目標管理制度(MBO=Management by Objectivesの略)には、人事評価制度、OKR、KPIなど、数種類の類似した方法があります。この記事では組織の目標管理においてそれぞれの手法の違いを正しく理解し運用するために、設定方法の概要や企業へのメリット・デメリット、手順などを解説していきます。
今後の業務の効率を上げ、業績向上、従業員のモチベーションアップにつなげるためにも、適切に目標管理制度(MBO)についてを学び、導入・運用しましょう。
目標管理の種類4選
そもそも、目標管理制度にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、企業が目標設定・目標管理・人事評価を行う為の4種類の方法と使い方のコツについて詳しく説明していきます。
KGIとは
KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字を取ったもので、重要目標達成指標とも呼ばれます。つまり、企業やプロジェクトのビジョンや戦略的な目標を達成するための大まかな方向性を、定量的に示した指標のことです。
KGIは中長期的な視点で設定されます。組織の長期的な成長や持続可能な発展を支えるための目標として、数年間の目標として設定されることが多いです。この最終目標を設定する際には、目標を達成できたかの判断をする際の基準となるように数値化して決めることが重要なポイントです。
例えば「営業利益最大化」「できる限り多く新規顧客を見つけること」といったような定量で測れないKGIを設定してしまうと、進捗の確認や振り返りができなくなってしまうため、「売上を昨年より120%向上させる」「年間の契約件数100件」「新規顧客開拓50件」のように設定する必要があります。
このように、KGIを考える際には達成できたかどうかの判断ができるよう、数値を用いて具体的に設定するようにしましょう。KGIの設定により、次に説明するKPIの設定も展開されていきます。
KPIとは
KPIとは「KeyPerformanceIndicator」の略で、企業の目標達成のために必要となる中間指標のことです。そのため、KPIを追っていけば最終的にKGIが達成されるように、プロセスを組み立てながら半期ごとまたは1年ごとに目標設定する必要があります。また、KPIの達成率を曖昧にしないためにも、各KPIに対しては具体的な数値目標も決めるようにしましょう。
例えば、KGIが「市場シェアの前年比5%拡大」だったとします。この場合、KPIには前年のシェア率データを把握したうえで「前年比で月間市場シェアを10%増やす」のように、必ずKGIを達成に導くようなKPIを設定する必要があります。
このようにKPIを設定することで、組織や部門のパフォーマンスを定期的に測定し、分析することが可能になります。この分析により、問題や改善の必要性を特定し、効果的な意思決定を行う基盤が提供されます。
また、KPIを作る際にはKPIツリー(ロジックツリー)を使用するのがおすすめです。KPIツリー作成の際には、KGIをトップに置き、階層構造を持たせながらKPI、サブKPI、サブサブKPIという順に設定していくのがおすすめです。
KPIやKGIについてはこちらの記事でも解説しています↓
MBOとは
MBOとは、多くの企業の人事評価制度で採用されている目標管理方法です。これは「ManagementByObjectives」の略で、1954年に経営学者ピーター・ドラッカーが著書『現代の経営』で提唱しました。
MBOでは、まず社員本人が業務目標を設定し、上司が目標達成に向けたサポートを行っていきます。日本でMBOが採用される際は、KGIやKPIと同じような使われ方をする事が多いです。このプロセスにより、目標が組織の戦略やビジョンに適合し、部下がその達成にコミットメントを持つことが促進されます。
営業を例で出すと、「売り上げ月間400万達成」や「月間受注数10社」といった個別の具体的な業績にまつわるMBOを設定する事が多いです。またパターンとしては「売り上げ月間400万達成」とそれを達成するのに必要な「月間30商談」などのKPIがMBOとして採用される事もあります。
