目次
チームビルディングとは
チームビルディングとは、「目的のある集団を意図を持って形成・構築する事によって、各メンバーのスキルや能力を最大限に発揮し、目的・目標を達成出来るチームを作り上げるプロセスを指す」言葉です。
「チーム」によく似た言葉として「グループ」がよく挙げられますが、2つの最大の違いは「目的の有無」です。
チームには成すべき目的があり、それを達成するための集団であり、グループは無目的な単純な意味での集団といえるでしょう。つまり、チームビルディングとは、目的のある集団を意図を持って形成・構築する行為であると定義する事が出来ます。
チームビルディングの目的・意味
ジョン・カッツェンバックは、「ある特定の目的のために多様な人材が集まり、協働を通じて、相乗効果を生み出す少人数の集合体」とチームを定義しています。
その成果は1+1=2のような単純な足し算で計算できるものではなく、指数関数的に大きくなると推察されており、チームビルディングの目的は、組織の「協働」を促す事によって、これまでの数倍から数十倍の成果を得る事にあります。
別の視点で考えれば、チームビルディングには、人員やリソースを変更する事なく、生産性を高める意味もあるという解釈も出来るでしょう。
また、アフターコロナにおいても引き続きリモートワークを継続する企業は多く、オンライン上でコミュニケーションをとらなくてはならない状態が依然として続いています。
この影響でチームビルディングの難易度もさらに上がっています。
チームビルディングを成功に導くためには、以下を明確にする事がチームビルディングの前提条件となります。
- 心理的安全性(多様なメンバーを受け入れ可能な環境)
- 共通の目標
- 得意を生かした役割分担(得手不得手の共有)
チームビルディングのメリット
チームビルディングには、以下のメリットがあります。
- 仕事の生産性が向上する
- 高いモチベーションを維持出来る
- 外部環境の変化に強くなる
本パートでは、3つのメリットについて解説します。
仕事の生産性が向上する
チームビルディングの第1のメリットは「仕事の生産性が向上する事」です。
チームビルディングには、チーム内・メンバー間のコミュニケーションを円滑にし、心理的安全性を確保する効果があり、チーム内の情報共有や透明性が高まります。
その結果、ミスや問題に対していち早く対処出来たり、メンバー間の活発な意見交換による新しいアイディアの創出をもたらします。
高いモチベーションを維持出来る
チームビルディングの第2のメリットは「高いモチベーションを維持出来る事」です。
チームで対応しなければならない課題や目的は、必ずしも容易なものばかりではありません。
時として、体力的にも精神的にも負荷を強いられる事もありますが、困難な課題や目的に対しても継続的に取り組むモチベーションをチームビルディングはもたらします。
高い目標を掲げ、達成を目指すチームにとって、チームビルディングは必須の取り組みであると言えるでしょう。
外部環境の変化に強くなる
チームビルディングの第3のメリットは「外部環境の変化に強くなる事」です。
後述の通り、良いチーム・組織は、共通の目的を持って活動を行っています。
目的とは、何らかのあるべき姿や実現したい社会像等を示す高度に抽象的な概念です。
一方で、日々の仕事は目的に対する手段と位置付ける事が出来るでしょう。
会社経営や組織運営においては、時として大きな外部環境の変化が起こり、業務内容や事業領域。役割等が変更を与儀なくされるケースがあります。
しかし、高度にチームビルディングが進んだチームにおいては、「目的=Why」という共通点があるため、「業務・事業内容等の手段=How)が変化をしても高いモチベーションを維持出来るというメリットがあります。
逆に言えば、共通の目的を持てておらず、待遇等の外発的動機付けに支えられているチームは環境変化に弱い事に留意する必要があります。
チームビルディングのポイント・注意点
チームビルディングのポイントを考える上では、アメリカの経営学者チェスター・バーナードが提唱した組織論が参考になるでしょう。
バーナードは組織の成立要件として、3つの要素を挙げています。
- コミュニケーション
- 貢献の意欲
- 共通の目標
本パートでは、チームビルディングのポイントを上記の3つの要素より解説します。
コミュニケーション
チームビルディングにおける第1のポイントは「コミュニケーション」です。
