ヒューマンスキルとは?身につけるための目標設定と具体例を解説!

働き方や価値観が多様化するにつれ、職場のコミュニケーションはますます複雑になっています。特に近年では、オンラインでのコミュニケーションの機会が増えたことにより、職場でどのように良好な人間関係を保つかも重要な項目になってきました。

一方で、スピードアップし続けるビジネス社会では、いかに質の高い情報を迅速に共有できるか、意思決定をしていけるかが、企業の生き残りを分けます。そこでテーマとなるのが「ヒューマンスキル」です。

ハーバード大学のロバート・カッツ教授は、自身の論文において、管理職に求められるスキルを「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3種類に分けて提唱しました。これが「カッツモデル」と呼ばれる3つのスキルです。

これらはマネジメントの階層において、異なる重要度の比重を持っています。しかしいずれの階層でも「ヒューマンスキル」の比重は変わらず、さらに階層が高くなるにつれてテクニカルスキルよりもコンセプチュアルスキルの比重が高まっていくとされています。そのため、どの段階でも必要と唱えられている「ヒューマンスキル」は、ビジネスにおいて最も効果的な能力とされています。

また、異なる時間に異なる場所で、様々なバックグラウンドを持った相手とオンラインでやりとりをすることが増えた今、人材育成や研修において、お互いに信頼を深めながらスムーズに業務を推進していくには、これまで以上にヒューマンスキルが欠かせません。

では、企業として、個々の従業員のヒューマンスキルを高めるためには、どのようなことができるのでしょうか。

この記事では、具体的なヒューマンスキルをまとめた一覧や、企業がヒューマンスキルを開発していく上でのメリット、留意すべきポイントや方法等をご紹介・解説します。ぜひ、コミュニケーションの課題解決や業務の効率化の参考してください。

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ヒューマンスキルとは

ヒューマンスキルとは、1950年代にアメリカの経営学者ロバート・カッツ氏が提唱した、管理者に必要とされる3つの能力を表す言葉「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」「コンセプチュアルスキル」の『カッツモデル』という理論のうちの1つです。

この中でも「ヒューマンスキル」は、主にコミュニケーションを用いて協力的で良好な人間関係を構築・維持することに重点を置いたスキルです。

カッツモデルの三項目について

カッツモデルのスキルを得ることで、会社での人材育成やマネジメントにも活用することができます。ここでは、カッツモデルの3つの言葉が表すスキルの内容と高め方について、簡単に説明していきます。

1.ヒューマンスキル

1つ目は、ヒューマンスキルです。ヒューマンスキルは、日本語で「対人関係能力」と呼ばれ、管理職のどの職階においても同じくらい重要なスキルとして位置づけられています。なぜなら、管理者はどの層であっても、メンバーや経営層、他部署の管理者など、人と人、組織と組織の間に立って、現場の調整や人材育成などを行うことが求められるからです。

そんなヒューマンスキルは、大きく分けて以下2つのコミュニケーションスキルから成り立ちます。

まず1つは、認識するスキルです。認識するスキルは、他者の言動の意図を正しく汲み取り、状況を正確に把握するスキルです。具体的には、「見る力」や「聞く力」などが挙げられます。自分自身の物の見方・振る舞い方を自覚し、自分とは異なる考え方があることを受け入れた上で、フラットな状態で物事を見聞きします。

もう1つは、行動するスキルです。行動するスキルは、自分の言動が相手にどういう影響を与えるかを考えた上で、相手に適切に働きかけるスキルです。具体的には「話す力」などが挙げられ、表情や身振り手振りなどの非言語も含め、自分の意図が相手に正確に伝わるよう、相手の状況に合わせた方法でコミュニケーションを図ります。

また、オフィスでの事務業務や管理、コンピューター関連の仕事、営業やマーケティング職の需要が増え、ビジネス環境が変化した現代では、ヒューマンスキルは管理者に限らず、メンバー層であっても普遍的に必要なスキルとも言われています。

