▼ この記事の内容
公務員の目標設定は、数値化しにくい業務を「何を・いつまでに・どの水準まで」に分解し、SMARTの法則で具体化することが基本です。組織目標との整合性を保ちながら難易度・重要度を設定し、チャレンジ目標を含めることで、人事評価の公平性と職員の成長を両立できます。
2016年の地方公務員法改正により、すべての地方自治体で人事評価制度の導入が義務化されました。これに伴い、公務員にも民間企業と同様の目標管理が求められるようになっています。
しかし、売上や利益のような定量指標を持たない公務員にとって、「何をどう目標にすればよいのか」は依然として大きな課題です。目標が曖昧なまま評価期間を迎えてしまうケースも少なくありません。
この記事では、公務員の目標設定に必要な原則と手順を整理し、事務職・大学職員・教員の職種別に具体例を示します。目標設定面談の準備にお役立てください。
【目標管理を全解説・170P】
マネージャーの負担を減らす運用方法から米国最先端の管理手法まで、実務で使える内容を一冊で網羅!
>>『170P超の目標マネジメントパーフェクトガイド』無料でダウンロードする
公務員の目標設定とは
公務員の目標設定とは、職員一人ひとりが担当業務において「何を・いつまでに・どの水準まで・どのように」達成するかを明文化する仕組みです。多くの行政機関では、民間企業で広く採用されているMBO(目標管理制度)と同様の手法が運用されています。
MBO(目標管理制度)の仕組みと公務員への適用
MBO(Management By Objectives)とは、職員が自ら目標を設定し、その達成度で評価を行う人材マネジメント手法です。1950年代にドラッカーが提唱し、日本では1990年代後半から民間企業に普及しました。
公務員の業務は、売上や営業成績のような定量的な数値目標を設定しにくい点が民間企業と異なります。そのため、行動指標や期限を組み合わせた「測定可能な目標」に落とし込む工夫が求められます。
目標設定の4要素は「何を(対象業務)」「いつまでに(期限)」「どの水準まで(到達レベル)」「どのように(手段・方法)」です。この4点を漏れなく記述することで、評価の客観性が高まり、「公務員の目標設定は意味がない」という批判を防げます。
民間企業との違いと公務員特有の課題
公務員が目標設定で直面する最大の壁は、成果を数値で表しにくいことです。利益追求を目的としない公共サービスでは、売上高や受注件数といった指標が存在しません。
この課題に対しては、業務内容に応じた基準とルールを設けることが有効です。たとえば「月3回の住民説明会を実施する」「申請処理の平均日数を5日以内にする」のように、頻度・期限・件数で目標を具体化します。
2016年の地方公務員法改正以降、すべての自治体で人事評価が義務化されたことで、目標の具体性はより一層求められています。「なるべく抽象化を避ける」ことが、公務員の目標設定における基本姿勢です。
公務員の目標設定が求められる背景と目的
公務員に目標管理が導入された背景には、行政サービスの多様化と、年功序列から能力・実績主義への転換があります。目標設定には大きく2つの目的があり、いずれも行政の質を支える基盤として位置づけられています。
能力・実績主義の人事管理を行うための基礎
1つ目の目的は、任用・給与・分限などの人事管理において、能力と実績に基づく判断の基礎を築くことです。国家公務員約28万人を対象に、評価結果が昇任・昇給の根拠として活用されています。
目標管理がなければ、評価の軸が曖昧になり、評価者の主観に左右される事態を招きます。目標設定は、職員の能力と実績を正しく測定するための出発点です。
近年の政策変化のスピードを考えると、従来の年功序列による人事管理では行政サービスの質を維持できません。能力・実績主義への転換は、住民にとっても職員にとっても合理的な選択です。
人材育成と組織パフォーマンスの向上
2つ目の目的は、目標管理を通じた人材育成と組織全体のパフォーマンス向上です。個々の職員が明確な目標を持つことで、自己管理意識が高まり、計画的なスキルアップが可能になります。
組織の視点では、職員のパフォーマンスが底上げされることで、ミスの削減・残業の抑制・他部署との連携強化が期待できます。こうした改善は、住民が受ける行政サービスの質に直結します。
目標管理を単なる義務と捉えず、個人の成長と組織の成果を結びつける基盤として設計することで、評価の形骸化を防げます。
公務員の目標設定と人事評価の連動
