近年、新卒採用だけでなく中途採用も活発化し、採用手法も従来の広告形式、人材紹介だけではなく、スカウト型のダイレクトリクルーティングや、人の繋がりを活用したリファラル採用など、採用の形式も多様化しています。そのため、どの採用の形式が最適なのか、目標を達成するためには何をすれば良いのか迷う採用担当者の方も多いかと思います。今回の記事では採用担当者にとって適切なKPIの目的や効果、運用方法やポイントについて解説します!
KGI・KPIとは?
KGIとは?
KGIとは、「Key Goal Indicator」の略で、企業にとっては最終目標を指します。採用担当にとっては、採用活動の最終的な成功を測るための指標であり、可能な限り数値化できる目標を設定し、達成度や進捗を管理しやすくするようにすることがおすすめです。KGIを明確に設定することで、採用活動の全体を数字で把握しやすくなり、戦略的に進めることが可能となります。また、数値化できる形で目標設定を行うことにより、その達成度合いを踏まえ、翌年以降のKGI設定や達成戦略の立案にも役立ちます。採用活動のKGIを設定するために重要な項目は、①採用人数と②人材の質(採用後のパフォーマンス)の2つです。
①採用人数
会社や事業のの成長目標を達成するために、一定の採用人数を確保することは人事部の採用担当にとって非常に重要なミッションの1つです。例えば新卒採用の場合、「2025年度の新卒入社者を20名採用する」といったものが採用担当者としての目標となるでしょう。前年度の採用データなどを踏まえ、目標達成のためにはいつから動き出すべきなのか、内定辞退率を踏まえると何名ほど内定を出していく必要があるのかなど、戦略的に採用を進めていく必要があります。新卒採用、中途採用に関わらず難易度が高まり、それに応じて採用手法も多様化してきているため、一定のサイクルでPDCAを回しながら、サービス選定や計画の練り直しを行っていくことが重要です。
②人材の質(採用後のパフォーマンス)
採用人数だけではなく、採用した人材が入社後にどの程度活躍しているのかを評価することもKGIとして重要なポイントの1つです。新卒採用の場合は判断が難しいですが、より即戦力性が求められる中途採用の場合は、この基準を重視しても良いでしょう。例えば、「採用後6ヶ月以内に離職する人材を前年度比で30%以下に抑える」や「採用者の内50%以上が1年以内に人事評価にて〇ランク以上を取得する」のように具体的な目標設定を行うことができます。これにより、採用活動の質が確認でき、ミスマッチを防ぐための指針としても役立ちます。この目標を達成するために必要なポイントは部署から求められている人材の要素を正確に把握することです。各部署と密にコミュニケーションを取り、必要な情報を集め、ミスマッチが起こりにくいように応募を集めていくことが重要です。エンジニアなど専門性の強い職種を募集する場合には、所属部署の社員を巻き込んで採用活動を行うことも検討しましょう。
上記2点に関し、どちらを重視するかは各社の状況や現状によっても異なります。例えば、事業観点で新卒採用の人数を重視する場合は、採用後のパフォーマンスをすぐに評価することが難しいため採用人数の比重を上げることが考えられ、逆に計ケイン重視の欠員補充の場合は人材の質に比重をかける選択をすることが適切でしょう。
KPIとは?
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指標」と訳されます。最終目標であるKGIを達成するために必要な中間目標の役割を果たし、その達成度合いを測定・評価するための指標です。KPIを設定するための前提として、最終目標を達成するための途中のステップを洗い出し、目標達成までの全体のフローを可視化します。そのうえでフェーズごとにKPIを設定するため、目標を達成するために必要なアクションが明確になります。アクション内容の妥当性を上げるためにも、定量的に状況を把握・分析し、効率的にKPIの達成を目指すことが重要です。KPIの代表的な項目に関しては後の項目で説明しますが、達成のためには応募者数や面接設定数など歩留まりが悪いポイントを見つけつつ課題を設定し、期間を決めて具体的な背策を立案できるようにしましょう。
KSFとは?
