飲食やアパレル、美容業界、販売などの接客業は、お客さまと直接コミュニケーションを取り、サービスや商品を提供する仕事。この業界では接客の良し悪しが売上げに影響するため、多くの企業が研修などを行って従業員の接客力向上に注力しています。
そんなサービス業において、個人および人材の接客力や接遇を底上げしていくには、「何をどこまでできるようになるか」や「お客様にどのような体験をしていただくか」という大きな目標設定とそれぞれのオペレーションにおける個別の目標設定を行うことが鍵になります。
しかし「なぜ目標を設定しなくてはならないのか?」と改めて聞かれてもよくわからない、いざ目標を立てようとしても、情報がなくどうすれば良いかわからず戸惑うという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、サービス業における目標設定とはどのようなものなのか、なぜ重要なのかについて解説します。
また、目標の立て方や具体的な例文もご紹介します。サービス業に従事するメンバーをを教育する立場にいる方、また自分の接客を見直し改善したい方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
目次
サービス業に目標設定が大切な理由
では、サービス業において接客力や接遇を向上させるために、なぜ目標設定が必要なのでしょうか?
理由としては、この3つが挙げられます。
- 組織全体の接遇を向上、維持させるため
- 臨機応変に対応できる接遇を行うため
- 社員のモチベーションを保つため
この章では、それぞれの理由について詳しく説明していきます。
組織全体の接客力を担保するため
1つ目の理由は、組織全体で安定した接客力を提供するためです。なぜなら、組織に所属している人たちは年齢もスキルも経歴もバラバラで、接客の質もばらつきがちだからです。
従業員は、実際には経験の有無に差があったとしても、お客さまにとっては皆等しく「従業員」です。人は、良かった経験よりも悪い経験のほうが忘れにくいと言われています。これは「ネガティビティバイアス(Negativity Bias)」と呼ばれ、Aさんの接客は良いのに、Bさんの接客は悪い、と思われてしまうと、そのサービスや会社への印象も悪くなります。
このようなネガティブな経験を提供しないためにも、組織全体でチームとして目指すべき接遇の姿、つまり接客の目標を立てる必要があります。”理想の接客とは何か”を共有することにより、能力や経験に関係なく、従業員全員で同じ方向に向かってスキルアップできるのです。
また、接客ではお客さまに「心地よい」と思ってもらうことが重要です。従業員が「十分丁寧で適切な接客ができている」と思っていても、お客さまにご満足いただけていないのであれば、それは不十分な接客にあたります。
そのため接客力を向上させるための目標を設定し、従業員個人の実感や判断での評価はなく、お客さま目線での基準を、従業員全員に周知する必要があるのです。
臨機応変に対応できるようにするため
2つ目の理由は、様々なタイプのお客様に臨機応変に対応できるようにするためです。なぜなら、お客様によって「心地よい」と感じる接客が異なる中でも、従業員で目指すべきゴールを設定しておくことで共通のポリシーをもって接客することが可能になるからです。
店舗や施設に来店、来場されるお客さまは十人十色です。そのため、「心地よい」と感じてもらえる接客は、お客さま一人一人、さらに時と場合によって違います。
しかし接客の目標がないと、マニュアル通りの対応しかしない人が発生する可能性も高くなります。お客さまに満足してもらえるようにと作られたマニュアルであっても、時と場合によっては不十分、もしくは不適切なことがあります。その結果、かえってお客さまを不快にさせてしまい、クレームに発展するケースも少なくありません。
そのため、接客の目標があれば、マニュアルには載っていない事態が起きたときでも、従業員は臨機応変に対応することができます。マニュアルにないような異例の対応であっても、目標に沿った行動であれば、お客さまに満足してもらえる可能性が高まるでしょう。
このように、接客には「こうすれば良い」という正解はなく、お客さまのことを理解して適切に行動することが大切です。その場での最適解を見つけるために、指標となる目標を設定しておくことが重要です。
従業員のモチベーションを保つため
3つ目の理由は、従業員のサービスへのモチベーションを向上し、保つためです。なぜなら、接客の質を高めることは簡単ではないため、改善点や取り組みについて意識することが必要だからです。
