多くの企業が導入している人事評価制度は、従業員のパフォーマンスを公正に評価し、報酬や昇進などの人事判断に反映させるために重要な役割を果たしています。
しかし、長期間にわたって同じ制度を運用していると、外部環境の変化から適切に評価できなくなったり、従業員からの不満や評価基準の不明確さ、または運用面での不具合が生じることが少なくありません。こうした問題が積み重なると、制度そのものが形骸化し、従業員のモチベーション低下や離職率の上昇といったリスクも発生します。このような状況において、どのタイミングでどのように評価制度を見直すべきか悩んでいる人事担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、人事評価制度に対するよくある不満に加え、制度を見直すことのメリットや適切な人事評価の作り方・重要なポイントについても解説します。また、評価制度を見直した後に実施すべき点や最近のトレンドについてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
人事評価制度のよくある不満
そもそも実際に、現状の人事評価制度に不満を感じている人はどれほどいるのでしょうか。
アデコ株式会社が実施した意識調査によると、「勤め先の人事評価制度に満足しているか」について、回答者のうち62.3%が「不満」と回答しました。
加えて、「勤務先の人事評価制度を見直す必要があると思うか」について、77.6%が「必要がある」と回答しており、人事評価に対する不満と改善を求める声が多く挙がる結果となりました。
また、人事評価制度への具体的な不満要因についての回答結果は下記のとおりとなっています。
特に、「評価基準が不明確である」ことや、「評価結果にばらつきがある」点に対する不満が多く見られます。これらは、人事評価制度の見直しにおいて優先的に対処すべき重要な課題だと言えるでしょう。
評価基準が曖昧なままだと、従業員が自分の働きに対する評価に納得できず、モチベーションの低下や不信感を招く恐れがあります。
また、評価者ごとに結果に差が生じると、公平性に対する疑念が生まれ、組織全体の信頼関係に悪影響を与えることにもつながります。
そうなる前に、人事評価制度の見直しを行い、従業員の人事評価制度に対する満足度を向上させることが重要です。
人事評価制度の見直しの目的とメリット
では、人事評価制度を見直す目的やそのメリットとしてはどのようなことが考えられるのでしょうか。
以下に、人事評価制度の見直しの目的とメリットについて5つご紹介します。
自社の状況やケースを把握したうえで、どのような改善や効果が期待できるのかを確認し、適切な対策を取るための参考にしてください。
経営戦略に適合した制度運用ができる
人事評価制度の見直しの目的とメリットの1つ目は、「経営戦略に適合した制度運用ができる」ことです。
人事評価制度は、本来、企業の経営戦略に基づいて策定されるべきものです。これにより、社員の評価を通じて経営目標を達成することを支援します。しかし、長期間にわたって同じ評価制度を運用していると、経営戦略やビジネス環境の変化に伴い、制度が現状に合わなくなることがあります。
例えば、既存事業が衰退しているため、新規事業を立ち上げ軌道に乗せなければいけない状態なのに対して、評価制度では新規事業の立ち上げなどを評価する項目がないため、新規事業に取り組む従業員のメリットがない状態になってしまっているなどが考えられます。
そのため、定期的に人事評価制度を見直し、現在の経営戦略や企業のニーズに合った形にアップデートすることが重要です。これにより、社員の評価が組織の成長戦略と一貫性を持ち、効果的に機能されるようになります。
組織全体の業績アップにつなげるため
人事評価制度の見直しの目的とメリットの2つ目は、「組織全体の業績アップにつなげるため」です。評価制度を見直し、従業員の不満を解消し、評価の納得感を上げることで、結果的に業績の向上が期待できます。
それを証明するデータとして、日本経済新聞が公表した『人への投資、企業価値を左右 スコア上位の株価7割高チャートは語る』では、「人事評価の適正感」つまり評価の納得感が高い企業の方が株価の伸び率が5年間で97%も向上したという結果が出ています。