KSFとは、「Key Success Factor」の略で、「重要成功要因」と訳され、KGIやKPIを達成するためにどのようにアクションすべきかを明確したものを表します。KPIやKGIとは異なり、KSFは定性的に表現されることが特徴です。採用担当におけるKSFを設定するには、採用目標を達成するために不可欠な要素や条件を洗い出し、成功に直結する要因を明確にすることが重要であり、その過程で、採用活動全体の中で最もインパクトのある要素に集中し、活動を効果的に進めるための基盤が整います。KSFになり得る要因としては、大きく分けて内部要因と外部要因があります。内部要因の例としては、企業内の採用リソースやブランド力、採用ノウハウ、評価基準などがあります。対して外部要因としては、市場の労働需要や求職者ニーズの変化などが挙げられます。採用活動に置き換えるのであれば、KGIが「年間20名のエンジニア採用」の場合、「求職者に対して、企業のビジョンや価値観、働く魅力を明確に伝えることで、優秀な人材に「ここで働きたい」と思わせるような魅力訴求」や「必要なスキル、経験、カルチャーフィットを明確化し、求める人材像をはっきりさせることで、ミスマッチを減らし、定着率の向上につなげるための人材要件定義」などが考えられます。外部要因である求職者動向などの要因を理解た上で、内部要因である自社の強みと照らし合わせることで、どの点に注力すべきかを明確にできます。
採用活動で目標設定が重要な理由
採用活動において、KPIを設定する目的やメリットは複数あります。この項目では、主なものを3点紹介します。
目標達成までのプロセスを可視化できる
1点目の理由として、目標達成までのプロセスを可視化できる点があります。例えば、「年度内に10名営業部を増員する」というKGIが設定されている場合、採用業務のプロセスを「応募者数」「書類通過率」「面接通過率」「内定承諾率」など各段階に分解することができます。これにより、各プロセスにおける数値が見える化され、どの段階に課題があるのかが明確になります。これにより、採用担当は活動のボトルネックを早期に発見し、改善策を精緻に設計できるため、目標達成に直結した行動がとれるようになります。たとえば、応募者数が多いのに面接通過率が低い場合、書類選考基準や面接後のフォローなどに問題がある可能性があります。このような場合、選考基準を見直すことで次の選考段階に進む候補者の質を高め、目標達成に一歩近づくことができるのです。
また、採用活動を進める際の一貫した戦略が設計されることで、活動が無計画に進むことに対する注意が生まれ、目標達成に向けた各ステップが明確な形で管理されます。KGI(重要目標達成指標)から逆算されたKPIを通じて進捗を管理するため、採用活動の各段階で必要なアクションが見え、求職者への対応スピードや質を高められます。さらに、リアルタイムでの進捗把握が可能になるため、状況に応じた柔軟な意思決定ができ、改善が必要なフェーズに即座にリソースを集中させるといった対策を講じることで、結果的に成功率を大きく引き上げることができます。
加えて、目標設定により採用活動の透明性が増し、チーム内外の連携が強化されます。具体的な目標と進捗状況が共有されることで、採用担当者のみならず、他部署や経営層も採用状況を把握しやすくなり、組織全体が一体となって採用活動に貢献できるようになります。これにより、協力体制が強化され、最終的な採用目標達成に向けた共通認識が深まり、結果として組織全体の採用力が向上します。
さらに、目標設定によってPDCAサイクルが確立され、データに基づく評価・改善が可能になります。採用活動の各段階におけるデータを収集・分析することで、活動全体を振り返り、次の採用計画をより精緻に策定することができるのです。これにより、短期的な採用の成功だけでなく、継続的な改善を通じて長期的な採用力の強化も可能となります。
採用担当のモチベーション向上のため
2点目は、採用担当のモチベーション向上のためです。採用担当者が短期的に達成感を得られるよう、最終目標を分解し、たとえば「今月内に10件の面接実施」といった中間目標を設けることで、業務に前向きな姿勢を維持しやすくなります。また、目標達成を通じてスキルアップや成長を実感することで、「自分が価値を提供している」という自信や自己効力感が高まり、次の目標にも積極的に挑戦できる意欲が続きます。さらに、チーム目標を設定することで、メンバー間の一体感や協力意識が高まり、互いに支え合う環境が整います。目標達成がキャリアアップや評価に直結する道筋が見えることで、担当者は取り組みへの意義をより強く感じられます。
