営業新人のほったらかしが起きる原因|放置リスクと育成を仕組み化する方法

厚生労働省が2024年に公表したデータによると、大卒新入社員の3年以内離職率は34.9%に達しています。3人に1人以上が3年以内に会社を去る計算です。

しかし、いざ育成を強化しようとすると「マネージャー自身が数字を追うので手一杯」「OJTを任せた先輩によって教え方がバラバラ」と手が止まる管理職は少なくありません。研修で名刺交換と商品説明を教えたあと「あとは現場で覚えて」と放り出し、気づいたら新人が退職届を出していた。そんな経験に心当たりがある方もいるのではないでしょうか。

この記事では、営業新人のほったらかしが発生する4つの構造的原因を解き明かし、放置がもたらすリスクを数値で可視化したうえで、育成ロードマップ・1on1・スキルマップ・AIロープレを組み合わせた仕組み化の全体像を提示します。

読了後には、自社の放置原因を特定し、来週から着手できる育成改善のアクションプランが手元にそろっている状態を目指しています。

(参考)新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します 


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▼ この記事の内容

  • ほったらかしの正体: 悪意はなくとも、「プログラム不在」「指導の属人化」「プレイングマネージャーの多忙」によって、新人は「何をすべきか分からない」「自分の成長を見てくれる人がいない」という孤独に陥ります。
  • 放置がもたらす損失: 新人1人の離職は、採用費(平均57万円)だけでなく、育成に割いた先輩の工数や独り立ちまでの売上機会損失を含めると、トータルで数百万円規模のダメージとなります。
  • 解決の4大ツール: 「具体的ゴールを定めたロードマップ」「週15分の1on1」「認識のズレを埋めるスキルマップ」「いつでも練習できるAIロープレ」を組み合わせることで、新人が自走する環境を構築できます。

営業新人の「ほったらかし」とは

営業新人のほったらかしとは、配属後の新人に対して体系的な指導や定期的なフォローを行わず、現場に放り出したまま自力での成長を求めてしまう状態を指します。

明確に「放置しよう」と決めている組織はほとんどありません。しかし、同行後に振り返りの時間がない、質問しても「見て覚えて」で終わる、日報を出してもフィードバックが返ってこない。こうした状態が数週間続くと、新人は「自分は放置されている」と感じ始めます。

「先輩のそばにいるのだから、ほったらかしではないのでは?」と感じる管理職は多いです。しかし、リクルートマネジメントソリューションズの調査(2023)では、入社3年目以下の社員のうち58.8%が「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答しています。

営業新人にとってのほったらかしとは、「何を学べばいいかわからない」「自分の成長を見てくれる人がいない」と感じている状態です。席を並べていても、学びの設計とフィードバックがなければ、新人の目には放置と映ります。では、なぜこのほったらかしが起きてしまうのでしょうか。

(参考)新人・若手の早期離職に関する実態調査

営業新人がほったらかしになる原因

営業組織でほったらかしが発生する背景には、個人の怠慢ではなく構造的な問題が隠れています。マネージャーの多忙、プログラムの不在、指導の属人化、タスク設計の曖昧さ。この4つが重なることで、誰も悪意がないまま新人が放置されていきます。

マネージャーがプレイヤー業務に追われ育成の時間が取れない

営業マネージャーが新人育成に時間を割けない最大の原因は、マネージャー自身がプレイヤー業務を兼務していることです。産業能率大学が2021年に実施した調査によると、プレイングマネージャーの割合は課長クラスで99.5%に上ります。

もしあなたが10名のチームを率いる営業部長なら、月末に自分の数字が未達の状態で新人のロープレに付き合う余裕がないという感覚は、痛いほど理解できるはずです。仮に月間の稼働時間180時間のうち120時間を自身の商談に費やせば、新人ひとりに割ける時間は週に1〜2時間が限界でしょう。

「育成が大事なのはわかっている。でも目の前の数字を落とすわけにはいかない」という声は少なくありません。しかし、育成を先送りするほど新人の戦力化は遅れ、マネージャーの負担はさらに増えるという悪循環に陥ります。

この悪循環を断つには、マネージャーが直接教えなくても新人が学べる仕組みが必要です。具体的な方法は、後半のセクションで詳しく解説します。

(参考)上場企業の課長に関する実態調査(第6回)