これは当然と言えば当然なのですが、「努力しても評価で報われない」と感じる従業員は、モチベーションが下がり、頑張らなくなる人が続出し、成果が上がらなくなるということを示しています。
既に人事評価の納得感が低い場合、人事評価制度の見直しを先延ばしにしていると中長期的に取り返しのつかないほど業績が落ち込む可能性があります。
評価基準が曖昧だったり、業務を適切に評価できていないなど納得できない部分がある評価制度の場合は、早急に評価制度の見直しに着手しましょう。
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適切に従業員に対する処遇の改善を行うため
人事評価制度の見直しの目的とメリット3つ目は、「適切に従業員に対する処遇の改善を行うため」です。
人事評価制度は、従業員の昇進、昇格、そして給与査定などを決定するための重要な基盤です。評価が適切に行われなければ、従業員が不公平感を感じ、組織全体の士気やモチベーションに悪影響を及ぼす可能性があります。
もし、従業員から評価に対する不満の声が多く聞かれるようであれば、その制度を見直すべき時期と言えます。
例えば、評価基準が曖昧であったり、「能力・業績・情意」のいずれかに評価が偏っている場合、バランスの取れた評価ができていない可能性があります。このような場合は、評価基準を見直し、より公平で透明性のある評価制度を導入することが必要です。
人事評価制度を適切に改善し、従業員一人ひとりの能力や貢献に見合った処遇を実現できれば、不満の解消だけでなく、社員のモチベーション向上や定着率の改善にもつながります。
適材適所の人員配置を実現するため
人事評価制度の見直しの目的とメリットの4つ目は、「適材適所の人員配置を実現するため」です。
評価制度を見直すことで、従業員のスキルや適性をより正確に把握することができ、これが適切な人員配置につながります。
例えば、配置転換や昇格などの異動を行う際に、評価が適正であれば、社員一人ひとりに最も適した役割やポジションを割り当てることが可能になります。
適材適所で配置された従業員は、自身の経験やスキルを十分に活かし、業務において本来の力を発揮することができるため、パフォーマンスが向上し、やりがいを持って働くことができます。結果的に、企業全体の生産性が向上し、従業員のエンゲージメントや満足度も高まるでしょう。
効果的な人材育成を促進するため
人事評価制度の見直しの目的とメリットの5つ目は、「効果的な人材育成を促進するため」です。
従業員から現行の評価基準に対する大きな不満がない場合でも、見直しを検討すべき状況があります。
例えば、企業が求めるスキルレベルに達していない、または期待以上の人材が育っていない場合には、評価制度の調整が必要です。
まず、自社が「どのような人材を求めているのか」を明確に再確認することが重要です。そのうえで、従業員に期待するスキルや能力を達成するための育成方針を見直します。評価基準が適切に定義されていれば、従業員は自身が何を改善すべきかを理解しやすくなり、目標達成に向けて努力しやすくなります。
これにより、従業員の成長を促し、企業が求めるレベルの人材を育成するための効果的なサポートが可能になります。
人事評価制度の見直し手順とポイント
ここまで、人事評価制度を見直すことの目的やメリットについてご紹介してきましたが、実際に評価制度を見直す際にはどのような手順で行えばよいのでしょうか。
ここでは、人事評価制度の見直すための手順とそのポイントについて7つのステップを解説します。
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STEP1:組織の理念・ビジョン・価値観が明確を明確にする
人事評価制度を見直すうえでの1つ目の手順とポイントは、「組織の理念・ビジョン・価値観が明確を明確にする」ことです。
どの企業でも、人事評価制度は組織の経営理念やビジョン、価値観に基づいて設計されるべきです。評価基準がこれらと一致していないと、従業員が評価の意図を理解しにくくなり、組織の目標とのズレが生じる可能性があります。まずは、自社が掲げる理念やビジョン、価値観がしっかりと明確になっているかを確認しましょう。
また、時代や社会情勢、市場の変化などに応じて経営目標や戦略も進化していきます。そのため、これらの変化に柔軟に対応できる評価制度を設計することが大切です。人事評価制度が組織の進化と共に更新されることで、企業全体の方向性や指針に沿った人材育成やパフォーマンス向上が実現しやすくなります。