また、目標設定は新たな施策に挑戦する文化を育む基盤としても機能します。たとえば、「今月の候補者エンゲージメント率を5%向上させる」など具体的な目標により、改善のアプローチに挑戦しやすくなり、担当者のスキル向上や組織の採用活動全体の質向上が促進されます。このように、採用担当者が意欲を持って活動できる環境を整えるために、目標設定は欠かせない要素です。
改善箇所を把握して打ち手を打つため
3つ目は、改善箇所を把握して打ち手を打つためです。採用活動で目標設定を行うことで、現状と目標のギャップが明らかになり、改善が必要なポイントが把握しやすくなります。例えば、面接通過率で言うと30%を通過していない場合見直しが必要です。通過率が低い場合、候補者の意向を上げることができておらず、途中で辞退されてしまっている場合や、採用における人材要件定義がずれてしまっているパターンがあるので、辞退なのか、不合格なのかを明確にすることで、打ち手を具体的に検討する材料を得ることができます。辞退が多く、候補者の意向上げが出来ていない場合は、その候補者が何を求め転職を希望しているのかを明確にきるヒアリング力の高い人を面接官に配置、要件定義が不明確であると想定できる場合は現場との目線合わせを行うなど、適切に打ち手を考えることが重要です。
また、目標と実績の差分を確認することで、採用担当者が主体的に改善点を見つけ出す姿勢も促されます。データを基に改善策を実施し、その結果を振り返ることで、採用チーム全体にデータに基づいた判断力が育まれ、戦略的な対応が可能となります。さらに、打ち手の効果を定量的に確認することもできます。たとえば、候補者エンゲージメント向上を図る施策を実行し、その効果を面接辞退率や内定承諾率といった指標で確認することで、施策の有効性を測定できます。
このように、改善点を具体的に把握し、実行した打ち手の成果を確認することで、採用活動全体の持続的な質の向上が可能となります。
採用活動におけるKGI
次に、採用活動におけるKPIについて解説していきます!
決定人数
採用活動におけるKGIとして「決定人数」をゴールとして設定することがおすすめです。決定人数は、採用活動が組織の成長や人員配置計画にどれだけ貢献できているかを直接示す指標となります。目標人数を毎月・四半期・年度ごとに設定し、その達成を目指して施策を計画・実行することで、組織の目標に沿った人材確保が可能となります。「決定人数」をKGIとして設定することで、採用チームは候補者の母集団形成や選考過程の進捗を具体的に把握でき、必要に応じて採用チャネルの見直しや選考プロセスの調整といった改善策を講じやすくなります。たとえば、目標人数に対して不足がある場合、候補者の質やプロセスのスピードに着目し、採用決定までの流れを改善することができます。明確な目標を持つことで、採用担当者は自らの活動が組織の成果にどう寄与しているかを実感しやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。さらに、決定人数をKGIに据えることは、経営層や他部門への進捗報告にも効果的です。採用活動が組織全体に及ぼすインパクトを具体的に示すことで、リソース配分のサポートを得やすくなり、他部門からの協力も得やすくなります。このように、決定人数は採用活動において、戦略的な目標達成に不可欠な指標として機能します。
採用活動におけるKPI
次に、KGIを踏まえた上で、採用活動におけるKPIについて解説していきます!
応募者数
求人に対する応募者数は、企業の魅力がターゲット層にどれだけ伝わっているかを示す指標であり、採用プロセスの流れを安定的に確保するために重要です。「応募者数」をKPIとして設定することで、どのチャネルが効果的に候補者を引きつけているかを分析でき、予算やリソースの配分を最適化するための具体的に判断することができるようになります。たとえば、広告や人材紹介、SNS経由の応募数を比較すれば、各チャネルのパフォーマンスを見極め、必要に応じて再評価や調整を行うことで、最終的により多くの応募者を集めやすくなります。また、応募者数の推移を定期的に確認することで、時期や市場の変動に即した柔軟な対応が可能になります。たとえば、前月や前年と比較することで季節ごとの傾向を把握し、採用計画を改善するための材料が得られます。これにより、常に状況に応じた母集団形成が実現しやすくなります。
面談設定数