体系的な育成プログラムがなくOJT頼みになっている

営業新人の育成が属人的になる最大の原因は、体系的な育成プログラムが存在しないことです。リクルートマネジメントソリューションズの事例報告によれば、OJTを現場に任せていた企業では新人の戦力化が想定より大幅に遅れ、顧客クレームが増加したケースも確認されています。

「OJTがあるから大丈夫」と考える組織は多いです。しかし実態は「先輩社員の商談に同行して、終わったら自席に戻る」だけというケースが少なくありません。同行中に何を観察すべきか、いつまでにどのスキルを習得するかが設計されていなければ、OJTは「ただ横にいるだけの時間」になってしまいます。

たとえば従業員50名以下のIT企業では、新人研修が入社初週の座学のみで、翌週からいきなり既存顧客の訪問に同行させるパターンが見られます。一方、育成プログラムを整備した企業では、1ヶ月目は商品理解、2ヶ月目は同行と振り返り、3ヶ月目は単独商談とロープレ、というステップを明確に定めています。

プログラムの有無は新人の成長速度を大きく左右します。ただし、プログラムがあっても指導者次第で品質がばらつく問題が残ります。

指導者ごとに教え方が異なり育成自体が属人化している

営業新人の育成品質を左右する最大の変数は、指導者個人のスキルと教え方です。誰がトレーナーになるかによって新人の成長スピードが大きく変わりますが、これは個人の能力差というよりも、組織として指導の基準を定めていないことが根本原因です。

たとえば、同じ商材を扱う営業チームでも、Aさんは「まず顧客の課題をヒアリングしろ」と指導し、Bさんは「まず商品説明を完璧にしろ」と指導するケースがあります。前日と正反対の指示を受けた新人は混乱し、結局どちらにも質問しなくなります。

「教え方の統一は難しい」「営業はセンスだから人によって違って当然」と考える管理職は多いです。確かに営業スタイルに個性があること自体は問題ではありません。しかし、ヒアリングの基本手順や提案書の構成、価格交渉の進め方といった基礎スキルについては、組織として統一した型を持つことが不可欠です。

指導の属人化を解消するには、「何を、どの順番で、どの水準まで教えるか」をドキュメント化する必要があります。そのためのタスク設計について、次で具体的に掘り下げます。

新人に何をさせるべきか明確になっていない

営業新人がほったらかしになる根本原因のひとつは、「新人が今日・今週・今月やるべきこと」が明文化されていないことです。やるべきことが不明確な新人は、指示を待つしかなくなり、手が空いたまま時間だけが過ぎていきます。

SaaS企業の営業チームを例にとると、入社1ヶ月目の新人に「とりあえずSFAを触ってみて」「空いた時間に提案書を読んでおいて」と曖昧な指示だけを出すケースがあります。やるべきことが見えない時間が続くと、新人は「自分はこの組織に必要とされていないのでは」と感じ始めます。

「新人に手取り足取り教える時間はない」と感じる方は多いです。しかし、時間がないからこそ事前にタスクリストを用意しておくことが重要です。仮に1週間分のタスクリストを作成するのに30分かかったとしても、そのリストがあれば新人は自律的に動けるようになり、初期投資30分でその後数週間の工数が削減できます。

タスクの明確化は、育成ロードマップの最小単位です。ここまでで原因を4つ整理しましたが、次のセクションでは、ほったらかしが引き起こす3つの具体的なリスクを数値とともに確認していきます。

営業新人をほったらかしにするリスク

営業新人のほったらかしは、本人のモチベーション低下にとどまりません。採用コストの損失、戦力化の遅延、チーム全体の士気低下へと波及します。それぞれのリスクを数値とともに確認し、放置の代償を可視化します。

モチベーション低下と早期離職による採用コストの損失

営業新人を放置した場合に最初に顕在化するリスクは、モチベーションの低下とそれに伴う早期離職です。厚生労働省のデータ(2024年公表)によると、大卒新入社員の3年以内離職率は34.9%であり、約3人に1人が3年以内に退職しています。

マイナビの「2024年卒 企業新卒内定状況調査」によれば、新卒採用にかかるコストは1人あたり平均56万8,000円です。ここに研修費、OJT期間中の先輩社員の工数、業務引き継ぎの時間を加えると、1人の早期離職が生む損失は数百万円規模になります。