このように、MBOを設定する際には、数値や単位を用いて細かく設定することで、達成度合いが構成に判断され、納得度の高いMBOをメンバーに提供する事ができます。
OKRとは
OKRとは、「ObjectivesandKeyResults」の略で、日本語に訳すと「共通の目標と主要な結果指標」です。
OKRは、GoogleやFacebookなどのGAFAに含まれる企業が導入するなど、近年注目を高める有名な目標管理制度で、もともとはインテル社の元CEOアンディ・グローブ氏が、ドラッカーのMBOをインテル流にアレンジした方法のことを指します。
OKRは、MBOとOKRは別物として比較される事が多いですが、実際はMBOという考え方の中にOKRがあるというイメージが適切です。OKRもMBOと同じく定量的に設定することで、より良い目標設定をする事ができます。
MBOとの大きな違いは、設定する目標の難易度にあります。MBOでは100%達成を目標にして設定しますが、OKRでは目標(Objectives)が70%程度となるようにストレッチな目標を設定します。なぜなら、今まで通りの意識では達成できない目標に挑戦する事で、本来予測していた達成度よりも大きく上回った成果を出すことを目的にしているからです。そのためインテル社では、平均として4割の目標が未達成に終わっており、目標を100%達成した部門が目標設定が低すぎたと厳重注意を受けてしまいます。
また、OKRの要素である「Key Results(主要な結果指標、以下KR)」は、OKRのO(目標)の部分の進捗状態を確認するためのものです。KRは、目標を達成する道筋を具体的にするために、期日や手段を明確にし、客観的に評価が判断できるように数値での基準を設定します。
例えば、「月の売上200万円を創出する」というOを目標として設定した場合は、結果指標であるKRは「月間50社顧客に訪問する(KR結果指標)」のように設定します。
このように、OKRはMBOをより効果的に実現するために、インテル流にアレンジした手法のことです。目標の100%を目指すようなMBOで行うのか、目標を70%のストレッチな物にして目指すようにするのかは会社の雰囲気や進捗管理の様子に応じて使い分けると良いでしょう。
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目標管理に活用される手法4選
ここまでは4つの目標管理制度についてご紹介しました。これらの管理制度の運用を成功させるには、目標の設定がカギとなります。
ここでは、目標設定を行う際に活用できる4つの代表的なフレームワークの手法について、事例を交えながらご紹介していきます。
1.ベーシック法
フレームワークの1つ目は、ベーシック法です。
まず、2×2の表を作成し、そこに書き込んでいく形で目標設定を行います。それぞれのマスには「目標・達成基準・計画・期間」の4つを書き入れ、目標やどのように達成するのかを可視化しましょう。
基本的には数値化して目標を設定することが基本になりますが、数値化できないものに関しては「どのように」という状態と「いつまでに」というスケジュールから考えてより具体的に設定するように心がけます。
- 状態の具体例
- 「部下1人をフォローなしで業務できるように教育する」など
- スケジュールの具体例
- 「今年度中に○○の資格を取得する」など
このように、4つの項目に分けて具体的に目標を設定していくのがベーシック法にあたります。
2.SMARTの法則
フレームワークの2つ目が、SMARTの法則です。SMARTとは、「Specific(具体的),Measurable(測定可能),Achievable(達成可能),Related(上位目標との関連),Time-bound(期限)」の5つの頭文字を組み合わせた略語からなるフレームワークです。この5つの各基準における目標設定のポイントは、以下の通りです。
具体的であるかどうか
目標を設定する際に「一生懸命取り組む」「頑張る」「粘り強く取り組む」といった抽象的な表現で設定してしまう事がありますが、このような目標設定の仕方では成果の計測が行えず、進捗管理や達成したかどうかの客観的な判断が難しくなってしまいます。そのため、目標は具体的に設定するように意識しなければいけません。
