営業活動の成果を最大化させるためには、自社のスタイルに合った適切なKPIの設定が欠かせません。
本記事では、KPIの基礎知識から業態別の具体例、売上に直結する設定・運用のコツまでを網羅的に解説します。
【目標設定・目標管理の全解説!】
●効果的な目標設定のやり方
●マネージャーの負担にならない目標管理のやり方
●効果が出る目標管理の実践方法
●米国最先端の目標管理
など目標設定・目標管理について徹底解説した無料資料
>>「170P超の目標マネジメントパーフェクトガイド」はコチラから無料ダウンロード!!
▼ この記事の内容
- 営業KPIの定義と役割: 最終目標(KGI)である売上を達成するための「中間指標」です。行動を可視化することで、今日何をすべきかの優先順位が明確になり、課題の早期発見が可能になります。
- 営業スタイル別の指標例: 新規開拓なら「アポ獲得率」、SaaSなら「解約率(チャーンレート)」、既存営業なら「アップセル率」など、ビジネスモデルに最適な指標を選ぶことが成功の鍵です。
- 売上に直結する設定ステップ: KGIから逆算して「KPIツリー」を作成し、SMARTの法則(具体的・測定可能など)を用いて個人の行動レベル(KDI)まで落とし込むことで、再現性のある営業組織を構築できます。
目次
営業のKPIとは
営業におけるKPI(重要業績評価指標)とは、最終目標である売上(KGI)に到達するためのプロセスの進捗を測る目印です。
KGI・KFS・KDIの相関関係を正しく把握することが重要です。相関関係を把握することで、実効性の高い戦略立案が可能になります。
| 指標 | 読み方 | 意味 | 役割 |
| KPI | 重要業績評価指標 | 四半期の売上 3,000万円 | 中間目標・プロセス |
| KGI | 重要目標達成指標 | 決裁権を持つ部長クラスへの接触 | 最終的なゴール |
| KFS | 重要成功要因 | 有効商談数 月間20件 | 成功の鍵 |
| KDI | 重要行動指標 | 1日30件の新規架電(テレアポ) | 行動量の計測 |
これら4つの指標を連動させれば、精度の高いロードマップを描けます。具体的には、KFS、KDI、KPIを連動させる仕組みです。連動させることで、最終目標(KGI)へ到達するルートが明確になります。
KPIとKGIの違い
KGIは最終的なゴールです。対してKPIは、そのゴールへ辿り着くための途中のチェックポイントを指します。例えば、売上1億円がKGIなら、四半期ごとの2,500万円達成がKPIです。
KGIは結果であり、KPIはそれを実現するためのプロセスを数値化したものと考えれば、その役割の違いが明確になります。
KPIとKFSの違い
KFS(重要成功要因)は、目標達成のために最優先で注力すべき要素を指します。KPIは数値指標であり、KFSは実行すべき内容という戦略要素を指します。
例えば10件の成約(KPI)を目指すために、顧客満足度の向上(KFS)を重視するといった関係性です。
成功の鍵を見極めてから、それを測る物差しとしてKPIを置くのが正しい順番です。
KPIとKDIの違い
KDI(重要行動指標)とは、自分がどれだけ動いたかという行動の量を示す数値です。
KPIが「新規商談獲得数」であれば、KDIは「1日30件のテレアポ」や「過去失注顧客への再アプローチメール10件」となります。
KPIは商談数など相手の反応を含むのに対してKDIは架電数やメール送信数など、自身の努力で100%制御可能なアクションを指します。
営業KPIを設定するメリット
営業活動にKPIを導入する最大の意義は、プロセスの可視化です。KPIによって活動実態を誰もが把握できる状態にすることで、単なる数字の管理を超えた以下のメリットが享受できます。
- 行動の優先順位が明確になる
- 課題の早期発見ができる
- 公平な評価ができる
行動の優先順位が明確になる
KPIがあると、今日何をすべきかという優先順位がはっきりします。目標数値と現状の差を把握することで、足りない部分を補うための具体的なアクションが選定できるからです。
やるべきことが多すぎて迷う状況を防げます。限られた時間の中で、最も売上に直結する業務に集中できるため、個人の生産性が大幅に向上します。
課題の早期発見ができる
数値の変化を日々モニタリングすることで、トラブルや停滞などのボトルネックをすぐに発見できます。