「若い世代はすぐ辞めるから仕方がない」と考える方もいるでしょう。しかし、カイラボの分析(2024)によると、新卒3年以内の離職率は20年前とほぼ同水準です。さらに注目すべきは、2021年卒の2年目離職率が12.3%と過去最高を記録した点です。

新人の離職がもたらす損失を以下の表で整理します。

損失項目概算
採用コスト1人あたり約57万円
研修・OJT工数先輩社員の稼働月60〜100時間
戦力化までの機会損失独り立ちまで6〜12ヶ月分の売上未達
再採用コスト追加で約57万円+エージェント手数料
チームの工数負担引き継ぎ・フォローで月20〜40時間

上の表で特に注目すべきは「戦力化までの機会損失」です。営業職の独り立ちには一般的に6ヶ月〜1年かかるとされており、その間の売上未達分はチームの年間目標に直接影響します。1人の離職が再採用と再育成のサイクルを生むことで、トータルの損失は採用コストの数倍に膨れ上がる点を、経営層への説明材料として押さえておく必要があります。

(参考)2024年卒 企業新卒内定状況調査

(参考)今どきの若手社員は本当にすぐ辞めてしまうのか? 

スキル習得の遅れと戦力化までの長期化

営業新人を放置した場合、独り立ちまでの期間が大幅に延びます。一般的に営業職の独り立ちには6ヶ月〜1年かかるとされていますが、育成の仕組みがない組織ではこの期間がさらに長引くリスクがあります。

スキル習得が遅れる最大の原因は、フィードバックの不在です。新人が商談でうまくいかなかった場面があっても、振り返りの場がなければ「なぜ失敗したか」を本人が言語化できません。同じ失敗を繰り返し、成功体験が得られないまま月日だけが過ぎていきます。

もしあなたがSaaS企業の営業マネージャーなら、こんな光景に覚えがあるかもしれません。入社半年の新人が「商談数は十分あるのに受注率が上がらない」と悩んでいる。案件を確認すると、初回商談で機能説明に終始し、顧客の課題を把握する前に見積もりを出している。しかし本人はそのズレに気づいておらず、放置されると「自分には営業の才能がない」と結論づけてしまいます。

戦力化の遅れはマネージャー自身の負荷増大にもつながります。新人が数字を持てない期間が長引けば、その分の売上をマネージャーや既存メンバーがカバーしなければなりません。

チーム全体の士気低下と組織への悪影響

営業新人のほったらかしがもたらす最大のリスクは、個人の問題がチーム全体に波及することです。新人の離職や低パフォーマンスが続くと、既存メンバーの業務負担が増え、組織全体のモチベーションが低下します。

新人が退職すると、その担当顧客は既存メンバーに引き継がれます。仮に1人の離職で月20時間の追加負担がチーム全体に生じた場合、5名のチームでは年間1,200時間の工数ロスになります。人件費に換算すれば、数百万円規模の目に見えない損失です。

「うちのチームは大丈夫」と思っていても、新人の離職が2人、3人と続けば話は変わります。既存メンバーの間に「どうせまた辞めるだろう」「教えても無駄だ」という空気が生まれると、次に入ってくる新人への指導意欲も下がります。

さらに、離職が続く組織は外部からの評価にも影響します。口コミサイトに「教育体制が整っていない」「放置される」といった書き込みが増えれば、採用活動そのものが困難になります。放置は新人1人の問題ではなく、組織の採用力・定着力・競争力を蝕む経営課題です。ここからは、このリスクを回避するための具体的な育成の仕組みについて解説します。

営業新人のほったらかしを防ぐ育成の仕組みづくり

営業新人のほったらかしは、マネージャー個人の努力で解決できる問題ではありません。ロードマップ・1on1・スキルマップ・テクノロジーの4つを組み合わせ、マネージャーの負担を増やさずに育成を回し続ける仕組みが必要です。

育成ロードマップを設計し「いつ何を学ぶか」を明確にする

営業新人のほったらかしを防ぐ第一歩は、入社から独り立ちまでの育成ロードマップを作成することです。ロードマップがあれば、新人は「今週やるべきこと」を自分で把握でき、マネージャーは進捗を一目で確認できます。