接客に対する従業員のモチベーションには、人によって差があり、全員の接客の質を均一なレベルまで上げるのには時間がかかります。中には、「ある程度の接客ができていればOK」とする従業員が組織に存在する場合もあります。そのため、ただ漠然と「お客さまに満足してもらえる接客をしよう」と促したり、「〇〇に気をつけましょう」と注意したりするだけではなかなか改善できず、意識し続けるのも難しいでしょう。
しかし、目標を設定すれば、どこへ向かって取り組めば良いのか、どのような点を意識すれば良いのかが明確になります。そして目標達成のための対策や、改善点も把握でき、接客力向上へのやる気アップに繋がります。
このように、全ての従業員に向上心を持たせるため、また求められる接客を意識し続けるよう指導するためにも、目標設定が欠かせません。特に多くの人員を抱える組織では、必要不可欠でしょう。
サービス業の目標設定が難しい理由
しかし、サービス業における目標設定は、難しいのではないか?と言われることが多いです。
なぜなら、他の業界のように取り組みの成果を数字で測ることができず、社員自身が自分の成長を実感しにくいからです。ここでは、それぞれの詳しい理由について説明していきます。
メンバーが能力向上を感じにくい
理由の1つ目は、メンバーが能力向上を実感しにくい職種であるからです。また、職種の特性から目標の達成率を計算することが困難でもあります。
例えば、営業職やマーケティング職のような結果が数字で可視化できる領域であれば、目標に対する取り組みの結果が反映され、メンバー自身が自己成長を実感することができます。営業における「〇月の売上を前年度に比べて10%上げる」のような目標に対しても、数字で比較し達成率を測ることができます。
それに対して、サービス業においては「顧客満足度を上げる」のような、数字で測れない目標が設定されることが多く、アンケートの実施などが必要になります。しかし、お客様全員にアンケートに答えてもらうこと自体の難易度が高く、営業やマーケティング職に比べて結果の精度が下がってしまいます。また、「お客様の満足度」という一人ひとりの実感を数字にすることのハードルも高いです。
このように、サービス業においては目標達成に向けての努力や取り組みの結果を具体的に算出することが難しく、メンバー自身が能力の向上を感じにくいと言われています。
目標をデータで測りにくい
理由の2つ目は、目標に対する取り組みの成果が、データ等の数字で測れないからです。なぜなら、サービス業においては定性的なサービスの方向性が目標として設定されることが多いからです。
例えば、営業職などであれば定量的な目標の設定が可能であり、その数値を達成するためのアクションが達成率となって結果に表れます。新しく始めた業務や取り組みを運用してみた結果も、月末の売上や契約件数などで前年度や前月との比較が可能です。
それに対してサービス業においては、お客様の実感や反応によって達成率を測らなければなりません。とはいえ、実感や反応というものは数字で結果を算出することが難しく、どうしてもお客様の満足度が接客中の従業員の手ごたえに委ねられてしまう時もあります。
そのため、目標に対して何らかの改善や新しい取り組みを導入したとしても、結果をデータで算出することが難しいサービス業では、目標設定がしづらいと言われています。
目標設定は接客マナー5原則で立てる
ここまでは、接客力を向上させるため、そして維持するためには目標設定が必要な理由をご説明しました。
数字で結果が観測しにくいサービス業という業種においては、具体的な目標設定を行うためにも、「接遇マナー5原則」を参考にするのがおすすめです。
「接遇マナー5原則」とは、お客さまの満足度を高めるため、不快感を与えないために守るべき5項目の接客マナーのことです。接遇とは、接客という意味合いに「お客様をもてなす」という意味合いが加わった言葉です。
- 【接遇マナー5原則】
- あいさつ
- 身だしなみ
- 言葉遣い
- 表情
- 態度
「接遇マナー5原則」において注目すべきポイントは、どれか一つでも欠けているいと、「接客が悪い」と見なされる可能性があるということ。
例えば「身だしなみ」や「あいさつ」がきちんとしていても、「言葉遣い」が悪ければ、接客の印象は良くないでしょう。また、正しく適切な「言葉遣い」ができていても、笑顔がなければ「冷たい対応をされた」と思われかねません。
そのため、よい接客・接遇を行うためには、これら5つのマナー全てを身につけ、向上させることが重要です。そして、きちんと実行できているかどうか、改善すべき点はないか確認するためには、「接遇マナー5原則」ごとに目標を立てる必要があります。