今後採用難易度がより一層上がっていく中で、採用が上手い企業は必ずと言っていいほど面談を行っています。面談は、候補者の意向や企業に対する関心を高め、最終的な採用成功率を上げるために重要です。面談は、急な面接ではなくリラックスした場で企業の魅力を伝える機会であり、候補者が企業に対して共感や関心を深めることで、最終的な採用につながりやすくなります。面談は候補者にとって自社が適した環境であることを示す場でもあるため、ヒアリング力が高い人などを配置し、候補者が何をもとめて転職するのかを明確化させることが有効です。また、「面談設定数」をKPIにすることで、候補者と直接対話する機会の確保に注力でき、関係性の構築を通じて意向を高められます。この数値を確認することで、採用チャネルの効果や候補者が関心を持つ段階を把握し、面談のタイミングやアプローチを最適化することが可能です。また、面談は候補者の質問や不安に答える場であり、企業側の誠実な姿勢を示すタイミングでもあります。面談から得られるフィードバックを活用し、候補者の期待に応えつつ、面接に向けた準備を進められます。
このように、面談の設定とその数値管理は、面接へのスムーズな移行に役立ちます。さらに、面談設定数をKPIとすることで、採用チームは面談から面接へと移行するプロセスの効率性を定期的に見直し、改善することができます。計画通りに面談数が確保されているか、また面談から面接への移行率を分析することで、採用プロセスの質の向上を図る材料が得られます。近年では配属先である部署にて上司になる可能性がある人などが面談に出ることで、配属後のイメージを持ってもらえるようにしている場合もあります。
面接設定数
面談からの面接設定数は、候補者の進捗と採用プロセスの効率を高めるために重要です。面接は候補者と直接対話し、経験やカルチャーマッチを確認する場であり、候補者が企業の魅力を理解するための場でもあります。そのため、面談からの面接設定数を把握することで、採用活動全体の進行状況を適切に管理できます。面談から面接への移行率が低い場合には、面談での説明や候補者の関心を高める工夫が必要です。また、面接設定数のモニタリングは、採用チームのリソース管理にも役立ちます。適切な面接枠を確保し、担当者のスケジュールを調整することで、候補者の選考待機時間を短くすることができるため、他社に流れるリスクを低減できます。さらに、面接設定数はプロセスの質を見直すための指標にもなります。例えば面談からの面接数が多くても、自社にマッチする候補者が不足している場合、書類通過基準の調整が必要かもしれません。設定数と通過率の分析を通じて、採用プロセス全体の質向上につながる改善を行うことができます。
面接通過率
面接通過率を採用活動のKPIに設定することで、選考プロセスの質と効率を客観的に評価することができます。面接通過率とは、面接を受けた候補者のうち次のステージに進んだ割合を示し、一般的に各ステップへの通過率は30%が良いとされています。この指標を活用することで、選考基準や面接内容が適切かどうかを確認し、採用活動の質を向上させることにつながります。例えば面接通過率が低すぎる場合、候補者が書類選考段階や前の面接時に適切にスクリーニングされていない可能性があるため、エントリー段階の基準や面接通過基準を再考する必要があるかもしれません。一方で通過率が高すぎる場合、基準が甘く、厳密な評価ができていない恐れがあります。通過率を30%前後に保つことで、面接基準が適切かどうかを継続的に評価しやすくなります。近年では、エンジニアなどの技術職の場合、採用担当だけが採用に関わるのではなく、書類選考段階から採用部署の社員が面接に関わるなど、部門横断的に採用活動に取り組むことも増えてきています。このような形式であれば、現場と採用担当のスキル的な認識齟齬がないようにできますし、面接時に候補者の意向上げを効率的に行うこともできます。
内定辞退率
内定辞退率とは、内定後に辞退されてしまう内定者の割合を指します。辞退率をモニタリングすることで、内定後のフォローやオファー内容が適切かどうかが把握できます。辞退率が高い場合は、内定時点で候補者の不安や疑問に十分応えていない可能性があるため、内定後のフォローを強化し、辞退率を低下させる施策が有効です。内定を辞退されてしまう理由として、候補者の真の転職理由がつかめず、期待に沿えなかったということが考えられます。例えば、「年収を上げたい」という候補者がいた場合、なぜ年収を上げたいのか聞いていくと、親の介護をしており、親に恩返しをしたいという理由であったとします。この場合、年収を上げるのも一つの手ですが、年収は上げることができないが、フレックス制度など勤務時間に融通が利く制度がいくつかあるため、親の介護に行きやすいなどの魅力を打ち出すことで、候補者の真の要望に沿うことができるケースもがあります。また、面接官として選ぶ立場に立つのではなく「あなたに入ってほしい」という姿勢を見せることでの内定承諾率向上も見込めます。
採用KPIの立て方と設定方法
次に、採用KPIの立て方について、ステップごとに解説していきます!