そのため、目標は誰が責任を持つのか、何を具体的に行うのか、いつまでに達成するのか、どの場所や状況で実施するのか、どのような手段や方法で実現するのかを含んだ目標を設定しましょう。定期的に行う業務に関しては、頻度も併せて設定するとよいでしょう。
例)「上半期末までに、全社に新しい進捗管理ツールの導入と育成トレーニングを完了させる。」
測定できるかどうか
目標を設定する際には、測定によって進捗や実績を可視化できる物にする必要があります。
例えば「先月よりも訪問する企業を増やす事で、売り上げの向上をねらう」という具体的(Specific)な目標であれば、「先月よりも訪問する企業を1.2倍に増やす事で、売り上げの向上をねらう」のように変更すると測定可能になります。
また、定性的な目標を設定した場合でも、評価の際は定量で測るという方法も存在します。
例えば「得意先のニーズを汲み取った企画立案を行い、効果的なプレゼンテーションをする」という目標のままだと、「効果的なプレゼンテーションができたか?」を判断する際、主観になってしまいます。そのため、「得意先にアンケートを行い、5段階評価中の4以上の評価を獲得する」「プレゼンの結果として、月30万のアップセルを狙う」のようにすることで、測定可能な目標になります。
達成可能であるか
目標を立てる際によくあるミスとして、達成が不可能な目標を立ててしまう事が挙げられます。
例えば、1ヶ月で売り上げを2倍にするという目標を立てたとします。もちろん取引先が増える見込みがあるなどの理由があれば問題ありません。しかし、理由がないのに大きすぎる目標を立ててしまうと、達成までのプロセスが明確に想像できないメンバーはむしろやる気を無くしてしまいます。
また、目標を大幅に未達してしまうと「何が課題だったのか?」の判断ができず、メンバーの成長や能力強化に繋がりません。そのため、達成できる目標を設定するようにしましょう。
上位目標との関連性があるかどうか
目標設定の際には、会社の目標と部門の目標に関連性があるか、チームの方針に自分の目標が一致しているかを確認しましょう。なぜなら部署によっては会社の目標との間にずれが生じてしまい、一貫性のある取り組みが行われにくくなってしまうからです。
例えば、売り上げを2倍に向上させたいという会社の人事部門が、営業部以外の人材ばかり採用している状態には組織目標とのズレがあります。なぜなら、他の部署から売上へのアプローチを行う特別な施策がない限り、人事部門には目的に対して必要な人材リソースを提供する必要があるからです。
このように、上位目標との関連性がある目標設定は、やがて組織の目標達成へと繋がり、その成功を持続可能なものにします。
期限をどうするか
目標設定の際には、いつまでに達成を目指すかの期限を設けることが重要です。なぜなら、期限がないと行動計画を立てることができず、仕事の優先順位も曖昧になってしまうからです。
目標設定の際には、年間や半年ごとに期限を設定し、そこから逆算して四半期や月間の目標、そしてできる事なら一週間や1日の目標を作っていく事がおすすめです。細かいアクションや期限が決まっていることによって、進捗の管理がしやすくなり、優先順位が明確になるほか、早めに改善すべき点を発見できます。
また、月末や期末の期限を決める際は、「3/31」という期日ではなく、「3/31 17:59まで」のように時間まで決める事をおすすめします。なぜなら、営業などでお客様それぞれが異なる時間に契約を完了させた場合などに、成果の計算基準が必要となるからです。
このように、目標に期限を設けることによって必要な作業や行動を計画し、時間内に完了させるためのスケジュールを立てやすくなります。
SMARの法則を用いた目標設定の際には、上記の5つの特徴を含ませることで、目標管理がスムーズになります。また、SMARTの法則を取り入れるメリットとしては、メンバーが目標の立て方を学習し、効率化を図る方法を検討するようになるので、メンバーの成長とモチベーションのアップに繋がります。
3.マンダラチャート
フレームワークの3つ目は、マンダラチャートです。マンダラチャートは、ビジネスにおける思考法や、人生を豊かにするための発想法として開発されたフレームワークです。「最終目標を行うためには何をすべきか」について要素を漏れなく洗い出し、整理し、行動を具体化することができるというメリットがあります。チャート作成の手順は以下の通りです。