接客に関する目標は個人で立てる必要がありますが、その際には目標を会社全体の目標やチームごとの目標に関連させた内容に設定しましょう。そうすることで、それぞれが個人の目標達成することにより、結果的にチームの目標も達成されるという効果的な仕組みを作れます。こうすることで、組織全体の接客力を効率よく上げられるでしょう。
しかし具体的に、どのような目標を設定すれば良いのか、わからない人も多いかと思います。次の記事からは、5原則それぞれに向けた目標の事例もご紹介していきます。
接客マナー5原則と目標の例文
それでは、「接遇マナー5原則」それぞれの解説、および目標の立て方を紹介していきます。接遇マナー5原則をもとにした目標を設定することで、売上向上や顧客満足度向上につながる行動をとる確率が高くなります。
項目ごとに考えられる接遇目標の例文も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「あいさつ」の目標設定と例文
原則その1は、「あいさつ」です。
気持ち良い「あいさつ」ができている店、企業、従業員には、お客さまは良い印象を抱くもの。反対に、商品やサービスの質、接客の質が高くても、あいさつができていなければ、悪いイメージがついてしまうでしょう。
よい接遇では、適切な声量、声のトーンであいさつができていること、そしてアイコンタクトを取りながらあいさつができていることが求められます。あいさつに関する目標を立てる際は、これらを意識できるような内容にすると良いでしょう。
「あいさつ」の目標は、どのような状態で何を行うのかをできるだけ具体的に設定することが重要です。目標設定が漠然としていると、目標達成の判断が個人の感覚に委ねられてしまいます。
お客さま目線で「できている」状態にするためにも、目標は細かく設定しましょう。
- 【例文】
- お客さまの来店時、アイコンタクトをとってから笑顔で「いらっしゃいませ」とあいさつする
- お客さまの退店時、必ずお客さまの方を見て笑顔で「ありがとうございました」とあいさつする
- お客さまとの距離と雰囲気に合わせて、適切な声量であいさつをする
このように、あいさつを行うタイミング・表情・声量・声がけの内容に言及することで、意識するべきポイントがより明確な目標設定を行うことができます。
「身だしなみ」の目標設定と例文
原則その2は、「身だしなみ」です。
接客の良し悪しが利益に影響を及ぼす接客業では、従業員の第一印象が何よりも大切です。その第一印象を決める重要な要素が「身だしなみ」です。
人が何かを判断する際に、受け取る情報の多くを視覚情報に頼っていることは、いくつかの心理学の研究においても証明されています。
つまり、身だしなみが整っていれば、お客さまは第一印象として「この従業員はきちんとしている」と感じてくれるのです。反対に身だしなみがだらしないと、「きっと接客もだらしないだろう」と判断されてしまいます。そのため接遇では、好印象を与える身だしなみを心がけることが大切です。
接遇に求められる身だしなみのポイントは、清潔感があること、派手すぎず好印象であることです。そのため目標を立てる際は、その点を意識して目指すべき姿を指し示すと良いでしょう
ただし、アパレルや美容業界など、従業員の身だしなみでブランドイメージを演出する職業では、落ち着いた雰囲気の服装・ヘアメイクよりもブランドイメージに合った服装が適切とされることもあります。その場合は、ブランドに求められる価値観に合わせた身だしなみや表現を心がけましょう。
- 【例文】
- 汚れていない靴・制服を着用し、髪・爪が常に整えられた状態を保つ
- 店頭に出る前・休憩後に必ず鏡を見て、身だしなみを整える
- トレンドを取り入れた服装、ヘアメイクで店頭に立つ
「身だしなみ」の目標を設定する際にも、「あいさつ」の目標と同様、どのような状態の身だしなみが理想的なのか、可能な限り具体的に提示するのが重要です。
どうしても漠然としてしまう場合は、”身だしなみチェックシート”などのようなツールを活用し、その合格点を目標とするのもおすすめです。このような評価基準を設けることで、実行できているかどうかが明確になるので、ぜひ試してみましょう。また、従業員同士での積極的なフィードバックの声がけなども効果的です。
「言葉遣い」の目標設定と例文
原則その3は、「言葉遣い」です。