公務員の人事評価は、能力評価と業績評価の2軸で構成されています。このうち業績評価が目標管理制度と直接連動しており、目標設定の質が評価結果を大きく左右します。
能力評価と業績評価の違い
能力評価の評価期間は毎年10月1日から翌年9月30日までの年1回です。一方、業績評価は10月1日〜翌年3月31日と4月1日〜9月30日の年2回に分かれています。
能力評価は「職務を遂行するにあたり発揮した能力」を見るのに対し、業績評価は「実際に挙げた業績」を見る点が異なります。いずれも絶対評価で判定されますが、給与への反映時にはこれらの結果を相対評価に変換します。
業績評価の基準となるのが期首に設定した目標であり、目標の質が低ければ業績評価そのものの精度も下がります。
期首面談から期末フィードバックまでの流れ
業績評価は、5つのステップで運用されます。まず期首に評価者と被評価者が面談を行い、業務上の目標を共同で設定します。次に期中の進捗管理を通じて、目標達成に向けた取り組みを確認します。
期末には被評価者が自己申告を行い、評価者が期間中に収集した評価資料と照合して評価を確定します。確定後は本人に結果を開示し、面談でフィードバックを実施します。
このフィードバックを踏まえて次期の目標設定に反映することで、評価→改善→成長のサイクルが回ります。目標設定は最終的に人事評価の判断基準となるため、期首の段階で丁寧に設計することが求められます。
【目標管理を全解説・170P】
マネージャーの負担を減らす運用方法から米国最先端の管理手法まで、実務で使える内容を一冊で網羅!
>>『170P超の目標マネジメントパーフェクトガイド』無料でダウンロードする
公務員の目標設定方法|4つのステップ
実際に公務員の目標を設定する際は、組織目標との整合性確認から始め、難易度設定・具体化・進捗管理までを段階的に進めます。以下の4ステップで運用の全体像を整理します。
ステップ1 組織目標との整合性チェック
最初のステップでは、上司が部下と1on1ミーティング等の個別面談を実施し、設定した目標が2つの基準を満たしているかを確認します。1つ目は「現在の職位にふさわしいレベルか」、2つ目は「組織目標との整合性・関連性が取れているか」です。
部下があえて低い目標を設定して高評価を狙ったり、組織の方向性と無関係な目標を立てたりするケースがあります。その場合は上司が改善を指導し、必要に応じて目標の再設定を求めます。
チームで遂行する業務では、チーム全体で共通目標を設定し、個々の役割と貢献は部下自身が設計します。あくまで自主性を尊重しつつ、上司が客観的に適正さを判断するのが基本です。
ステップ2 難易度と重要度の設定
2つ目のステップでは、各目標に難易度と重要度を設定します。これにより優先的に取り組むべき業務が明確になり、限られたリソースの配分を最適化できます。
このとき、通常業務より難易度の高い「チャレンジ目標」を1つ以上含めるのが原則です。チャレンジ目標は、職員の挑戦的な取り組みによる成長を促し、業務へのやりがいを高める役割を果たします。
チャレンジ目標の候補には、対応が急務の課題・前例のない新規取り組み・業務の抜本的な改善・制度への切り込みなどが挙げられます。到達が保証されない分、挑戦のプロセス自体が成長機会となります。
ステップ3 SMARTの法則で具体化する
SMARTの法則とは、Specific・Measurable・Achievable・Related・Time-boundの5要素で目標を具体化するフレームワークです。公務員の目標設定でもこの5要素を満たすことで、評価の客観性が向上します。
まず年間や半期の期限を設定し、そこから逆算して四半期や月間の行動計画に落とし込みます。「○月末までに○○の改善案を策定する」のように、期日と行動を組み合わせると進捗管理がしやすくなります。
目標は達成可能な範囲で設定します。現実味のない目標は達成プロセスを想像しにくく、モチベーションの低下を招きます。到達水準と改善余地の両面を見据えて設計します。
目標の文脈でSMARTの法則を活用した具体的な書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ステップ4 進捗管理と達成後の評価共有
目標設定後は、定期的な1on1ミーティングを活用して進捗を管理します。管理者が職員と個別に向き合うことで、一人ひとりの進捗状況と課題を的確に把握できます。
途中で未達の見込みが出ても、早期にサポートを入れることで達成に近づける可能性があります。進捗管理は目標達成率を高めるだけでなく、管理者と職員の信頼関係を強化する効果も持ちます。