2.テクニカルスキル

2つ目は、テクニカルスキルです。テクニカルスキルとは、業務を正確かつスムーズに行うためのビジネススキルのことです。特定の業務や業種において活かせるスキルを指します。医療や介護、簿記、IT系、設計、建設、調理など、専門性の高いスキルも少なくありません。現場で特定の担当業務を遂行するために一番基本となる技術スキルのことです。

テクニカルスキルには、基本的なビジネスマナーやパソコンスキル、法務知識、業界知識、決算書の数字の見方、営業力やマーケティングのスキルなどが含まれます。基本的には、学習をする、本を読むことで身に付けられる能力がほとんどです。また、3つの「カッツスキル」の中では、最も「具体的」で「身近」な能力とされています。

テクニカルスキルは、さらに細かく「汎用スキル」、「専門スキル」、「特化スキル」の3つに分かれます。例えば、ビジネスマナーやパソコン操作の能力など、職種を問わず求められるスキルが「汎用スキル」です。一方、営業力やマーケティングスキルなど、職種によって必要なものはレベルに応じて「専門スキル」「特化スキル」に分類されます。

テクニカルスキルが必要であることは当然ですが、情報技術の発展やグローバル化によって、ビジネス環境は急速に変化しています。さらに、AIやロボットといった人が行う仕事を代替する技術も発達してきました。そのため、人が業務を進める際に必要とされるテクニカルスキルは、以前より必要性が薄まっているという考えもあります。

そこで、近年では人材育成によって従業員に働きかけることができ、さまざまな環境において通用するとされるヒューマンスキルがより重要視されています。ヒューマンスキルとテクニカルスキルの双方の向上が、組織の生産性アップにもよい影響をもたらします。

3.コンセプチュアルスキル

3つ目は、コンセプチュアルスキルです。コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を捉え、全体最適で考える能力のことで、日本語では「概念化力」と呼ばれます。具体的には、「問題発見・解決力」や「ロジカルシンキング」「企画力」などが該当します。

働き方や価値観が多様化し、オンラインでのコミュニケーションの機会も増えてきた中、効率よく業務を進めつつも職場での人間関係を良好に保つことがとても重要です。そんな中、ヒューマンスキルに挙げられるコミュニケーションのポイントも重要ですが、物事を全体像で捉えるコンセプチュアルスキルも、効果的な能力の一つです。

コンセプチュアルスキルは、自分自身が持っているスキルや知識から教訓を作成するのに必要な能力であるため、複雑な状況を見極めたうえでの判断や問題解決が求められるマネージャーなど、特に上級管理職に必要な項目といえるでしょう。

このように、コンセプチュアルスキルを開発することによって様々な情報を集めて整理する能力や、大切な問題点を見つけ出し、それに対する答えを考える力が育ちます。物事をより広く、より遠い視点で物事を捉えることができるため、管理職の中で最も職階の高いトップマネジメント層において、コンセプチュアルスキルの重要性が最も高くなるとされています。

ヒューマンスキル例

前述したように、経営者や役員である「トップマネジメント層」では、ヒューマンスキルが基本的な要件となります。一般的なヒューマンスキルに加えて、下位のマネジメント層や一般社員も含めた全体を統括する能力が求められます。同様に、ミドルマネジメント層も、下位のロワーマネジメント層などをリードし、組織全体の成果を引き出すためのヒューマンスキルが不可欠です。

ロワーマネジメント層である監督層も例外ではありません。現場での指導者として、チームメンバーの意欲向上やモチベーション管理など、様々な場面でヒューマンスキルが役立ちます。

近年では、情報技術の進化やグローバル化の影響により、ビジネス環境が急速に変化しています。また、AIやロボット技術の発展により、従来のテクニカルスキルの重要性が相対的に低下しているとの見方もあります。そのため、今後は現場での業務推進において、コミュニケーションやリーダーシップといったヒューマンスキルがますます重視されていく方向性となるのは明確です。

このように、企業の発展には、多様性を尊重し、従業員個々の特性や意見を認めるコミュニケーション能力が不可欠です。このような背景から、ヒューマンスキルの向上が注目されています。

