スキルマップとは?目的やメリット、職種・業種別の項目例まで解説

部下の評価が曖昧、誰が何を得意か把握しきれていない、という課題は、従業員の能力を可視化するスキルマップで解決できます。導入することで、感覚に頼った管理から脱却し、公平な評価と戦略的な人材育成が実現できるからです。

本記事では、スキルマップの正しい定義から、失敗しない作成手順、職種別の具体例までを徹底解説します。読み終える頃には、組織の生産性を高める導入プランが見えてきます。

▼ この記事の内容

  • 能力の可視化: 誰が何を得意としているかを一覧表にして、公平な評価や人材育成に活かすツールです。スキルレベルを明確にすることで、感覚的な管理から脱却できます。
  • 属人化の解消: 特定の社員しかできない業務を洗い出し、リスクを回避します。急な欠員や異動があっても、誰が代わりに対応できるかが分かり、組織が回る仕組みを作れます。
  • 運用のコツ: 現場の声を反映して項目を決め、定期的に更新し続けることが重要です。1on1での対話とセットで使うことで、部下の成長意欲を引き出せます。

スキルマップとは

スキルマップとは、業務の遂行に必要な能力(スキル)を洗い出し、従業員一人ひとりがどのスキルを・どのレベルで保有しているかを一覧表にしたものです。「力量管理表」や「スキルマトリックス」とも呼ばれます。

誰が何を得意としているかが一目でわかるため、人材育成や評価、適材適所の配置に活用する基礎データとして、多くの企業で活用されています。

ビジネスにおける「スキル」とは

ビジネスシーンで用いられる「スキル」は、単なる知識の有無だけではありません。

大きく分けて2種類のスキルが存在します。業務に必要な専門知識や技術を指す「テクニカルスキル」と、対人関係や仕事への向き合い方に関わる「ヒューマンスキル」の2種類です。

テクニカルスキル(業務遂行能力)その業務を行うために必要な「専門知識」や「技術」のことです。具体的で、定型的・定量的に測定しやすいスキルです。マニュアル、研修、資格勉強などで比較的短期間に習得可能です。
ヒューマンスキル(対人関係能力)他者と良好な関係を築き、円滑に業務を進めるための「対人能力」のことです。抽象的で、測定が難しく、汎用性が高い(どの職種でも使える)スキルです。経験、意識変革、フィードバックなどを通じて長期的に養われます。

この2つはどちらが欠けても仕事はうまくいきません。スキルマップを作成する際は、スキルを具体的に定義し、簡単な言葉で基準を設けることが、客観的な評価につながります。

人材ポートフォリオとの違い

スキルマップと混同されやすい言葉に「人材ポートフォリオ」があります。

人材ポートフォリオは、組織全体の人材構成をカテゴリーで分類するフレームワークです。マネジメント層や実務担当者といった枠組みで、経営戦略上の過不足を把握するために用います。

対してスキルマップは、個々の従業員が持つ具体的な技術や能力のレベルを詳細に管理するツールです。

マネジメントにおける使い分けのイメージ

  • 人材ポートフォリオを見て、「将来の幹部候補が不足しているから、ポテンシャル層への投資を増やそう」と経営判断をします。
  • その方針を受けて、スキルマップを使って、「ポテンシャル層のAさんには、来月までに『クロージング』のスキルを習得させよう」と現場指導を行います。
主な目的
人材ポートフォリオ採用計画の立案(どの層が足りないか)
次世代リーダーの抜擢・育成
退社(退出)を含む新陳代謝の管理
人件費の適正配分
スキルマップ教育・指導:個人の「できないこと」を特定し、OJTや研修の計画を立てる。
標準化:属人化を防ぎ、業務品質を均一にする。
評価:「何ができるようになったか」を客観的に評価する。
リスク管理: 特定の人しかできない業務(ブラックボックス)を洗い出す。

