社会人としてのマナーの基本と言われる報連相ですが、実際のところ報連相があまり組織全体に浸透していない企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、報連相ができない人の特徴や原因、報連相の目的について解説します。また、報連相をする際のポイントや組織全体に浸透させる方法まで紹介しますので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
報連相とは?
報連相(ほうれんそう)とは、コミュニケーションを活性化させる上で不可欠な「報告」「連絡」「相談」を略した言葉です。業務の効率化や生産性の向上に欠かせないビジネスマナーとして、日本では長年にわたり重要視されてきました。
エン・ジャパンが総合求人サイト「エン転職」のユーザー8,042名を対象に実施した「重要だと思うビジネスマナー」に関するアンケート調査によると、言葉遣い、挨拶に続き、「報告・連絡・相談」が3位にランクインしました。近年では、新入社員研修や内定者研修などで、報連相研修を取り入れる企業も増えてきています。
報告
報告とは、自分が依頼された業務やプロジェクトの進捗状況や結果を関係者に伝達することを指します。通常、業務の指示を受けた部下が、その業務を指示した上司に対して行います。報告の目的は、上司がチーム全体の進捗状況を把握することです。
上司は、部下からの報告をもとにチーム全体の業務の進め方を決定します。そのため、部下からのタイムリーな報告がないと、上司が次のアクションを取れず、チーム全体の業務が停滞するリスクがあります。
連絡
連絡とは、自分が担当している業務に関する情報や変更点などを関係者に伝達することを指します。連絡する相手には、社内の上司や同僚に限らず、社外の取引先も含まれます。
連絡の内容は、会議の日時変更や業務内容の変更、重要なメールの転送など、連絡を怠ると誤解やトラブルの原因となり得るものが多いです。そのため、自分の意見や憶測を含めずに、客観的な事実のみを正確に伝えることが重要です。
相談
相談とは、業務上での問題や悩みが発生した際に、自分一人では判断できない物事に関する意見を周囲に求めることを指します。
究極の団体競技であるビジネスにおいて、社員個人が独断で業務に関する意思決定を下す場面は限られています。特に、一般社員は任される責任範囲が狭いため、上司から意見やアドバイスを受けて物事を判断することが求められます。
報連相ができない人の7つの特徴
ここでは、報連相ができない人たちの特徴を7つ紹介します。
- 特徴1:報連相のタイミングがわかっていない
- 特徴2:報連相の重要性がわかっていない
- 特徴3:自分でなんでもやろうとする
- 特徴4:完璧主義
- 特徴5:上司を怖がっている
- 特徴6:上司に必要以上に気を使っている
- 特徴7:報連相を面倒だと思っている
特徴1:報連相のタイミングがわかっていない
報連相ができない人の特徴1つ目として、報連相のタイミングがわかっていないことが挙げられます。
「柔軟性を持ってタイムリーに報連相を行うことが理想的」とよく言われるものの、「具体的にいつ、どのように行うべきか」の基準はあいまいで、上司によって様々です。上司のことをよっぽど深く知っていない限り、部下が上司それぞれの最適な報連相のタイミングを見極めることは困難を極めます。報連相のベストなタイミングは人や状況によって様々で明確な基準がないため、適切なタイミングでの報連相ができなくなっていると言えるでしょう。
また、上司それぞれの好みに関係なく、報連相のタイミングがわかっていない社員の報連相の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 遅すぎる報連相
- 問題が発生する前ではなく、やっと問題が発生してから報告することが多いです。
- 早すぎる報連相
- まだ状況が固まっていない段階で報告を行い、上司やチームに不必要な混乱を招くことがあります。
- 一度にまとめて報告
- 後回しにされた複数の問題や進捗を一度にまとめて報告するため、上司が重要な問題点を見逃すことがあります。
- 緊急性の判断が不適切