コミュニケーションとは、従業員・社員等の組織の構成員同士の情報共有や意思疎通を指します。
コミュニケーションの量や質が不足しているチームは、問題が発生した際に、対応が遅くなったり、誤った対応をしてしまうリスクが高まります。
また、働く個人の観点では、コミュニケーションの量や質が不足している組織は、一般的に、働き辛かったり、業務を効率的に進めにくいと言われています。
チームビルディングを進める際には、チーム内のコミュニケーションの量や質を担保するための仕掛けを容易する事が重要となります。
以下は、企業内でよく行われているチームビルディングのための施策となります。
- GOOD & NEW
- 朝礼や終礼
- ランチ会
また、Co:TEAm(コチーム)を活用することで、チーム内外のメンバーに対してフィードバックを送ったりチャットでやりとりすることができます。
部署を超えたコミュニケーションを活性化させることで、さらに組織としての結束が強くなるでしょう。
貢献の意欲
チームビルディングにおける第2のポイントは「貢献の意欲」です。
貢献意欲とは、メンバーやリーダーがチームの活動に対して発揮されるモチベーションの事を指します。
なお、モチベーションには、外発的動機付けと内発的動機付けの2種類が存在します。
外発的動機づけは、昇進・昇給等の「待遇」、綺麗なオフィスやテレワークの許可等の「環境・条件」によってもたらされます。
ですが、効果が一過性である事や不満の解消(マイナスからゼロへ)をもたらすものの、満足の醸成(ゼロからプラスへ)の効果が低い事が問題点として指摘されています。
一方、内発的動機付けは、仕事への意義やチームへの貢献意欲によって湧き上がるモチベーションであり、外発的動機付けと比較すると持続的かつ高いモチベーションを生むものとされています。
チームビルディングにおいては、「貢献の意欲」を高め、「内発的動機付け」によって動くチームをいかにして作れるかがポイントとなるでしょう。
共通の目標
チームビルディングにおける第3のポイントは「共通の目標」です。
共通の目標は、前述の2要素(コミュニケーションと貢献の意欲)を生むための前提条件と言えるかもしれません。
目標設定におけるポイントは、組織=チームと個人=従業員が共通の目的を持てるかどうかです。
具体的には、下記の観点でチームを見直してみる事が重要です。
- チームの職務内容と個人のキャリア展望が一致しているか?
- チームのミッションと個人の価値観が一致しているか?
- チームのバリュー(行動指針)と個人の行動が一致しているか?
もしズレが発生している場合には、1on1やワークショップ等を開催し、チームと個人の目的において一致出来る部分はどこにあるのか?を模索する必要があるでしょう。
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チームビルディングの手法とフレームワーク
チームビルディングのメリットや注意点、ポイントについては以上の通りですが、実際にチームビルディングに取り組む際にはどのような手法やフレームワークがあるのでしょうか。
本パートでは、チームビルディングの手法・フレームワークの代表的な2つについて取り上げます。
タックマンモデル
心理学者ブルース・W・タックマン氏が提唱したチームの発展段階を示すフレームワークです。
タックマンモデルにおいては、チームビルディングは、「形成期」→「混乱期」→「統一期」→「機能期」→「散会期」という5段階のプロセスを経て発展すると考えられています。
本パートでは、各段階毎の定義と次のステップに進むためのポイントについて紹介します。
1. 形成期
形成期とはチームが出来たばかりの段階で、この段階ではメンバー同士の理解もなく、目標も明確でないため緊張感がある状態です。
次の段階に進むためにはメンバー同士の相互理解が必要です。
また、この段階ではリーダーやマネージャーが主導権を握ってチームの課題を洗い出す必要があります。
2. 混乱期
混乱期とは、チームの目標が明確となり、プロジェクトが開始した段階です。
この段階では、メンバーの考え方が異なることから意見の相違、対立関係が生じます。
次の段階に進むためには、対立を次のステップに進むために必要なものと捉え、メンバー同士が恐れずに議論を交わすことで課題解決につなげていく必要があります。
3. 統一期
