1on1ミーティングはマネージャーとメンバーの一対一で定期的に面談を行うという人事施策ですが、この1on1がメンバーの悩みや課題の解決に有用であると近年知られつつあります。1on1がこのような効果を持つ理由や、また1on1を行う際に意識すべきポイントやコツ等を紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。
1on1で悩みを解決できる理由
どのような理由で、1on1はメンバーの悩みや課題の解決を可能にしているのでしょうか?
代表的な3つを紹介していきます。
- 信頼関係を構築しやすい
- 悩みを引き出しやすい
- 悩みの解決策を一緒に考える事ができる
信頼関係を構築しやすい
1on1を実施することで、信頼関係を構築しやすくなります。
マネージャーとメンバーというのは、評価・被評価関係にあるというだけではなく仕事をする上でも上下関係で関わりながら協働することが多いため、お互いを知り信頼関係を構築することは欠かせません。
しかし、多くの現場ではマネージャーとメンバーとの間は簡単な指示だしや評価面談といった関わり方にとどまり、十分な信頼関係を構築するにはお互いの自己開示やそのためのコミュニケーションが不足してしまっています。
1on1では、一対一でより密接且つ個人的なコミュニケーションが可能であり、且つ頻度も週1回と高頻度に設定されているため、自然とお互いの自己開示が進み信頼関係を生みやすくなります。
また、もちろん1on1の内容の質も大切ですが、対人間の好感度においては「単純接触効果」という関わる量がそのまま好感度の向上に繋がるという心理効果が働くため、「とりあえず形だけでも1on1を実施してみる」というだけでも信頼関係の構築にプラスに作用するといえます。
悩みを引き出しやすい
1on1を実施することで、部下の悩みを引き出しやすくなります。
1on1は完全なる一対一での面談のため、他者に聞かれたくなかったり大人数の前では言いにくい話でも腹を割って話しやすくなります。
また、先述したようにマネージャーとメンバー間に信頼関係が生まれやすくなるため、「マネージャーなら信頼できるから」という理由で抱えている悩みや課題を話しやてくれやすくなるという側面もあるでしょう。
しかし、部下が何かしら抱えている様子や前兆が伺えた場合は、「相手から話してくれるだろう」などと構えていれば良いわけではありません。部下の1on1での話しやすさはマネージャーの力量次第でもあるので、後述する「部下の悩みを引き出すコツ」などを実践しながら、上手に話を聞き出せるようになりましょう。
悩みの解決策を一緒に考える事ができる
1on1では、部下の抱える悩みや課題に対する解決策を一緒になって考えることできます。
1on1ではまとまった時間を確保して落ち着いて話すことができるため、部下の悩みを聞くだけではなく、それについて上司の経験や知見も活用しながら一緒に解決策を模索することができます。
部下が一人で思い悩むよりも状況が好転する可能性が著しく上がることはもちろん、業務の合間やオンラインでのやり取りといった簡潔でこま切れなコミュニケーションでは解決できないような、比較的長期にわたる問題や悩みについても向き合うことができるのです。
部下の悩みを引き出すコツ
1on1で部下の悩みを引き出すコツについて、代表的な5つを紹介します。
- 部下の話を最後まで聞く
- 承認・共感を効果的に使う
- クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを使い分けて質問する
- 問いかけをうまく活用してコミュニケーションをとる
- 相手の性格に合わせて質問をする
部下の話を最後まで聞く
「部下の話を最後まで聞く」ことを意識して会話してみましょう。
部下の話を途中で遮ったり、あるいは早合点して結論を出してしまうと、「きちんと話聞いてくれていない」と思わせてしまう原因にもなり、会話のモチベーションを削いでしまいます。部下の話を聞く上で訂正やアドバイスを入れたくなったとしても、話が締めくくられるまでは口を挟まずに傾聴に徹するようにしてみましょう。
部下に対して「貴方の話を聞きたい」という真摯な姿勢を見せることで、自ずと積極的に発言してくれるようになるでしょう。
承認・共感を効果的に使う
「承認・共感を効果的に使う」ことで、部下の心理的安全性を確保でき、お互いにリラックスした状態で1on1をスムーズに進めることができます。
一般的に、日本人は「3回承認して1回アドバイスを行う」というやり方が一番合っていると言われており、これを「Good Good Good moreの法則」と言います。