ロードマップの設計で重要なのは、期間とゴールを具体的に区切ることです。以下に、一般的な営業新人の育成ロードマップ例を示します。

期間テーマ到達目標
1ヶ月目商品知識・業界理解自社サービスの概要を10分で説明できる
2ヶ月目商談プロセスの理解同行商談で議事録を正確に作成できる
3ヶ月目ヒアリング力の強化単独で初回商談のヒアリングを完了できる
4〜6ヶ月目提案・クロージング月間目標の50%を自力で達成できる

上の表で特に注目すべきは、各期間に「到達目標」を設けている点です。「商品知識を身につける」ではなく「10分で説明できる」というレベルまで具体化することで、新人自身が合否を判断できます。目標が曖昧だと「どこまでやればいいかわからない」というほったらかし状態に逆戻りしてしまうため、自社の商材に合わせてカスタマイズし、入社初日に手渡せる状態にしておくことが理想的です。

「ロードマップを作る時間がない」と感じる方は多いです。しかし、一度作成すれば次年度以降も使い回せます。仮にロードマップ作成に8時間かかっても、年間3名の新人を受け入れるなら1人あたりの作成コストはわずか2〜3時間です。

ロードマップは設計しただけでは機能しません。進捗を定期的に確認しつまずきを早期に検知するために、週次の短時間1on1が有効です。

週次の短時間1on1で進捗を確認する

営業新人のほったらかしを防ぐうえで最も即効性があるのは、週1回15〜30分の短時間1on1を固定スケジュールで実施することです。カレンダーに予定を入れてしまえば、忙しさを理由にスキップするリスクを大幅に減らせます。

1on1の目的は評価ではなく、「つまずきの早期発見」と「次の1週間の行動計画の合意」です。新人にとって、週に1回でも「自分の状況を聞いてくれる時間がある」という安心感は、モチベーション維持に直結します。

1on1のアジェンダは以下のようにシンプルに設計します。

  1. 先週の振り返り(うまくいったこと・つまずいたこと):5分
  2. 今週の商談・タスクの確認と優先順位の合意:5分
  3. 新人からの質問・相談:5分

「1on1に15分も取れない」という声は少なくありません。しかし、15分の1on1をスキップした結果、新人が2週間同じミスを繰り返し、顧客からクレームが入ってその対応に3時間かかるケースを想像してみてください。15分の予防投資と3時間の事後対応、どちらがチームの生産性を守れるかは明白です。

1on1で確認した進捗やつまずきを記録に残しておくと、新人の成長推移を可視化できます。この可視化をさらに体系的に行うのがスキルマップです。


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スキルマップで成長を可視化し新人の自走を促す

営業新人の成長を客観的に把握するための最も有効なツールは、スキルマップです。スキルマップとは、営業に必要なスキル項目を一覧化し、各項目の習熟度を段階的に評価するシートです。

スキルマップが効果を発揮するのは、新人本人とマネージャーの「認識のズレ」を解消できる点です。新人は「ヒアリングはできている」と思っていても、マネージャーから見れば「表面的な質問で終わっている」と評価しているケースがあります。スキルマップで項目ごとに評価を可視化すれば、こうしたズレが数値として明確になります。

営業スキルマップの評価項目は、自社の営業プロセスに合わせて設計します。一般的な項目例を以下のリストで整理します。

  • 商品知識: 自社サービスの機能・料金・競合との違いを説明できるか
  • ヒアリング力: 顧客の課題・予算・決裁フロー・導入時期を把握できるか
  • 提案力: 顧客の課題に対してソリューションを論理的に提案できるか
  • クロージング力: 見積もり提示から契約獲得までのプロセスを主導できるか
  • 案件管理力: SFAへの入力・案件の進捗管理・報告を正確に行えるか

上記の各項目を「未着手・学習中・サポートありで実行可能・単独で実行可能・他者に指導可能」の5段階で評価すると、新人の現在地と次のステップが一目でわかります。1on1の冒頭でスキルマップを開き前回からの変化を確認するだけで、形骸化しがちな面談が具体的な成長対話に変わります。まずは5〜7項目でスモールスタートし、運用しながら追加するのが定着のコツです。

スキルマップで「ヒアリング力が弱い」と判明しても、練習の場がなければ改善は進みません。マネージャーが不在でも新人が実践的にトレーニングできるAIロープレの活用方法を紹介します。