統一期とは、混乱期での議論を乗り越え、メンバー同士の考え方の違いを理解し安定したチームに統一されていく段階です。
この段階では、チームの目標とメンバーの役割分担が共有されているためチームとしてまとまりがある状態です。
次の段階に進むためには、メンバーの主体性と納得感のある目標設定、メンバーのそれぞれの長所を生かした(短所を補うような)役割分担が必要となります。
4. 機能期
機能期とは、チームとして機能し成果が出せる段階です。
この段階では、それぞれが役割分担をしながらもメンバーが主体的にお互いをサポートし、フォローしていくことができるようになります。
この状態を継続するためには、リーダーやマネージャーが人材配置を考えながらメンバーに適切なサポートを与える必要があります。
また、チームワークを高める研修(ゲーム)の実行も効果的です。
5. 散会期
散会期とは、チームが解散する段階です。
それはプロジェクトの終了であったりメンバーの異動であったり要因は様々です。
この段階ではチームビルディングの成否を確認することができます。
チームが解散するときに、メンバーが感じる感情がそのままそのチームのそれまで行ってきたチームビルディングへの評価となります。
タックマンモデルの学び
タックマンモデル最大のポイントは、チームは必ず混乱期を通る必要があるという事です。
一般的には混乱期を避けようとするチームが多いのではないでしょうか。
しかし、このタックマンモデルから混乱期は成果をあげるチームを作るためには避けて通ることができないことを私たちに教えてくれます。
チーム内のモチベーションが一時的に下がってしまう、チーム内に対立が生まれる等の負の要素もチームビルディングの過程としては必要であると捉えられるかどうかがチームビルディングの鍵となるでしょう。
GRPIモデル
GRPIモデルは、組織コンサルタントのリチャード・ベックハード氏が提唱したチームビルディングのフレームワークです。
ベックハード氏は、チームビルディングにおいて「組織の健全さ」が重要と考えており、これを測るためのフレームワークがGRPIモデルです。
G(Goal)は目標、R(Role)は役割、P(Process)は手順、I(Interaction)は関係性を示します。
G(Goal):目標
・明確な目標設定となっているか
・目標がメンバーに共有された上でチームに浸透し理解されているか
・目標に対してメンバーの納得があるか
R(Role):役割
・目標達成のためのタスクや役割分担が明確でチームに共有されているか
・目標達成のために必要なメンバーは揃っているか
・メンバーが不足している場合、補完する施策はあるか
P(Process):手順
・目標達成のために必要なマイルストーンがひけているか
・メンバー同士の連携ができているか
・業務フローは明確かつ共有されているか
・意思決定のフローと基準は明確かつ共有されているか
・問題発生時の対応フローは明確かつ共有されているか
I(Interaction):関係性
・メンバー同士のコミュニケーションは円滑か
・メンバー同士に信頼感はあるか
・フィードバックするための場と仕組みはあるか
GRPIモデルの学び
4つの項目に基づいて現在の組織を評価する事によって、チームビルディングにおける課題とその優先度を明らかにする事が可能です。
また、G→R→P→Iのこの順番でチェックしていくことが重要であると言われており、チームビルディングにおいては、チームの目標について定義・合意することの重要性が示唆されています。
チームビルディングが上手くいかない場合には、4つの指標とGRPIの手順で評価をする事によって、改善を図ることをオススメします。
チームビルディングに役立つ研修・ゲーム・ワークショップ
チームビルディングの具体的な研修を考えるときのポイントは、チームの現状を把握し必要な手段を選択できるかです。
まずは、チームがタックマンモデルのどの時期に当てはまるのか、そもそもチームビルディングをするための前提条件が揃っているかを確認してください。
その上で、タックマンモデルの機能期に進むために必要な要素を体験できるものを選択するようにしましょう。
また、各研修後に必ず振り返りの時間を設けましょう。
形成期のチームビルディングに役立つ研修・ゲーム・ワークショップ
相互理解を深める事が出来る研修・ゲームがチームビルディングの役に立つでしょう。
・読書会
・ジョハリの窓ワークショップ