- 重要な問題を後回しにする一方で、些細な問題を大げさに報告することがあります。
以上のように、報連相のタイミングがわかっていない社員は、自身が抱えている問題が重要性・緊急性の高いものかどうかを判断できていないため、報連相が遅すぎたり、早すぎたりするのです。
特徴2:報連相の重要性がわかっていない
報連相ができない人の特徴2つ目として、報連相の重要性がわかっていないことが挙げられます。このような部下は、報連相を徹底的にやらないとどのような問題が発生するのかがわかっていないため、「このくらい報連相しなくても大丈夫だろう」という考えに至ってしまうのです。
そのような部下の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 進捗報告や問題報告など、チームメンバーとの情報共有を無駄だと感じる。
- 自分さえ知っていれば大丈夫だろうと思い、他社員と情報共有しない。
- チームミーティングなどで積極的に発言せず、個人プレーに走ることが多い。
以上のように、報連相の重要性がわかっていない社員は、チームとの情報共有を無駄だと感じ、報連相を後回しにしてしまうことが多いです。
特徴3:自分でなんでもやろうとする
報連相ができない人の特徴3つ目として、自分でなんでもやろうとすることが挙げられます。自分の責任範囲内で問題が発生した際に、「自分で解決したい」と強く思うことによって報連相を躊躇ってしまう部下もいます。
この心理状況は「上司に頼るのは迷惑なのではないか」という不安からなるものや、「他人に任せるよりも自分で全てやった方が効率的だ」という他人を信頼していないことからなるもの、さらには「自分自身の力で乗り越えてみせる」といったプライドからなるものもあります。
そのような部下の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- ・全てのタスクを自分の手のみで行わないと気が済まない。
- ・同僚に対する信頼が低く、自分でやる方が確実だと考える。
以上のように、「自分でなんでもやり抜きたい」という気持ちが、上司や同僚に報連相をしないことにつながっています。
特徴4:完璧主義
報連相ができない人の特徴4つ目として、完璧主義であることが挙げられます。報連相は仕事上のコミュニケーションの基本と言われますが、仕事ができない社員だけでなくて、案外できる社員も、報連相のプロセスが抜けていることが多くあります。
その1つの要因として「環境」が大きく影響しています。例えば、プロジェクトや業務が集中していない比較的余裕のある時期は、会社全体が平穏で報連相がしやすい状況だと思います。その一方で、複数のプロジェクトや業務が立て込んでいる時間的なプレッシャーがある時期は、報連相をする側・報連相を受ける側の両方が余裕がなくなってしまいます。
このような状況下において自分の業務範囲で問題・異変が起きたときに
- こんなこともできないのかと思われたくない。
- 他人に任せるとクオリティが下がると感じ、他人に頼りたくない。
- まだトラブルになっていないから、自分で最高の形に戻してから報告しよう。
などの思いを持つ社員が現れます。以上のように、ギリギリまで待ち、完全な状態になってから報連相しようとする、いわゆる生真面目で常に最高の結果を求める社員こそ、報連相を後回しにしがちです。
特徴5:上司を怖がっている
報連相ができない人の特徴5つ目として、上司を怖がっていることが挙げられます。部下から見て威圧的に感じる上司に失敗を報告することで怒られる怖さ・不安が、報連相を妨げる主な原因です。最近ではリモートワークも多くなり、上司と直接コミュニケーションを取れる機会も減少しています。そのため、上司との信頼関係が築けておらず、先入観で上司を怖がっている部下も多いようです。
ここでは、上司を怖がっているため、報連相を疎かにしている部下の特徴をいくつか紹介します。
- 以前ミスの報告をした際に、厳しい言葉をかけられた経験から、上司の機嫌が不機嫌な時は報連相するのを避ける。
- 上司と直接コミュニケーションを取ることを避け、他の同僚を通じて間接的に報連相を行う。
- 他の同僚から「上司は厳しい人だ」という話を聞いただけで、怖いと思い報連相を躊躇う。