AIロープレや動画研修でマネージャー不在でも学べる環境を整える

マネージャーが不在でも営業新人が実践的に学べる環境を実現する手段として、AIを活用したロールプレイング(AIロープレ)が注目されています。従来の対面ロープレは先輩社員のスケジュール確保が必要でしたが、AIロープレであれば新人が好きなタイミングで何度でも練習できます。

AIロープレの最大の利点は、自社の商談データをもとにリアルな顧客シナリオを再現できる点です。価格交渉で「御社は競合より高い」と切り返された場面や、顧客から「社内で反対が出た」と言われた場面など、実際に現場で発生するシーンを繰り返し練習できます。直近の商談で苦戦した場面を自動で練習メニューに反映する機能があれば、新人一人ひとりの弱点にピンポイントでアプローチできます。

「AIのロープレで本当に実力がつくのか?」と疑問を持つ方は多いです。しかし、対面ロープレが月に1〜2回しか実施できない組織と、AIロープレで毎日15分の練習を積む組織では、3ヶ月後の商談品質に大きな差が生まれます。

さらに、AIが商談中の会話をリアルタイムで解析し、「次に聞くべき質問」「切り返しトーク」をその場で画面に表示するリアルタイムナビゲーション機能を併用すれば、新人でもベテラン同様の商談品質をその場で発揮できます。日々の商談をAIが分析して成功パターンを自動抽出し、そのパターンがロープレとナビゲーションに即座に反映される。使うほど自社専用の営業AIに進化していく仕組みは、育成のほったらかしを根本から解消する手段になり得ます。

ここまで育成の仕組みを4つ紹介しました。次のセクションでは、新人が自ら動ける「自走力」を引き出すために管理職が整えるべき環境について掘り下げます。

新人の自走力を引き出すために管理職が整えるべき環境

仕組みを整えても、新人が指示待ちのままでは育成の効果は限定的です。新人が自ら考え、行動し、改善サイクルを回せる力を引き出すには、管理職が「教える環境」ではなく「学べる環境」を設計する必要があります。

自主学習の導線を用意しやることを明確にする

新人の自走力を高める最も効果的な方法は、「何を、どの順番で、どこまで学べばいいか」が一目でわかる自主学習の導線を用意することです。学習の入り口が明確であれば、新人はマネージャーに「次は何をすればいいですか?」と聞く必要がなくなります。

具体的には、社内Wikiやナレッジベースに学習導線を整備します。まず商品説明の動画を視聴し、次に理解度チェックテストを受ける。合格したらヒアリングシートのテンプレートを使ってAIロープレで練習し、練習結果を1on1で振り返る。このように「見る→解く→やる→振り返る」の4ステップが明示されていれば、新人は自分のペースで学習を進められます。

「自主学習に任せたら、サボるのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。しかし、スキルマップと1on1で進捗が可視化されていればサボりは即座に検知できます。むしろ、自主学習の導線がないことで「何をしていいかわからず手が空いてしまう」状態のほうが深刻です。

自主学習で基礎力をつけた新人は、次のステップとして実践の場を必要とします。ここで重要になるのが、段階的に設計された同行プログラムです。

同行プログラムを設計し段階的に実践機会を与える

営業新人に実践力をつけさせるうえで最も効果的な手段は、段階的に設計された同行プログラムです。「ただ横にいるだけの同行」と「学びの目的が明確な同行」では、3ヶ月後の成長に圧倒的な差が生まれます。

同行プログラムは、見学→部分担当→主担当の3段階で設計します。1段階目は先輩の商談を観察し議事録を作成する。2段階目はヒアリングの一部を新人が担当する。3段階目は新人が商談を主導し、先輩はサポート役に回ります。

同行プログラムの段階と到達基準を整理すると、以下のようになります。

段階新人の役割想定期間
見学期議事録作成・質問記録入社1〜2ヶ月目
部分担当期ヒアリング・冒頭説明を担当入社2〜3ヶ月目
主担当期商談全体を主導(先輩は同席)入社3〜4ヶ月目
独り立ち単独で商談を実施入社4〜6ヶ月目

上の表で注目すべきは、各段階に具体的な到達基準を設定している点です。「何ができたら次に進めるのか」が明確になっていれば、新人は自分の成長の現在地を把握でき、ゴールに向かって自走しやすくなります。段階的な設計であれば急に1人で商談に放り出される不安もなく、マネージャーもフォローの優先度を判断しやすくなります。