・人狼ゲーム
混乱期のチームビルディングに役立つ研修・ゲーム・ワークショップ
他のチームとの勝敗がつくものかつ様々な意見を取りまとめていく必要がある研修・ゲームがチームビルディングの役に立つでしょう。
・マシュマロ・チャレンジ
・ディベート
統一期のチームビルディングに役立つ研修・ゲーム・ワークショップ
実践的でかつ役割分担が出来る研修・ゲームがチームビルディングの役に立つでしょう。
・BBQ
・サバイバルゲーム
・リアル脱出ゲーム
チームビルディングの事例に関する本・書籍
THE CULTURE CODE ―カルチャーコード― 最強チームをつくる方法
「強いチーム」が持つ文化の特徴とその文化の作り方を解説したチームビルディングの名著です。
- 安全な環境
- 弱さの共有
- 共通の目標
筆者は、強いチームに共通する特徴を、上記3つに整理しました。
本パートでは、強いチーム3つの特徴についてそれぞれ解説します。
1. 安全な環境をつくる(Build Safety)
これは「心理的安全性」という言葉で表現される、自分がその場所にいてもよいという安心感を指す言葉です。
「心理的安全性」が信頼を生み、それが帰属意識に繋がると筆者は説いています。
「心理的安全性」が担保されているチームにおいては、一見すると奇抜な発想を一蹴されたり、真っ当な批判を握りつぶされたりする事がありません。
そうして、本質的な議論が生まれることでチームとしての創造力が高まり、「強いチーム」づくりが可能となります。
心理的安全性の詳細については、下記記事をご覧下さい。
2. 弱さを共有する(Share Valnerability)
弱さの開示は、信頼関係や協力関係をつくり出すための方法論として本書では位置付けられています。
安全な環境によって、弱さの開示、つまり、自分に何が不足しているかを素直に認める事が可能となり、チームにいる仲間や外部の人材に適切な支援を求めることが出来るようになります。
結果として、チームのパフォーマンスは最大化され、より大きなインパクトを生み出すことに繋がるという事を筆者は説いています。
3. 共通の目標を持つ(Establish Purpose)
ここでいう「目標」とは、経営計画や期毎に設定される予算ではなく、より高次の存在目的を指す言葉です。
本書では「理想と現実をつなぐ物語」と表現されていますが、目的とは、組織が実現したい未来と現実とのギャップを埋めるための行動指針であると言い換えられるでしょう。
「強いチーム」をつくる上で重要な事は、「目標」を「骨まで浸透」させることであると筆者は説いています。
世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法
本書も同様に、チームにおける心理的安全性を説いた書籍です。
生産性が高いチームは、「心理的安全性」が高い傾向にあり、メンバーが安心して働けるチームをつくることもマネジャーの役割であるという事が説かれています。
心理的安全性を確保する上で、2つのポイントがあります。
1点目は、いわゆる「リフレーミング」を行う事です。
例えば、愚痴や不満を撒き散らす人に対しては、ネガティブな発言をポジティブに言い換えて聞き返す事です。
重要なのは、決して、責めたり問い詰めたりせず、具体的な行動に繋げるようなコミュニケーションを心がける事であると本書は説いています。
2点目は、マネージャーの役割が強く強調されている点です。
書籍内では、「仕事ができないメンバーがいるとしたら、それはマネジャーの責任である」という趣旨の記載がありますが、マネジャーが自分のことを見てくれている、自分を気にかけてくれているとメンバーが感じる事が、チームビルディングに繋がると考えられます。
●若手社員の考えがわからない
●若手社員の育成方法がわからない
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まとめ
チームとしてなかなか成果が上がらないとお悩みの場合、チームビルディングを行いましょう。
まずタックマンモデルでチームの現在の位置付けを確認し、GRPIモデルで振り返りを行ってみてください。
そして、チームを次のステップに進ませるためにご紹介したような研修(ゲーム)を試してみてはいかがでしょうか。
お役立ち情報
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