以上のように、過去に上司から叱責を受けた経験から上司を怖がっているケースと、上司との信頼関係が築かれていないために上司を怖がっているケースが存在します。いずれにしても、上司とのコミュニケーションを極力避け、必要最低限の会話しかしないため、報連相を先延ばしにしてしまうことが多いです。
特徴6:上司に必要以上に気を使っている
報連相ができない人の特徴6つ目として、上司に必要以上に気を使っていることが挙げられます。「上司に迷惑をかけたくない」という配慮から、上司に時間・手間を取らせることに抵抗がある部下は意外と多いものです。
ここでは、上司に必要以上に気を使い、報連相が疎かになってしまっている部下の特徴をいくつか紹介します。
- 上司の機嫌や忙しさを過度に気にしてしまい、報連相を後回しにする。
- 上司に迷惑をかけたくないという不安から、問題があっても相談せずに自己解決しようとする。
- 上司に良い印象を持ってもらいたいがために、悪い報告を先延ばしにする。
- 完璧な報連相をしなければならないと感じ、必要以上に時間をかけて準備をするため、報連相のタイミングを逃す。
以上のように、上司の時間を奪うことが申し訳ないと思ってしまったり、上司からの評価を下げたくないといった理由から、報連相ができなくなる部下は少なくありません。
特徴7:報連相を面倒だと思っている
報連相ができない人の特徴7つ目として、報連相を面倒だと思っていることが挙げられます。頭では報連相の重要性を理解していても、その時の仕事の忙しさによって、上司に報連相をすることが面倒になってしまう部下もいます。
ここでは、仕事が忙しければ忙しいほど、報連相が面倒になってしまう部下の特徴をいくつか紹介します。
- 自分一人で問題を解決しようとする傾向が強く、上司に報連相をする必要性を感じない。
- 自分のペースで仕事を進めたいと考え、報連相を手間だと感じる。
- 他人に状況を説明するのが苦手で、報告書の作成に時間と労力を要する。
- 時間のかかる報連相が日常業務に支障を来たすと感じている。
- 上司との信頼関係が築けておらず、報連相を行っても意味がないと感じている。
以上のように、特に繁忙期において、上司への報連相に割く時間が惜しいと感じ、こまめな報連相が疎かになっていきます。
報連相ができない5つの原因
ここでは、報連相ができない5つの原因を紹介します。
- 原因1:目的や必要性が十分に理解されていない
- 原因2:報連相をする機会やタイミングがない
- 原因3:伝え方や手段がわからない
- 原因4:報連相のための手間や時間がかかりすぎる
- 原因5:上司との信頼関係や伝えやすい雰囲気が形成されていない
原因1:目的や必要性が十分に理解されていない
報連相ができない原因の1つ目として、目的や必要性が十分に理解されていないことが挙げられます。報連相研修にて、たとえいくら報連相のマナーを徹底的に教え込んだとしても、「報連相がなぜ重要なのか」を理解させない限り会社全体に浸透・習慣化させることは難しいでしょう。
報連相の意義や目的が十分に共有・理解されていないと、「このくらいは報告しなくても問題ないだろう」「このくらいの報告は後回しでも良いだろう」などといった報連相の軽視が生じてしまいます。
以上のように、報連相のマナーは分かっているものの、報連相の重要性を理解していない社員は、報連相を後回しにしてしまう傾向にあると言えるでしょう。
原因2:報連相をする機会やタイミングがない
報連相ができない原因の2つ目として、報連相をする機会やタイミングがないことが挙げられます。これには、上司と交流する機会が少ないことが大きな要因となっています。
上司と交流する機会が少ないと、必然的に日常的なコミュニケーションも少なくなります。特に、リモートワークやフレックスタイム制を採用している職場では、上司と部下が顔を合わせる頻度が減り、気軽に報連相を行うタイミングを行うタイミングを逃しがちです。
また、定期的な1on1ミーティングの時間が十分に設けられていない場合でも、上司とある程度時間をかけて交流する機会が限られてしまいます。特に、上司が多くの部下を抱えているため、常に忙しく、話しかけるタイミングを見つけるのが難しい場合、部下一人ひとりと十分なコミュニケーションを取るのが難しくなります。その結果、ミスや失敗の報告など、他人の前で行うことは避けたい内容の報連相をできる機会が大幅に減ってしまうでしょう。