例えば、訪問数は多いのに成約率が低い場合、提案内容やヒアリングに問題がある可能性が高いとわかります。
データは異常を知らせるアラートの役割を果たします。大きな問題になる前にPDCAサイクルを回し、対策を講じることが可能です。
公平な評価ができる
KPIは客観的な数値であるため、上司の主観や好き嫌いに左右されない公平な評価を実現します。
頑張りを正当に評価できる仕組みは、メンバーのモチベーション向上に直結します。納得感のある評価制度の構築は離職率の低下や組織の強化にも貢献することが可能です。
営業KPIを設定する4ステップ
効果的なKPIを設定するには、いきなり項目を決めるのではなく、論理的な手順を踏むことが重要です。最終目標から逆算して全体像を把握し、個人の行動レベルまで細分化する4つのステップを解説します。
- KPIツリーを作成する
- 行動指標へ落とし込む
- SMARTの法則を用いる
- マイルストーンを設定する
手順1:KPIツリーを作成する
KPIツリーとは、最終目標(KGI)を頂点にして、それを達成するための要素を枝分かれさせて図解したものです。
売上を「客数×単価」に、客数を「リード数×成約率」へと分解します。このように、大きな目標を小さな要素へ細分化する工程です。

このロジックを可視化することで、どの数値を動かせば最終的な目標に届くのか、その構造が誰の目にも明らかになります。
手順2:行動指標へ落とし込む
ツリーで分解した要素を、日々の業務で実行できる行動指標へと変換する仕組みです。
成約率を上げるという目標だけでは具体的ではないため、ヒアリングシートの活用率や事例資料の送付数といった具体的なアクションにまで落とし込みます。
| 営業フェーズ | 抽象的な目標(結果) | 具体的な行動指標(アクション) |
| 事前準備 | 質の高い商談をする | 商談の24時間前までに顧客のプレスリリースを3件チェックする |
| ヒアリング | 課題を深掘りする | 指定のヒアリングシートの20項目をすべて埋める |
| 提案・訴求 | 納得感を高める | 顧客と同業種の導入事例を最低2社提示する |
| 追客(フォロー) | 検討を促す | 商談終了後、2時間以内にお礼メールと要約資料を送る |
担当者が今日は何をすればいいか、を迷わずに判断できるレベルまで細かくすることが、運用の成功を左右します。
手順3:SMARTの法則を用いる
KPIの設定には、目標設定のフレームワーク「SMARTの法則」を活用します。
設定したKPIが以下の5要素を満たしているか、精査することが重要です。
| 要素 | 意味 | チェック項目(こうなっていればOK) |
| Specific | 具体的か | 誰が読んでも、何をすべきかイメージが一致するか? |
| Measurable | 測定可能か | できた・できないを数値やデータで判定できるか? |
| Achievable | 達成可能か | 根性論ではなく、リソースや現状から見て現実的か? |
| Relevant | 関連性があるか | そのKPIの達成は、最終的な目標(売上等)に直結するか? |
| Time-bound | 期限があるか | いつまでに達成すべきかが明確か? |
頑張って訪問する、ではなく、今月中に新規訪問を20件行うといった、誰が見ても達成度が判断できる形で設定することが鉄則です。
手順4:マイルストーンを設定する
マイルストーンとは、最終ゴールにたどり着くまでの中間の目標地点です。
1ヶ月や1年という長いスパンだけでなく、週単位や10日単位での小さな目標を置くことで、進捗の遅れに素早く気づけます。
| 期間 | 確認するポイント(マイルストーン) | チェックの基準 |
| 10日目 | 案件の発掘量 | 目標金額の3倍以上の見込み案件がパイプラインにあるか? |
| 20日目 | 有効商談数 | 決済者との商談が予定通り実施されたか? |
| 25日目 | 最終合意 | 役員承認や契約スケジュールの把握ができているか? |
長距離走で1kmごとにタイムを確認するように、細かな区切りを設けるのが有効です。これにより、モチベーションを維持しながら着実にゴールへ近づけます。
【営業プロセス別】KPIの具体例
営業の型によって、追うべき指標は異なります。各プロセスの役割を理解し、その役割が果たされているかを測るための最適な項目を選定します。