STEP2:経営戦略を明確にする
人事評価制度を見直すうえでの2つ目の手順とポイントは、「経営戦略を明確にする」ことです。
人事評価制度は、組織の経営戦略に基づいて設計される必要があります。評価基準が経営戦略・経営戦略を実現するための人材を育成することに一致していなければ、組織全体の目標達成に向けた効果的な人材育成やパフォーマンスの評価が困難になります。
そのため、まずは自社の経営戦略を具体的に明確化し、それに沿った評価基準を構築することが重要です。
経営戦略の明確化は、どのようなスキルや成果が組織の成長に貢献するのかを理解するためにも不可欠です。これにより、評価制度が社員の行動や成果を正しく評価し、組織全体の成長につながるように設計されることが可能になります。
また、経営戦略の変化に合わせて、評価制度を定期的に見直し、常に最新のニーズに対応できる体制を整えることも重要です。
STEP3:経営戦略実現のための理想の組織図を作成し、現状とのギャップを明確にする
人事評価制度を見直すうえでの3つ目の手順とポイントは、「経営戦略実現のための理想の組織図を作成し、現状とのギャップを明確にする」ことです。
理想の組織図を作成することで、経営戦略に沿った人員配置や役割分担を視覚化できます。これにより、企業が目指すべき姿や、各部門が果たすべき役割が明確になります。
理想の組織図をもとに、現在の組織の状態と比較することで、どのような人材やスキルが不足しているのか、あるいはどのポジションが過剰であるのかを把握できます。
このようなギャップを把握しておくことで、具体的な改善点や人材育成の方針を見出すことができます。例えば、特定のスキルセットを持つ人材が不足している場合、社内の育成プログラムを強化したり、外部からの採用を検討したりすることが考えられます。また、役割が重複しているポジションを整理することで、業務の効率化を図ることも可能です。
このように、理想の組織図を作成し、指標を示すことで現状とのギャップが明確になり、効果的な人事評価制度の見直しにつなげることができます。
STEP4:経営戦略実現のためのあるべき人物像を明確にする
人事評価制度を見直すうえでの4つ目の手順とポイントは、「経営戦略実現のためのあるべき人物像を明確にする」ことです。
理想的な人物像を定義することで、企業が求めるスキルや特性、価値観を具体的に示すことができます。これは、経営戦略を実現するために必要な人材を特定するための重要なステップです。
この人物像を基に、評価基準を設定することで、従業員がどのような行動や成果を求められているのかを明確に伝えることができます。さらに、理想的な人物像を示すことで、従業員が自己成長に向けた目標を立てやすくなり、組織全体の目標に対する理解も深まります。
また、理想的な人物像を評価基準に組み込むことで、採用活動や人材育成の方針も統一され、組織の一体感が生まれやすくなります。このように、経営戦略に基づいたあるべき人物像の明確化は、人事評価制度の効果を高めるための重要な手順となります。
STEP5:等級制度を設計する
人事評価制度を見直すうえでの5つ目の手順とポイントは、「等級制度を設計する」ことです。
等級制度は、従業員の役割や貢献度に応じて、職位や給与の水準を体系的に定めるための重要な枠組みです。これにより、従業員は自分のキャリアパスを明確に理解し、自身の成長目標を設定しやすくなります。
等級制度の種類とその特徴については、下記のとおりです。
制度の種類 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
職能資格制度 | 従業員を能力によって評価し、等級付けする制度 | ・業種や職種に関係なく幅広く導入しやすい ・勤続年数が長くなるほど等級が上がる仕組みのため、従業員の帰属意識を高めやすい |
職務等級制度 | 従業員を職務(業務)によって評価し、等級付けする制度 | ・明確な評価基準を設定しやすく公正な人事評価を維持しやすい |
役割等級制度 | 従業員に与えられた役割と能力によって評価し、等級付けする制度 | ・従業員の評価を多方面から実施できる ・給与のコントロールがしやすい ・従業員の貢献度に応じた評価が可能 |