原因3:伝え方や手段がわからない
報連相ができない原因の3つ目として、伝え方や手段がわからないことが挙げられます。報連相の重要性は十分理解していて、タイムリーに報連相をしたいと思ってはいるものの、「具体的にどのような手段で、どのような話し方で、報連相をすれば良いのかわからない」と悩んでいる社員もいます。対面(口頭)、メール、チャット、電話、ビデオ通話など、豊富な連絡手段で溢れている現代において、適切な連絡手段の選択に悩んだ経験のある方がほとんどではないでしょうか。
例えば、「緊急の報告はメールで送るべきか、電話で伝えるべきか」「上司への連絡は電話で行うべきか、ビデオ通話で行うべきか」など、その時の状況や報連相の相手によって連絡手段を変える必要があります。このような最適な連絡手段を悩んでいるうちに、報連相がズルズルと遅れていってしまいます。
また、どのような話し方で報連相を行えば良いのか分からず悩んでいる社員もいます。具体的には、報告の際に何をどの順番で話せば良いのか分からず、上司に重要な情報が上手く伝わらないケースが多く存在します。報連相は、相手に的確に伝わって初めて意味をなします。そのため、上司が「部下が何を伝えようとしているのか分からない」と感じてしまったら、その報連相は失敗と捉えるのが妥当でしょう。
原因4:報連相のための手間や時間がかかりすぎる
報連相ができない原因の4つ目として、報連相のための手間や時間がかかりすぎることが挙げられます。その主な原因として、報連相を行うための環境・システムが上手く形成されていないことが考えられます。
報連相を行うための環境・仕組みが上手く形成されていない職場の例として、以下のようなものが挙げられます。
- 詳細なレポート作成の負担が大きすぎる
- 報連相の頻度が多すぎる
- 上司の対応待ち時間が長い
- 報連相を行うためのプロセスが複雑
- 社内で使用するコミュニケーションツールが限られている
上記で挙げた特徴に当てはまる職場では、報連相がスムーズに進まないため、報連相の必要性や文化を会社全体に浸透させることは難しいでしょう。その結果、社員は報連相を行うことに対して消極的になってしまいます。
原因5:上司との信頼関係や伝えやすい雰囲気が形成されていない
報連相ができない原因の5つ目として、上司との信頼関係や伝えやすい雰囲気が形成されていないことが挙げられます。特に、日頃からあまりコミュニケーションが活発でない職場環境では、部下は上司のことを知る機会を得られず、お互いに信頼関係を構築することは難しいでしょう。その結果、無意識に上司に対し遠慮がちになり、気軽に報連相することができなくなってしまいます。
また、上司が部下との対話で「よく時計を気にしている」「腕を組んで難しい表情でいる」「話を早めに切り上げようとする」など、これらは当人にとっては何の意図もないただの癖かもしれませんが、部下は「自分の報連相で上司の時間を奪ってしまっている」と感じてしまいます。これは、上司と部下の信頼関係が形成されていない場合、上司に対し過度に気を使うきっかけとなり得ます。
さらに、上司が威圧的な態度をとっている場合も、報連相しやすい雰囲気を壊してしまっている可能性があります。例えば、以前自身のミスを上司に報告した際に、厳しい言葉をかけられた経験によって、報告内容がミスでなくても「何かを報告することへの恐怖心」が部下の中に芽生えてしまいます。その結果、「また怒られたらどうしよう」「怒られないように報告しないでおこう」などといった考えを生じさせ、報連相を実践する社員が少なくなります。
報連相ができていないことによるデメリット
それでは、報連相ができていないことによるデメリットについて見ていきましょう。
- デメリット1:業務やプロジェクトが円滑に進まなくなる
- デメリット2:トラブルへの対応が遅れる
- デメリット3:適切なサポート・フィードバックが実施できない
デメリット1:業務やプロジェクトが円滑に進まなくなる