自社の体制に合わせて、これらの指標を組み合わせて活用するのが有効です。
| フェーズ | 役割・目的 | 主要KPI | 停滞時のチェックポイント |
| マーケ・IS | 商談の質と量の確保 | ・リード数・アポ率 | ・ターゲット層は正しいか?・訴求内容は刺さっているか? |
| FS(営業) | 受注の最大化 | ・受注率・商談数 | ・決裁者に会えているか?・課題解決を提示できているか? |
| CS(既存) | LTVの最大化 | ・継続率・単価アップ | ・導入支援は成功したか?・定期的なフォローがあるか? |
| 管理・経営 | 組織の持続的成長 | ・売上/利益・NPS | ・属人化していないか?・安易な値引きをしていないか? |
マーケティング・インサイドセールス
このフェーズの役割は、有望な見込み客を見つけ出し、営業への橋渡しをすることです。単に数を集めるだけでなく、商談につながる質の高いリードを獲得できているかが重要です。
| 指標 | 定義・意味 | 低い場合の課題・対策 |
| アポイント獲得率 | アプローチ数に対する面談約束の割合 | リストの精度不足、またはトーク内容の魅力欠如 |
| 顧客獲得コスト(CAC) | 顧客1人を獲得するための総コスト | 広告・人件費の効率化、ターゲットの見直しが必要 |
| リード獲得数 | 見込み客の連絡先獲得数(売上の源泉) | 広告・Webサイトの集客力、認知不足 |
アポイント獲得率
アポイント獲得率は、アプローチ総数に対する面談合意の割合を指します。分母には、電話件数やメール送信数といった具体的な行動の数値を含める形です。
成約率の低下は、競合敗退や顧客ニーズとの乖離を示唆します。
アプローチの「質」と「効率」を測るための重要な指標であり、テレアポやインサイドセールスのスキル改善に役立ちます。
顧客獲得コスト(CAC)
CAC(Customer Acquisition Cost)は、顧客1人を獲得するために要したコストの総額を指します。
広告費や営業担当者の給料などを合計し、獲得した顧客数で割って算出する指標です。これが売上を上回る場合、事業の継続が困難になります。
効率的にビジネスを成長させるために、1人あたりいくらかけて良いのかを把握する良い基準です。
リード獲得数
リード獲得数とは、資料請求やセミナー参加などを通じて得られた「見込み客の連絡先数」です。
これが不足すると、その後の商談や成約も増えません。これはWebサイトのアクセス数や広告効果を反映する数値です。将来の売上の源泉として機能します。
ただし、数だけを追うと質が下がるため、成約につながりやすい層をいかに集めるかがポイントです。
フィールドセールス
フィールドセールスは、獲得した商談を確実に見積・受注へとつなげる役割を担います。ここでは、提案の質や顧客との関係性の深さを測る指標が中心となります。
| 指標 | 定義・意味 | 活用のポイント |
| キーパーソン接触率 | 決裁権者との接触割合 | 受注確度の予測、BtoB営業の効率化に不可欠 |
| 有効商談数 | BANT条件が明確な商談数 | パイプラインの厚みを把握し、安定した目標達成へ |
| 成約率(受注率) | 商談から契約に至った割合 | クロージング力、提案の適格性、競合優位性の指標 |
キーパーソン接触率
キーパーソン接触率とは、商談相手の中に決裁権を持つ人(部長や社長など)が含まれている割合です。
担当者レベルとだけ話していても、なかなか契約には至りません。早い段階で決定権を持つ人に会えているかを確認することで、受注の確度を予測できます。
BtoB営業において、効率的に成約を目指すための必須指標です。
商談件数・有効商談数
商談件数は実際に行った面談の数ですが、より重要なのは「有効商談数」です。これは、予算や時期が明確で、具体的な検討が進んでいる質の高い商談を指します。
- 有効商談の定義: BANT条件(Budget:予算、Authority:決裁権、Needs:必要性、Timeframe:導入時期)が概ね明確であること。
- 案件パイプライン: 受注予定時期ごとに、目標達成に必要な商談金額の合計が積み上がっているか。
数だけこなしても、中身が薄ければ売上には繋がりません。有効な商談をいかに増やし、パイプライン(案件の積み上がり状況)を厚くするかが、安定した目標達成の鍵となります。