▼等級制度の詳しい説明や作り方を知りたい方は下記記事をご覧ください。
等級制度の設計は、人事評価制度の基盤となる重要な要素です。しっかりとした等級制度を確立することで、組織全体のパフォーマンス向上に寄与し、従業員の成長とやりがいを促進することができます。
STEP6:評価制度を設計する
人事評価制度を見直すうえでの6つ目の手順とポイントは、「評価制度を設計する」ことです。
人事評価制度の設計において、評価基準は主に「成果評価」「能力評価」「情意評価」の三つの要素から構成されています。
これらの評価基準を見直すことで、より公平で透明性の高い評価制度を構築することが可能になります。また、従業員が自身の成長やキャリアに対するフィードバックを受けやすくなるため、モチベーションの向上にもつながります。
評価制度を設計する際は、これらの要素を総合的に考慮し、組織の目標と連動した効果的な評価基準を設定することが重要です。
それぞれの要素についての見直しのポイントを以下にご説明します。
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成果評価の見直しポイント
まずは、成果評価の見直しポイントについてです。
成果評価の評価基準には、売上などの定量的な要素を重視する「業績評価項目」と、課題達成などの定性的な側面を重視する「業績プロセス項目」の二つがあります。
これらの評価基準が、職種や部門ごとに適切に適用されていない場合、正確な成果評価が行えないリスクが生じます。
例えば、営業部門では、売上や取引数などの数値に基づく定量評価の比重を高めることが重要です。一方で、事務部門やサポート部門では、プロジェクトの進捗やチーム内の協力など、定性的な要素を重視した定性評価を強化する必要があります。このように、各部門の特性に応じた評価基準の設定が求められます。
また、定量評価の基準を設ける際には、具体的かつ明確な定義が重要です。評価基準を「何を」「いつまでに」「どのように達成するのか」といったポイントで具体化し、曖昧さを排除することが求められます。例えば、達成度が100%で「B」、それを上回る成果を出した場合は「A」、100%未満の場合は「C」といった形で、評価の明確な基準を設けることが効果的です。
このように、成果評価の基準を明確にし、適切に適用することで、公平で透明性のある評価制度を実現し、従業員のモチベーション向上につなげることができます。
能力評価の見直しポイント
次に、能力評価の見直しポイントについてです。
能力評価の基準には、業務に直結するスキルや知識だけでなく、改善力、業務遂行能力、企画力など、どの職務にも共通する職業能力が含まれます。これらの能力評価基準が、従業員の年数や階層に適合していない場合、社員が本来持っているパフォーマンスを十分に発揮できないリスクがあります。
したがって、自社の人材育成方針に基づき、各階層や年数に適した能力要件を設定することが重要です。具体的には、以下のポイントを考慮して能力評価基準を定めましょう。
- 能力要件の明確化:各職位や階層ごとに求められる具体的な能力要件を明確に定義します。
- 従業員は自身が何を求められているかを理解しやすくなります。
- 能力要件の明確化:各職位や階層ごとに求められる具体的な能力要件を明確に定義します。
- 従業員は自身が何を求められているかを理解しやすくなります。
- 能力評価基準の整備:年数や階層に応じた能力評価基準を設け、従業員の成長段階に合わせた評価ができるようにします。
- 例えば、新入社員には基礎的なスキルを重視し、管理職にはリーダーシップや戦略的思考を評価するなどの工夫が求められます。
これらの取り組みによって、従業員が持つ能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができるでしょう。
情意評価の見直しポイント
最後に、情意評価の見直しポイントについてです。
情意評価の基準には、業務プロセスに対する姿勢や行動特性、仕事への取り組み方などが含まれます。特に、若年層の従業員は経験年数が浅いため、成果評価よりも情意評価の比重を高めることが基本的なアプローチとなります。情意評価を重視することで、彼らが職場環境やチームにうまく適応し、成長するための土台を築くことができます。