つまり、人材ポートフォリオは「組織の大枠の配置」を、スキルマップは「個人の能力詳細」を見るものという違いがあります。

なぜ今注目されているのか

近年、少子高齢化による深刻な人材不足や、急速なデジタル化(DX)への対応が迫られています。

限られた人数で生産性を最大化するためには、従業員の能力を正確に把握し、効率的な育成と配置を行うことが不可欠です。

また、ISO9001(品質マネジメントシステム)において、業務に必要な能力を明確にし、教育訓練を行うことが求められている点も背景にあります。

終身雇用からジョブ型雇用への移行が進む中、個人のスキルを客観的に証明する手段としても重要性が増しています。

スキルマップを作る3つの目的

企業がスキルマップを作成する根本的な理由は、組織の現状を正確にデータ化し、経営戦略に基づいた「あるべき姿」へ近づけるためです。

勘や経験に頼った人事管理から脱却し、事実に基づいた組織マネジメントを実践するための土台となります。

ここでは、作成によって達成すべき主要な3つの目的について解説します。

業務の属人化を解消する

特定の社員しかその業務ができないという属人化は、組織にとって大きなリスクです。その担当者が休職や退職をした瞬間、業務が停止してしまうからです。

スキルマップで誰が何ができるかを可視化することで、スキル保有者が一人しかいない業務(ボトルネック)を早期に発見できます。

リスクの高い箇所が判明すれば、他の社員への教育やマニュアル作成などの対策を先手で打てます。

組織全体のスキル状況を可視化する

組織として「現在どのような強みがあり、何が不足しているか」を俯瞰(ふかん)して把握することは、経営判断において重要です。

スキルマップを集計・分析することで、「営業力はあるが、デジタル活用スキルが全体的に低い」「中堅層のマネジメント能力が不足している」といった組織の課題が浮き彫りになります。

これにより、全社的な研修計画の立案や、採用活動におけるターゲット設定(求める人物像の明確化)を、精度の高い根拠に基づいて行うことが可能になります。

適材適所の人員配置を実現する

プロジェクトチームの編成や異動において、従業員のスキル情報は不可欠です。

スキルマップがあれば、「新規事業立ち上げに必要な〇〇のスキルを持つ人材」や「部下の育成が得意な人材」をデータに基づいて選定できます。

個人の得意分野を活かせるポジションに配置することで、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まり、結果として組織全体のパフォーマンス最大化につながります。

スキルマップ導入で得られる5つのメリット

スキルマップの導入は、会社側だけでなく、働く従業員にとっても多くの利点をもたらします。能力が可視化されることで、目指すべき方向性が明確になり、納得感のある働き方が実現できるからです。

ここでは、導入によって具体的にどのような効果が期待できるのか、代表的な5つのメリットを挙げます。

評価への不満を解消できる

人事評価において「なぜこの評価なのか」という基準が曖昧だと、従業員の不満につながります。

スキルマップでは、「何ができればレベル3なのか」という具体的な到達基準の明確化が可能です。上司と部下が同じ基準を見ながら話し合えるため、評価の公平性と納得感が高まります。

「上司の好き嫌いで評価が決まる」という疑念を払拭し、客観的な事実に基づいた公正なフィードバックができるようになります。

OJT・研修の効果測定が可能になる

教育研修やOJT(職場内訓練)を実施しても、その効果が具体的にどう現れたのかは見えにくいものです。しかし、スキルマップを活用すれば、研修前後でスキルの習熟度がどう変化したかを数値で比較できます。

「研修でレベル2から3に上がった」といった、定量的な効果測定が可能になります。その結果、教育予算の費用対効果(ROI)も検証しやすくなるでしょう。

採用のミスマッチが減る

スキルマップによって「自社に今足りないスキル」が明確になっていれば、採用活動の精度が格段に上がります。

「なんとなく優秀な人」ではなく、「〇〇のツールを使えるレベル4以上の人材」といった具体的な要件定義ができるようになるからです。

求職者に対しても具体的な期待値を伝えられるため、入社後の「思っていた仕事と違う」「能力が活かせない」といったミスマッチや早期離職を防げます。

個人のキャリアパスを可視化できる

従業員自身が「将来どのようなスキルを身につければ、どんな役職や仕事に就けるのか」というキャリアパスを描きやすくなります。

スキルマップは成長の地図のような役割を果たし、次のステップに必要なスキルを一覧で確認できます。

目標が明確になることで、自律的な学習意欲が刺激され、モチベーションの維持・向上が可能です。

急な欠員・異動に即座に対応できる

急な退職や病気による欠員が発生した際、スキルマップがあれば、即座に代わりの人材を探し出すことができます。「この業務に対応できるスキルセットを持っているのは誰か」を検索し、他部署からの応援要請や配置転換をスムーズに行うことが可能です。

