、上司は部下の努力を見落としがちです。日常業務でログを蓄積することで、評価の納得感を高め、モチベーションの向上に繋がります。

人事評価制度の運用

人事評価制度は「運用」で失敗しがち

人事評価制度は多くの企業で導入されており、また近年ではシステムを導入することで効率化を図る企業も増えています。

しかし、多くのシステム・ツールが出回り、その機能も多岐にわたるため、システム導入後に結局社内でうまく運用されることなく形骸化してしまうケースや、システムと自社の評価内容の趣旨が合わず、全面的に制度見直しとなってしまうケースも少なくありません。

制度内容だけでなく、運用後の流れまでを検討して制度を導入することが、人事評価制度において重要なのです。

人事評価の基本的な流れ

  1. 目標設定
  2. 業務・評価材料集め
  3. 自己評価
  4. 一次評価
  5. 二次評価
  6. 最終評価決定・調整
  7. 期末面談
  8. 次の目標設定

1. 目標設定

主に期初に、上司と目標を設定します。

2. 業務・評価材料集め

通常業務を行います。またそれと同時に、上司は評価材料を集めます。

3. 自己評価

社員が業務結果を報告し、また上司はその業務結果を社員と一緒に確認します。

4. 一次評価

評価事実の確認をするとともに、その評価材料を参考に一次評価を下します。

5. 二次評価

一次評価者の評価を受けて別の上司がさらに二次評価を行います。これは評価を客観的に再吟味することで公平性を保持するために実施されている場合が多いです。

6. 最終評価決定・調整

一次評価、二次評価を元に最終評価を決定します。部門を横断した評価内容の調整などもこの時に行われます。

7. 期末面談

決定した評価内容を上司から部下へ通知します。またこの際に評価内容の理由を説明したりフィードバックを行ったりします。

8. 次の目標設定

次の人事評価に向けて目標設定を行います。(1に戻る)

一次評価・二次評価とは

直属の上司がつける評価を一次評価とし、より上位の社員役員による再評価を二次評価、または三次評価と言います。

一次評価者は課長や係長など直属の上司クラス、二次評価者はさらにその上の所属長が評価し、これを運用することが多いです。 

多くの企業では人事評価を行う上で、判断材料を元に客観的に判断するために数回に渡り評価の見直しを行うことが一般的です。

人事評価運用におけるよくある不満

人事評価を運用する上での不満や悩みは、そのまま生産性や離職率に繋がってしまうため、近年あらゆる業界で大きな課題となっています。

評価への納得度が低い

2021年に行われたある調査では、人事評価に不満を持つ社員は44.6% もいることが判明しました。

またその不満理由のうち「評価基準が不明確である」と回答した人は48.3%であり、さらに「自分の評価結果が給与や待遇にどのように反映されるか知らない」と回答した人は44.5%にものぼりました。

直属の上司がつける一次評価は本人のことをよく見ているからこそ評価内容が明確になっているはずですが、現実では半数弱の社員が評価基準が不明確だと感じていることがわかります。

また、そのフィードバック内容が不十分だったり、評価結果への理解が深まらないなど、人事評価制度の流れが形骸化してしまっており、社員の納得感には繋がっていないのです。

運用負荷が高い

人事評価制度を運用していくためには、部下による目標設定、その目標設定が適正かの確認、評価シートの提出、採点などさまざまな業務が存在しており、マネージャーの通常業務を圧迫します。

また、評価面談では、ただ評価結果を通知するだけでなく、社員1人ごとに賞賛や次期の課題など考え、納得させるフィードバック内容が必要なので、特にマネージャーは正確かつ丁寧な仕事が求められます。

成果と満足度を両立させる評価制度と運用

やりがちな解決方法 -人事評価システム、タレントマネジメントシステムの導入

人事評価システムを導入

解決できる側面

人事評価システムを導入すると、今まで紙やエクセルで行っていた評価の流れを同じツールで一元化できることにより、作業効率化につながります。

また、全員が見れる場所にデータが蓄積されていくため、一次評価や二次評価の際もより客観的な評価が可能になります。

解決できない側面

会社の従来の評価基準を全てシステムで再現することは難しいです。そのため、システムの評価基準に合わせて評価基準そのものを作り直ししなければいけない可能性が高いでしょう。