一方で、新規事業の立ち上げや革新的なプロジェクトの推進が求められる場合は、情意評価に加えて業務プロセスの評価も重要です。このような戦略を実施するためには、以下のポイントを考慮することが有効です。
- 情意評価の強化:チームワークやコミュニケーション能力など、他者との協力を重視した評価を行うことで、若手社員がより自信を持って業務に取り組めるようにサポートします。
- 中長期目標の設定:従業員に対して明確な中長期目標を設定し、その達成に向けたプロセスを評価することで、従業員が自らの成長と組織のビジョンを一致させやすくなります。
- リスク管理の意識:特に新規事業に関与する従業員に対しては、リスクを取ることの重要性を理解させるための評価を行い、挑戦を促す環境を整えることが大切です。
このように、情意評価と業務プロセス評価のバランスを考慮しながら、組織のニーズに合った評価基準を設けることで、従業員の成長を促し、成果を最大化することが可能になります。
STEP7:報酬制度を設計する
人事評価制度を見直すうえでの7つ目の手順とポイントは、「報酬制度を設計する」ことです。
報酬制度とは、社員の貢献に対して報いるための仕組みであり、従業員のモチベーションや業績に直接影響を与えるため、適切に設計することが不可欠です。
まず、報酬の種類を明確にし、基本給、ボーナス、福利厚生など各要素を整理することで、従業員が成果に応じてどのような報酬を得られるのかを理解しやすくなります。
また、組織の業績や個々の成果に連動した報酬体系を導入することで、従業員の目標達成意欲を高めることができます。例えば、営業部門では売上に応じたインセンティブを設けるなど、部門の特性に応じた柔軟な対応が必要です。
さらに、報酬制度の透明性を高め、評価基準や算出方法を明確にすることで、不満を軽減し、公平感を醸成することが可能です。加えて、報酬制度は市場や組織のニーズに応じて定期的に見直す必要があり、業界標準に適した報酬設定を行うことで、優秀な人材の獲得や定着に効果を発揮します。
これらの点を踏まえた報酬制度の設計によって、従業員のモチベーション向上と組織全体のパフォーマンス向上を実現できます。
人事評価の見直し後に実施するべきこと
ここまで、人事評価制度の見直し手順とポイントについてご説明してきましたが、人事評価制度の見直しを行った後にも実施すべきことがいくつかあります。
以下に人事評価の見直し後に実施するべきことについて、具体的にご紹介します。
評価説明会の開催
人事評価の見直し後に実施するべきことの1つ目は、「評価説明会の開催」です。
評価説明会は、見直した評価基準や新しい評価方法について従業員に説明する場です。この会を通じて、従業員が評価プロセスに対する理解を深めることで、評価制度への信頼感を高めることができます。また、従業員からの質問や意見を受け付けることで、制度に対するフィードバックを得る良い機会にもなります。
なぜ今評価制度を変えなければいけないのかの理由・背景やこの評価制度の改訂で何を解決したいのかなどの必要性をきちんと現場に説明して、納得してもらえると、その後の評価制度への納得感や浸透が促進されるので、必ず評価運用開始前に実施するようにしましょう。
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評価者研修の実施
人事評価の見直し後に実施するべきことの2つ目は、「評価者研修の実施」です。
社内での評価基準を一定に保つためには、評価者教育や評価者研修が非常に効果的です。評価者の中には、評価基準や方法に対する理解が不十分な場合があり、その結果、評価にばらつきが生じる可能性があります。公平な人事評価を実現するためには、評価者が評価基準や評価方法について正確に理解し、共通の認識を持つことが重要です。
そのため、社内の有識者や外部の専門家を活用して評価者研修を実施することをおすすめします。この研修では、人事評価の目的や注意すべきポイント、正しい評価の考え方について学ぶことができます。評価者のスキルを総合的に向上させることで、より公正で納得度の高い評価を実施できるようになります。
このように、評価説明会と評価者研修を組み合わせて実施することで、評価制度の理解と信頼を高め、組織全体の評価精度を向上させることができます。
重要なのは制度3割・運用7割!