ステップ1:会社で解決したい課題を考える
採用KPIを設定する最初のステップは、会社で解決したい課題を明確にすることです。「会社の課題に応じた人材を採用する」という原則に基づき、組織が抱える具体的な課題を整理します。たとえば、新規事業の立ち上げや業務の効率化など、課題の特性により求める人材のスキルや経験も異なります。また、課題をもとに採用コストや年収も現実的に検討できます。例えばエンジニア採用の場合、採用が難しいため外注することも少なくありませんが、外注した場合の費用を想定することで、採用が適切な投資かどうかの判断材料が得られます。外注コストが高額であれば、適切な年収で自社に必要な専門性を持つ人材を迎えたほうが、コストパフォーマンスに優れていると判断することもできます。このように、なんとなくの採用ではなく、課題解決に向けた採用計画を立てることで、入社後の役割が明確になり、人材の活躍が期待できる環境が整います。課題を起点とした採用KPIの設定を行うことで、採用活動全体に具体性を持たせ、結果として人材のミスマッチを減らし、定着率向上にもつながります。
ステップ2:欲しい人材像を設定して、KGIを決める
課題が明確になった後は、課題を解決できる人材像(ペルソナ)を設定し、それに基づいてKGIを設定しましょう。まず、会社の課題に応じてどのようなスキルや経験を持つ人材が必要かを明確にします。具体的には、解決すべき課題を念頭に「専門知識がある人」「即戦力となる経験者」「将来に期待が持てる若手層」などの条件を各部署にヒアリングしながら設定し、求める人物のイメージを固めます。次に、その人材をどのような待遇で、何人採用するかをKGIとして定めます。たとえば「年収〇円で〇人採用する」といった具体的な数値目標を設定することで、採用活動の方向性がより明確になります。このKGIをもとにすれば、採用計画が現実的で実現可能なものになるだけでなく、予算管理や採用ターゲットの調整もスムーズに行えます。
ステップ3:KGIから逆算して各項目でのKPIを設定する
具体的な採用目標(KGI)が定まったら、その達成に向けて必要なプロセスを分解し、進捗を測るためのKPIを設定します。KPIは、採用活動の各段階で達成すべき数値基準としての役割であり、目標達成までの道筋が具体的になります。たとえば「年収〇円で〇人採用する」というKGIを達成するために、最初に必要な母集団形成の数をKPIとして設定します。次に、応募者から面談や面接に進む割合、そして内定率といった選考ステージごとにKPIを設けることで、採用プロセスの進捗を可視化できます。こうしたステップごとのKPIを設定することで、計画が順調に進んでいるか、またどの段階で改善が必要かを早期に把握することができます。また、各KPIが達成されていない場合は、採用チャネルの見直しや選考プロセスの調整を行い、KGI達成に向けた対策を講じることが重要です。このプロセスは、採用活動全体の進捗管理をサポートするだけでなく、採用チームの活動が常にKGI達成に直結しているかを確認するために重要なポイントとなります。
ステップ4:SMARTの法則でKPIを検証する
KPIが設定出来たら、「SMARTの法則」に基づいているか確認しましょう。SMARTの法則は、KPIが具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限付き(Time-bound)であることを確認するための基準です。まず、KPIが具体的であるか確認します。例えば「面接通過率を30%にする」といった明確な数値を設定することで、目標がわかりやすくなります。次に、測定可能であること、つまり進捗が数値で追える指標であるかも確認します。また、KPIが現実的で達成可能であることも重要です。無理のない目標を設定することで、着実な進捗を見込むことができます。さらに、KPIが最終目標(KGI)に対して関連性があるかを確認し、KGI達成につながるものになっているかを見直します。最後に、期限を設けて、進捗を評価しやすくします。例えば「3か月以内に面接通過率を30%に引き上げる」とすることで、計画的な進捗管理が可能になります。
ステップ5:KPIで未達している所を発見して対策を打つ
採用プロセスの各段階でKPIを達成しているかを定期的に確認することで、ボトルネックを早期に発見し、改善策を実行できます。たとえば、「スカウト返信率5%」を目標にしている場合に、実際の返信率がそれを下回るとしたら、スカウトメールの内容やターゲット設定に問題があるかもしれません。未達成箇所を発見した際には、具体的な対策を検討します。スカウト返信率が低い場合、メールの文章をターゲット層により響く内容に変更する、もしくは送信時間や頻度を見直して返信が得やすい工夫をすることが考えられます。また、書類通過率が低い場合には、候補者のスクリーニング基準を調整し、求めるスキルに合致するターゲットリストを再確認することが効果的です。このように、未達成のKPIに対して原因を分析し、迅速に対策を打つことで、採用活動が計画的に進み、最終的な目標であるKGI達成を確実に目指せるようになります。定期的採用活動がワークしているかをチェックし、未達成箇所を発見したらすぐに改善策を講じることが、採用活動の成功を支えるポイントです。
KPIの運用方法と採用成功のためのポイント
立てたKPIを達成するために、運用方法と採用成功のためのポイントについて解説します!
