▼ この記事の内容
部下のモチベーションを上げるには、原因を見立てたうえで、目標納得、承認、成長機会、裁量、1on1での継続支援を組み合わせます。声かけだけで終わらせず、行動変化と目標進捗で成果を測ることが重要です。
Gallupの職場調査を報じたBusiness Insiderの記事では、2024年の世界の従業員エンゲージメントは21%とされています。部下のモチベーションを上げるには、気分の問題として励ます前に、何が意欲を下げているのかを見立てる必要があります。
現場では、上司がよかれと思って声をかけても、部下には評価不信や成長停滞として受け止められていることがあります。原因を外すと、1on1が雑談や詰問になり、管理職ごとの支援品質もばらつきます。
この記事では、部下のモチベーション低下を原因別に見立て、目標設定、承認、成長機会、裁量、1on1へ落とし込む手順を整理します。人事が管理職へ展開する際にも、声かけ例だけで終わらない支援の型が見えるはずです。
部下の状態を1on1で見立てたい方は、基本設計を確認できます。
原因別の手順を実践する際は、管理職の関わり方を整理した部下のモチベーションを上げる方法もあわせて読むと効果が高まります。
モチベーション低下の原因を見極める
部下のモチベーション低下は、気分の問題ではなく、目標不明、承認不足、成長実感不足、裁量不足、評価不信のどれが強いかで打ち手が変わります。最初に原因を分けると、声かけ、1on1、目標設定、任せ方を誤りにくくなります。
目標不明と評価不信を分ける
部下のモチベーション低下は、目標が分からない状態と、評価を信じられない状態で支援が変わります。前者は期待の明確化、後者は評価根拠の開示から始めます。
目標不明の部下は、何を優先すべきかをつかめず、日々の行動が受け身になります。人事が管理職へ助言する場合は、本人の努力不足ではなく、期待役割の伝わり方から確認すると精度が上がります。
評価不信の部下は、目標を理解していても、頑張りが正しく見られないと感じています。評価面談後に表情が硬くなった、1on1で発言が減った、挑戦より無難な行動が増えた場合は、信頼の問題として扱います。
原因を切り分ける際は、次の観点で確認すると管理職間の判断がそろいます。
| 見立てる原因 | 部下に出やすい反応 | 最初に変えること |
|---|---|---|
| 目標不明 | 優先順位を毎回確認する | 期待役割と成果基準を短く言語化する |
| 評価不信 | 評価面談後に発言が減る | 評価根拠と日常行動のつながりを示す |
| 承認不足 | 成果後も反応が薄い | 再現してほしい行動を具体的に伝える |
| 成長実感不足 | 同じ仕事への停滞感を口にする | 次に伸ばす技能と役割を決める |
| 裁量不足 | 確認待ちが増える | 任せる範囲と相談条件を分ける |
表で分けると、励ますべきか、基準をそろえるべきか、任せ方を変えるべきかが見えます。育成制度全体との接続を整理する場合は、人材育成の全体設計も合わせて確認すると、現場の声かけを制度運用に結びつけやすくなります。
承認不足と成長実感不足を見抜く
承認不足と成長実感不足は、どちらもやる気の低下に見えますが、必要な支援は異なります。承認不足には行動への具体的な反応、成長実感不足には次の挑戦機会が必要です。
承認不足の部下は、成果を出しても自分の貢献が見られていないと感じます。営業事務なら、納期調整や顧客対応の工夫を上司が拾わないまま、結果だけを評価する場面で起きやすくなります。成長実感不足の部下は、褒められても仕事の幅が広がらないと停滞を感じます。
弊社が支援した若手育成テーマの事例では、成長目標の設計とトレーニングの確認体制を整えたことで、新人育成の進捗を確認しやすくなりました。中堅社員が同じ定型業務を任され続ける場合は、承認よりも新しい役割や判断機会を渡すほうが動きやすくなります。
承認は、人格を褒めるよりも再現してほしい行動へ向けると機能します。次の行動につなげるには、よかった点を伝えた直後に、次はどこまで任せるかを合わせて決めるのが有効です。
裁量不足と放置を区別する
裁量不足と放置を混同すると、部下のモチベーション支援は逆効果になります。任せる範囲を狭めすぎると自律性が下がり、確認を減らしすぎると不安だけが残ります。
裁量不足の部下は、判断したいのに確認待ちが多く、自分の工夫が仕事に反映されません。企画職なら、提案内容よりも承認手順ばかりを指摘されると、挑戦より指示待ちを選びやすくなります。放置されている部下は、任されているように見えても、成功条件や相談先が分からないまま動いています。
自己決定理論の解説では、動機づけを支える心理的欲求として、自律性、有能感、関係性の3項目が示されています。未経験業務では、自由にやってよいという言葉よりも、どこで相談すべきかの合意が必要です。