この章では、数多くあるヒューマンスキルの中でも、代表的な7つの要素について紹介します。

ネゴシエーション

ネゴシエーションとは、交渉や取引、議論を円滑に進める能力のことを指します。ネゴシエーション能力を身につけると、交渉や合意形成における意見の調節の際に自分と相手の立場で物事を考え、両者にメリットのある方法を見つけ、互いに納得した形で合意を得られるようになります。

特に営業などのシーンで担当者に必要とされる能力を想像してもらうと、ネゴシエーション能力が想像しやすいかもしれません。ビジネスの現場では、営業以外のシーンでも様々な状況でネゴシエーションスキルが求められます。

例えば、価格交渉や契約条件の調整、プロジェクトのリソース配分の決定、パートナーシップの構築など、そのビジネスシーンにおいては様々な内容の需要が考えられます。これらの交渉過程では、双方の利益や立場を理解し、相手との信頼関係を築きながら、両者の合意を導き出すことが目標です。

これらのシーンにおいて重要な役割を果たすネゴシエーションスキルを高めるためには、双方の情報を適切に提供するためのコミュニケーション能力や、交渉の舵を取るリーダーシップ能力が重要です。もし、こちらの提示したものに対して相手方から納得してもらえないケースでは、自社の利益を損なわないように交渉を進める必要があります。また、相手を説得するだけではなく、双方が納得できるよう交渉を行い、信頼関係を築くことも大切です。

このように、交渉シーンにおける冷静さや柔軟性も求められます。ネゴシエーションスキルは、ビジネスにおける難しい交渉シーンを乗り越えるための重要なヒューマンスキルの一つです。

リーダーシップ

リーダーシップという言葉から、「先頭に立って部下を率いる」「指揮を執る」といった姿勢を思い浮かべてしまうでしょう。しかし近年では「定めた目標に向かって取り組み、成果を挙げていくためのスキル」と考えられています。つまり、単なる指揮命令や方針提示にとどまらず、チーム全体の方向性を示し、メンバーと協力して目標達成を目指す主導者を指します。

マネジメントで知られているオーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーは、リーダーシップの本質を以下のように3つの定義で示しています。

  • ①付き従う者がいる
    • そのリーダーを信頼しており、自らの意思に基づいて従う者がいる
  • ②リーダーシップを仕事として捉えている
    • 組織の使命をメンバーに明示して、目標に対して優先順位を決めて体制を維持していく
  • ③リーダーシップを責任として見る
    • 地位や特権ではなく、すべての責任は自分にあるという潔さを持つ

リーダーシップとマネジメントは、どちらも組織の成果を上げさせるという意味で目指す方向は同じですが、異なる能力を指しています。 リーダーシップは組織の目標達成のためにメンバーを導いていく能力であるのに対し、マネジメントは成果を上げさせるための手法を考え、組織を管理する能力のことです。マネージャーや部長職といったチームを管理する役割になると、リーダーシップ能力とマネジメント能力のどちらも求められます。

また、良好なリーダーシップは、組織内のコミュニケーションを活性化させたりモチベーションを向上させ、成果に直結することがあります。リーダーがチームで目指すビジョンを共有し、メンバーの能力を最大限に引き出すマネジメントを行うことで、組織全体の成功にも貢献します。

このように、ビジネスにおいてはリーダーシップの力がチームとメンバーの進むべき方向性を示し、先頭に立ちながらもメンバーの成長と発展を促進する重要なスキルとして位置付けられます。

フォロワーシップ

フォロワーシップとは「後に続く」という意味の「follow」からなる言葉で、チームメンバーがリーダーをサポートし、チームワークを向上させる組織づくりの考え方です。具体的には、リーダーへの自律的支援や組織への貢献を指します。

フォロワーシップの重要性を理解するには、リーダーとフォロワーの相互作用が重要です。従来理想とされていた組織やチームの状態は、リーダーが影響力や求心力を持ち、ピラミッド型の組織構造でメンバーを指導するイメージが一般的でした。しかし、フォロワーシップでは、メンバーもまたリーダーシップの役割を意識し、共通の認識を持ちつつも自らの主体性を発揮することが求められます。