- 3×3の小マスをさらに3×3に並べたものを用意します。マスの数は合計9×9=81個です。
- まずは、中央ブロックの中心のマスに最終的な目標を記載します。
- 次に、中央ブロックの残りの8マスに、最終目標を達成するために必要な要素を書き出します。
- 3で書きだした要素を周囲の8ブロックの中心のマスに書き写します。
- さいごに、転記した要素を囲む各3×3マスに、中心に転記された細かな要素を得るために何をすべきかを、なるべく具体的に記述します。
このマンダラチャートは、プロ野球選手である大谷翔平選手が用いたことで、一躍有名になりました。
大谷翔平は「8球団からのドラフト1位指名」という目標を中央に置き、その周りには「①体づくり②人間性③メンタル④コントロール⑤キレ⑥スピード160キロ⑦変化球⑧運」を記入しました。
①の「体づくり」という要素の周りには、「体のケア・サプリメントを飲む・FSQ90キロ・柔軟性・RSQ130キロ・スタミナ・可動域・食事夜7杯朝3杯」という目標を記入したそうです。
このように中心に大きな目標を設定し、その目標を8つのテーマに分解し、さらに各テーマを具体的な行動に細分化することで、大きな目標でもその達成方法が視覚的に理解しやすくなり、行動に移しやすくなります。目標を細分化していくことによって解像度を上げることができ、一つ一つの小さな目標を達成していくことによって、最終的に中央の目標達成に繋がるように構成されているのがこのマンダラチャートのメリットです。
4.HARDゴール
フレームワークの4つ目は、HARDゴールです。HARDゴールは以下の4つの単語の頭文字で構成されており、「SMARTの法則」よりも深く感情に根付いたメソッドで、自分のキャリアについて考えるときに適していると考えられています。「H・A・R・D」の詳しい内容は以下の通りです。
このHARDゴールによる目標設定は、社員個人の自主性や主体性を引き出せるだけではなく、人材育成の観点では今後のキャリアの目標を設定するのに最適でしょう。
H:Heartfelt「どうしても達成したいもの」
当たり前のことかもしれませんが、目標を達成するためには、心の底からその目標を達成したいという思う必要があります。HARDゴールの提唱者であるMark Murphyは、目標を設定する際に「なぜその目標を達成したいのか」少なくとも3つの理由を持つことが必要だとしています。
そして、この目標を達成したいという理由に対して、特に制約などは設けていません。個人的なものでも、企業のための目標かは問わず、自分が本能的に達成したいと思う目標で良いとされています。
A:Animated「目標達成後の活き活きとした状態が想像できる」
目標達成するとその先にどのようなキャリアが待っているのかを明確にイメージしている必要があります。
具体的には、「どんな仕事をしているか」「誰とどこで働いているか」「1日のスケジュールはどのようなものか」などをイメージすると考えやすいでしょう。
R:Required「何が必要とされているのか明確にする」
目標達成するために要求されているスキルや能力を明確にする必要があります。
目標達成に必要なスキルを、いつまでにそれが必要かというスケジュールを照らし合わせながら明確にすることで、計画性を持って目標達成に進むことができます。
例えば、「2025年までに昇進する。そのためには、○○の資格を今年の10月までに取得する」などです。
D:Difficult「困難でやりがいのあるもの」
目標達成をするために、どのような障害や困難が立ちはだかり、どのように対処をするのかを予め考えておくことが必要とされています。
Mark Murphyによると、予想される困難と、それに対処するための対応策を、少なくともそれぞれ3つずつ考えておく必要があるとされています。スキルだけではなく、事前に予想される困難も想定に入れておくことで、そうした困難に負けることなく目標達成に向かっていくことができるでしょう。
目標管理をするメリット
そもそも、企業が目標管理を行うことで得られるメリットには何が挙げられるのでしょうか?