裁量を渡す場合は、任せる範囲、途中確認の頻度、判断を戻す条件を先に決めます。原因を見立てた後は、部下の状態に合わせて目標納得、承認、成長機会、裁量をどう組み合わせるかが次の論点になります。
参考:Theory|Self-Determination Theory
原因別に上げ方を変える
部下のモチベーションを上げるには、原因に合わせて打ち手を変える必要があります。目標納得、具体的な承認、成長機会、適切な裁量を順番に組み合わせると、声かけだけで終わらない支援になります。
目標納得から始める
部下のモチベーションを上げる最初の手順は、目標の意味、期待される行動、評価される基準をそろえることです。納得がないまま褒めても、本人の行動は変わりにくくなります。
目標納得を作るときは、会社都合の説明だけで終えないことが大切です。営業メンバーなら、売上目標が顧客提案の質や本人の成長テーマとどうつながるかを確認します。
- 今の目標を本人の言葉で説明してもらいます。
- 目標達成に必要な行動を3つ以内に絞ります。
- 評価される行動と評価されない行動を分けます。
- 次回1on1で確認する行動を1つ決めます。
手順を絞ると、部下は何を変えればよいかを自分で選びやすくなります。Gallupの職場調査を報じたBusiness Insiderの記事では、2024年の世界の従業員エンゲージメントは21%とされ、定期的な確認の重要性が示されています。
参考:Managers aren’t feeling so hot right now. It’s costing them their sanity and the global economy billions.|Business Insider
行動を具体的に承認する
承認は、部下の性格を褒めることではなく、再現してほしい行動を言語化することです。結果が出る前の工夫を拾うと、本人は次に何を続けるべきかを理解しやすくなります。
よくあるケースとして、若手に対して頑張っているねだけを伝える面談があります。この言い方では、資料準備、顧客確認、報告の早さのどれが評価されたのか分かりません。
使う言葉は、事実、影響、次の期待の順にすると安定します。最初の一言は、今週の顧客確認で不明点を先に潰したので、次回提案の修正が早くなりました、のように具体化します。
成長機会と裁量をセットで渡す
成長機会だけを渡して裁量がなければ、部下は指示待ちのままになります。裁量だけを渡して成長テーマがなければ、部下は何を学べばよいか分からなくなります。
成長支援では、任せる業務、判断してよい範囲、相談する条件を同時に決めます。部下育成全体の進め方を整理したい場合は、部下の成長段階に合わせた育成方法も補助線になります。
弊社が支援した育成テーマの事例では、先輩やメンターの役割をメンタルケアに絞り、成長目標の確認を別で持ったことで育成負荷が下がりました。次は、その支援を1on1で継続する方法を扱います。
1on1でやる気を引き出す
1on1で部下のやる気を引き出すには、励ます前に事実、本人認識、障害、望む成長、次の行動を順番に聞きます。質問の順番を固定すると、雑談や進捗確認だけで終わる面談を避けやすくなります。
最初に聞く質問例を用意する
1on1の最初は、最近どうですかではなく、事実と本人認識を分けて聞きます。部下が話しやすい順番を用意すると、モチベーション低下の原因を早く見立てられます。
質問例は、今週うまく進んだ仕事は何ですか、止まっている仕事はどこですか、次に自分で変えたい行動は何ですか、の3つで始めます。質問の種類を増やす前に、1on1で使いやすい質問例の整理も確認できます。
| 質問 | 確認すること | 次の対応 |
|---|---|---|
| 今週うまく進んだ仕事は何ですか | 本人が成果と感じる行動 | 続ける行動を1つ決める |
| 止まっている仕事はどこですか | 障害と相談不足 | 上司が取り除く条件を決める |
| 次に自分で変えたい行動は何ですか | 本人の改善意思 | 次回1on1で確認する |
弊社が支援した企業では、1on1頻度を増やしただけではなく、公式アジェンダで重要話題に集中したことで会話の質が上がったケースがあります。質問は量ではなく、順番と目的で効き方が変わります。
障害を取り除く質問に変える
部下がやる気を失っているように見えるときは、本人の意欲だけを問わない方がよいです。障害、迷い、支援してほしい点を聞くと、上司が取り除ける要因が見えます。
聞き方は、なぜできないのですかではなく、進めるうえで邪魔になっている条件は何ですか、に変えます。1on1の進め方そのものを整える場合は、継続しやすい1on1ミーティングの進め方が参考になります。