例えば、カーネギーメロン大学の組織行動学の専門家であるロバート・ケリー教授の調査に基づくと、組織の成果においてはリーダーの影響力が1~2割であるのに対し、フォロワーの影響力は8~9割であるとされています。この結果は、組織の目標達成にはリーダーだけでなくフォロワーの力も大きく影響していることを示しています。

ビジネス環境では、リーダーシップが示すビジョンを共有し、チーム全体が協力して一緒に成果を出すためには、質の高いフォロワーシップが不可欠です。フォロワーシップを強化するためには、コミュニケーション能力や協調性、そしてリーダーシップとの相互作用が重要です。

これにより、ネゴシエーションスキルやリーダーシップと同様に、フォロワーシップがビジネスの成功において重要な役割を果たし、組織の成長と発展を促進する一翼を担います。

コーチング

コーチングは、指導によって個人やチームのパフォーマンス向上を促進するためのプロセスです。ビジネスにおいては、特定のスキルや能力の向上、課題の解決、目標達成の支援など、さまざまな目的で活用されます。

コーチングの本質は、クライアント(受講者やチームメンバー)が自らの可能性を最大限に引き出し、自己成長を達成することを支援することにあります。コーチは、そういったクライアントの目標設定や行動計画をサポートし、彼らが自発的にの課題を克服し、成果を出すための道筋を示します。

コーチングでは、コーチがクライアントと関わる際、守るべき原則があります。コーチングの三原則といわれる「インタラクティブ(双方向)」「テーラーメイド(個別対応)」「オンゴーイング(継続性)」です。この三つを守ることで、よいコーチングが行えるとされています。

ビジネスにおいてのコーチングは、リーダーシップの発展や組織の変革を促進するために行われています。例えば、新任の管理職やプロジェクトリーダーに対しては、リーダーシップスタイルの向上やチームビルディングの研修を行う場面があります。また、個々の従業員のキャリア開発やパフォーマンス向上を目指す際にも、コーチングは有効な手法として採用されています。

このように、コーチングの三原則をおさえた指導は、個人やチームの成長とパフォーマンス向上を促進するための力強いツールであり、現代のビジネス環境においては重要なヒューマンスキルの一つとして位置づけられています。

コーチングの三原則のそれぞれの意味は、以下の通りです。

インタラクティブ(双方向)

コーチをクライアントが対等な立場でコミュニケーションをとることを指します。

どちらかが一方的に話したり、聞いていない場合は、双方向ではありません。自らの先入観に基づいて相手の発言をジャッジしたり、アドバイスをしたりするのも、一方通行のコミュニケーションとなります。そのため、双方がお互いが対等な立場で、気づきを得ながらコミュニケーションを行うことが原則となります。

テーラーメイド(個別対応)

コーチがクライアント一人ひとりに合わせた対応を行うことを指します。

コーチングを行う際、同じ目標に対してでも、達成にたどり着くための方法は、一人ひとりのクライアントで異なります。Aさんでは成果が上がったやり方が、Bさんには全く効かないというケースはよく起こります。なぜなら、人は一人ひとり違い、目標達成の方法も、クライアント個人の行動パターンや思考パターン、経験値などによって大きく左右されるからです。

そのため、一人ひとりのクライアントを丁寧に観察し、その人だけにカスタマイズされたコーチングを行う「個別対応」が求めらます。個別対応を行うには一人一人のソーシャルスタイルを用いるのもお勧めです。


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オンゴーイング(継続性)

コーチがクライアントと継続的に関わり続けることを指します。

たった一度きりのコーチングで、クライアントの目標を達成まで導くのはとても難しいです。なぜなら、最初のコーチングを受けて気づいたことを行動に落とし込み、その後も自発的に継続できる人はなかなかいないからです。そのため、クライアントに、目標達成に必要となる新しい考え方や行動が定着するよう、継続的に支援しつづけていく必要があります。