MBO、OKR、KPI・KGIのような目標管理制度を導入することで得られるメリットには、下記のような点が挙げられます。
評価が適正になる
目標管理制度を導入することにより、組織内での評価が適正になるというメリットがあります。なぜなら、目標管理により達成・未達成の判断基準が公平となり、曖昧な評価がされることが無くなるからです。
例えば目標が明確でない場合、部下の評価基準を確立することが難しくなります。また判断基準が曖昧なため、評価に時間と手間がかかり、精神的な負担も増加します。
しかし、目標管理により、達成すべき成果が明確に定められれば、それに基づいた公正な評価が可能になります。具体的な目標を設定することで、社員がどのような成果を目指すべきかが明確になります。そのため、上司と部下の間で目標が共有され、求められる期待値も明確になります。その結果、評価される側も透明性の高い評価を受けることができ、評価のブラックボックス化を防ぐことができます。
このように、目標管理により達成すべきものを明確にできれば、目標と評価に対する認識のずれを防ぐことができ、双方に納得のいく評価が可能です。
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社員の行動が明確になる
目標管理制度によって、社員が目標に向かって進んでいることを実感し、達成のためのアクションが想像しやすくなるというメリットもあります。なぜなら、目標管理制度によってメンバー個人の自律力、推進力を伸ばすことができ、目標達成にリンクしている行動が何かを考えて行動するようになるからです。
目標管理制度(MBO)を提唱したドラッガーは、目標管理導入の最大の利点を「支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに換えることを可能にする」と話しています。ドラッガーが提唱している通り、マネジメントによって部下をコントロールするのではなく、部下が自ら進め方を見出し、実践できるように支援するのが理想的な目標管理です。
例えば、ある社員が自身の目標として「年間売上を10%増加させる」と設定した場合、マネージャー側が進捗管理をしつつ社員の状態に対して必要なアプローチを入れていくことにより、社員が自分の業務の方向性を理解し自律的に計画、行動し、自己管理ができるようになります。マネジメント側は、彼らの行動を起こす姿勢と環境を作り上げることが大切な仕事です。
このように、目標管理制度によって、社員は目標に向けて具体的なステップやタスクを明確に理解し、実行するための方針を立てることができます。そして、漠然とした目標に対する不安や不確実性が減少し、自信を持って行動に移ることができます。
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目標管理をするデメリット
一般的にはメリットが注目されている目標管理制度には、実はデメリットが発生する可能性もあります。では、そのようなデメリットに気を付けるべきなのでしょうか?懸念される2つの例について、解説していきます。
数字以外を追わなくなる可能性がある
1つ目のデメリットは、目標に固執するあまりに数字以外を追わなくなる可能性があるという点です。なぜなら、定量的に測定できる形の業務に評価の比重が傾きすぎてしまい、定量で明確に表すことのできない業務に価値が置かれにくくなってしまうからです。
例えば、売上げ目標300万円に対して280万円しか達成できなかった場合に、業績評価のみに注目され低評価と判断されたとします。このような評価方法を採用していれば、本来であれば組織・チームとして成果を上げる必要があるのに対して、個人の成果ばかりに目が行きやすくなってしまい、営業チームは数字を達成させるために様々な手を尽くすようになるでしょう。しかし、長期的な進捗管理の過程では、新メンバーのオンボーディングや部門間の連携作業など、数字には直結しないような業務が多々必要です。
このような状態が続くと、評価を気にしたメンバーが個人主義になってまい、メンバーの育成やオンボーディングが蔑ろになりやすく、結果的に従業員間の助け合いなどの横のつながりが薄くなっていきます。
そのため、数字に固執した適切でない目標設定・管理を行いすぎると、短期的には成果が上がったように見えるかもしれませんが、長期的には成果が上がりにくくなります。結果として、数字の過度な管理が従業員のモチベーションやエンゲージメントを下げ、生産性が低くなってしまう可能性があります。
無理やり数字で目標設定をすると失敗することもある
2つ目のデメリットは、目標を無理やり数字で設定したがために、失敗を招くケースもあるという点です。なぜなら、無理のある数値目標は従業員のモチベーションの向上よりも、問題が起きた時に別の対処法を探そうとする心理に働いてしまう可能性があるからです。
例えば、総務・労務などが「ミスを0にする」を目標に設定すると、従業員はミスを1つでも起こして評価を下げられたくないというプレッシャーから、トラブルを隠すようになってしまう場合があります。本来ならば意識的にミスを見つけて改善することが大切なのに、目標達成のためにミスを認めなくなってしまうのは本末転倒です。