誰がどの業務をカバーできるかが平時から共有されているため、現場の混乱を最小限に抑え、業務継続計画(BCP)の観点からも組織の強靭性が高まります。

スキルマップ導入のデメリット

スキルマップの導入には多くのメリットがある一方で、運用を誤ると組織の負担になったり、逆効果になったりするリスクも存在します。

成功させるためには、あらかじめ起こりうる問題を理解し、対策を講じておくことが重要です。

ここでは、導入前に知っておくべき3つの主なデメリットと注意点について解説します。

導入・運用に工数がかかる

スキルマップの作成には、業務の洗い出し、スキル項目の定義、評価基準の策定など、膨大な初期工数が必要です。

また、一度作って終わりではなく、従業員の成長や業務内容の変化に合わせて、定期的にデータを更新し続ける必要があります。

Excelなどで手動管理する場合、人数が増えると管理コストが肥大化し、担当者の業務を圧迫する可能性があります。効率的に運用するためのツール選定や体制づくりが不可欠です。

評価基準が曖昧だと不公平感を招く

スキル項目を設定しても、「できる」の定義が人によって異なると問題が生じます。

例えば、自己評価では「できる」としていても、上司から見れば「不十分」と判断されるケースです。基準における認識のズレは、従業員の不信感を招きます。

「一人で完結できる=レベル3」「指導が必要=レベル2」など、誰が見ても同じ判断ができるよう、具体的な行動レベルまで基準を言語化する作業が求められます。

形骸化しやすい

最も多い失敗パターンが、作成すること自体が目的化し、実際の現場で活用されない「形骸化」です。

更新頻度が未定だったり、評価結果が給与に反映されなかったりするケースです。こうなると、現場は入力作業をただの面倒な事務作業と捉えてしまいます。

運用目的を全社に周知し、1on1ミーティングや目標設定の場とセットで活用する仕組みを整えないと、データが埋もれることになってしまいます。

スキルマップを導入するための5ステップ

スキルマップを効果的に導入するためには、いきなり表を作り始めるのではなく、段階を踏んで進めることが重要です。

目的が曖昧なまま作成すると、現場の実態に合わない使いにくいものが出来上がってしまいます。

ここでは、導入から運用開始までの標準的なプロセスを5つのステップに分けて解説します。

①目的と対象範囲を定義する

まずは「なぜスキルマップを作るのか」という目的を明確にします。

人材育成のためなのか、評価制度の改定のためなのか、目的によって必要な項目の粒度が異なるからです。

また、全社員を対象にするのか、特定の部署でのスモールスタートにするのか、適用範囲も決めておくことが重要です。

目的と範囲を最初に定めることで、関係者の認識を合わせ、ブレのないプロジェクト進行が可能になります。

②必要なスキル項目を洗い出す

対象となる部署や職種の業務を棚卸しし、遂行に必要なスキルをリストアップします。

実際に現場で働くハイパフォーマーにヒアリングやインタビューを行い、具体的な行動特性(コンピテンシー)を抽出するのが効果的です。

具体例:法人営業職のスキル項目

  • 基礎スキル: ビジネスマナー、PCスキル、自社商品知識
  • 専門スキル: ヒアリング力、提案書作成、クロージング、顧客管理
  • 対人スキル: 交渉力、クレーム対応力、社内調整力
  • マネジメントスキル: 目標管理、部下育成、チームビルディング

業務知識などのテクニカルスキルだけでなく、問題解決力などのヒューマンスキルも含め、抜け漏れがないように洗い出しを行います。

③評価基準を設計する

次に行うのは、洗い出した各スキルについて、習熟度を測るための評価基準(レベル定義)を設定することです。

一般的には1〜5段階などで設定しますが、以下のように、状態を具体的に言語化します。

  • レベル1: 知識はあるが、実施には指導が必要
  • レベル2: 一人で標準的な業務ができる
  • レベル3: 他者に指導ができ、改善提案もできる
  • レベル4: 社内トップレベルの専門性を持ち、マニュアル化できる

判定に迷いが生じないよう、客観的な指標を設けることが公平性を保つ鍵となります。

④フォーマットを作成する

決定したスキル項目と評価基準を見やすい一覧表にし、実際に使用するフォーマットを作成します。

縦軸に社員名、横軸にスキル分類などを配置し、マトリックス形式にするのが一般的です。

フォーマットの構成要素

  • 縦軸: 対象となる社員の氏名、所属
  • 横軸: 洗い出したスキル項目(大項目、中項目と階層化すると見やすい)
  • セル: 現在の評価レベル(1〜4の数字や、◯◎などの記号を入力)