接客する際は、どのようなお客さまが相手であっても、年齢に関係なく敬語を使うのが基本。とはいえ、無意識に間違った言葉遣いをしている場合もあります。言葉遣いを正すには、第三者が指摘する方法が挙げられますが、毎度細かく確認し、注意するのは難しいことも。
そのため、どのような言葉遣いをすべきなのか、事前に目標を提示しておく必要があります。そうすることにより、従業員個人で正しい言葉遣いを意識することができます。目標の提示によって、組織単位で言葉遣いを正すことも可能になるでしょう。
接遇では、「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種類の敬語を適切に使い分けるスキルが求められます。
また、お客さまに威圧感・不快感を与えないため、「お手数ですが」「恐れ入りますが」「もしよろしければ」などの「クッション言葉」を使いこなすことも大切です。
- 【例文】
- 丁寧語・尊敬語・謙譲語の使い分けを理解し、正しい言葉遣いで接客する
- クッション言葉を取り入れ、物腰の柔らかい言葉遣いを意識する
- 専門用語やカタカナ英語を使わず、お客さまにとってわかりやすい言葉で話す
- 新人スタッフが、1ヵ月後には正しい言葉遣いで接客できるようになる
このように、どのような言葉遣いがふさわしいのか、どのような言葉遣いが不適切なのかを、目標に組み込むのがポイント。そうすることで、意識すべき項目が具体的になり、行動に移しやすくなります。言葉遣いは、一度癖になるとなかなか直せません。なるべく早い段階で正しい言葉遣いを身につけるため、期限を設けて目標を立てるのも良いでしょう。
「表情」の目標設定と例文
原則その4は、「表情」です。
身だしなみと同じように、従業員の表情も一番最初にお客様の目に入る情報です。接客業では、明るい笑顔で接客することが基本ですがどのような笑顔であれば合格なのかを明確にし、目標にすると良いでしょう。
また、笑顔だけではなく、お客さまの気持ちに寄り添って表情を変化させることも、接遇に必要なスキルです。
例えば、お客さまを出迎えるときや感謝を伝えるときは、笑顔が適切。ですが、悩みを相談されたときやをするときや謝罪するときは、笑顔は不適切です。お客さまが「バカにされている」「気持ちを無視されている」と感じてしまう恐れがあります。
そのため、笑顔を意識する目標に加えて、TPOに合わせて表情を変化させることも、接遇の目標として掲げると良いでしょう。
- 【例文】
- お客さまの気持ちに表情を合わせながら接客する
- 常にお客さまから見られていることを意識し、待機中の表情に気を配る
- 疲れや余裕のなさが、表情に出ないよう注意する
- 口角が上がっている・目尻が下がっている・アイコンタクトが取れている笑顔をマスターする
魅力的な笑顔で接客するためには、魅力的な笑顔とは何かを理解できていること、そして表情を作れることが前提です。接客時の表情を改善するための第一ステップとして、まず笑顔の作り方をマスターすることを目標としてみるのも良いでしょう。特に、初めて接客業に就く入社したばかりのスタッフの目標として、接遇の基本となる笑顔に関する項目の設定がおすすめです。
「態度」の目標設定と例文
原則その5は、「態度」です。
接客における態度とは、主に所作や立ち居振る舞いのこと。丁寧な言葉遣い、感じの良い笑顔で接客できていたとしても、「態度」が悪ければ印象は台無しです。接客へのイメージが一気にダウンし、店・ブランド・会社の印象も悪くなってしまうでしょう。
例えば、立ち方や歩き方、物の受け渡しなどの動作が雑だと、お客さまは「雑に対応されている」と感じてしまいます。反対に、丁寧な所作で応対すれば、従業員への印象が良くなるのはもちろん、商品やサービスへの信頼度も高まります。
また、接客をしているときだけでなく、待機中もお客さまは従業員の態度をよく見ています。目標を立てる際は、接客時以外の態度にも触れておくと良いでしょう。
- 【例文】
- 接客待機中もお客さまに見られていることを意識し、正しい姿勢で立つ
- 商品や荷物の受け渡し時、ゆっくりと丁寧な動作を行う
- 席にご案内する際、お客様のペースに合わせて歩く
- 「ながら接客」をしない
そのほか「壁にもたれかからない」「だらだらと歩かない」など、接遇で注意すべき立ち居振る舞いは多々あります。態度に関しては、自分を客観的に見ることが難しい場合もあります。同僚や先輩にフィードバックを貰った際には、意見を素直に受け入れ、自分の振る舞いを今一度振り返ってみましょう。
サービス業の目標設定を上手く運用するコツ
では、実際に接客に関する目標を設定し、行動の改善に取り組む際に確認したいコツはあるのでしょうか?