採用フロー中の数字を正しく把握する
KPIが明確になったら、数字で明確に測るようにしましょう。採用プロセスの各段階での数字を正確に測定することで、目標達成に向けた進捗や課題が明確になります。先述したエントリー数、面接設定数、面接通過率、内定辞退率といった指標を確認し、それぞれのステージでの達成状況を把握することで、現状のボトルネックがどこなのかを分析しやすくなります。例えば、応募者数は多いものの面接設定率が低い場合、応募者の質や選考基準に調整が必要かもしれません。また、面接通過率が目標よりも低い場合は、面接の評価基準や質問内容を見直すことで改善が期待できます。求人広告やエージェントなど採用支援を行っている各媒体によって登録者層や特徴もことなるため、ボトルネック次第では別手法の導入を検討することも可能になります。
KPIを定期的にモニタリングする
KPIの定期的なモニタリングを徹底することで、各指標が目標に達しているか、また予想以上に良い結果や課題が出ていないかを早期に把握できます。これにより、改善が必要な段階で適切な施策を実行しやすくなり、採用活動全体の精度が高まります。モニタリングの頻度は、採用活動の規模や進行状況に応じて調整します。たとえば、応募数や面接設定数のような初期段階のKPIは週次で、内定承諾率などの最終段階のKPIは月次で確認するといった形式が無駄が少なくなります。こうしたリズムでのモニタリングにより、各ステージでの進捗をタイムリーに把握でき、必要に応じてリソースの配分や採用手法の調整がスムーズに行えます。
KPIの見直しを検討する
一度立てたKPIであっても、採用活動の成果を最大化し、変化に柔軟に対応するために、状況に応じて見直すことは重要です。採用活動の状況や市場環境は変動するため、最初に設定したKPIが常に最適とは限りません。定期的にKPIの妥当性を検討し、必要に応じて修正することで、採用活動を効果的に進めることができます。KPI見直しのタイミングとして、目標が長期間達成されない状態や予想以上の成果が出ている場合が挙げられます。例えば、面接通過率が想定を下回っている場合は、応募者のスクリーニング基準や面接の評価方法に改善が必要かもしれません。逆に、通過率が高すぎる場合は、採用基準を緩めすぎていないかを再確認することも有効です。また、市場の状況や採用環境に変化があれば、それに合わせてKPIを見直すことも重要です。人材需要が高まっている時期や特定スキルの競争が激化している場合、応募者数や内定承諾率などのKPIを再設定することで、より現実的な採用活動が可能になります。
採用での目標設定の例
ここまでの内容を踏まえ、仮にスカウト型サービスを利用している場合、採用での目標設定は下記のように算出することができます。
・会社の課題
売上が目標に達していない。
・採用KGI:売上拡大に貢献する即戦力人材を1名採用する
売上拡大のため、必要なスキルや経験を持つハイクラス人材を1名採用することを最終目標(KGI)とします。ここでは、このKGIを達成するための具体的なステップを設定し、各段階の必要な数値(KPI)を決めていきます。
・採用KPI
・面接突破率:20%
最終的に1人が採用されるためには、面接段階で5人に1人が突破することを目指します。したがって、1名の採用を実現するためには少なくとも5人の面接突破者が必要です。
・書類通過率:50%
書類選考で候補者の半数が通過することを目標とします。面接に進む候補者が10人必要であれば、少なくとも20人の書類応募が必要になります。
・スカウト返信率:5%
ターゲット候補者からの返信率を5%と見込みます。この返信率で必要な面接数を確保するには、少なくとも200人にスカウトメールを送る必要があります。
このように、売上拡大という会社の課題を解決するため、採用プロセスを「スカウトメール200通 → 書類通過10人 → 面接突破5人 → 採用決定1人」という具体的なプロセスに分解し、各段階のKPIを設定することで、計画的で効果的な採用活動を進めることが可能になります。
まとめ
ここまで、採用担当の目標設定例について、解説しました。時期による仕事内容や他社事例などを参考に、適切に目標設定を行い、採用決定をだすことは事業にとって非常に重要で責任重大です。定期的に立てた目標に対する進捗を確認し、採用活動を成功させましょう!
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