マネジメント力

「マネジメント」とは、企業が、組織の成果を上げるために経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に活用し、リスク管理のもとに、「目標」や「ミッション」の達成を目指すことを意味します。マネジメント力は、組織やチームを効果的に運営し、目標達成に導く重要な能力であり、ビジネスシーンにおいては、特に管理職やチームリーダーにとって不可欠なスキルとされています。

マネジメントにおいては、目標設定、目標達成までの進捗管理、業務を推進する力が求められます。
目標設定の際には、具体的で達成可能な目標を見極めるために、組織やチームの戦略とチームメンバーの能力に基づいた的確な計画立案が求められます。

次に、進捗管理の段階では、チームのメンバーを指導し、育成することもマネジメントの役割です。メンバーの強みを引き出し、個々の能力を最大限に活用するための環境を作るためには、メンバーの能力を見極め、適切な目標設定を行うことから始まり、一人ひとりに合わせた進捗やタスクの管理が必要になります。そのため、リソースの配分やタスクの割り当て、スケジュール管理などの能力は、マネジメント力を作る要素の一つとなります。

また、目標達成をサポートする間には、メンバー側からの適切な「報告・連絡・相談」も欠かせません。普段からなるべくコミュニケーションを心がけ、部下にはきちんと向き合って対応するなど、いつでも話しかけてもいい雰囲気を作っておくことが大事です。

これらの能力を日ごろのコミュニケーションやミーティングで発揮することで、マネジメント力を高め、組織やチームのパフォーマンス向上に貢献することが可能となります。

ヒアリング力

「ヒアリング力」は、コミュニケーション能力を構成する要素の一つです。なぜなら、ヒアリング力を高めることによって相手の視点や立場を理解しやすくなり、信頼や協力関係を築きやすくなるからです。

特にビジネスの場では、顧客やチームメンバーとの良好な関係を築くために、相手のニーズや要望を正確に把握することが成功の鍵となります。

例えば、相手の話を聞くシーンにおいては、単に言葉を受け取るだけでなく、話の核心や重要なポイントを把握して、共感しながら理解する姿勢が必要です。その際には、ただ単にリアクションを取るだけではなく、同時に全体像を掴んでいくことも忘れてはいけません。ヒアリング力は、経験豊富な社員だけでなく、新入社員にとっても重要であり、ビジネスにおいては誰もが相手の意図を正確に理解する姿勢を持つ必要があります。

ヒアリング力を高めるには、相手の発言をただ聞くだけではなく、相手の立場や意図を尊重し、その意見を理解することが肝要です。ビジネス環境では、自身の視点だけでなく、他のメンバーの能力を引き出すことが成果を上げるために欠かせません。

このように、ヒアリング力が高まることで、誤解や意思疎通の問題が減少し、効果的な意思決定や問題解決を円滑に進めることが期待されます。また、ヒアリング力があることで個人としても信頼性が高まります。相手から尊重され、信頼される人間関係を築くことができるため、ビジネスだけでなく日常生活においてもメリットがあります。

コミュニケーション能力

ヒューマンスキルの根幹をなすコミュニケーション能力は、個人や組織が情報を効果的に伝達し、意思疎通を図るための重要なスキルです。この能力は、どんな人とも良い人間関係をストレスなく構築・維持する際に発揮され、ビジネスにおいては成果を上げるために不可欠です。業務を円滑に遂行して目標を達成するためにも、周囲のメンバーたちと良好な人間関係を築くことはとても重要といえます。

例えば、日ごろから行えるアクションとしては、挨拶や何気ない会話で現場を和やかにする等が挙げられます。その際には、常に相手に対して正直に接し、相手の価値観を尊重することを心がけましょう。ただし、コミュニケーションとは押し付けではないという点に注意です。相手を尊重せずに過度に話しかけたり、何かを強制してしまっては、かえって関係を壊してしまう可能性もあるでしょう。

また、否定的な発言や懐疑的な姿勢を見せてしまうと、「気軽に話しかけたい」という気持ちを損ない、結果として相手との信頼関係を失う可能性があります。常にポジティブにリアクションを取ったり、相手を応援する気持ちでコミュニケーションを取りましょう。

このように、コミュニケーション能力とは、一人ひとりの性格や立場を把握した上で適切な対応を行える状態を指します。常に相手の立場を想像したコミュニケーションを心がけましょう。

ヒューマンスキルを身につけるための目標設定方法

では、ビジネスシーンにおいて大切とされるヒューマンスキルを身に着けるためには、どのように目標設定を行っていけばよいのでしょうか?