同行プログラムを円滑に運用するためには、新人がつまずいたときに安心して相談できる関係性が不可欠です。次では、チーム内の心理的安全性について解説します。

新人が声を上げやすい心理的安全性をチームに構築する

営業新人が自走力を発揮するための土台は、心理的安全性です。「質問しても、失敗を報告しても、否定されない」とチームメンバーが信じられる状態がなければ、ロードマップも1on1もスキルマップも形骸化します。

営業組織では「数字がすべて」という文化が根強いため、成果が出ていない新人が質問や相談をしづらい雰囲気になりがちです。リクルートマネジメントソリューションズの調査(2023)では、会社を辞めたいと思った理由の上位に「仕事にやりがい・意義を感じない」が挙がっています。この背景には、新人が声を上げられず孤立した結果、仕事への意義を見失ったケースが含まれています。

心理的安全性を高めるために管理職ができることは3つあります。1つ目は、1on1で新人の発言量がマネージャーの発言量を上回るよう意識すること。2つ目は、失敗を責めるのではなく「次に同じ場面が来たらどうする?」と問いかけること。3つ目は、マネージャー自身の失敗談を開示することです。

心理的安全性は一朝一夕で構築できるものではありませんが、管理職の日々の言動が積み重なって組織文化になります。次のセクションでは、育成体制を整える際に陥りやすい3つの注意点を取り上げます。

(参考)新人・若手の早期離職に関する実態調査 https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/0000000417/

営業新人の育成体制を整える際の注意点

育成の仕組みを整備する過程で、よかれと思った取り組みが逆効果になるケースがあります。型にはめすぎる弊害、成果偏重の評価、トレーナー任せの体制。この3つの落とし穴を事前に把握しておくことで、育成の質を維持できます。

型にはめすぎず新人の個性と強みを活かす

営業新人の育成で注意すべき第一のポイントは、基本の型を教えることと型にはめすぎることのバランスです。型はあくまで土台であり、新人一人ひとりの個性や強みを活かす余地を残す必要があります。

たとえば、ロジカルに話すことが得意な新人と、相手の感情に寄り添うことが得意な新人がいた場合、同じヒアリングスクリプトを強制するとそれぞれの強みが消えてしまいます。前者にはデータを使った提案スタイル、後者には関係構築を起点にしたスタイルを伸ばすほうが、戦力化のスピードは速くなります。

「基本の型を覚える前に個性を出されると困る」という管理職の声は多いです。確かにヒアリングの基本手順や提案書の構成といった共通スキルは全員に習得させるべきです。しかし、共通スキルが身についた段階で「あなたの強みをどう活かすか」を一緒に考える時間を設ければ、新人のモチベーションは大きく上がります。型の習得と個性の発揮は、順番の問題であって二者択一ではありません。

1on1やスキルマップのフィードバックの中で、新人の得意領域を見つけて言語化してあげることが、管理職にできる最も効果的な支援です。


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成果よりプロセスを評価し小さな成功体験を積ませる

営業新人の育成で陥りやすい罠は、入社直後から売上や受注件数といった成果指標だけで評価してしまうことです。戦力化前の新人を成果で測ると、「結果が出ないから自分はダメだ」という誤った自己評価につながり、離職リスクが高まります。

営業職の独り立ちには6ヶ月〜1年かかるとされています。この期間中に成果だけを求めると、新人は「数字に届かない自分」を毎日突きつけられることになります。代わりに、「今週のアポイント獲得数」「ヒアリングシートの完成率」「AIロープレの練習回数」といった行動量で評価すれば、毎日の努力が認められる実感を得られます。

プロセス評価のポイントを以下のリストで整理します。

  • 行動量: 架電数・訪問数・メール送信数など、新人がコントロールできる指標で評価する
  • スキル向上: スキルマップの評価段階がひとつ上がったことを成果として認める
  • 学習完了: ロードマップ上のタスクを期限内に完了したことを評価に反映する
  • 質の改善: 商談議事録の精度向上やヒアリングの深さを1on1で確認しフィードバックする

上記のプロセス指標を用いれば、入社1ヶ月目でも「今週は架電50件を達成した」「商品説明テストに合格した」という小さな成功体験を積むことができます。この成功体験の積み重ねが新人の自信と継続意欲を支えます。成果は後からついてくるものであり、まず行動とスキルの土台を固めることに集中させるのが、遠回りに見えて最短ルートです。