報連相ができていないことによるデメリットの1つ目は、業務やプロジェクトが管理できずに円滑に進まなくなることです。
例えば、製品開発プロジェクトにおいて、報連相が適切に行われなかった場合を考えてみましょう。製品開発プロセスには、設計フェーズ、試作フェーズ、製造フェーズ、など複数のフェーズが存在します。
もし、設計チームリーダーが進捗状況についての報告を怠った場合、プロジェクトマネージャーは設計段階の業務が予定通り進んでいるのか、予定より早く進んでいるのか、はたまた遅れていて納期に間に合いそうにないのかを把握することができません。
進捗状況がタイムリーに把握できないことで、仮に進行が遅れていた場合には緊急な対処が遅れる原因となり、進行が予定より早く進んでいた場合には次の試作フェーズの準備が間に合わなくなります。このように、報連相を怠ることは、プロジェクト全体の停滞につながると言えます。
デメリット2:トラブルへの対応が遅れる
報連相ができていないことによるデメリットの2つ目は、トラブルへの対応が遅れることです。トラブルが起きた時の情報伝達が迅速かつ正確に行われないと、その分対応が遅れてしまいます。その結果、対応が後手に回ることとなり、より大きなトラブルを引き起こしかねません。さらに、問題の早期発見・解決ができないと、最終的に顧客の信頼を失うリスクがあります。
例えば、「製造ラインで品質不良が発生したが、現場担当者が報告を怠ったために、不良品が大量に出荷されてしまった」のような取り返しのつかない事態に陥ってしまいます。以上のように、報連相を怠ることで、トラブルへの対応が遅れ、結果的にさらに大きなトラブルの発生につながります。
デメリット3:適切なサポート・フィードバックが実施できない
報連相ができていないことによるデメリットの3つ目は、適切なサポート・フィードバックが実施できないことです。報連相ができていない社員は、上司や同僚から自身の現状に対するサポート・フィードバックを受ける機会が少なくなります。その結果、何らかの壁にぶつかった時に全て自分で解決しようとするため、自分の現状を客観視できず、適切な解決策を見つけるのが難しくなるでしょう。
例えば、あるプロジェクトで技術的な問題に直面したとしましょう。自分一人で解決しようとした場合、自分に足りていないスキルを客観視できないため、結局解決できません。その一方で、上司に相談し、サポートを受けながら解決しようとした場合、「自分に足りていないスキルが明確になり、新しい視点から問題解決に取り組める」ようになるでしょう。以上のように、報連相をしないことで、問題解決する上で不可欠な周りからのサポート・フィードバックを得ることができません。
その結果、「自分の仕事のどの部分を改善すべきか分からない」といった自己成長が妨げられる状況に陥ってしまいます。
報連相の目的
ここでは、報連相の目的を説明します。
- 情報共有を確実にするため
- 問題点を改善し、トラブルを早期解決するため
- 組織・チーム内の連携を強化するため
- 風通しの良い職場環境を作るため
情報共有を確実にするため
報連相の目的1つ目は、情報共有を確実にすることです。個々のメンバーが得た情報を、チーム内で共有・蓄積・活用することを指す「情報共有」は、新たなビジネスチャンスを生み出す上で重要なテーマとなっています。一人の社員が収集・共有できる情報には限りがあります。
しかしながら、チーム内で情報共有を重ねていくと、各社員が得た情報を組み合わせることによって全く新しいアイディアを生み出すことができます。このような、新たな価値の創造につながる情報共有は、報連相をする上での大きな一つの目的と言えるでしょう。
問題点を改善し、トラブルを早期解決するため
報連相の目的2つ目は、問題点を改善し、トラブルを早期解決するためです。迅速な報連相を習慣化させることで、問題・トラブルが発生したときに、適切な対応を速やかに取れるようになります。社内に報連相の文化が根付いていれば、「トラブルが起こった時にはまず報連相をしなければ」と考えなくても頭に浮かんでくるでしょう。その結果、問題・トラブルを早めに解決することができ、被害を最小限に抑えることにつながります。