つまり、目標は簡単すぎると意味がないからという理由でむやみに高く設定しすぎてしまうのは、時に逆効果をもたらす原因になります。
このように、無理のある数値目標は組織内での情報の透明性や問題解決のスピードを低下させ、最終的には組織全体の成果に悪影響を及ぼすことが考えられるため、見直しが必要です。目標管理では、達成だけでなく、目標を組織に浸透させる過程や手段においても適切なバランスが求められます。
目標管理の設定手順
メリット、デメリットを踏まえ、効果的に業務に目標管理制度を導入するための3つの手順と、それぞれのポイントを紹介します。
目標の設定
1つ目のステップは、目標の設定です。目標設定のポイントは以下の2つです。
①個人目標と組織目標に関連性を持たせる
個人の目標は、最終的に組織全体の目標達成に貢献できるように設定する必要があります。なぜなら、企業が掲げる目標に全く関連性の無い個人目標を設定してしまうと、結果的に組織目標の達成に繋がらず、自分が何のために業務に取り組んでいるのかが曖昧になるからです。
そのためにも、あらかじめ企業や部署、チームなど組織単位の目標を周知し、メンバー個人の目標がどのように貢献するかを明確にしましょう。
例えば、売上目標を達成するためには、KPIとして新規顧客獲得のための営業活動を強化したり、既存顧客のフォローアップを徹底するための目標を設定することが必要です。
②上司のチェックを入れる
個人の目標は社員自身が決めるのが前提ですが、その際に企業の利益や部下の成長の観点から、上司によって必要な修正を行うことが大切です。なぜなら、メンバーが主観的に決めた目標をそのまま採用してしまうと、チームの成果を想定した際に十分な目標であるかどうか、進捗管理の上で無理のない目標かどうかの細かな判断が難しいからです。
そのため、部下が立てた個人目標には目を通し、組織の目標や利益につながっているか、部下の能力に対して適切な難易度かどうかを確認します。その上で、目標を達成するための具体的なアクションやスケジュール、担当者なども明確にしていくのがよいでしょう。
また、目標達成までの道のりを明確にするために設定したKPIは、目標達成状況を把握しつつ、必要に応じて柔軟に軌道修正することも大切です。目的を持った目標の設定が、求められます。
実行・確認
2つ目のステップは、目標に向けた業務の実行・確認です。目標を設定した後は、業務を進めつつも定期的に進捗を確認し、達成度を確認することが重要です。
目標に向けた取り組みの実行中には、日報や週報、1on1ミーティングなどでコミュニケーションをとり、定期的に目標達成の状況や課題を把握するようにしましょう。その際に、単なる進捗報告だけでなく、良い点や悪い点、問題点、課題点などを振り返りながら確認することが重要です。そうすることで、業務の質や効率性を向上させるための改善点を見つけることができます。
その際に問題点や課題が浮かび上がった場合には、それらに対する解決策を考え、必要に応じてアドバイスを行います。ただし、上司が一方的に方向性を定めるのではなく、社員が自ら考えて行動することが重要です。
なぜなら、上司が一方的に介入しすぎてしまうと、部下は従うことが当たり前となってしまい、次第に業務に対する自発性や意欲を低下させてしまうからです。このような方法を続けてしまうと、目標管理を行ったつもりが、結果的に企業の弱体化を招いてしまう可能性も考えられます。
このように、目標に向けて業務に取り組んでいく中で、個別のアドバイスが必要な場合には1on1ミーティング(上司と部下が1対1で行う、定期的な面談)を活用しましょう。1on1ミーティングによって一人一人に時間を取って向き合うことで、業務におけるつまづきや疑問点を明確に洗い出し、共に課題解決に向けた取り組みを行うことが可能になります。
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上司からフィードバック・フォロー
3つ目のステップは、上司からのフィードバックとフォローです。このステップは、目標管理を正しく遂行する上で非常に重要なパートであり、フィードバック面談などのじっくり話す機会を設けるのもおすすめです。
目標管理において設定された期間が完了となった際には、自己評価と上司による評価の2つにより目標の達成度合いを客観的に評価し、フィードバックを行います。細かな期日でのフィードバック・フォローはもちろんのこと、期末や年度末などの大きな節目ごとにも達成度を評価し、目標達成の成果を客観的に確認しましょう。
フィードバック面談の際には、まず面談のゴールを的確にしましょう。次に上司が部下に対して評価とアドバイスを行いますが、数字で算出される目標達成度合いのみに目を向けるのではなく、その結果に至った工程や行動の中での努力にも目を向け、良かった点への称賛と改善点への助言を行います。また、その際には評価自体の理由も伝えることによって、納得感のいくアドバイスを行うことが大切です。
このように、数字に表れる結果と能力・行動に現れる結果の双方に対してフィードバックを行うことによって、目標の達成度に対する評価を包括的に行うことが重要です。
目標管理の注意点
では、効果的でスムーズな目標管理を効果的に行うためには、どのようなポイントに気を付けるべきなのでしょうか?