成約率(受注率)
成約率(受注率)とは、行った商談のうち、実際に契約に至った割合です。営業担当者のクロージング力や提案の適格性をダイレクトに反映します。
この数値が低下している場合は、競合他社に負けているか、顧客のニーズを正しく掴めていない可能性があります。営業活動の最終的な成果を測る、最も重要な効率指標の一つです。
既存顧客の維持
ここは、契約後の顧客との関係性を深め、継続的な取引を目指すフェーズです。新規獲得よりもコストを抑えて利益を上げられるため、近年特に重要視されています。
| 指標 | 定義・意味 | 向上させるメリット |
| アップ・クロスセル率 | 上位・関連製品の追加購入割合 | 既存の信頼関係を活かした顧客単価の最大化 |
| 顧客維持率 | 契約を継続している顧客の割合 | サブスク型モデルの成長維持、サービス満足度の証 |
| 顧客生涯価値(LTV) | 1顧客から得られる利益の総額 | 短期的な売上だけでなく、長期的な絆を数値化 |
アップセル・クロスセル率
アップセルは「より高い製品への乗り換え」、クロスセルは「別の関連製品の追加購入」を提案することです。これらの割合を高めることで、1顧客あたりの単価を上げることができます。

既存のお客さんに信頼されているからこそ実現できるものであり、顧客との良好な関係性と、ニーズに対する的確な提案ができているかのバロメーターになります。
顧客維持率(リテンションレート)
顧客維持率とは、一定期間にどれだけの割合の顧客が契約を継続してくれたかを示す数値です。
サブスクリプション型ビジネスでは特に重要です。維持率が低い場合、新規獲得を続けても収益が蓄積されず、事業成長を阻害します。
サービスの満足度やフォロー体制の充実度を計り、経営の健全性を示す指標です。
顧客生涯価値(LTV)
LTV(Life Time Value)とは、一人の顧客が取引を始めてから終わるまでに、自社にもたらしてくれる利益の総額です。
一度きりの購入ではなく、長く使い続けてもらうことでこの数値は高まります。LTVを意識することで、目先の売上だけでなく、長期的な関係構築を重視する経営判断が可能になります。
チーム全体の生産性管理
個々の活動だけでなく、組織としての効率や質を管理する指標です。リソースの配分が適切か、チーム全体で利益を生み出せているかを俯瞰してチェックします。
| 指標 | 定義・意味 | 管理の目的 |
| 売上高・利益率 | 事業規模と儲けの効率性 | 迅速な意思決定と、健全な組織運営の維持 |
| 顧客単価 | 1顧客あたりの平均支払額 | 付加価値の向上により、労働時間を増やさず売上拡大 |
| 顧客満足度(NPS) | 他者への推奨意向を数値化 | 感情のデータ化による、将来の収益向上と解約防止 |
売上高・利益率
売上高は商売の規模を、利益率はその商売がどれだけ効率的に儲かっているかを示します。いくら売上が大きくても、値引きのしすぎなどで利益が薄ければ、会社を成長させることはできません。
Salesforceなどのツールを用いてこれらをリアルタイムで把握することで、経営層は迅速な意思決定を行い、健全な組織運営を維持することが可能になります。
顧客単価
顧客単価は、1回の契約や1人のお客さんが支払ってくれる平均金額です。これを上げるには、付加価値の高い提案や、まとめ買いの促進が有効になります。
客数を増やすには限界がありますが、単価を上げる工夫をすることで、労働時間を増やさずに売上を伸ばすことが可能です。
チームの提案力や商材の市場価値を反映する、重要な成長指標となります。
顧客満足度(NPS)
NPS(Net Promoter Score)は、顧客が自社の商品を他人にすすめたいかを数値化したものです。従来のアンケートよりも将来の収益と相関が強いと言われています。
満足度が高い顧客は継続率も高く、良い口コミを広めてくれるため、長期的な成長には欠かせません。数値化しにくい感情をデータとして捉え、改善に活かすための指標です。
【業態・業種別】KPIの具体例
営業スタイルが異なれば、追うべき数字も変わります。自社のビジネスモデルに最適なKPIを選ばなければ、現場に混乱を招き、逆効果になることもあります。
ここでは新規・ルート・反響、SaaS、特定業界の3つの切り口で、それぞれの特徴に合わせた指標の例を解説します。自社の業態に近いものを参考に、指標の選定を行ってください。