このようにExcelやGoogleスプレッドシートで作成し、運用が軌道に乗ってからシステム移行する方法も効率的です。専用ツールなら管理がより楽になります。

⑤評価を実施し、運用を開始する

フォーマットが完成したら、実際に評価を行います。

まずは本人が自己評価を行い、その後に上司が評価をしてすり合わせを行う流れが一般的です。評価結果が出たら、現状のスキル不足箇所(ギャップ)を確認し、今後の育成計画や配置検討に活用します。

運用サイクルの具体例

  1. 自己評価: まずは本人が自分のスキルレベルを判定する
  2. 上司評価: 上司が客観的な視点で評価し、本人評価とのギャップを確認する
  3. フィードバック面談: ギャップの原因を話し合い、最終的な評価を確定させる
  4. 目標設定: 「次の半期で、どのスキルをレベル2から3にするか」を決定する
  5. 配置・育成活用: 不足スキルを補う研修を実施したり、プロジェクト配置に活用する

これらの運用サイクルを回すだけでなく、定期的な見直しを行い、運用状況を改善することが重要です。

スキルマップのさらに詳細な作り方や効果的な運用方法については、下記の記事で解説しています。

無料で使えるテンプレート

自社独自でゼロからスキルマップを作成するのは大変な労力がかかります。

公的機関が公開している標準的なテンプレートやデータを参考にし、自社に合わせてカスタマイズすることで、作成時間を大幅に短縮し、品質の高いマップを作ることが可能です。

ここでは、無料で利用できる信頼性の高いリソースを2つ紹介します。

厚生労働省「職業能力評価シート」

厚生労働省は、職業能力評価基準に基づいて作成された「職業能力評価シート」を無料で公開しています。

事務系、製造系、建設系など、幅広い業種・職種に対応した詳細な項目が用意されています。公的な基準に基づいているため信頼性が高く、体系的にスキルを整理したい場合に非常に便利です。

そのまま使用するだけでなく、自社の業務内容に合わせて修正することも可能です。

公式サイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08021.html

IPA「情報システムユーザースキル標準(UISS)」

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が提供している「情報システムユーザースキル標準(UISS)」や「iコンピテンシディクショナリ(iCD)」は、ITエンジニアや情報システム部門のスキル定義に特化した指標です。

IT人材に必要なスキルが体系的かつ詳細に網羅されており、IT企業やDX推進部門におけるスキルマップ作成のグローバルスタンダードとして活用されています。

公式サイト:https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/uiss.html

スキルマップの職種別・業種別の項目例

スキルマップに記載すべき項目は、職種や業種によって大きく異なります。

現場の実態とかけ離れた項目を設定してしまうと、正しく能力を評価できません。

ここでは、主要な職種・業種において一般的に設定されるスキルの項目例を紹介します。これらを参考に、自社の業務特性に合わせて調整してください。

営業職

営業職は「行動量」と「成約の質」の両面から評価項目を設定します。

分類項目名具体的な内容・評価ポイント
基礎・対人スキルビジネスマナー名刺交換、敬語、身だしなみの徹底
コミュニケーション能力アイスブレイク、傾聴力、報連相の徹底
オンライン商談スキルZoom/Teamsの操作、画面共有、オンラインでの表情管理
クレーム初期対応迅速な謝罪、事実確認、上長への報告
プロセス・実務ターゲット選定・リスト作成確度の高い見込み客の抽出
アポイント獲得テレアポ、メール営業、SNS活用
ヒアリング・課題抽出BANT条件の確認、潜在ニーズの掘り起こし
提案書・見積書作成PowerPoint構成力、利益率を考慮した価格設定
プレゼンテーションデモ実施、訴求ポイントの伝達
クロージング契約条件の調整、決裁者へのアプローチ
顧客管理(CRM/SFA)Salesforce等への入力、活動履歴の更新
知識・分析自社商品・サービス知識スペック、強み、導入事例の暗記
競合他社分析競合との機能比較、差別化トークの展開
業界トレンド把握法改正、市場動向の理解

エンジニア・技術職(IT・製造設計)