また、導入済みの他システムや日頃の面談内容などが連動されるようにシステム選びを行わなければ、導入したシステムが結局形骸化してしまう恐れがあります。

タレントマネジメントシステムを導入

解決できる側面

タレントマネジメントシステムを導入することで、人材の特性や適材適所を正確に把握することができます。

その上でさらに過去の人事評価結果などが自動的に蓄積されていくため、引き継ぎ業務などが効率化されます。

解決できない側面

各人材の特性を把握することができますが、目的意識を持って導入しないと集積した人材情報を活用できないまま終わってしまいます。

また、多くの場合、システムの機能が幅広すぎて現場社員が使いこなせず、社員側の不満や悩みを吸い上げられないために課題解決につながらない恐れがあります。

運用課題への新しい解決法 パフォーマンスマネジメント

パフォーマンスマネジメントとは

パフォーマンス・マネジメントとは、上司や同僚が1on1や賞賛的な内容も含めたリアルタイムのフィードバックを行い、現状の評価の確認と従業員の目標達成のサポートを行う取り組みを指します。

パフォーマンスマネジメントシステムは、現場における上司と部下のコミュニケーションやマネジメントの改善によって、モチベーションの向上や離職の防止を図る新しいHR Techのカテゴリーです。

これまで挙げてきた人事評価特化システムやタレントマネジメントシステムと比較すると、1on1やリアルタイムのフィードバックなど、日常業務での使用を想定したツールであることも特徴です。こういった日常業務での1on1やフィードバックでログを蓄積し、それらを人事評価に活用する事で、1年または半期に一度見直すだけでは上司では見落としがちだった、部下の成果や貢献を可視化することができます。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 人事評価制度が「形骸化」してしまう主な原因は何ですか?

A: 評価基準が不明確なまま運用が始まり、フィードバックが不十分になるためです。 マネージャーの通常業務を圧迫するほど運用負荷が高いと、面談が形式的になりがちです。評価結果が社員の納得感に繋がらず、制度自体が「意味のない作業」になってしまいます。

Q2. 「人事評価システム」と「タレントマネジメントシステム」の違いは何ですか?

A: 前者は評価業務の効率化、後者は人材情報の統合管理に主軸があります。 人事評価システムはシートの配布や集計を自動化しますが、タレントマネジメントシステムは、スキルや経歴、過去の評価などあらゆるデータを一元管理し、戦略的な人材配置に活用します。

Q3. 導入されたシステムが「使いこなされない」のはなぜですか?

A: 機能が複雑すぎたり、現場の課題と導入目的がズレていたりするためです。 特に多機能なタレントマネジメントシステムは、全機能を使いこなすための教育コストが高くなりがちです。現場の上司や部下にとって、日常的に使いやすいUI/UXであることが重要です。

Q4. 「パフォーマンスマネジメント」とは、具体的に何をするのですか?

A: 日常的な1on1やリアルタイムの称賛を通じて、目標達成を支援する手法です。 評価時期を待たずに頻繁な対話を行うことで、評価の根拠となるログを蓄積します。これにより、期末の査定時に「なぜこの評価になったのか」を明確に説明でき、納得感が高まります。

Q5. 運用負荷の軽減と、評価の納得感の両立は可能ですか?

A: はい、専用の「パフォーマンスマネジメントシステム」の導入で両立できます。 ツールで評価シートの配布や集計といった事務作業を効率化し、削減した時間を部下への丁寧なフィードバックや1on1に充てることで、納得感のある運用を実現できます。

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評価の不満は運用面にある

評価の不満は主に運用面にあり、評価制度が良いものであっても評価制度が上手くいかないということは、よくあることです。

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