人事が管理職へ展開する場合は、質問文だけを配ると詰問に変わることがあります。質問の目的を、原因追及ではなく障害除去にそろえると、部下の防御反応を抑えやすくなります。
避ける質問例で詰問化を防ぐ
1on1で避けるべき質問は、なぜやる気がないのか、どうしてできないのか、いつ本気を出すのか、のように本人を追い込む聞き方です。原因ではなく人格を責める形になるためです。
NG質問は、事実確認と支援確認に言い換えます。今の進め方で詰まっている点はどこですか、次回までに上司が支援すべきことは何ですか、のように聞くと行動に接続します。面談で聞くことをアジェンダ化したい方は、質問が詰問に変わらないように型をそろえる必要があります。管理職ごとの聞き方をそろえる入口として、こちらを参照できます。
たとえば未達成のテーマを扱う場合も、最初に事実、次に障害、最後に支援策の順で聞くと責任追及に寄りにくくなります。本人の準備不足が明らかな場合でも、次回までの具体行動と確認日を決める形にすると、感情的な詰問ではなく改善の対話として扱えます。
やってはいけない接し方を避ける
部下のモチベーションを上げたいときほど、叱咤、報酬だけの動機づけ、過度な比較、放置、過干渉を避ける必要があります。短期的に動いて見えても、納得感や自律性を下げる接し方は継続支援に向きません。
叱咤だけで動かそうとしない
叱咤だけで部下を動かす接し方は、原因が分からないまま圧力を強めるため逆効果になりやすいです。必要なのは、基準を示す叱責と、次の行動を決める支援を分けることです。
期限遅れが続く部下に対して、やる気を出せと伝えても行動は分解されません。期日、阻害要因、次回の報告タイミングを一緒に決める方が、上司の期待が伝わります。
叱る必要がある場面では、人格ではなく業務基準に絞ります。人事が管理職へ伝えるなら、遅れたことを責める前に、遅れを早く相談する基準を決める、という表現が使いやすいです。
報酬や比較だけに頼らない
報酬や他者比較だけでモチベーションを上げようとすると、部下は自分の成長より順位を気にしやすくなります。評価制度上の報酬と、日常の承認は分けて扱う必要があります。
営業チームでは、ランキングを出すと上位者は動きやすくなりますが、中位以下の部下が諦める場合もあります。比較を使うなら、前月の自分との変化や改善行動も同時に扱います。
報酬は成果の確認には使えますが、行動の改善点までは示しません。承認では、顧客への確認が早くなった、提案前の準備が具体化した、のように再現行動を返します。
放置と過干渉の中間を作る
放置と過干渉の中間は、任せる範囲と確認する頻度を先に決めることで作れます。部下の自律性を守りながら、失敗が大きくなる前に支援する設計が必要です。
ベテラン部下には任せすぎ、若手には口を出しすぎる管理職は少なくありません。任せるテーマ、確認日、相談条件を共通化すると、部下ごとの不公平感も抑えられます。
弊社が支援した管理職品質の標準化テーマでは、マネージャー同士のレベルが揃ったという声がありました。揃えるべきなのは個性ではなく、任せ方と振り返りの土台です。
部下タイプ別に支援を変える
部下のモチベーション支援は、若手、中堅、ベテランで比率を変える必要があります。承認、裁量、成長テーマ、キャリア対話のどれを厚くするかを変えると、同じ声かけの押し付けを避けられます。
若手には成功体験を小さく作る
若手のモチベーションを上げるには、大きな裁量よりも小さな成功体験を早く作ることが有効です。できた行動を短い周期で確認すると、成長実感が積み上がります。
新入社員や異動直後の部下には、1ヶ月先の成果よりも今週の行動を決めます。資料作成なら、完成度よりも顧客課題を3点に整理できたかを確認する方が前進を感じやすくなります。
弊社が支援した若手育成テーマの事例では、新人独り立ちまでの期間に短縮したケースがあります。成功体験は偶然に任せず、成長目標と確認頻度で設計する必要があります。
中堅には裁量と期待を言語化する
中堅のモチベーションを上げるには、任せるだけでなく、何を期待して任せるのかを言語化します。成果責任と成長期待が曖昧なままでは、便利な人として扱われている不満が残ります。
中堅には、判断してよい範囲、巻き込んでよい相手、上司へ相談する条件を渡します。営業マネージャー候補なら、商談同席ではなく後輩の準備レビューを任せると役割が広がります。
評価面談後に部下の納得感が下がる場面では、期待の言語化が不足していることがあります。上司は、今期任せたい役割と評価される行動を同じ面談で確認するのがおすすめです。
ベテランには役割期待を再設計する
ベテランのモチベーションを上げるには、過去の成果を褒め続けるだけでは足りません。今の組織で何を任せたいのか、どの知見を次世代へ渡すのかを再設計します。