技術スタックと開発工程の両軸で設定します。

分類項目名具体的な内容・評価ポイント
ITエンジニア言語・FWJava, Python, React等の習熟度
インフラAWS/Azure構築、Docker/Kubernetes
工程スキル要件定義、基本・詳細設計、テスト自動化
製造設計・技術CAD操作2D/3D CAD(CATIA, SolidWorks)の操作
部品・材料樹脂・金属特性の理解、コスト意識
試作・評価測定器の使用、耐久テスト、レポート作成

事務・バックオフィス職

「正確性」「スピード」に加え、「IT活用能力」を具体的にします。

分類項目名具体的な内容・評価ポイント
経理・財務日次・決算仕訳入力、試算表作成、B/S・P/L作成補助
ソフト操作勘定奉行、freee、MoneyForward等の活用
総務・人事労務管理勤怠システム運用、給与計算、社会保険手続き
採用業務面接日程調整、求人票作成、媒体管理
共通OAExcel活用VLOOKUP、ピボットテーブル、VBA/マクロ
文書作成社内規定作成、業務フロー可視化

現場作業・製造職(製造・建設)

安全第一を前提に、作業の習熟度を項目化します。

分類項目名具体的な内容・評価ポイント
安全・基本5S・KY活動整理整頓、危険予知活動、保護具の正着
報連相異常発生時のラインストップ、迅速な報告
製造・加工機械操作旋盤、フライス盤、プレス機等の操作
組立・組付電動ドライバー使用、トルク管理、手順書遵守
品質・管理検査・測定ノギス等の使用、キズ・汚れの判定
図面読解加工図面から完成形をイメージする力

医療・介護職

資格に紐づく専門スキルと、チーム連携スキルに分けます。

分類項目名具体的な内容・評価ポイント
介護・支援身体介助食事(嚥下確認)、入浴、排泄、移乗介助
生活援助居室清掃、衣類洗濯、調理
医療・事務健康管理バイタルチェック、服薬管理、感染症対策
記録・報告介護記録ソフト入力、夜勤巡視、申し送り

マネジメント職・リーダー層

プレイングスキルではなく、「組織を動かす力」を項目化します。

分類項目名具体的な内容・評価ポイント
組織運営目標・KPI管理部門目標策定、進捗モニタリング、改善策立案
業務改善BPR(ムダ排除)、DX推進、リスク管理
人材育成評価・面談公平な評価、フィードバック、コーチング
チームビルディングメンタルヘルスケア、残業管理、離職防止

スキルマップで課題を解決した事例

実際にスキルマップを導入し、組織の課題解決や生産性向上に成功した企業の事例を知ることは、自社での運用イメージを掴む助けになります。

ここでは、日本を代表する企業がどのようにスキルを可視化し、人材育成や組織強化につなげているか、特徴的な3つの事例を紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車では、製造現場において「星取表」と呼ばれるスキルマップ(「ILU」表など)が伝統的に活用されています。

同社の特徴は、各作業者の習熟度を4段階などで可視化し、誰がどの工程を担当できるかを一目でわかるように掲示している点です。

これにより、多能工化(一人が複数の工程をこなせる状態)が促進され、欠員が出てもラインを止めずに生産を継続できる強靭な現場体制が構築されています。

(参考)トヨタが実践したスキルマップとは?導入目的や項目の具体例・運用方法を解説!|コチーム

日立製作所

日立製作所では、グローバル規模での人材マネジメントを最適化するため、世界共通のスキルデータベースを構築しています。

社員のスキルや経験を可視化し、プロジェクトに必要な人材を国境を越えてアサインできる仕組みを整えました。

ジョブ型雇用への転換とも連動させ、社員が自律的にキャリアを形成するためのプラットフォームとして機能させています。

(参考)日立が進める「ジョブ型」とは?わかりやすく解説|HITACHI

ヤフー

ヤフー(現LINEヤフー)では、1on1ミーティングの文化と連動して、人材の才能開発に力を入れています。

同社の特徴は、独自のタレントマネジメントシステムを活用し、社員の経験やスキル、キャリア意向の蓄積を行なっている点です。上司と部下がデータを共有しながら対話を行うことで、個人の成長支援と組織のパフォーマンス向上を両立させています。

