目標管理はどのような会社、どのような仕事であろうと社員だけでなく代表取締役を含めた組織全体がともに成長していくために必要な制度です。適切に目標管理をすることで従業員の成長を促すだけではなく、個人の働きを数値化して管理することで人事評価にも生かすことができます。
しかし、近年目標管理自体がくだらない、意味がないといわれることが多くなってきているのが事実です。この記事では目標管理がくだらないといわれる原因と目標管理を意味のある制度として機能させるために必要な具体的な活用方法を解説します。
目標管理がくだらない、意味ないと言われる理由
目標管理が時代遅れだと言われる理由は、大きく分けて以下の6つです。
- 目標がトップダウンで設定され、現場への押し付けになっている
- 目標達成が不可能で非現実的なものになっている
- 目標を達成しても評価されない
- 目標の進捗状況の管理プロセスが複雑
- 目標設定によって柔軟性がなくなる(修正の機会がない)
- 目標が抽象的で何をすれば良いのかわからない
以下でそれぞれ詳しく説明しますが、共通して言えるのは「目標が適切でない」ということです。
1.目標がトップダウンで設定され、現場への押し付けになっている
目標はトップダウン、つまり上層部の管理職の人間から設定することが多いです。結果として現場の考えや状況が伝わっておらず、現場が納得しない、またはできないような大変な目標が設定されることがあるという問題があります。
そういった目標が設定されてしまうと現場にストレスが溜まってしまい、結果従業員の主体性や、モチベーションが低下してしまいます。
2.目標達成が不可能で非現実的なものになっている
目標管理には目標を達成するための具体的な計画立案が不可欠です。
具体的なのは多くの企業で採用されているいわゆる“KPI”(重要業績評価指標)を用いりやすくなるので悪いことではありません。しかし、どんなに具体的な計画でも達成できない計画では何の意味もありません。
また、難易度の高すぎる目標を無理に達成しようとして他部分に弊害が出てしまうこともあります。計画というのは現場のリーダーやマネージャーに話を通したうえで現場と管理職両方が納得できるようなものである必要があります。
3.目標を達成しても評価されない
目標が設定されていてもそれを達成したときに評価されなければ、目標は意味のないものとなってしまいます。
目標を設定・達成するのは本当に労力のいる行為です。その労力に見合った上司からの評価・報酬が受け取れるような評価制度を用意しなければ従業員のモチベーションがどんどん低下してしまうでしょう。
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4.目標の進捗状況の管理プロセスが複雑
目標の進捗状況の管理プロセスが複雑なのは社員から「うざい」と思われがちです。
社員は基本的に自らの業務やノルマで時間ギリギリまで業務やたくさんの作業をしています。その中で、もし面倒で効率の悪いシステムで頻繁に報告や成果の提出をさせられると社員はどう感じるでしょうか。間違いなく目標管理は無駄だと感じてしまい、今後の部下の貢献度が下がってしまうでしょう。これは短期的に見ても長期的に見てもいいこととはとても言えません。
従業員とコミュニケーションを密にとり従業員が納得して協力してくれるようなプロセスをとり、実現したうえで成果の入力や報告をさせる必要があります。
5.目標設定によって柔軟性がなくなる(修正の機会がない)
市場や技術が目まぐるしく変化している中で目標によって方向性が固定されるのは問題です。
目標を市場や環境の柔軟な変化に合わせて、変更できるようなシステムの運営を心掛ける必要があります。
どのような目標であれ、市場の変化や傾向に合わせて全く別の目標に取り換えることが必要なケースがあることを理解したうえで目標設定は行わなければなりません。
6.目標が抽象的で何をすれば良いのかわからない
目標は実践できるものでないと意味がありません。あいまいなものではなく、できるだけ具体的に表現されたものである必要があります。
具体的であれば、目指すゴールが明確になり、達成基準が示されているので、そこに向かってがんばろうという意欲が起きるのです。単に「速くこの作業をこなしてください」というのと、「〇時間以内でこの作業をこなしてください」とでは、やる気の強さが違ってきます。
目標が抽象的だと次にすべき行動を具体的に策定することができず全体のスピード感が低下する恐れすらあるのです。
効果的な目標設定の方法
適切でない目標設定、特に自分以外もかかわってくる目標に適切でないものを設定すると全体の状況を悪化させることもあります。
例えば店主に特にカリスマ経営者である、などの特例的な条件のない日本の普通の店で尋常じゃないほどに高い目標をアルバイトに提示しても、達成できないどころかやめてしまうでしょう。
特にマネージャーの立場にある方はドラッカーのマネジメント理論にもあるように、組織の成果に責任を負う必要があります。鬼のような目標を設定してしまったり、部下から目標を「無意味だ」といわれてしまうといった悩みを持つ方は目標管理の運用が部下をつぶしてしまう、ということがないよう考え方を見直していくべきです。
では、目標設定とはどのようなやり方で行われるべきなのでしょうか。
SMARTの法則
SMARTの法則とは、目標を作る際に重要な五つの要素をまとめたものです。
- Specific
- 具体的、分かりやすい
- Measurable
- 計測可能、数字になっている