この「3回承認して1回意見やアドバイス」を実践するために、部下が話してくれる業務の振り返りや相談内容などについて、基本的には承認して部下の心理的安全性を確保した上で一言アドバイスや意見を挟むようにしましょう。
また、アドバイスについても、「指摘ではなく提案形式で投げかける」ことで、角を立てずにすんなりと受け入れてもらうという対話のスキルがあります。
例えば、「この資料だと〇〇についての情報が不足しててダメだよね」ではなく「○○について情報をもう少し盛り込んだら分かりやすくなるんじゃないかな?」というように、命令や指示として思考停止的に受け入れさせるのではなく、あくまで提案として投げかけることで、部下が自身で考えて納得した上で決定したという認識を持ってもらうことができます。
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クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを使い分けて質問する
「クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを使い分ける」ことは、相手が話しやすくなる会話テクニックの一つです。
クローズドクエスチョンとは選択肢の中から回答を選ぶ質問形式で、相手が気楽に回答できる反面、回答の内容が制限されてしまうというデメリットもあります。また、オープンクエスチョンは自由に内容を考えて回答してもらう質問形式であるため、内容の幅が広がりやすいという特徴があります。
最初に話題や深堀りしたいポイントを模索する際にはオープンクエスチョンで相手の大きい範囲でおおよその関心を特定し、その後はクローズドクエスチョンも織り交ぜながら行うべきアドバイスや支援を絞っていきましょう。
問いかけをうまく活用してコミュニケーションをとる
「問いかけをうまく活用してコミュニケーションをとる」ことも意識してみましょう。
問いかけを活用したコミュニケ―ションの方法として、「横方向から縦方向に話を展開する」というものがあります。並列的な質問をいくつか行って情報を引き出したうえで、気になる箇所に関しては縦方向に深堀りすることで、会話を充実したものにするというテクニックです。
具体的には、まずは現在話している事柄に関連して「他にも○○についての改善点思いつく?」や「他に似たようなケースってあった?」というふうに、別の考えや類似ケースなどを聞き出して話を横方向に展開してみましょう。
その上で特に詳しく聞きたい話やテーマが出てきた際には、詳細な背景や具体例を求めるなどそれにフォーカスして話を深堀りしてみましょう。
相手の性格に合わせて質問をする
1on1では「相手の性格に合わせて質問をする」ことを意識してみましょう。
部下と一口に言っても、「行動力・野心が強い主体的な部下」や「好奇心旺盛で周りと楽しむことが好きな部下」、「論理的で分析力が強い部下」といったようにそれぞれ異なる性格や強みを持っており、画一的なコミュニケーションのみではなかなか会話を充実させることは困難です。
このような異なるタイプにそれぞれ対応したコミュニケーションを取るために、ソーシャルスタイルという理論を活用することをおすすめします。
ソーシャルスタイルは、1968年にデビッド・メリル氏が提唱したコミュニケーション理論であり、人のコミュニケーションのタイプを「主導タイプ」「促進タイプ」「分析タイプ」「指示タイプ」という4つにカテゴライズし、最適なタイプを選択するというものです。
例えば、主導タイプは文字通りリーダーとして周囲を主導するような立場に立つことが多く、主体的な性格を持つ場合が多いです。このようなタイプはリーダーシップがある反面、意思が強く頑固な面もあるので、上司という立場から様々な意見や視野に触れさせて凝り固まらないようにサポートしてあげることが有効です。
また、この主導タイプとほぼ対極に位置するタイプとして支持タイプがあります。支持タイプは発言や主張が控えめで、そのため比較的パーソナリティを把握しづらい傾向にあります。このような部下には積極的に傾聴する側に回ることで、普段はなかなか聞くことができない相談や不満などを引き出してあげることが重要です。
1on1を形骸化させないためのコツ
実際に1on1を行う際には、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。
より実践的なコツを実際の会話の流れと一緒に紹介していきます。