ここでは、目標設定した際にチェックしてほしい重要な4つの項目について解説していきます。
達成可能な目標を設定する
1つ目のポイントは、目標には達成可能なゴールを設定することです。なぜなら、目的がないのに大きすぎる目標を立ててしまうと、メンバーはむしろモチベーションを失ってしまうからです。
個人目標を立てる際によくあるミスとして、達成不可能な目標を立ててしまう事が挙げられます。
例えば、「入社一週間で基本的な商品プレゼンスキルを身につけ、期間限定メニューを100人に販売する」という目標を立てたとします。しかし、ベテランスタッフによる接客でもこのメニューは平均で一日に5人のペースで注文されている状況の場合、この目標設定は無謀な数字となります。まして入社一週間で接客を行いながらプレゼンスキルを身につけ、100人に販売しなければならないとすると、ゴールがとても遠く感じてしまいます。
また、目標を大幅に未達すると「なにが課題だったのか?」が見えづらくなってしまったり、途中で改善すべきポイントが明確に把握できなくなってしまうので、メンバーの成長や能力強化に繋がりません。
そのため、目標は達成できる範囲で設定するのがおすすめです。そうすることで、取り組むべき行動が具体的にイメージでき、達成感を味わうことでもモチベーションの向上につながります。
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具体的な言葉で目標設定を行う
2つ目のポイントは、なるべく具体的な言葉を使って目標を立てることです。なぜなら、目標の内容が抽象的だと、後で振り返った時に今回の活動が良かったのか悪かったのかが判断できなくなってしまい、結果として活動自体が非効率なものになるからです。
目標を設定する際に、「一生懸命取り組む」「頑張る」「粘り強く取り組む」といった抽象的な表現で設定してしまう事があります。しかしこのような目標では、後で振り返った時に目標を達成できたのかどうかを判断する基準がわからず、改善点を見つけることも難しくなってしまいます。
そのため、目標を立てる際には、何を、どのように取り組みたいのかについて具体的に言及する必要があります。
「得意先のニーズを汲み取った企画立案を行い、案件獲得に繋がるプレゼンテーションをする」
「先月よりも訪問する企業を増やす事で、売り上げの10%向上を目指す」
このような目標であれば、次の月は「企画に承諾が貰えたから、次はツールの機能を完璧に覚えよう」のように達成点を明確に判断し、新たな目標を立てることもできます。また、「訪問企業を増やしても、売り上げが0.2%しか向上しなかったから、次は資料を作り込む戦略でいこう」のように改善活動を行う事ができます。
こまめに従業員と目標の達成度合いをすり合わせる
3つ目のポイントは、従業員と目標の達成度合いをこまめにチェックすることです。なぜなら、従業員がゴールまでの到達レベルを客観的に確認することにより、自分の成長を実感することができ、やる気のアップに繋がるからです。
接客にまつわる目標設定に対する成果は、営業職やマーケティング職などに比べて実感しづらいと言われています。そのため、自分がステップアップできているという実感がないまま行動へのモチベーションを維持し続けるのは簡単ではありません。
そのため、先輩社員やマネジメント側が項目ごとの成長度合いを客観的に判断し、こまめに評価理由を伝えることで、自己評価と組織の求める価値観とのギャップのすり合わせを早い段階から行うことができます。
このように、従業員自身が業務フローにおける適切なタイミングで到達度を把握し、目標達成までの自身の行動について意識をアップデートしていくことが、達成のビジョンを持った目標管理には有効です。
目標達成した方を評価する
4つ目のポイントは、目標の達成度を人事評価に結び付け、メリットを感じてもらうことです。なぜなら、目標達成という成果が出せても、それが評価や給与に反映されないと、メンバーのモチベーションに繋がらないからです。
目標を達成したことで、満足感が得られるのはもちろんですが、その成果が評価に反映されることによって初めて客観的に認められたと感じることができます。また、評価が給与やボーナスに反映されるシステムがあることで、達成をすることが本人自身のメリットとなり、モチベーションを高く保つことができます。
また、従業員が達成にメリットを感じ継続的に努力を続けてくれることで、効率や生産性があがり、結果的に企業への貢献にもなります。