| 業態・業種 | 最重要視すべきKPI | 理由 |
| 新規開拓 | 架電数・アポ獲得率 | まずは接点を作る行動量が重要なため |
| SaaS | チャーンレート(解約率) | 継続利用による収益(LTV)が、顧客獲得コストを上回る必要があるため |
| 人材・不動産 | 成約スピード・内見数 | 情報の鮮度とマッチングの数が必要なため |
| 製造業 | 受注予測精度 | 工場の作る量を決める必要があるため |
新規開拓・ルート営業・反響営業
新規開拓では架電数やアポ率など、ゼロから接点を作る行動量が重視されます。一方、既存顧客を回るルート営業では訪問頻度やシェア率など、関係の深さが鍵です。
問い合わせに対応する反響営業では、リードが冷めないうちに連絡するレスポンス時間や、資料請求からの有効商談化率が成果を大きく左右します。
SaaS・サブスクリプションビジネス
月額制のSaaSモデルでは、売上の安定性が命です。そのためチャーンレート(解約率)をいかに低く抑えるかが最優先事項となります。
また、定期的な収入の合計であるMRR(月次経常収益)や、顧客がサービスをどれだけ使いこなしているかを示すヘルススコアも重要です。
一度売って終わりではなく、利用継続を促す指標が中心となります。
人材・広告・不動産営業
これらの業界はマッチングが重要です。人材営業なら面接設定数や内定承諾率、広告ならシミュレーション提示数やCVR(成約率)、不動産なら内見数や成約単価を追います。
情報の鮮度とスピードが求められるため、案件が発生してからどれだけ早くアクションを起こしたかというリードタイムの管理が成功を左右します。
製造業・メーカー営業
製造業では工場の稼働計画に関わるため、受注見込みの精度が非常に重要です。
また、製品が採用されるまでの検討期間が長いため、スペックイン(設計段階での採用)数や、試作品の採用率などがKPIとなります。
代理店を通す場合は、代理店担当者への勉強会実施回数など、間接的な支援活動を数値化することも一般的です。
営業KPIの設定でよくある失敗
良かれと思って設定したKPIが、逆に現場の足を引っ張ってしまうケースも少なくありません。失敗の多くは、現場の現実を無視した設定や、目的と手段が入れ替わってしまうことに原因があるのです。
ここでは、陥りやすい代表的な失敗例を良い例・悪い例と共に紹介します。自社の運用に当てはまっていないか、確認を推奨します。
| 失敗のパターン | 悪い例(NG) | 良い例(OK) |
| 詰め込みすぎ | 20項目以上の数字を毎日報告させる | 重要な3項目に絞って集中させる |
| 選定ミス | 景気などの自分では変えられない数字 | 訪問数などの自分の努力で変えられる数字 |
| 丸投げ | 上司が勝手にノルマを決めて押し付ける | 根拠を話し合って納得した目標を決める |
指標を詰め込みすぎる
指標が多すぎると、現場は何に集中すべきか分からなくなり、結局どれも中途半端になります。
- 悪い例: 訪問数、電話数、メール数、資料作成数、会食数など20項目以上を追う。
- 良い例: 売上に最も影響を与える有効商談数と受注率の3つ程度に絞り込む。 項目を絞ることで、担当者の意識が研ぎ澄まされ、成果への最短距離を走れるようになります。
コントロールできない指標がある
担当者の努力でどうにもならない数値をKPIにすると、無力感や不満が溜まります。
- 悪い例: 景気動向や、他部署の予算削減による解約数を個人のKPIにする。
- 良い例: 顧客への定期的なフォロー面談数など、自分の行動で100%達成可能な数字を置く。 自分で結果を変えられるという実感が、モチベーションを維持し、自律的な行動を促進します。
KGIとの相関関係が弱い
追っている数値が上がっても、最終的な売上に繋がらないなら、それは意味のない数字です。
- 悪い例: 売上目標があるのに、ただ名刺交換の数だけを追い続ける。
- 良い例: 過去のデータから、売上に直結することが証明されているデモ実施数を追う。 なぜその指標を追うのかというロジック(論理)が明確であれば、現場も納得感を持って取り組めます。
目標を決めさせない
上から一方的に数値を押し付けると、現場はやらされ仕事になり、達成への意欲が低下します。