1on1の目的・導入背景・導入後の理想の状態を明確にして周知する
まず、「1on1の目的・導入背景・導入後の理想の状態」を明確にしてメンバーに周知しましょう。
なんのために1on1を実施するのかという目的や、どのような背景で1on1を実施して最終的にどのような到達点を理想とするかといった要素を擦り合わせておかないと、マネージャーとメンバーの間で扱いたいアジェンダや話の方向性がずれたり、或いはメンバーが1on1の実施に意義を感じられなくなる可能性もあります。
例えば、「個人の目標達成力を強化してチーム全体の売り上げ増加に繋げるという目的を設定し、最終的には6か月でチーム全体での売り上げを前半期比50%増まで到達させる」というように、マネージャーとメンバー、あるいはチーム全体で、同じベクトルを掲げて1on1を実施できるようにしましょう。
1on1の公式ルールを作成する
1on1の公式ルールを作ることで、1on1に参加するメンバーの負担を軽減することができます。
1on1はよほど慣れている場合は除いて、アジェンダの準備や当日の進行がマネージャーやメンバーの負担になってしまいがちです。
そこで、1on1の公式ルールや大まかなテンプレートを作成することで、メンバーの考えることや負担を減らし、1on1の実施を「スムーズ化」をしてあげるようにしましょう。
1on1の準備にかける時間や労力を軽減し、あるいは実際に1on1を行った時のテンポ感が改善されて一連の流れをスムーズに行えるようになれば、1on1を負担に感じることもなくなるはずです。
企業側や管理職側はただ1on1を導入して終わりではなく、具体的な例は後述しますが、1on1においての鉄板のアジェンダリストや理想的な1on1の事例といった役に立つ情報を不足なく提供して、メンバーが1on1の設計に困らないようにサポートしてあげると良いでしょう。
コミュニケーションのガイドラインを策定する
1on1でコミュニケーションのガイドラインを策定しましょう。
自分の考えを積極的に発信することや質疑応答が苦手な人は、1on1で30分間つきっきりでコミュニケーションを取ることが苦痛に感じてしまうかもしれません。
そんな場合は、相手に合わせたコミュニケーションを取る「ソーシャルスタイル」や、自身の現状から最終的な目標までの流れを整理することができる「経験学習サイクル」といったフレームワークを活用すると、思考や発言を体系的に整理して行うことができるようになります。
組織の公式アジェンダを作成する
1on1で使える公式アジェンダをいくつか作成しておきましょう。
1on1のアジェンダの選択肢を予め与えておくことによっておおよその指針が見えるようになるため、メンバーにとっては非常に強力なサポートとなります。特に、「何を話せば良いのか分からない」という不安を抱える部下には積極的に活用してもらいましょう。
1on1では業務面やキャリア面、あるいは個人的な領域についても上司と幅広く双方向のコミュニケーションが取れることが魅力です。ここでは、実際に1on1で活用できるおすすめのアジェンダの具体例をいくつか紹介していくので、アジェンダに悩んでいる場合は状況に合わせて中から選んでもらい、選んだアジェンダに沿って相談や質問をしてもらうようにしましょう。
- 業務進捗や目標管理について
- 進捗の確認
- 一週間分の業務の振り返り(自己分析、マネージャーからのフィードバックなど)
- 目標の確認、現時点での達成度と照らして必要に応じて調整
- キャリアプランについて
- 今後のキャリアパスについて
- どのようなスキルや資格を身に付けるべきか
- 身に付けたいスキルや資格が決まっている場合は、その習得のための相談(利用できる社内制度、効率的な学習方法など)
- 個人的な悩みや要望について
- 人間関係での悩み
- ワークライフバランスや福利厚生等の会社環境への不満や要望
悩みを聞く1on1の流れの具体事例
具体的な1on1の会話の流れを参照しながら解説していくので、これまで紹介したポイントを思い返しながら確認してみましょう。
実際の1on1の会話例
実際の1on1の会話例を見て、より具体的な1on1のイメージを掴んでみましょう。
以下は予算を大幅達成している営業のメンバーと、そのメンバーの成績を評価しながら、且つチーム全体での目標達成にも繋げたいと考えているマネージャーとの1on1における会話例になります。1on1の目的が「チームとしての売り上げアップ」であることを念頭に置きながら、会話を確認していきましょう。
上司)お疲れ様!今月も予算ハイ達成しそうで、絶好調だね!