このように、目標を達成し、それを評価される成功体験こそが、本人のキャリアへの貢献になると同時に、企業側へのメリットにもなります。
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接客の目標達成への評価例
ここからは、目標設定が難しいと言われるサービス業という職種において実際にどの様な評価が行われているのか、ご紹介していきます。
実際に評価を担当する側となる上司の皆さんは、ぜひこちらを参考にしてみてください。
例1
まずは、1つ目のケースを紹介します。このケースは、駅の近くの花屋に勤務している人物をモデルにしています。最初に書かれているのがこの人物の自己評価、次に書かれているのが上司からの評価です。
【自己評価の例文】
店舗が「駅の近くにある」という特性上、電車に乗る前にサクッとお花を購入したいというお客様が多いため、顧客のニーズをスピーディーにくみ取り、的確に提案を行えるように心がけています。
何度かリピートしてくださっているお客様には「簡単に要望を伝えただけで花束のボリュームやラッピングを案内してもらえて、嬉しい」とお褒めの言葉をいただきました。
【上司の人事評価の例文】
<評価>
お客様の気持ちに寄り添ったあたたかな対応をしながらの、正確でスピーディーな提案が素晴らしいです。とくに通勤ラッシュ時間の動きは迅速で、他メンバーの動線と被らないよう、意識して動いていることが伝わります。従業員からはもちろん、常連のお客様からの支持も厚いです。
<アドバイス>
お店を効率よく回すためにも、後輩たちにも要領よく動けるようになってもらいたいと思っています。今後は忙しい時間帯には接客に集中してもらって、少し手の空いたタイミングには忙しい時間帯の動きについて後輩たちにフィードバックをお願いしたいです。後輩を育成する意識が持てると、お店の成長と○○さんのステップアップができると思います。
このように、まずはこの人物の良いところを具体的に褒めることが大切です。アドバイスでは、そのアクションによってどのようなメリットが発生するのか、についても具体的に説明して、納得感のいく内容を伝えましょう。
例2
続いて、2つ目のケースを紹介します。このケースは、都心にあるコーヒーショップで働く人物をモデルにしています。
【自己評価の例文】
常に笑顔を心がけ、自分が疲れている時も「笑顔の意識」を忘れていません。特に出勤前のお客様が多い朝の時間帯と、退勤後のお客様が多い夕方の時間帯には、忙しさがお客様に伝わらないように心がけています。
先日はお客様から「出勤前にあなたに接客してもらうと気持ちの良い1日のスタートになる」との言葉をいただきました。
【上司の人事考課の例文】
<評価>
忙しい時や疲れている時も笑顔を心がけているため、見ているこちらも明るい気分になります。またお客様からの実際のお声も誇らしいです。忙しさを見せないスムーズなオペレーションは、他のスタッフのお手本になっています。
<アドバイス>
○○さんと言えば笑顔の接客です。周囲のメンバーにも、ぜひ見習ってもらいたいと思っています。ただ一点だけ、先日すでに伝えてありますが、クレームを受けた際に、日頃のクセで笑顔になってしまっていたことがありました。こうした場面では笑顔よりも真剣な顔をする方が、より「お客様の気持ち」に寄り添えます。今後は、状況に応じて表情を変えられると、接客スキルにさらなる磨きがかかるでしょう。
このように、スタッフのいい面を存分に褒めつつも、改善点については、ただダメだしをするのではなく、今後心がけてほしいポイントを伝えましょう。
まとめ
サービス業においても目標を決めて実行することで、効率よく接客力を上げることは可能です。ただ、具体的な目標が設定しづらいという声も多く、この記事では目標設定のコツや、目標の事例、また活用方法についてご紹介しました。
目標を持って接客に取り組むことで、従業員本人のスキルアップに繋がるのはもちろんのこと、社内の一人ひとりの人材を育てることで、組織全体が成長する大きな可能性となります。
特に、入社したばかりのメンバーに対しては、企業で接客フローに関わる研修などを導入し、組織目標の方向性を共有してみてください。
そして、何のために接客を改善したいのか、どうすればお客さまに喜んでもらえるのかを思い返し、会社にとって、そして個人にとって最適な接遇の目標を立てましょう。どうしても迷ってしまったときは、今回ご紹介した例文もぜひ参考にしてみてくださいね。
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