物事が順調に進んでいる状況では、報連相は円滑になされます。しかし、ミスやトラブルに緊急で対応しなければいけない状況では、報連相が後回しにされがちです。こうした予測不能な事態に焦らず対処できるようになることも、報連相を行う目的となります。
組織・チーム内の連携を強化するため
報連相の目的3つ目は、組織・チーム内の連携を強化するためです。組織において仕事をする以上、上司と部下だけで全て完結することはありません。異なるチーム間・部署間でも同じミッションを持った社員が存在するのが組織です。そのため、報連相は、組織内の縦の関係(上司と部下)だけでなく、横の関係(同僚や部署間、チーム間)でも重要視されます。横関係の意思疎通を円滑に滞りなくすることで、組織として連携することができるようになります。
例えば、日頃から部署間で報連相を徹底し、情報共有と意思疎通が図られていれば、急な問題が発生した際にも、各部署が状況を把握しているため、落ち着いて連携しながら迅速に問題解決に取り組むことができるでしょう。このように、報連相を徹底することが、組織としてのチームプレーのレベルを上げるための近道と言えます。
風通しの良い職場環境を作るため
報連相の目的4つ目は、風通しの良い職場環境を作ることです。報連相は元々、さまざまな立場の社員が上下関係を気にせず、他社員とコミュニケーションを取れるような「風通しの良い職場」を作るために考案されたものです。株式会社カルチャリアが転職者107名を対象とした「転職における心理的安全性」の調査結果では、4割の転職者が「前職では、役職に関係なく、スタッフ同士が正直・オープン・率直に話すことができる雰囲気がなかった」と回答し、8割の転職者が「職場を選ぶ上で心理的安全性を重要視する」と回答しました。
つまり、風通しの良い職場環境は、優秀な人材の流出を防ぎ、呼び込むためのフックの役割を担うのです。以上のように、会社を成長させ続ける「風通しの良い職場環境」を作り上げることは、報連相をする目的のひとつであると言えるでしょう。
報連相をする際のポイント
ここでは、報連相をする際のポイント・コツを紹介します。
- 適切なタイミングや相手の都合を考慮して報告する
- 重要な報告は直接上司に行う
- 結論から伝える
- 事実と感想は区別して伝える
- 報告・相談時はメモを持参する
適切なタイミングや相手の都合を考慮して報告する
報連相をする際のポイント1つ目は、適切なタイミングや相手の都合を考慮して報告することです。報連相を行う際は、相手の立場や状況、都合を把握した上でタイミング良く行うことが重要です。適切なタイミングとは、「相手が対応しやすい時間帯」のことです。このタイミングを見計って、報連相を行うようにしましょう。
自分の都合だけで報連相を持ちかけてしまうと、相手の迷惑になる可能性があります。緊急性がない報連相に関しては、メールや社内共通のコミュニケーションツールを利用し、緊急の対応が求められる報連相の場合は、対面や電話などの口頭によるコミュニケーション手段を選ぶようにしましょう。このように、「この報連相は緊急性が高いかどうか」を的確に判断し、場面ごとにコミュニケーション手段を使い分けることをおすすめします。
重要な報告は直接上司に行う
報連相をする際のポイント2つ目は、重要な報告は直接上司に行うことです。ここでの上司に直接伝えるべき重要な報告とは、お客様からのクレームや苦情などの報告を指します。クレームのような重要な件は、メールやメッセージではなく、直接上司に報告することが重要です。直接報告することで、上司はそのクレームの内容や背景、状況を正確に把握することができます。
また、上司はその場で質問をしたり、追加情報を求めたりすることができ、より具体的な指示を出すことが可能となります。これにより、対応が迅速かつ効果的に行われ、問題の拡大防止につながります。
結論から伝える
報連相をする際のポイント3つ目は、結論から伝えることです。順序としては、まずは報告の主題である結論を伝え、その後に経緯や背景、私見を付け加えます。
この順序で報連相を行うのにはいくつかの理由があります。
- 不要な情報をなるべく除き、簡潔に報告するため。
- 報連相をする相手の時間を無駄にしないため。
- 本当に伝えるべき情報を相手に伝え、誤った認識を相手に与えないため。