ここでは意外な落とし穴でもある、注意すべきポイントについてお伝えします。
1.全体の目標と個人の目標を関連づける
1つ目の注意点は、全体の目標と個人の目標に関連性を持たせることです。なぜなら、企業が掲げる目標に全く関連性の無い個人目標を設定してしまうと、自分が何のために業務に取り組んでいるのかが曖昧になり、メンバーのモチベーションが低下してしまうからです。
組織の全体的な目標は、ビジョンや戦略の実現に向けた指針を提供しています。個々の目標がこれに関連していることで、全体としての方向性や目的感を共有しやすくなり、組織全体が一貫した方向を向いて行動することが可能になります。また、最終的な目標が同じであることで、情報共有や意見交換が行われるように部門間やチーム間の協力が促進されます。
このように、個人目標の達成が最終的に全体の目標達成に繋がるように設定することで、業務の方向性が明確になり、社員のモチベーションアップに繋がります。
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2.上司や管理側に知識と経験が必要
2つ目の注意点は、マネジメント側に知識と経験が必要であることです。なぜなら、目標管理においては正しく目標を設定できているのか、目標を達成できているのかといって点で、経験者による客観的で適切なフィードバックが必要だからです。
例えば、アドバイスやフィードバックを行う上司や管理側の社員が、対象となる業務についての知識を全く持っていなかったとします。すると、目標管理の時点で改善点を見つけ出すことができず、実際に業務を行ってくれている社員に対して的確なアドバイスを行うことができません。改善点が見つけ出せない程の知識や経験の状態では、やがてトラブルに繋がってしまいリカバリーが必要なシーンでも何をどうしたらよいのか、わからなくなってしまします。
そのため、上司など目標管理を行う側が正しい知識と経験を身につけなければなりません。社内研修やセミナー等で、積極的に上司や管理側の教育を行いましょう。
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3.人事評価のためだけに使用しない
3つ目は、目標管理を人事評価のためだけに使用しないことです。
目標管理の結果を人事評価に使用している企業も多くあるでしょう。しかし、目標管理の結果をすべて人事評価に繋げてしまうと、目標達成ではなく人事評価のために行動する社員が増えることが懸念されます。
例えば、売り上げが目標の200万円に対して190万円しか達成できなかった場合、低評価とされることがあります。そのため、営業チームは数字を達成させるために様々な手を尽くすようになるでしょう。
しかし、組織としての業務においては新メンバーのオンボーディングや部門間の連携作業など、数字には直結しないような業務が多々必要です。数字の結果のみを人事評価の査定に利用する仕組みでは、数字に直結しない仕事に関わるメンバーの思いに不満を生みかねません。
このようなケースにおいては、数字での結果を実績評価としてボーナスに反映する代わりに、その他の数字では計測できない成果についてを能力評価として給料アップに反映するなどの工夫がおすすめです。
目標管理はあくまで評価に反映される1つの要素であり、最終的な目標は企業全体の目標達成であることを忘れないようにしましょう。
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まとめ
今回は目標管理制度(MBO、OKR、KPI)の違いやメリット・デメリット、導入手順やマネジメントのポイントなどについてまとめました。
目標管理は、企業全体の目標を達成するために必要なものです。社員それぞれが、自分が何をすべきかを把握し、自律的な行動を促すためにも導入してみてはどうでしょうか。
目標管理制度をもとに、人事評価制度や教育制度、マネジメントの状況、施策の運用方法を見直してみるのもおすすめです。
業界や職種に合わせた効果的な目標管理制度の実施で、目標達成と事業の成長に繋げていきましょう。
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