- 悪い例: 根拠なく昨年の1.5倍という数字をノルマとして通達する。
- 良い例: チームで議論し、納得できる根拠に基づいて各担当者が自ら目標数値を算出する。 自分たちで決めたという自己決定感が、困難な状況でも目標をやり遂げる強い責任感を生みます。
営業KPIを見直す方法
一度決めたKPIも、状況に合わせて柔軟に見直す必要があります。設定した数字が目標に届かない場合、冷静に原因を分析します。
KPIが未達の場合
KPI(重要業績評価指標)が達成できない場合、その背後には「行動の不足」か「仮説の誤り」のどちらかが潜んでいます。
例えば、営業担当者の「受注率」が目標に届かないケースを考えてみましょう。この際、マニュアルではまず「どれだけ時間をかけたか」という観点から分析を始めることがおすすめです。
十分な時間を費やしているにもかかわらず結果が出ないなら、スキルの欠如や、商談プロセスのどこかに「不可避の障害」が発生している可能性があります。
一方で、そもそも時間をかけられていないのであれば、突発的な業務の割り込みや、あるいは「目標の達成目的に納得できていない」といった心理的な壁が行動を阻害していると考えることが可能です。
このように、単に「気合で挽回する」のではなく、未達の根本原因を「時間・スキル・環境」の軸で特定することが再設定の第一歩となります。
KGIが未達の場合
現場がKPIの数字を追いかけて達成しているにもかかわらず、最終的なゴールであるKGI(売上や利益)が改善されない状況は、マネジメントにおいて最も警戒すべきサインです。
これは、KPIとして設定した指標とKGIの間の「因果関係(連動性)」が薄いことを意味します。マニュアルの具体例を引けば、「商談数は増えたが、競合との単価差を埋める理解が不足しており、受注に至らない」といったケースがこれに該当します。
この場合、商談数という「量」のKPIに固執するのをやめ、最重要プロセス(KSF)を「競合優位性の訴求」へとシフトし、KPIを「比較資料の提示数」や「受注率」へと置き換える必要があります。
登るべき山が間違っていると判断したならば、最初に立てた目標に固執せず、戦略の前提条件を疑って因数分解をやり直す柔軟性が必要です。
KDIが未達の場合
日々の具体的な行動指針であるKDI(重要行動指標)が未達になるのは、そのタスクが「コントロール可能な状態」になっていないことが主な原因です。
例えば、「受注率向上」というKPIのために「1日2回のロールプレイング」をKDIとして設定したとします。しかし、現場が慢性的な忙しさに忙殺されている場合、この行動は形骸化します。
マニュアルでは、このような状況に対して「回数を1回に減らす代わりに、ロールプレイングの質を高める方法を考える」といった、現実的な下方修正と質的転換を提案しています。KDIはKPIよりも本人が制御しやすい指標であるべきです。
物理的な障害を取り除き、メンバーが「これなら確実にやり切れる」と思えるレベルまで行動をタスク化・定量化し直すことで、再び目標達成へのサイクルを回し始めることができます。
目標設定は一度決めて終わりではなく、1on1などを通じて「再設定」を繰り返すことで、より組織の現実に即した精度の高いものへと進化していくのです。
営業KPIを売上につなげる運用のコツ
KPIは設定するだけでは機能しません。日々の運用を通じてPDCAを回し、現場の行動を改善し続けることで初めて成果が生まれます。実効性を高めるための5つのポイントを解説します。
- 1on1ミーティングをする
- 課題をKPIに置き換える
- 因数分解をする
- プロセスの評価を設定する
- ツールをうまく利用する
1on1ミーティングをする
上司と部下が定期的(週1回など)に1対1で話す場を設け、KPIの進捗を確認します。単なる報告ではなく、課題解決に向けたコーチングの場として活用します。
KPIが未達の際、なぜできないのかと詰めるのではなく、「商談のどのフェーズで苦戦しているか?」「ロールプレイングを実施してトークを修正しよう」といった、スキル開発に直結する対話を行います。
これにより、メンバーは一人で悩まずに済み、心理的安全性が高まります。数値の背後にある個人の努力や課題に寄り添う姿勢が、継続的な成果創出の土台です。
「1on1がなかなか定着しない」「現場からの反発が起きている」など1on1の定着・浸透にお悩みの方必見!