- Achievable
- 同意して、達成可能な
- Relevant
- 関連性
- Time-bound
- 期限が明確、今日やるなど
それぞれの頭文字を取ってSMARTの法則と呼ばれています。SMARTの法則は多くの日本や海外の書籍に掲載されており、目標達成の精度を格段に高めてくれる力を持っています。SMARTの法則を知ることで適切な目標設定や目標達成を行うことができます。
ベーシック法
ベーシック法とは様々な目標管理・設定法の中で最も基礎的と呼ばれる方法で様々なフレームワークモデルの根底にあるルールとなっています。
ベーシック法は次の四ステップで構成されています。
- 目標項目
- 自分で何をしたいか明確にする
- 達成基準の具体化
- 対象がどのような状態になっていれば達成果を具体的に定める
- 期限設定
- いつまでに達成するかの起源を設定する
- 達成計画
- 目標達成に向けて何をすればいいかを具体化する
それぞれの項目について自分でしっかり考えることができれば、曖昧に設定してしまいがちな目標を具体的なものにしてくれるものです。
目標管理の有効性を高めるポイント
目標管理をただの負担ではなく結果につながるような仕組みとして使用するにはいくつかのポイントに注意する必要があります。
1.組織目標・チーム目標から目標設定を行う
目標は常に組織目標・チーム目標などの全体への目標から決定していくべきです。
企業には常に内部外部双方から圧力がかかっており、目標とはそれに対応した成果を出せるものである必要があります。そのため、まず組織全体として、納得のいく結果が出せる目標を設定したあと、それが達成できるような形でチーム、個人の目標とだんだんと細かくしていく目標設定をすべきです。
正社員が手を抜いていたり、個人の目標の達成率がいいにもかかわらず企業全体の成功や成長にはつながらない、といったことを防ぐことができます。
2.目標設定はボトムアップで行う
目標設定は、現場の意見やニーズを十分に反映するために、ボトムアップで行うことが重要です。
もちろん、全体としての目標を達成できるように合わせた目標を設定することは重要ではあるのですが、メンバーの声を反映しない目標設定はモチベーションを低下させてしまいます。
お勧めなのは、自分より一つ上のレイヤーの目標からそれを達成するために適切な自分の目標を個人自ら設定してもらうことです。そうすることで納得感があり、かつ組織の目標に達成に適した目標設定をさせることができるので、従業員のエンゲージメントの上昇などが期待できます。
3.目標達成に向けた行動を明確にする
目標達成に向けて何をすれば良いのかわからないのでは目標を設定しても何の結果にもつながらないのは明らかです。目標達成に向けた行動を明確にしましょう。
個人、組織全体の目標それぞれをさらに具体的に掘り下げたうえでやるべき行動をリスト化していくのがいいでしょう。アクションの頻度や時期、使うツールなどの方法といったさまざまな観点で目標を具体化し、行動計画に落とし込んでいくことで、目標の達成率が上がり、目標の有効性が高まります。
4.目標達成のための計画は現実的なものにする
目標達成のための計画は、現実的なものにすることが重要です。
計画が現実的なものでないと社員のやる気が低下するばかりか、計画、目標全体が形骸化してしまいかねません。目標設定を有効なものとして目的を達成するためには、目標の達成可能性を十分に検討し、達成するための具体的なアクションプランを策定する必要があります。
5.目標の進捗に対して高頻度で振り返る
目標を達成するためには高頻度で振り返りを行い、たえず目標と計画および作業方法に改善を行っていくのがコツです。
組織や個人が成長していくためには、達成可能な目標よりも少し高い目標を設定することが必要です。しかし、高い目標というのは改善や変化がなければ達成することができません。
組織や個人を取り巻く状況は常に変化しますが人は現状を変えないことに執着しがちです。成長が止まったままになることがないように、頻繁に振り返りをさせることで停滞を避けるのが必要なのです。
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6.目標の見直しも考慮する
先の項目でも触れましたが、目標を取り巻く状況は刻一刻と変化するものです。その中で同一の目標にこだわっていると気づけば、問題点が山積みとなり目標が達成不可能となっていた、目標が企業の状況、現在の実態に適さないものになったりすることがあります。
結果、目標達成が企業の成功につながらない無駄なものとなってしまうのです。時には目標を見直すことで方向を修正することが目標管理には必ず必要です。
7.目標の進捗状況を管理する方法を簡単にする
目標の進捗状況は容易に管理できるよう徹底する必要があります。
社員は日々様々な業務をこなしています。その中で目標管理をするために面倒な報告をさせると、業務自体の質が低下する恐れがあります。
一般の業務に影響が少なく、かつ従業員が進捗状況をシェア、チェックしやすいような環境を整える必要があります。専用のシートやクラウド上で作動するツールなどを用いて構築するのもおすすめです。ツールは容易な進捗状況管理環境を整えられるだけでなく、ほかの機能で職場全体の情報確認がしやすくなったり、社員個人の進捗状況をマネジメントや人事考課に活用することもできます。
8.目標の達成を評価する仕組みを整える
いい目標を設定するだけでは成果や社員のモチベーションにはつながりません。
