保育理念とは?保育方針・保育目標との違いや園運営に活かすポイントを解説!

保育理念は保育園を運営する上で指針となるものであり、その園の象徴で非常に重要です。しかし、保育理念を浸透できずに保育理念に沿った保育が実現できているのかが不明確であるという声もよく聞きます。
本記事では、保育理念の基本だけでなく、よく混同される保育目標・保育方針との違いや、実際に保育理念を園全体にどう浸透させていくのかの具体的な方法やポイントをお伝えしていきます。


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保育理念とは

保育理念とは、園が大切にする保育観・コンセプトや保育の目的を表したものです。つまり「園として、こんな保育をめざしていきます」という、園の価値観・根本的な考え方を表したものです。

例えば、「子どもたちのための保育」「笑顔溢れる保育」「個性や発達を大切にする」など抽象的な表現が多くなっています。
このような短いキャッチフレーズのようなものが複数あるものもあれば、「子どもたち一人ひとりの成長を温かく見守りゆとりのある保育の中で、元気な「心」と「体」を育む」のような文章のものもあります。

保育理念は、園の中で最上位に位置するものであり、保育活動や園に関わる職員全ての行動が理念に則ったものである必要があります。

厚生労働省が出している保育の基準や内容を示した保育所保育指針では、保育理念の重要性について以下のように言及しています。

保育所保育は、本来的には、各保育所における保育の理念や目標に基づき、子どもや保護者の状況及び地域の実情等を踏まえて行われるものであり、その内容については、各保育所の独自性や創意工夫が尊重される。

出典:保育所保育指針解説p1/厚生労働省からの抜粋

このように保育所保育指針でも、保育理念に基づいた園運営を保育の前提としており、非常に重要なことがわかります。

保育目標・保育方針との違い

保育理念とよく混同される言葉で、「保育目標」と「保育方針」があります。2つの共通する点は、保育理念をより具体的にしたものであることです。
ここからは保育理念と保育目標・保育方針の違いについて詳細に解説していきます。

保育目標との違い

保育目標は、保育理念を通じた保育の中で、育てたい「子どもの姿」を具体的に示した指標です。
例えば、「思いやりのある子」や「豊かな感性を持つ子」「自分で気づき考える子」など具体的な子どもの姿を表すものが多いです。

保育理念では抽象的すぎて、保育者がどのような保育を行なっていけば良いのか分かりにくいため、保育園で過ごす子どもたちの具体的な姿である保育目標を設定することにより、保育計画や保育の振り返りを効果的にできるようになります。
つまり、保育理念は園全体の理想の姿であり、保育目標は園で育成したい子どもの理想の姿という違いがあるということです。

また、保育目標は文部科学省が告示している「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿」いわゆる「10の姿」を満たしているものが良いでしょう。

  • 健康な心と体
  • 自立心
  • 協同性
  • 道徳性・規範意識の芽生え
  • 社会生活との関わり
  • 思考力の芽生え
  • 自然との関わり・生命尊重
  • 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
  • 言葉による伝え合い
  • 豊かな感性と表現

引用:資料3「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿(参考例)」

保育方針との違い

保育方針とは、保育理念・保育目標の実現のための「保育の方向性」を表すものです。
保育理念や保育目標は、抽象的であるため保育者がどのような保育を行えば良いのか迷ってしまうため、園全体の保育の方向性を定めたものです。
保育方針に沿った保育を行えば、自ずと保育理念と保育目標の実現につながるので、非常に重要なものとなっています。

さらに、保育方針は月案・週案・日案・日々の保育活動に落とし込まれていくことによって、保育理念を実現する保育ができるようになるのです。

つまり、保育理念・保育目標を実現するための保育を一貫して保育者が行えるようにするものが保育方針です。

保育理念の課題

多くの保育園で保育理念があるだけになっていること、つまり保育理念が形骸化している課題があります。
例えば「子どもたちの主体性を育む」や「いつもニコニコ笑顔で登園できる保育園」「安心して過ごせる保育園」など抽象的な保育理念をどのようにしたら実現できるのかを話し合われていない場合が多いです。