経営層・人事・現場の3方よしの形で、成果が出る1on1を定着・浸透に向けた4フェーズごとの課題とアクションプランを開設した資料!
>>『数々の組織の成功を導いてきた【完全保存版1on1定着マニュアル】』はこちらから無料ダウンロード!
課題をKPIに置き換える
現場で起きている問題を数値化してKPIに組み込みます。例えば失注が多いという課題に対し、競合比較資料の提示率をKPIに設定することで、具体的な対策を行動に変えることが可能です。
「ヒアリングが浅い」という課題があれば「顧客の経営課題を3つ以上抽出した商談の数」をKPIに設定し、質の向上を具体的な「行動数」へと変換します。
言葉でのアドバイスは忘れられがちですが、数値目標にすることで、日々の意識を自然と課題解決に向けさせることが可能です。課題を数値化し、具体的な行動目標に変える手法です。
因数分解をする
大きな目標を、誰でも実行できる小さな単位までバラバラに分解します。1ヶ月の目標を週単位、日単位に割り振り、具体化するものです。
月間受注3件という目標を、「週次で有効商談5件」「そのためには1日15件の有効コール」という日次ルーティンまで分解し、今日やるべきことを迷わせない状態にします。
このように、目標を今すぐできるアクションに分解することで、実行のハードルを下げ、着実な進捗を生み出します。
プロセスの評価を設定する
結果(売上)だけでなく、正しいプロセス(KPIの達成度)も評価の対象にします。たとえ運悪く受注を逃しても、質の高い商談を数多くこなした姿勢を評価することで、メンバーは安心して正しい努力を続けられます。
目標金額の達成率だけでなく、「新規ターゲット企業へのアプローチ率」や「社内ナレッジへの事例共有数」などをMBOや人事評価の項目に組み込み、行動の質を正当に評価することも重要です。
逆に、結果だけを評価すると、組織のスキルは蓄積されません。プロセスを評価する文化を作ることで、長期的かつ安定的に勝てる強い営業組織が育ちます。
ツールをうまく利用する
手作業での集計は時間がかかり、ミスも起きやすいため、ITツールの活用は必須です。データの入力や集計を自動化することで、営業担当者は本来の業務である顧客との対話に集中することが可能です。
SFAやダッシュボードを活用し、「誰が・どのフェーズで・どのくらい停滞しているか」を全員が見える化することで、マネージャーが適切なタイミングでフォローに入れる体制ができます。
また、グラフなどでリアルタイムに数字が見える環境を作ることで、チーム内の競争意識や協力体制が自然と醸成されます。テクノロジーの力を借りて、運用の手間を最小限に抑えましょう。
営業KPI管理におすすめのツール
効率的なKPI管理には、情報の一元管理と可視化が欠かせません。ツールを導入することで、過去のデータに基づいた精度の高い予測が可能になり、マネジメントの質も向上します。
| ツール分類 | 代表的な製品 | 特徴 |
| SFA/CRM | Salesforce, HubSpot | 顧客情報と営業の動きをまとめて管理できる |
| BIツール | Tableau, Looker Studio | 複雑なデータをグラフで分かりやすく表示できる |
| 1on1ツール | Co:TEAM | 対話の内容と目標の進捗をセットで管理できる |
ここでは、多くの企業で導入されている代表的なツールを3つのカテゴリーに分けて紹介します。自社の規模や課題に合わせて、最適な組み合わせを選んでください。
SFA/CRMツール(Salesforce, HubSpotなど)
SFAは「営業活動を助けるツール」、CRMは「お客さんとの関係を覚えるツール」です。いつ、誰に、どんな提案をしたかという履歴をチーム全員で共有できます。
Salesforceなどのツールを使えば、入力したデータから自動でKPIの進捗がグラフ化されるため、報告のための資料作成の手間が省けます。
- Salesforce: 高いカスタマイズ性が特徴。大規模組織や、独自の複雑な営業プロセスを持つ企業に最適。
- HubSpot: 直感的な操作性が魅力。マーケティングツールとの連携が強力で、リード獲得から受注までを一気通貫で管理したい場合に適しています。
BIツール(Tableau, Looker Studioなど)