単なる管理ツールではなく、コミュニケーションの媒介として活用している好例です。

(参考)成長支援|LINEヤフー

スキルマップを効果的に運用するポイント

スキルマップは「作って終わり」ではなく、運用し続けることで初めて価値が生まれます。

しかし、多くの企業が直面する壁は、更新の滞りや現場の無関心といった問題です。

ここでは、形骸化を防ぎ、組織の成長を支える仕組みとして継続的に機能させるための、重要な4つの運用ポイントについて解説します。

現場の声を反映して項目を設計する

人事部や経営層だけで項目を決めると、現場の実態とズレたものが出来上がり、現場の納得感を得られません。

「実際の業務ではこのスキルは使わない」といった現場の不満を防ぐためです。作成段階から、マネージャーや実務担当者を巻き込むことが重要になります。

現場のリアルな意見を反映させることで、「自分たちのためのツール」という当事者意識が生まれます。

定期的に更新し形骸化を防ぐ

社員のスキルは日々変化します。半年に一度の評価時期やプロジェクト終了時など、更新のタイミングをルール化することが重要です。

更新作業をイベント化し、最新の状態を保つことを業務の一環として定着させます。

情報が古いままだと、配置検討などで使えなくなり、次第に見向きもされなくなってしまいます。常に最新の状態を保つことが運用成功の鍵です。

1on1やフィードバックと連動させる

スキルマップの評価結果を、単に給与を決めるためだけに使うのはもったいないことです。

上司と部下の1on1ミーティングや面談の際にスキルマップを手元に置き、「次はどのスキルを伸ばすか」「そのためにどんな経験が必要か」を話し合うための資料として活用します。

成長の道筋を一緒に確認することで、部下の成長意欲を引き出し、信頼関係の構築にも役立ちます。

成果直結を目指すなら「行動」まで分解する

単に「〇〇のスキルがある」だけでなく、そのスキルを使って「どのような成果や行動を生み出しているか」まで分解して評価することで、業績向上に直結しやすくなります。

例えば「営業スキルがある」ではなく「初回訪問で課題を特定し、次回アポを〇%で獲得できる」といった行動プロセスに落とし込む考え方です。

これを体系化したものが「スキルプロセスマップ」です。スキルプロセスマップは、業務で必要なスキルを行動プロセスに細分化することで、そのスキルを素早く獲得することを目的としています。

スキルプロセスマップの詳細は、下記の資料で詳しく解説しています。


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よくあるご質問(FAQ)

Q1. そもそもスキルマップとはどのようなものですか?

A: 従業員のスキル保有状況を一覧化した「力量管理表」のことです。縦軸に氏名、横軸にスキル項目を配置し、誰がどの業務をどのレベルでこなせるかを可視化します。人材育成や配置、公平な評価を行うための基礎データとして活用されます。

Q2. 人材ポートフォリオとの違いは何ですか?

A: 管理する対象の「細かさ」と「目的」が異なります。ポートフォリオは組織全体の人員構成を大枠で見るのに対し、スキルマップは個人の具体的な能力や技術レベルを詳細に管理し、現場での実務指導や育成に用いるツールです。

Q3. 導入しても形骸化させないコツはありますか?

A: 更新のタイミングをルール化し、評価と連動させましょう。作って終わりではなく、半期ごとの面談や1on1で成長確認のツールとして使い続けることで、現場にとって意味のある運用が定着します。

Q4. 評価基準はどうやって決めればいいですか?

A: 「一人でできる」「指導ができる」など、行動ベースで定義します。認識のズレを防ぐため、数字だけでなく具体的な状態を言語化し、誰が見ても同じ判断ができる客観的な基準を設けることが、公平性を保つポイントです。

Q5. ゼロから作るのが大変なのですが、どうすれば?

A: 厚生労働省などが公開している「無料テンプレート」を活用してください。公的な職業能力評価基準を参考にしつつ、自社の業務に合わせてカスタマイズすることで、作成工数を大幅に削減し、精度の高いマップを作成できます。

まとめ

スキルマップは、従業員の能力を可視化し、組織の採用・育成・評価・配置を適正化する有効なツールです。

業務の属人化を防ぎ、公正な評価制度を構築するだけでなく、社員一人ひとりのキャリア自律を促す効果もあります。導入には一定の工数がかかりますが、現場を巻き込み、目的を持って運用し続けることで、企業の競争力と従業員の満足度を同時に高めることが可能です。

まずは小規模な部署での試験導入から、人材の価値を高める取り組みを始めることをおすすめします。

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