他にも、保育士が園の保育理念を知らなかったり、納得していなかったり、保育理念と保育目標・保育方針のつながりを見出せていなかったりなども起こっています。
そのような状況では、保育理念実現のための月案・週案なども作成できず、日々の保育活動が理念に根差したものになるはずがありません。

このように、保育理念を取り巻く課題として、保育理念が形骸化していることや保育士に浸透していないというものがあるでしょう。

改めて本記事では、保育理念があるだけになっているという課題を解決するべく、保育理念を浸透させることのメリットや園運営においてどのように浸透させていくのかについて解説していきます。

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保育理念を浸透させるメリット

本パートでは、多くの園で形骸化してしまっている保育理念を浸透させることのメリットを説明していきます。

メリット1:一貫した保育を行える

メリット1つ目は、「一貫した保育を行える」ことです。保育理念が浸透することで、日々の保育活動全てが、保育理念をもとにした活動になります。

例えば、保育活動を考える際には、保育理念を実現させるには、「どのようなことをするべきか」「適切な環境設定はどのようなものか」「この年齢のこの時期にはどのようなかかわり方が必要か」など、保育者の行動1つひとつに意味が見えてきます。

このように保育理念が浸透することにより、保育方法や指導が明確になり、保育計画が本当の意味で計画的な保育を実施することができるようになります。

メリット2:保育の振り返りの基準になり、保育の質が向上する

メリット2つ目は、「保育の振り返りの基準になり、保育の質が向上する」ことです。保育理念が浸透していると、保育方針も明確になり、保育の振り返りの基準になります。
保育理念が浸透していないと、計画した保育を実践してみても、実際の子どもの姿や保育者の主観(もちろん非常に大切ですが)のみの振り返りとなってしまい、保育活動の内容やオペレーション中心の振り返りになってしまいます。

保育理念を振り返りの基準にできると、上記のことに加えて、保育理念を考慮した活動になっていたのか、園全体の計画に対してどうだったのかなど、振り返りの視点が保育内容のみではなく園全体のことに広がるので、振り返りの質が向上します。

このような質の高い振り返りができることで、振り返りの学びを次の保育に活かすことができ、保育の質が上がり、保育理念・保育目標の実現に貢献します。

メリット3:保育者の行動指針になる

メリット3つ目は、「保育者の行動指針になる」ことです。保育理念は園の理想のあり方そのものを示したものですので、日々の保育や子どもたちとの関わり、保護者対応など様々な場面で活用できます。
保育理念が浸透すると、園にとって良い行動が園の職員に共通認識となり、保育の振り返りにも理念に沿った保育ができていたかなどの基準もでき、保育理念を実現するための保育ができるようになります。

また、保育理念が浸透していると、子どもたちへの関わりだけではなく、保護者やその他関係者の方々とのコミュニケーションにも反映できるため、園全体で実現したい保育を実施することができます。

メリット4:採用活動に活用できる

メリット4つ目は、「採用活動に活用できる」ことです。保育理念に沿った保育を実施することで、園独自の保育が実施されやすくなります。
採用説明会や面接の時などに「園では〇〇という保育理念のもと〜〜という活動を行なっている」などと保育園での保育の魅力に根拠ができ、納得感が高まります。

また、保育理念に共感する人材が集まり、保育理念がさらに浸透しやすくなったり、理念に共感しているので離職も低くなる傾向があります。

保育理念を浸透させることで、日々の保育のみならず、採用活動にも非常に有効です。

保育園のブランディングになる

メリット5つ目は、「保育園のブランディングになる」ことです。前述の通り、保育理念に沿った保育を実施することで、園独自の魅力ある保育が実現できます。
それらの活動を続けていくことで、園のブランディングにつながり、園そのものの魅力に変わっていきます。

園のブランディングが確立されることで、保育理念に共感する保護者も増加し、園に対して興味を持ち、協力を惜しまないような関係構築ができるようになります。
また、園のブランディングが確立されることで、保育者も魅力ある園に働いているという意識が強まり、園に対する愛着も高くなり、エンゲージメントが非常に高くなる効果も期待できるでしょう。