BIツールは、散らばっている膨大なデータを集めて、グラフや表で分かりやすく見える化するソフトです。SFAのデータだけでなく、広告費や会計データなどを組み合わせて、より深い分析が可能です。
例えばどの地域の、どの業種の成約率が高いかといった傾向を瞬時に把握できます。
- Tableau: 高度な分析と美しいビジュアル化が可能。専任のデータサイエンティストや分析担当がいる組織向け。
- Looker Studio: Google広告やスプレッドシートとの親和性が高く、無料で始められるため、手軽にダッシュボードを作りたい組織に最適。
1on1ミーティングツール
1on1ミーティングの効果を最大化するためのツールです。話した内容の記録や、設定したKPIの進捗、モチベーションの状態を一目で確認できます。
Co:TEAM(コチーム)などのツールを活用すれば、上司と部下のコミュニケーションが可視化され、組織全体での育成状況が把握しやすくなります。
- コチーム:単なる数値管理に留まらず、なぜそのKPIが達成できなかったのか、という背景にある行動や思考をマネージャーが把握し、具体的なコーチングにつなげるためのプラットフォームとして機能します。
本当に効果が出る1on1研修をお探しの方へ
1on1研修を導入したいけど、比較しても正直「どれが自社にマッチしているのかがわからない…」とお悩みではありませんか?
「研修の違いが正直よくわからない」
「研修で現場にインパクトを与えるほどの効果が出るのか不安」
「管理職やマネージャーが研修に前向きでない」
こんなお悩みを抱えられている方は、コチームの「1on1・マネジメント研修」がおすすめです!
超実践的な研修内容で、研修後からすぐに使える1on1やマネジメントのやり方「How」をお伝えし、本当に効果が出る研修です。
まずは、研修紹介資料からご覧になってみてください。期間限定で特典資料を配布中!
よくあるご質問(FAQ)
営業KPIの項目数はいくつに絞るのが効果的ですか?
一般的には、1人あたり3つから5つに絞るのが最も効果的です。人間の脳が一度に意識できる範囲には限りがあるため、多すぎると注意力が分散し、どれも未達になるリスクが高まります。
最優先事項であるセンターピンを見極め、リソースを集中させることが肝要です。
定性的な行動目標を定量的なKPIにする方法はありますか?
顧客との信頼構築のような目に見えない目標も、具体的な行動に置き換えることで数値化できます。
例えば、月に一度の定期連絡を行う、課題ヒアリングシートを100%活用する、お礼メールを24時間以内に送る」といったルールを決め、その実行率や回数を計測します。
曖昧な表現を排除し、やったか・やっていないかが誰でもわかる状態にすることがポイントです。
営業KPIが未達の場合の具体的な対策や見直し方は?
まずは未達の原因を特定します。行動量が不足しているなら時間の使い方を改善し、率が低いならスキルアップのための研修や同行支援を行います。外部要因(市場の変化など)が大きい場合は、速やかに目標数値自体を見直すことも必要です。
大事なのは未達を責めることではなく、データに基づいて次の一手を素早く打ち、PDCAサイクルを高速で回し続ける姿勢です。
まとめ
営業KPIは、組織が迷わず目標に向かって進むための羅針盤です。KGIから逆算し、具体的で達成可能な指標を設定することで、個人の行動が変わり、結果として売上が向上します。
ツールを活用して数値を可視化し、1on1などのコミュニケーションを通じて改善を繰り返すことが、持続可能な成長へとつながるのです。
本記事を参考に、自社に最適なKPIを設計してみてください。それが強い営業組織を構築する第一歩になります。
お役立ち情報
-
全170P超の目標マネジメントパーフェクトガイド近年増えている目標マネジメントへの不安を解消するあらゆる手法やマインドなど目標管理の全てが詰まっている資料になっています。
-
【170P超のマネージャー研修資料を大公開!】マネジメントと1on1って何ですか?「これさえ実践すれば間違いないという具体的なHOW」に焦点をあてて、マネジメントや1on1を実践できる内容となっています。
-
【全260スライド超】メンバーの成長・マネジメントを最適化させるプロが実践する1on1パーフェクトガイド組織開発・1on1 ・評価の設計運用で 100 社以上の企業に伴走してきた弊社の知見をもとに作成したガイド資料になります。