この章では大切な2つのポイントについて、解説していきます。

自分が得たいヒューマンスキルを言語化する

まずは、自分が得たいヒューマンスキルについて具体的に言語化しましょう。ヒューマンスキルの中には、スキルが得られたかどうかが定性的に測定できないものも多いため、どれだけ具体的に言及できるかが大切になってきます。そのため、自分が得たいヒューマンスキルについて具体的に言葉にすることで、目標設定がしやすくなります。

目標設定に取り掛かる前には、自分の現状を客観的に分析した上で、習得したいヒューマンスキルを選定しましょう。その際、選定したヒューマンスキルを得るためにどの様な能力が必要なのかまで細分化し、小さな項目に分けて言語化しましょう。

例えば、コーチングスキルを習得したいと考えた時に、そのためには「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」「チームビルディング能力」「自分がコーチングしたい分野への深い理解」の4つが必要であると挙げられます。細分化ができるほど、必要な努力がイメージしやすくなります。

この中で「自分がコーチングしたい分野への深い理解」について取り組みたいと考えた時に、このような目標が設定できます。

  • 昨年度リモートワーク勤務が始まり、オンライン上で部下の進捗管理を行わなければいけなくなった。
    →「管理ツールの機能や効率のいい使い方について実際に体験し、コーチング日までに質問に答えられるよう業務上でのシュミレーションを行う」
  • キャリアコーチングを行う際に、自分がまだ経験していない育児・介護を行いながらの勤務についてアドバイスができていないと感じている。
    →「そのため、様々なライフスタイルの選択に合わせたキャリアプランの例や当事者の声、行政サービスについて徹底的に調べ、コーチングできる状態までもっていく」

このように、自分が目標に掲げたいヒューマンスキルを決めた後には、スキルを得るために必要なものが何かを細分化して考え、それぞれに適した目標を設定しましょう。目標を設定する際には、その目標を達成するために行う具体的なアクションについて言及します。

このステップを踏むことにより、設定した目標がヒューマンスキルの獲得に繋がっていることを意識することができ、向上心をもって努力することができます。

SMARTの法則にできる限り則り目標設定をする

目標設定の際には、フレームワークの一つであるSMARTの法則に従うのも良いアイデアです。SMARTとは、「Specific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Related(上位目標との関連)・Time-bound(期限)」の5つの頭文字を組み合わせた略語からなるフレームワークのことです。

SMARTの法則を意識した目標の改善例は以下の通りです。

①目標が具体的であるかどうか
NG例)コミュニケーション能力を身に着けたい→相手が話している最中に自分の言葉をかぶせないようにする

②測定可能であるかどうか
NG例)新規顧客を増やしていく→次の四半期に新規顧客獲得数を現在の月平均から10%増加させる

③達成可能かどうか
NG例)1日に100件の顧客に架電する→1日に10件の顧客に架電す

④上位目標と関連しているかどうか
上位目標が「従業員満足度の向上」である場合:従業員アンケートでの満足度スコアを現在の75%から80%に引き上げる

⑤期限が設定されているかどうか
NG例)徐々に会社のセキュリティ対策を行っていく→次の6ヶ月以内に、全社のITインフラを最新のセキュリティ基準に準拠したものにアップグレードする

この5つの中でも、ヒューマンスキルについての目標設定の際に必ず実施して欲しいのが「達成可能かどうか、上位目標と関連しているか、期限が設定されているか」の3つの項目の確認です。ヒューマンスキルというもの自体が、売上成績や件数のように定量での測定が難しいことは確かです。点数や評価で数えられないものに関しては、評価基準の設定を心がけましょう。