これらのことから、報連相は必ず結論から始めるようにしましょう。また、報連相を実施する前に結論を決めてから話すこともポイントです。
事実と感想は区別して伝える
報連相をする際のポイント4つ目は、事実と感想は区別して伝えることです。報連相において、事実と自身の感想が混じってしまうと、相手に本当に伝えたい情報が伝わらないリスクがあります。そのため、基本的に、主観的な感想や意見、言い訳を加える必要はなく、客観的な事実のみを簡潔に伝えるだけで良いのです。
しかしながら、大きなミスをした場合や、緊急性の高いトラブルが起こった場合は、「今すぐに伝えなきゃ」という思いから感情が昂ってしまい、私見を交えたくなるかもしれません。そのような時は、相手に伝えたいことが上手く伝わらない可能性があるため、注意が必要です。
まずは冷静になって、伝えるべき情報を確かめ、最初に何を伝えるべきか考えようにしましょう。どうしても個人的な感想や意見を述べたい場合は、「私見ですが、、、」と前置きし、事実と感想を区別して伝えることが重要です。
報告・相談時はメモを持参する
報連相をする際のポイント5つ目は、報告・相談時はメモを持参することです。報告する際は、焦って言葉が出てこなかったり、伝えかった内容を忘れてしまうといったケースも考えられます。そのような事態を防ぐために、あらかじめ自分が伝えるべき報告内容をまとめてメモに書いておきましょう。
また、相談の場合、上司や同僚からアドバイスや指示をもらうことになりますが、その場で全てを記憶して、持ち帰ることは難しいでしょう。メモに重要だと思ったアドバイスを書き留めることで、忘れてしまったら後で見返し、再確認できるのでおすすめです。
これらの注意点を押さえることで、報連相は効果を発揮するようになります。
報連相を浸透させる方法
それでは、報連相を会社全体に浸透させる方法を見ていきましょう。
1.目的と必要性をきちんと伝える
2.報連相に関するルールやガイドラインを作る
3.報連相のテンプレート文を作る
4.日報や週報を導入する
5.問題が起きても責めない文化を作る
6.1on1ミーティングを導入する
1.目的と必要性をきちんと伝える
まず、報連相の目的と必要性を、自社の業務内容や経営理念に沿ってきちんと伝えましょう。「なぜ報連相が日々の業務において必要なのか」「報連相を行うことで、どのように経営理念の実現に近づけるか」などを明確化させることを意識しながら会社全体にアナウンスすることで、より多くの社員の共感・理解を得ることができます。
2.報連相に関するルールやガイドラインを作る
続いて、報連相に関するルールやガイドラインを作ることがおすすめです。報連相に関する明確な基準を設定することで、部下が迷うことなく報連相を実践することができます。
報連相のガイドラインの内容例として、下記のようなものが考えられます。
- 報告
- 事実と私見を分けて報告する。
- 結論を先に述べ、詳細を後に続ける。
- 連絡
- 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)に沿って、簡潔に伝えることを意識する。
- 相談
- 相談の前準備として、問題点や課題を整理し、具体的な質問を用意しておく。
- 事前に自分なりの解決策や提案を考えておく。
3.報連相のテンプレート文を作る
次に、報連相のテンプレート文を作りましょう。一度報連相の手順・流れを作れば、社員が悩むことなく簡単に報連相を行えます。
報連相のテンプレート例として、下記のようなものが考えられます。ここでは、口頭での報連相のテンプレート例を紹介します。
1. 報告
「現在、〇〇プロジェクトの進捗についてご報告します。」
「現在までに〇〇が完了しました。」
「今は〇〇を進めており、〇〇までに完了予定です。」
「ただし、〇〇という問題が発生しています。これについては、〇〇という対策を考えています。」
「このまま進めば、〇〇までに〇〇が完了する見込みです。」
「何かご質問や追加の指示があればお願いします。」
2. 連絡
「(Who)様との(What)の件で、予定が変更になりましたのでお知らせします。」