保育理念を浸透させる手順

これまでは、保育理念を浸透させることのメリットについて説明してきましたが、これからは実際に保育理念を浸透させるための流れを5ステップで紹介していきます。

STEP1:現場の意見を聞き、保育理念の材料を集める

まず最初に「現場の意見を聞き、保育理念の材料を集める」ことから始めます。保育理念は言い換えれば、組織の文化になるものですので、今の職員に共感してもらうことが重要です。
理念は理想の姿だから、現場の職員の意見は必要ないという考え方もありますが、実際に理念を体現していくのは現場の保育士や職員の方々です。そのため、現場の意見を聞き、保育で何を大切にしていきたいのか、園としてどうありたいのかなど、保育理念の材料となる様々な意見を集めることが作るうえで非常に重要です。

また、現場の意見だけでなく、園長が組織のトップであるのであれば、園長の考え、企業型の保育園であれば経営者や法人の考えなどを反映させることで、独自性のある保育理念を作成することができるので、それらの情報についてもまとめていきます。

保育所保育指針などで求められていることも考慮しつつ、上記の材料をもとに保育理念を作成していきます。

STEP2:保育理念を作成する

次に、収集し整理した材料を基に「保育理念を作成する」フェーズです。
材料の全てを活用しようとすると、非常に項目が多い保育理念になってしまうため、どの理念を実現すれば良いのかがわからなくなってしまう可能性があります。
そのため、要素の中でも優先順位や優先度をつけたり、複数の意味を包括するような抽象的な表現に変えて、保育理念を作っていきます。

前段階で、現場の意見をきちんと聞いているので、現場からの反発や納得できないということは起こりづらくなっています。

STEP3:保育理念が実現されている園の具体的な姿を考える

次に作成した保育理念をさらに具体的に扱いやすくするために「保育理念が実現されている園の姿」を考えていきます。
保育理念が実現されている園での子どもの姿はどのようなものなのか、保育士はどのような状態なのか、実施される保育・教育はどのようなものなのかなど、項目に分けて具体化していきます。

上記のことが整理できると自然と保育目標や保育方針が導き出されていくので、具体的にしたことをわかりやすい表現でまとめていきましょう。

さらに、保育理念を実現するために必要な保育士・職員の在り方を規定した行動指針(バリュー)を作成し共有すると、どのような行動をすれば良いのかを明確にしやすくなるので、同時に作成することをおすすめします。

STEP4:保育理念を実現させるための具体的な方法を考え、実行する

保育理念・保育目標・保育方針を作成できた後は、保育計画や日々の保育に反映させていく「保育理念を実現させるための具体的な方法を考え、実行する」フェーズに入ります。
どのように具体的にしていくのかと言いますと、よくある月案や週案のフォーマットを保育理念から落とし込んでいくことで実現できます。

保育士の中には、月案などを作る意味を感じていない人もいると思うのですが、保育理念から掘り下げて日々の保育に活用することを意識して、計画を立てるとその意味を感じやすくなります。初めのうちは難しく感じることもあると思いますので、園長や主任など経験が豊富な人がサポートしながら、作成することで感覚を掴むことができるでしょう。

保育理念を月案等から掘り下げて日々の保育に反映させることで、保育理念を実現する保育が実施できるだけでなく、計画の重要性や意義なども理解できるようになります。

STEP5:実行したことを理念に則していたか振り返る

最後に保育理念を実現するための保育を実践した後に、実際に保育が理念に則したものになっていたのかを振り返ることが非常に重要です。もちろん実際の子どもの様子や学びなどを振り返ることも重要ですが、保育理念という観点でも振り返ることも重要です。
保育理念が浸透していないと、保育理念を基にした振り返りが実施できずに、子どもの様子や保育士自身の考えに依存した振り返りしかできなくなり、結局は悪い意味で「何でも良い」というような結論になりがちになってしまいます。

保育理念を基にした振り返りを実施することができると、園が実現したい保育や子どもたちの姿を実現することができたのかという別の観点で振り返ることができるため、多面的に理想の保育につながる対策を考えることができるようになります。

保育理念に沿ったかどうかの振り返りを重ねることで、保育理念・保育目標・保育方針の理解が深まり、さらに園内に保育理念が浸透していきます。


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保育理念浸透には1on1ミーティングが効果的!