ここまでご説明してきたような内容を踏まえ、人事評価制度を見直すことで、正しい制度を設計し、構築することが重要です。しかし、それだけでは十分ではありません。
人事制度における成功は「制度が3割、運用が7割」と考えられており、評価制度作成後の運用の方が非常に重要ということです。
人事制度は人間を対象とするものであり、単に制度を正しく設計したからといって、自動的に適切な運用がなされるわけではありません。コンピュータのプログラムであれば、正しくコーディングすれば常に正しい結果が得られますが、人事評価はそれとは異なります。したがって、まずは確かな制度を設計・構築することが不可欠です。
正しい制度を土台にした運用があれば、従業員のモチベーションを高め、業務の効率化を図ることができるでしょう。したがって、人事評価制度の見直しにおいては、制度の設計と運用の両方に注力し、それぞれのバランスを大切にすることが求められます。
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見直し時に検討したい人事評価制度のトレンド
最後に、人事評価制度を見直す際に検討すべきトレンドをご紹介します。
見直し時に導入を検討したい人事評価制度のトレンドは、下記の4つです。
- MBO
- OKR
- 360度評価
- コンピテンシー評価
それぞれの評価制度の内容についてご説明していきます。
MBO
MBOとは、「Management(管理)by Objectives(目的)」の頭文字をとったものであり、従業員自身が組織目標とリンクした個人目標を設定し、その進捗状況や達成状況に応じて評価する制度のことを指します。
MBOのメリットとしては、自己管理によるマネジメントが可能になることや、従業員のモチベーションが向上することが挙げられます。従業員は自分で自分の仕事を管理するため、決定した目標を達成するために強い責任感のもと、自主的かつ自律的に行動することが期待されます。
また評価に対する納得度が高いという点もMBOの特徴です。従業員の目標達成は、同時に企業側の目標達成にも通ずるため、両者がともに成長していける評価制度と言えます。
OKR
OKRとは、「Objectives(目標)and Key Results(主要な結果)」の頭文字をとったものであり、大きな目標とその達成を測るための具体的な指標を設定し、評価する手法です。企業が実現すべき目標と社員個人の目標をリンクさせ、すべての社員が一丸となって同じ方向を向き重要課題に取り組むことを目的としています。
特徴は、個人と企業の目標をリンクさせて、目標設定・進捗確認・評価という一連の流れを高い頻度で行う点にあります。OKRは、社員および企業全体がモチベーションをアップさせるために、「容易には達成できない高い目標」を掲げ、達成率が60〜70%程度となるのが理想とされています。
組織と従業員の目標に関連性を持たせ、進捗確認や成果に対する評価を頻繁に実施することで、一体感をもって計画的に業務を推進できるというメリットがあります。
360度評価
360度評価とは、関係する複数の従業員が評価者となり、評価対象者を多面的に評価する制度のことを指します。上司や人事担当者など上の立場の人からだけでなく、部下や同僚なども評価者に含まれます。
公正な評価のためには、多面的な視点を取り入れ、偏りを防止することが重要です。1人の評価者による評価の場合、評価者の主観やバイアスが評価に影響を与えることで、公平性が保たれなく恐れがあります。
それに対して、360度評価では、多くの人が評価に関わるため、客観性が担保されて公正な評価になりやすい仕組みであると言えます。評価対象者にとっても納得しやすい評価となるのでモチベーションの維持向上にもつながるでしょう。
ただし、「従業員数が少ないと誰が評価者かわかってしまう」「全評価者の情報を集約しなければならない」「評価者間で馴れ合いが生じる場合もある」などのリスクが考えられるため、注意が必要です。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、仕事において優れたパフォーマンスを発揮する従業員の行動特性(コンピテンシー)を基準とした人事評価です。コンピテンシーをもとに、評価項目を設定して評価を行います。成果を出している人材の行動特性をもとに評価を行なうことで、同じように優秀な人材を育成することを目的としています。
下記は、コンピテンシー評価の基本的な評価要素の一覧です。
- タイムマネジメント
- リスクテイクの判断
- 対人交渉能力
- 説明責任を果たす能力
- ストレス管理
上記の評価要素を踏まえ、優秀な人の態度や行動、価値観などの共通点を抽出し、それをもとに判断するという流れのため、評価の公平性を担保しやすいメリットがあります。
また、コンピテンシー評価の導入は、社員のパフォーマンス向上や適切なキャリアパスなどに効果的です。納得感のある人事評価制度の設計にもつながるため、社員がやる気をなくすのを防ぎ、効率的な人材育成を実現させることにも役立ちます。
まとめ
本記事では、人事評価制度の見直しポイントについて、具体的な見直し方法や手順を解説してきました。
人事評価制度を見直すことには様々な目的やメリットがありますが、正しい手順や見直し後に実施すべきことを把握しておくことで、より効果的に評価制度を構築することができます。
この記事でご紹介した人事評価制度のトレンドや事例を踏まえ、ぜひ自社の人事評価制度の見直しに努めてみてください。
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