トレーナー任せにせず組織として育成に関わる

営業新人の育成で最も注意すべき点は、特定のトレーナー1人に育成責任を丸投げしないことです。トレーナー個人に依存する育成体制は、そのトレーナーの異動や退職によって一瞬で崩壊します。

トレーナー任せの組織では、トレーナーの負荷が過大になりがちです。自分の営業目標を追いながら新人の指導も行うため、どちらも中途半端になるリスクがあります。リクルートマネジメントソリューションズの報告でも、OJTの育成担当者の役割が曖昧なまま運用され、OJTが機能していないケースが指摘されています。

育成を組織の仕組みにするためには、役割分担を明確にする必要があります。以下の表で、育成に関わる3つの役割とその担当範囲を整理します。

役割主な責任
営業マネージャーロードマップ策定・スキルマップ設計・進捗管理
OJTトレーナー(先輩社員)同行指導・日常の質問対応・ロープレ実施
人事部門・経営層研修プログラムの提供・評価制度の設計・予算確保

上の表で重要なのは、育成設計者と日常指導者を分離している点です。マネージャーは全体設計と進捗管理に集中し、日々の指導はトレーナーが担当します。さらに人事部門が研修やツールの面で支援することでトレーナーの負荷を分散できます。加えてAIロープレやリアルタイムナビゲーションのようなテクノロジーを導入すれば、トレーナー不在の時間帯でも新人の学習が止まりません。育成は特定の個人の使命ではなく、組織の仕組みとして運用するものです。自社の現状をチェックし、足りない要素から着手してみてください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 「1on1」の時間がどうしても確保できない時は?

A. 「15分」だけでも実施してください。 15分の対話を惜しんだために新人が同じミスを繰り返し、そのクレーム対応に数時間を費やすコストを考えれば、週15分は最も投資対効果の高い時間です。どうしても無理な日は日報へのコメントだけでも欠かさないことが大切です。

Q2. 個性を伸ばしたいので、型にはめたくないのですが。

A. 「基礎の型」を固めてこそ、個性が活きます。 ヒアリングの順序や資料構成などの「基本」ができていない状態の個性は、ただの「自己流」です。まずは組織の型をマスターさせ、スキルマップの特定項目(例:ヒアリング)がレベル4に達した段階で、本人の得意なスタイルを伸ばす支援をしましょう。

Q3. 既存の先輩社員(OJT担当)への負荷が心配です。

A. 「チーム全体で育てる」設計に変更しましょう。 特定の一人に丸投げせず、商品知識は動画教材、ロールプレイングはAI、実務同行は先輩、というように役割を分担します。育成担当者の営業目標を一部調整するなど、会社としてのバックアップも不可欠です。

Q4. 成果(売上)が出ていない新人に、どう声をかけるべき?

A. 「プロセス(行動量)」を具体的に褒めてください。 戦力化前の新人を数字だけで評価すると萎縮します。「今週は架電目標を120%達成した」「ヒアリングシートの精度が上がった」など、本人がコントロールできる行動を承認することで、自信と自走力を育みます。 [Image comparison of Outcome-based evaluation vs. Process-based evaluation for new hires]

Q5. 育成プログラムを自社で作る余裕がありません。

A. 既存のテンプレート活用とスモールスタートから。 最初から完璧なマニュアルは不要です。まずは「入社1ヶ月でできるようになってほしいこと5つ」を書き出し、それを新人と共有することから始めてください。運用しながら肉付けしていく方が、現場に即した生きたプログラムになります。


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まとめ

営業新人のほったらかしは、マネージャーの多忙、プログラムの不在、指導の属人化、タスク設計の曖昧さという4つの構造的原因が重なって発生します。放置された新人はモチベーション低下から早期離職に至り、1人あたり数百万円規模の損失を組織にもたらします。

この問題を解消するには、育成ロードマップで「いつ何を学ぶか」を明確にし、週次1on1でつまずきを早期に検知し、スキルマップで成長を可視化する仕組みが必要です。さらにAIロープレやリアルタイムナビゲーションを活用すれば、マネージャーが不在でも新人の学習が止まらない環境を構築できます。

まずは自社の育成体制を4つの原因に照らし合わせ、最も手薄な領域から改善に着手してください。AIを活用した営業新人育成の仕組みについて詳しく知りたい方は、資料請求からお気軽にお問い合わせください。

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