また、定量化が難しい場合でも「具体的に何を達成したいのか」を言及することで、達成の判断ができる目標を設定することができます。具体的に達成したいアクションや成果の対象に言及し、そこに期限を付け加えることで、目標はより的確になります。最後に達成可能な範囲であるか、上位目標との関連性があるかを改めて確認しましょう。

SMARTの法則を導入して目標設定を行った際には、上司にチェックをお願いするのもおすすめです。上司から客観的なアドバイスをもらい、設定した目標の達成により実際にヒューマンスキルが身に付きそうかどうか、判断してもらいましょう。

ヒューマンスキルの目標設定例

例えば、交渉シーンでのカギとなるネゴシエーションスキルを身に着けるために、リーダーシップとコミュニケーション能力を伸ばすことを目指す事例で目標を設定するとします。その場合には、具体的にどのようなアクションに取り組むのかまでを明らかにしましょう。

リーダーシップを向上させる目標の例としては、「毎月1回以上、社内会議において企画のプレゼンテーションを行い上司からの質疑に対応する」「1日最低1回ずつ、メンバーと業務についての進捗確認、その日の到達目標の確認を行う」等が挙げられます。

コミュニケーション能力を向上させる目標の例としては、「1か月後までにそれぞれのメンバーと仲を深め、最低でも2回は、相談や質問を受けサポートまでを行う」などが挙げられます。

これらの目標を達成するには、わかりやすく伝えること、他者の意見をよく聞くこと、適切なタイミングでの反応を示すことなどが必要となります。

このように、自分が得たいヒューマンスキルを設定した後は、そのスキルを身に着けるために必要な要素を細分化し、それぞれに対して目標を設定していきます。

そのほかに、テクニカルスキル等の測定がしやすいスキルを高める目標設定では、「3か月後までに新分野のマーケティング方法を勉強し、実践に移せるようになっている」のように期限、内容を特定した目標を掲げることもできます。この目標であれば、達成の可能性を想像しやすく、SMARTの法則にも則っていることがわかります。

1on1を活用した目標設定の流れ

目標設定の際には、1on1ミーティングという面談の形を活用するのがおすすめです!理由としては、1on1ミーティングは完全個別で部下と上司が向き合うことのできる時間であり、上司から部下への丁寧な進捗管理やサポートが実現できるからです。

目標設定の際には、どうしてもメンバー個々の能力に合わせた内容を設定することが求められます。なぜなら、チーム等でまとめて同じ目標を掲げても、メンバーによって得意なこと・不得意なことに大きく差があるからです。

つまり全員で同じ目標を掲げてしまうと、ある人には既に問題なく遂行できているものであったり、ある人にはとても苦手な分野の内容となってしまい、必要なタスクの量や努力に大きく不公平が生じてしまいます。

そこでここでは、個別のケースに柔軟に対応可能な、1on1ミーティングによる目標設定の際の基本的な流れについてご説明します。

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1.メンバーの強み弱みを分析する

1つ目のステップは、メンバー個々の強みと弱みの分析です。

目標は、全員で全く同じものを掲げるのではなく、個々の特性に合わせる必要があります。なぜなら、メンバーはそれぞれ異なる能力を持っており、さらに改善点もそれぞれ異なるからです。

特に、目標を掲げるという目的の下では、強みをそのままに弱みについてアプローチするのが効果的です。強みと弱みを言語化した後には、弱みについてを徹底的に分析しましょう。その際には、改善したり、取り組みやすいアプローチを難易度順に並べたりすると、短期目標、中長期的な目標を考えやすくなります

このように、メンバーの強みを明確化し、弱みについて徹底的に分析を行うことで、目標設定の効率化を図ることができます。

2.身につけたい能力を設定する

2つ目のステップでは、ステップ1で分析した「弱み」に対して身に着けたい能力を設定します。

例えば、人事部で働いている対象者が、ヒューマンスキルの中でも特にコミュニケーション能力を身に着けたいと感じているとします。しかし、コミュニケーション能力とひとことで言っても、傾聴力、共感力、感情表現、言語化能力、等いくつかの構成要素が挙げられます。このメンバーが日ごろから自分の考えや主張を相手にわかるように伝達できずに躓いている場合は、「言語化する力」をつけるために目標設定を行うとよいでしょう。