「元々の予定では、(When)(Where)でしたが、(Why)(How)によって、(When)(Where)に変更になりました。」
「何かご不明点や調整が必要なことがあれば教えてください。」
3. 相談
「〇〇の件について、ご相談させていただきたいことがあります。」
「現在、〇〇が発生しており、〇〇という状況です。」
「私は〇〇を考えていますが、〇〇という不安があります。」
「この点について、〇〇さんのご意見やアドバイスをいただけないでしょうか。」
4.日報や週報を導入する
続いて、日報や週報を導入することもおすすめの方法です。日報を書くことに対して、「面倒くさい」や「意味がない」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかしながら、日報・週報は社員に報連相を習慣化させる重要な役割を担っています。「定期的な情報共有」を最大の目的とする日報・週報を導入することで、自然と日々の成果や課題を整理し、それを共有する習慣が身につきます。
また、会社規模が大きければ大きいほど、部下が個別で上司に作業進捗を報告することは時間的に難しくなってしまいます。そこで、日報・週報を導入することで、「上司の時間を奪わずに、何をやったか、あるいはやってないか」を上司に報告することができます。以上のことから、日報や週報の導入は、会社全体に報連相を浸透させる効果的な手段となるでしょう。
5.問題が起きても責めない文化を作る
また、たとえ問題が起きても責めない文化を作ることで、部下が報連相を躊躇わずに行える職場環境を作りあげることが大切です。そこで、報連相の上司の心得「おひたし」を意識することがおすすめです。
「おひたし」とは、上司・先輩が報連相を受ける際に心得ておくべき各ポイントの頭文字を使った語呂合わせのことで、意味は以下の通りです。
- お:怒らない
- 部下が報告や相談をしてきたときに、内容が問題やミスであっても感情的に怒らないようにします。怒ることで部下が報連相を躊躇するようになり、問題がさらに悪化する可能性があります。
- ひ:否定しない
- 部下の意見や報告を否定せず、まずは受け入れる姿勢を持つことが重要です。否定されると、部下は萎縮してしまい、積極的に報連相を行わなくなってしまいます。
- た:助ける
- 部下が困っているときや問題が発生したときには、積極的に助ける姿勢を示します。部下が安心して報連相できるように、必要なサポートやアドバイスを提供し、一緒に問題を解決するようにしましょう。
- し:指示する
- 報連相を受けたら、具体的な指示を出すことが大切です。部下が何をすべきか明確に伝え、次の行動がわかるようにしましょう。
6.1on1ミーティングを導入する
日常業務に報連相をすぐに取り入れることが難しいと感じる社員もいることでしょう。その悩みを解決する方法として、上司と部下が定期的に個別で話をする1on1ミーティングを導入することをおすすめします。
1on1ミーティングとは、週に1回30分や、隔週に1回30分といった短いサイクルで上司とメンバーが定期的に1対1で話すことです。1on1は、定期的に部下の業務での悩みを聞き出し、それに対してアドバイスやフィードバックを行うことで、効果的かつ効率的に人材育成を行うことができます。
定期的に1on1を実施することで、部下の状況がわかることで、実質的に報連相の機能も果たすので、非常におすすめです。
まとめ
本記事では、報連相ができない人の特徴から、報連相をする際のポイント、報連相を浸透させる方法について解説しました。
今も昔も社会人の基本としてみなされている報連相ですが、あまり部下の間で報連相が浸透していないことで頭を抱えている方も多いでしょう。会社全体に報連相を浸透させるためには、「目的と必要性をきちんと伝える」「報連相に関するガイドラインを作る」「報連相のテンプレート文を作る」「日報や週報を導入する」「問題が起きても責めない文化を作る」「1on1ミーティングを導入する」などを行う必要があります。
この記事が、自社の報連相ができない部下についての悩みを解決するにあたって、少しでも役立てば幸いです。
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