目標達成したさいにそれを正しく評価し、報酬につなげる必要があります。そのためには適切な人事評価制度が必要です。
効果的な目標管理の具体的な手順
ここまで目標管理に必要なことについて解説しました。ここからは実際にどのように目標管理を行えばいいのか具体的な手順について営業職を例にしながら解説します。
STEP1:目標の設定・具体的な達成基準を設定
まず、目標と具体的な達成基準を設定します。
(例)
目標:多くのアポを獲得する
具体的な達成基準:ひと月で15件のアポを獲得
STEP2:目標達成に向けた行動を明確にする
次に目標達成に向けて行動を明確にします。
(例)
15件/月のためには一日あたり1-2件のアポをとる必要がある。現在アポ獲得率が2-4パーセント程度なのでそのために一日に50件程度電話をかける
STEP3:行動の進捗と結果を確認する
行動の進捗と結果を確認します。これらは定量的だと目標管理をしやすいのでお勧めです。
(例)
一日平均54件の電話をかけ、結果的につき17件のアポを獲得することができた。
STEP4:結果を元に振り返り、フィードバックを実施する
先ほど出した結果から振り返りを実行しましょう。目標を達成できた際には何が原因で成功したのか、できなかった場合も同様に何が原因だったかを確認するようにしましょう。
(例)
現状個人的な目標は達成したが、IS組織全体の目標は達成することができなかった。これは入社したばかりの新入社員の成約率が低い人間が何人かいたためと考えられる
STEP5:次の行動を決める
先ほどの振り返りをもとに次の行動を決めましょう。
(例)
上層部の役職の人間や社長と相談したうえで許可を取り、来月から新人に向けた営業の研修を導入していく、
以上の流れは1on1を行いつつ実践するのもお勧めです。
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目標管理の新しい形
目標管理は時代遅れになったわけではありません。
新たな世代が組織の代表や従業員の主体を占めるようになったり女性の活躍が推進されたりと時代は確かに変わりつつあります。そこで目標管理にも古いものとはころなる新たな形が求められているのです。
今後は、従業員の主体性や成長を重視し、組織の成長につなげるための目標管理の活用が求められており、近年では、従来の目標管理の課題を解決する今までと異なる目標管理が提唱されています。
その代表的なものに、以下のようなものがあります。
- OKR
- アジャイル目標管理
OKR(Objectives and Key Results)
OKR(ObjectivesandKeyResults)は、Google 社が開発した目標管理手法で目標の達成を正しく定義するために、目標達成の基準を設定する仕組みです。
一見MBOのような今までの目標管理と大きくは変わらないように見えますが、OKRの目的は目標を「ワクワクするものに」することにあります。
目標は基本的にはギリギリ達成できるものを設定するのが普通ですが、この手法では達成できれば奇跡ぐらいのの厳しい目標を設定します。
あえて達成不可能にも見えるチャレンジに社員一丸として挑戦させることで一致団結を狙うことができます。また、組織の一致団結には理念浸透も効果的です。
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アジャイル目標管理
アジャイル目標管理とは、アジャイル開発の思想に基づいた目標管理手法です。
ほかの手法では、1年や半年などの長期的な目標を設定しますが、アジャイル目標管理では、短期的な目標を設定します。
アジャイル目標管理の特徴は、以下のとおりです。
- 短期的な目標の設定
- 目標の可視化と共有
- 目標の達成状況のフィードバック
短期的な目標の設定により、目標達成までの道筋を明確にし、目標の可視化と共有により、チーム全体で目標を共有した上で、協力して達成を目指すことができます。
アジャイル目標管理は短期的な目標を持ち、その進捗が可視化されているため適宜軌道修正が行いやすいのがポイントです。
まとめ
目標管理は、ただのくだらないものではなく、多くの組織にとって重要なものです。
しかし形骸化や悪影響を与えないために、その形を変化させることが求められています。
現場で働くメンバーが目標管理を「時代遅れ」「くだらない」「うざい」と感じないようにするためには、彼らの参加を促し、目標の柔軟性を持ち、フィードバックの質を高めるような仕組みを形作ることが重要です。
目標管理はよい仕組みの下でなら組織と従業員どちらの成長と成功に直結します。今らしい目標管理で会社の生産性を向上させていきましょう。
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よくある質問
ここでは最後によくある質問を紹介していきます。
目標管理シートが無駄といわれるのですが
目標管理シートは無駄ではなく、目標管理のためには重要なものです。
しかし、多くの人が苦手としています。その原因を弊社で診断した際に原因の候補としてよく上がるのが目標管理シートおよび書き方の資料が紙媒体でみづらくなっていることです。
代案としてシートを単体で管理するのではなく試しにITツールで管理してみるのはいかがでしょう。管理手順による遅延も防ぐことができます。弊社のツールを試してみたいという方は価格を査定いたしますので是非お問い合わせください。
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