このように、弱みとなっている理由を細分化することによって身に着けるべき能力を具体的に掲げることができます。

3.目標を設定する

3つ目のステップは、目標の設定です。ここまでのステップによって目標としたいヒューマンスキルの要素を洗い出し、それを具体的に目標とする段階になります。

目標を設定する際には、SMARTの法則を意識したり、1on1ミーティングを行ったりして具体性のある内容を設定しましょう。特に、目標の達成はのちに人事評価にも関わってきます。前提としては、達成か未達成かの基準が明確に判断できるような内容に設定しましょう。

例えば、営業部のメンバーがネゴシエーションスキルを向上させたいと考えているとします。しかし、ネゴシエーションスキルという能力そのものは数字で測定することができないため、達成か未達成かの判断も難しくなってしまいます。このような場合には、ネゴシエーションスキルが身につくことによってもたらされる結果をイメージし、その結果で測定するのも方法の一つです。

ネゴシエーションスキルを身に着けた営業メンバーが結果として確認できる代表的なものが、営業成績です。顧客獲得数や売り上げ、商品数などの定性的なものを定量として目標に取り入れることで、達成したかどうかの判断ができる目標となります。

また、定量で測れないものに関しては、5段階評価のアンケートなどで達成度を測ることもできます。サービスを提供する業務に就いている場合には、コミュニケーション能力やヒアリング力を評価するためにアンケートを用意して顧客満足度を測定することができます。このような場合には、各項目でどのくらいの数値を出したいか等を目標として掲げることができます。

さらに、毎回の集計結果を確認することで自分の弱みを見つけやすい方法でもあります。弱みを分析し、改善できるような具体的な目標を設定するように心がけましょう。

4.目標について振り返る

4つ目のステップは、目標への振り返りです。目標で設定した期日が完了した後には、設定した目標に対しての到達度はどうだったかを振り返りましょう。

達成だった場合には、自分の良かった取り組みや姿勢について自己評価をするのはもちろん、未達成だった場合には、そもそも設定した目標が適切だったのかを自問自答してみましょう。

設定した目標が適切だった場合には、未達成となった理由を具体的に言語化し、その理由について行うべきだったアクションや改善点を洗い出します。

そして一通りの振り返りを行った後には、次期の新たな目標を設定します。新たな目標設定の際には、前回未達成だった原因について分析した要素を改善できるような目標を掲げましょう。1on1ミーティングで上司が部下にフィードバックを行うのもおすすめです。その際には、良かった点についてを褒めてから改善点と目標へのアドバイスを行いましょう。

前回の目標が達成となった場合の新たな目標としては、再びステップ1の強みと弱みの把握を行いましょう。なぜなら、強みと弱みのバランスや内容は、目標を達成したことによって少し変動する場合があるからです。そのため、再び分析を行い、新たな目標の設定に活かしましょう。


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まとめ

この記事では、アメリカの経営学者ロバート・カッツ氏が提唱し、ビジネスにおいて重要とされるカッツ・モデルの中の一つである「ヒューマンスキル」とは何かについて解説しました。

ヒューマンスキルとは、他者と適切な人間関係を築き、コミュニケーションを円滑に進めるスキルです。マネジメント層は特に必要とされる能力ですが、一般の従業員においても高めることによって、スムーズな業務遂行につながります。
特に、今後ますますダイバーシティが重要とされ、複雑化を極めていく時代において、従業員一人一人のヒューマンスキルは、企業が成長し続けるために必要なものです。

組織が業績を伸ばし、一人ひとりの人材が社会人としてキャリアを重ね活躍するためにも、1on1ミーティングやセミナーの機会を利用し、ヒューマンスキルを育成していけるとよいでしょう。

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