ベテランには、難案件の対応だけでなく、判断基準の共有や若手のレビューを依頼します。暗黙知を言葉にする役割を渡すと、本人の経験が組織の資産として扱われます。
育成方針を管理職へ説明する材料が必要な場合は、部下タイプごとの支援を面談に落とす観点が必要です。キャリア文脈を含めて支援を整理する入口として、こちらを参照できます。
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成果指標で継続支援に変える
モチベーション施策の成果は、面談回数ではなく、目標納得度、次回アクション完了率、行動変化、離職兆候、フィードバック品質で見ます。測定単位をそろえると、人事は管理職ごとの支援品質を改善しやすくなります。
目標納得度と行動変化で見る
モチベーション支援の成果は、部下が前向きになったかだけでは判断できません。目標を自分の言葉で説明できるか、次の行動が変わったかをセットで見ます。
目標納得度は、面談後に本人が目標の意味、優先行動、評価基準を説明できるかで確認します。行動変化は、報告の早さ、相談の質、次回アクションの完了率で見ます。
| 指標 | 見る内容 | 確認頻度 |
|---|---|---|
| 目標納得度 | 本人の説明内容 | 月1回 |
| 行動変化 | 次回アクションの完了 | 1on1ごと |
| 離職兆候 | 相談減少や発言変化 | 月1回 |
| フィードバック品質 | 事実と期待の明確さ | 四半期ごと |
面談回数だけを追うと、雑談や進捗確認でも成果が出ているように見えます。指標を行動変化へ寄せることで、支援が効いたかを説明しやすくなります。
1on1記録を次回行動につなげる
1on1記録は、話した内容の保存ではなく、次回行動を確認するために残します。目標、障害、支援、次の一歩が記録されていない面談は、継続支援に変わりにくいです。
記録には、本人の目標理解、上司が取り除く障害、次回までの行動、確認日を残します。1on1を部下育成に活用する設計は、1on1を育成成果につなげる運用方法でも整理できます。
1on1が雑談か進捗確認に終始する職場では、部下の変化が記録に残りません。人事は記録項目をそろえることで、管理職が何を支援したかを振り返りやすくなります。
人事は管理職の型をそろえる
人事がやるべきことは、管理職全員に同じ言葉を使わせることではありません。原因の見立て、質問、記録、振り返り頻度をそろえ、各管理職が再現できる型にすることです。
弊社が支援した管理職品質の標準化テーマでは、良い個性が消えた事例はこれまでゼロと整理されています。そろえる対象を人柄ではなく、目標と1on1と評価をつなぐ土台に置くことが重要です。
部下のモチベーション支援を声かけで終わらせず、1on1の目的、質問、記録、振り返りまで型化したい場合は、次の資料で整理できます。管理職ごとの面談品質をそろえる入口として、こちらを参照できます。
よくある質問
部下のモチベーションが下がる原因は何ですか?
主な原因は、目標不明、承認不足、成長実感不足、裁量不足、評価不信です。まず本人の反応と面談内容から、どの要因が強いかを分けます。具体的な進め方は組織の現状に応じて調整します。
部下のやる気を引き出す声かけは何ですか?
結果だけでなく、再現してほしい行動を具体的に伝える声かけが有効です。目標の意味、よかった行動、次に任せる範囲を合わせて確認します。まずは現状の課題を整理することから始めます。
モチベーションが低い部下にしてはいけない対応は何ですか?
叱咤、他者比較、報酬だけの動機づけ、放置、過干渉は避けます。原因を見立てずに圧力を強めると、納得感や自律性が下がりやすくなります。定着には週次での振り返りが効果的です。
まとめ
部下のモチベーションを上げるには、励まし方を増やす前に、目標不明、承認不足、成長実感不足、裁量不足、評価不信のどれが強いかを見立てることが重要です。原因に合わせて、目標納得、具体的な承認、成長機会、裁量、1on1での継続支援を組み合わせます。
支援を声かけだけで終えると、施策が効いたかを説明できず、管理職ごとの面談品質もばらつきます。1on1記録や次回アクションを残すことで、部下の行動変化と目標進捗を継続的に確認できます。
次に、1on1を育成成果へつなげる運用まで整理したい場合は、1on1を部下育成に活用する方法も確認できます。
やる気を上げる施策が成果につながったか見えない状態を放置すると、離職兆候や評価不信に気づくのが遅れます。部下のモチベーション支援を声かけで終わらせず、1on1の目的、質問、記録、振り返りまで型化したい場合は、次の資料で整理できます。
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