部下)ありがとうございます!
上司)他のメンバーも部下さんくらい優秀だったらチームとしても嬉しいんだけどね
部下)自分もまだまだですよ
上司)ちなみに部下さんの中で、達成できた理由ってわかってたりするの?
部下)そうですね、結構、基礎基本のことかもしれないのですが、
自分は人材紹介会社に転職してきて1年ではあるものの人事の方の気持ちがまだまだ理解できていなかったなと思ったので、人事の方が読みそうな記事とかを読んでみたのが良かったかもです。
上司)おお〜!!お客様の気持ちになるのはいいことだね!他にもやったことってあったりする?
部下)お客様と良い関係を構築できるように気は遣っていた気がします。
上司)いいね!具体的にはどんなことしてるかとかって言語化できたりする?
部下)色々やっていた気はするんですけど、目の前のことで精一杯だったので言語化できないかもです。
上司)そうだよね。すごく頑張ってもらって大変だったと思うけど、何か困ったこととか悩みとかはない?
部下)ほんとに忙しかったんですけど、充実してて成長に繋がった感じがするので悩みとかマイナスな感じはいまのところ全然ないです。
上司)それなら良かった!
そういえば、先月、残って資料作成していた気がしていて、資料にこだわっているのかな?と思ったけど合ってたりする?
部下)あ!確かに、資料は結構こだわっているかもです!
お客様との面談の時に、良い資料を出せたらお客様に信頼してもらえるかなと思ったので!
上司)いいね〜!もしよかったらAさんの作った資料を他の社員に展開してもよかったりする?
できれば、資料のポイントを解説してもらえると嬉しいかも
部下)恥ずかしいですけど、チームのためならもちろんです!
上司)ありがとうね!Aさんがチームのために動いてくれてるところは、自分もちゃんと評価に入れれるようにしようと思っているから、今後もAさんの個人のハイ達成だけでなく組織でのハイ達成に貢献してくれると嬉しい!
部下)承知です!これからは組織にも貢献できるように仕事に取り組みますね!
会話の中に含まれていたポイント
この会話例では、マネージャーが工夫しているポイントが3点ほど見受けられます。
一つずつ確認していきましょう。
1.承認による良い雰囲気づくり
まず会話の掴みから、メンバーの成績に対する称賛から始めています。メンバーが話しやすくなるような空気づくりに最初から成功すると、その後の1on1の雰囲気や会話の質、量が確実に良くなるでしょう。
2.部下の話を最後まで聞いてから話す事ができていた
様々な質問をしたり部下の話しやすい空気づくりを行うことで、部下の考えや意見を十分に話してもらい、その上で自分の考えやアイデアを伝えていることが分かります。途中で余計な口を挟まずに相槌や承認を適度に使用することで、部下の話を最後まで引き出すことに成功しています。
3.質問のテクニックを使いこなせていた
例を見るとマネージャーは質問を多用していることが分かりますが、「他にもやったことってあったりする?」という質問で他の取り組みなどについて並列的に尋ね、また気になるポイントがあれば「具体的にはどんなことしてるかとかって言語化できたりする?」という質問でより具体的に詳しく話を深堀りしています。
むやみやたらと質問を多用しているのではなく、質問のテクニックを使いこなしながら部下から考えを引き出していることが伺えます。
まとめ
このように、1on1は部下のなかなか言いにくい考えや悩みを引き出すのにもってこいの場であり、またマネージャーの力量次第で部下からどれだけ話を引き出せるかも変わってきます。
本記事がよりスムーズ且つ効果的な1on1の実施に役立てば幸いです。
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- 1on1のスケジュールを何度も設定する
- 毎回1on1のアジェンダを決めるのに時間がかかってしまう
- 1on1の記録の管理が面倒くさい
- 従業員がどんな1on1を実施しているのか把握できない
- 1on1で話した内容をチャット形式で簡単に記録・管理・保存できる!
- 1on1で話すことに困らないアジェンダテンプレート機能!
- 1on1の対話を深める質問を提案するAIアシスト機能!
- 1on1の実施率・アジェンダの使用率がわかる分析機能!
- 従業員の特徴に応じたコミュニケーションを促進するソーシャルスタイル診断機能!
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