あわせて、目標達成後の評価基準と給与への反映ルールをあらかじめ共有しておきます。達成の先に何があるかを明確にすることで、職員のモチベーション維持につながります。
1on1ミーティングでの目標設定と進捗管理のコツについては、こちらの記事も参考になります。
公務員の目標設定|職種別の具体例
ここからは、公務員の職種ごとに具体的な目標設定例を紹介します。自身の業務に近い例を参考に、「何を・いつまでに・どの水準まで」の3点を盛り込んで目標を設計します。
公務員(事務・窓口系)の目標設定例
事務・窓口系の公務員は、住民対応や内部管理など幅広い業務を担っています。部署ごとに行動と到達水準を明確にした目標を設定します。
総務では、総合受付への問い合わせ件数と項目を整理し、対応スクリプトを期末までに完成させます。業務効率では、事業プロセスの無駄を洗い出し、コスト削減の目標値を年度末までに設定します。企画では、交流会の基本方針を策定して期内に公表し、重点事業のプロジェクトチームを立ち上げます。
人事評価シートのコメント欄の書き方についてはこちらの記事で解説しています。
公務員(大学職員)の目標設定例
大学職員は、学生の教育・研究環境の整備から組織運営まで多岐にわたる業務を担っています。学校という環境の特性を踏まえた目標を設定します。
教育では、4年間で学位を取得できない修了延期者をゼロにするために指導体制を見直します。職員育成では、公開授業を年2回実施し、教育・研究能力の研修会を四半期ごとに開催します。
職場環境では、休職者・離職者が少ない職場を目指し、意見が言いやすい風通しのよい環境を整備します。フレキシブルな働き方の導入と教員間連携の仕組みづくりも併せて進めます。
公務員(教員)の目標設定例
教員の目標設定では、生徒の学習成果と教員自身の働き方のバランスに配慮します。学習指導・生徒指導・教員間連携の3領域から例を示します。
学習指導では、学習習慣の定着を目的に毎週1回の小テストを実施し、不合格者には追試を行います。生徒指導では、ホームルームで互いの良い行動を発表する時間を設け、クラスのルールを議論する場を月1回開催します。
教員間連携では、昨年度の取り組みを振り返り、各クラスの教員と新たなチャレンジ目標を立案します。パソコンを活用した学習方法の勉強会を学期ごとに開催します。
よくある質問
Q. 公務員の目標設定で数値化が難しい場合はどうすればよいですか?
期日・件数・頻度など測定可能な指標に置き換えることが有効です。「○日までに○○を完了する」「月○回の面談を実施する」のように、行動と期限をセットにすると具体性が高まり、評価時の客観性も確保できます。
Q. チャレンジ目標はどのように設定すればよいですか?
通常業務より難易度が高く、前例のない取り組みや業務改善など成長につながる課題を1つ以上選定します。達成できなくても挑戦のプロセス自体が評価対象となるため、現実離れしない範囲で設定することが大切です。
まとめ
公務員の目標設定では、数値化しにくい業務を「何を・いつまでに・どの水準まで」に分解し、抽象化を避けることが最も重要です。SMARTの法則で具体化し、組織目標との整合性を保ちながら、チャレンジ目標を含めた設計を行うことで、人事評価の公平性と職員の成長を両立できます。
目標設定後は、1on1ミーティングを活用した定期的な進捗管理と、達成後の評価ルールの事前共有がモチベーション維持の鍵です。目標管理を形骸化させず、組織全体の行政サービス品質向上につなげてください。
目標管理の仕組みづくりに課題を感じている方は、以下の資料をご覧ください。
【目標管理を全解説・170P】
マネージャーの負担を減らす運用方法から米国最先端の管理手法まで、実務で使える内容を一冊で網羅!
>>『170P超の目標マネジメントパーフェクトガイド』無料でダウンロードする
お役立ち情報
-
全170P超の目標マネジメントパーフェクトガイド近年増えている目標マネジメントへの不安を解消するあらゆる手法やマインドなど目標管理の全てが詰まっている資料になっています。
-
【170P超のマネージャー研修資料を大公開!】マネジメントと1on1って何ですか?「これさえ実践すれば間違いないという具体的なHOW」に焦点をあてて、マネジメントや1on1を実践できる内容となっています。
-
【全260スライド超】メンバーの成長・マネジメントを最適化させるプロが実践する1on1パーフェクトガイド組織開発・1on1 ・評価の設計運用で 100 社以上の企業に伴走してきた弊社の知見をもとに作成したガイド資料になります。