保育理念を浸透させるためにおすすめの方法が、1on1ミーティングです。1on1ミーティングとは、「1対1で部下と管理職などの上司が定期的に話す施策」のことを言います。

1on1では、部下が普段の業務で課題に感じていたり、悩みや不安に思っていることを聞き出し一緒に解決したり、日常業務での経験を振り返ることで学びにしたりして、従業員エンゲージメントの向上や部下の成長を促進することができます。

経験豊富な園長や主任、先輩保育士などと1on1を実施し、保育に対する振り返りを実施することで、保育理念の浸透が非常に促進されます。

ビジネス業界では一般的になってきたものの、保育業界では時間を取るのが難しいことややる意味をそもそも感じていないなどの理由で、まだまだ導入が進んでいません。
しかし、保育理念の浸透だけでなく、保育業界でよくある離職問題に対しても1on1は非常に効果的です。

例えば、保育士の退職理由で1位である人間関係の問題も、対策が打てないぐらい酷くなる前に1on1でキャッチアップすることができますし、その他の業務で不安に感じていることの相談を受け、支援することもしやすくなります。1on1を実施することで退職の要因を未然に防ぐことができるため、離職率も非常に低くなります。
他にも、園長や主任の指示が納得できずに離職するケースも1on1で指示の背景を丁寧に説明する機会ともなり、園長や主任の指示に対する納得感を高めることができます。

また、1on1で日々の保育の振り返りも実施することができるので、若手保育士の育成にも寄与し、保育士も定着するので、園の保育の質が非常に高くなる状態を作り出すことができます。

余談ではありますが、保育士はマネジメント力が低いと言われることが多いと思いますが、実際はそのようなことがなく、むしろ保育士の方が一般企業で働いている人よりもマネジメント力の資質は非常に高いと考えています。

なぜなら、子どもに対してのマネジメントは非常に高度に実施できているからです。実はマネジメントに必要な態度やスキルは、子どもと接する時とほとんど大差がありません。
ただ、子どもに実施できていることを大人に転用することが上手くいっていないため、マネジメント能力が低いと言われてしまっているのかと考えています。

保育理念浸透だけでなく、離職に悩まれている園の方はぜひ1on1ミーティングの導入を強くおすすめします。

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保育理念の具体例

ここからは保育理念の具体例をテーマや特徴に分けて箇条書きで紹介していきます。保育理念を作成する際に参考にしていただけますと幸いです。
保育理念は、小規模保育園や家庭内保育などの規模に関わらず、自園で大切にしていきたいことを表現していきましょう。

「保育のあり方」を大切にした保育理念の例

  • 子どもたちの個性や発達を大切に
  • 子ども一人ひとりの心を大切にする
  • 個々の子どもの発達に応じた保育を実践します

「子どもの姿」を大切にした保育理念の例

  • 自分らしく元気な姿で他児と明るい関係を持つ
  • 主体的に発言・行動・思いを表現する子ども
  • 自ら気付き、考え、判断し、行動できる子ども

スローガン形式の保育理念の例

  • 全ては子どもたちの育ちのために
  • 子どもの笑顔溢れる園へ
  • みんなが笑顔で支え合う

「する」や「します」が語尾の保育理念の例

  • 子どもの安全を第一にします
  • 子どもが主役となる保育を大切にします
  • 地域の様々な社会資源との連携を深め、協働して保護者への子育て支援を行います

まとめ

本記事では、保育理念・保育目標・保育方針の違いや保育理念の作成方法や具体例、保育理念を浸透させるための具体的な手順を解説してきました。保育理念を浸透させる園運営ができると間違いなく保育は良くなりますので、ぜひ保育理念の浸透にチャレンジしてもらい、この記事が皆様に役立てると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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