組織マネジメントのポイントの一つに、目標管理があります。目標管理という言葉はわかっていても、実は目的や効果、活用方法の理解度が低い場合もあります。
企業にとって目標管理とは、社員の自主的な業務への取り組みを促すための仕組みのこと。さらには人事評価制度の改善やモチベーションアップ、困難な状況の解決や、業務の効率化にまで貢献する手段の一つでもあります。
この記事では、目標管理の意味やメリット、起こりがちな失敗などを含めて、適切な運用方法を事例と共に説明していきます。
目標管理とは
目標管理は、企業で広く用いられる組織マネジメント手法の一つです。具体的には、個々の業務を担当する社員に、個人目標またはグループン目標を設定・申告させ、その進捗や結果を社員自らが考え、管理する方法です。
目標管理を導入する際の理解度が高いと、部下へのフィードバックによる人材育成ができたり、人事評価における困難な点が解決されたり、1on1等の機会の目的が明確になったり、あらゆるシーンにおいて効果的です。
さらに、業務を行う社員が自ら目標設定に関わり、その進捗や成果物の管理を行うことで、社員の主体性や積極性を育むことが可能です。これは活力ある組織づくりに欠かせない方法であり、組織全体の目標達成に向けた一体感も生まれやすくなります。
つまり、目標管理は自己マネジメントの手法にみえて、実は組織マネジメントの手法であるとも言えます。
目標管理をするメリット
では、目標管理を行うことで得られるメリットには何が考えられるのでしょうか?
モチベーション、スキルアップ、社員の評価制度の導入の3つの観点から解説します。
社員のモチベーションアップ
1つ目のメリットは、社員のモチベーションアップに繋がる点です。なぜなら、目標が明確な方向性を示し、達成のために社員がどんな役割で、どんな仕事を行うべきかを考えやすくなるからです。
目標管理とは、業務を担当する社員自らが、業務目標を設定・申告したり、申告した業務目標の進捗や結果を主体的に管理したりすることで、社員自らが組織を動かしていくマネジメント方法のことです。目標管理が導入されることにより、社員は目標達成に必要なものは何かを考える癖がつきます。
この自主性が高まることで、社員の意識やモチベーションの向上に繋がります。上司に言われたからやる、すでに決まっていることだから取り組むといった受身的・消極的姿勢ではなく、意欲的・積極的に取り組む人材のを育成を実現できるのは、企業にとっても大きな魅力でしょう。
このように、目標管理によって社員に方向性を示し、自主的に動ける環境を作ることが社員のモチベーションアップに繋がります。社員のモチベーションを上げることは人材不足の今、離職防止のためにも非常に重要です。
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目標達成の可能性が上がる
2つ目のメリットは、目標達成の可能性が高くなる点です。なぜなら、目標管理によって達成が難しい状況に対策を行うことで、達成へのサポートを行えるからです。
目標管理においては、設定したプロセスにおいて社員自らがスキルを用いて活躍することが前提ですが、時には目標や理想とする進捗の実現が難しくなることもあります。マネジメント側が進捗をチェックし、目標達成が危ぶまれると判断した際には、活性化させるための手段や方法を投入することで達成の可能性が上がります。
また個々の社員の能力を高めるマネジメントによっては、チームのレベルも向上できます。チームのレベルが高くなれば、当然、企業としての価値もアップします。
このように、適切なマネジメントにより目標達成までの過程を管理し、生産性の高いチームをつくり必要なタイミングで活性化を行うことが、目標達成の可能性に繋がります。
評価をしやすくなる
3つ目のメリットは、各工程を評価しやすくなる点です。なぜなら、目標管理によってプロセス、進捗、成果のそれぞれにおける状況が把握できるようになるからです。
目標管理では、具体的な目標を設定します。それにより、目標達成に向けてどのような方法でアプローチを行っているのか、目標達成に対して現状がどこまで進んでいるのか、目標達成に対してどのような成果を出せているのかといったさまざまな観点からの評価が容易になります。評価は、公平で客観的なものとしても活用できるでしょう。
目標管理制度のメリットを最大化するには、上司による部下の能力の理解や、的確なフィードバックが必要です。その実現には、部下の目標に対する進捗や面談履歴を把握できる人材データベースの構築なども効果的です。
このように、目標管理はゴールまでのプロセスにおいても進捗を確認し、結果だけでなく包括的な評価を可能にします。
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目標管理をするデメリット
目標管理を運用する際に、効果的でない目標管理を実施してしまうとデメリットが発生することもあります。デメリットが発生する状況では、主に目標管理の目的や手段の理解に問題がある場合が多いです。
ここでは社員のモチベーション低下にも繋がりかねない、目標管理の運用で起こりがちな3つの注意点について説明します。
目標だけに目がいってしまう
1つ目のデメリットは、目標だけに目が行ってしまう状態が出来かねない点です。これは、目標そのものに重きを置きすぎるあまりに、成果に直接繋がる業務にしか労力が注がれなくなってしまうリスクになります。
例えば、売り上げが目標の200万円に対して190万円しか達成できなかった場合、低評価とされることがあります。そのため、営業チームは数字を達成させるために様々な手を尽くすようになるでしょう。しかし、組織としての業務においては新メンバーのオンボーディングや部門間の連携作業など、数字には直結しないような業務が多々必要です。
そのため、目標至上主義になりすぎてしまう環境では、本来の目標管理が目指す、社員のモチベーション向上やスキルアップといったメリットを享受しにくくなってしまいます。
社員のモチベーション低下
2つ目のデメリットは、社員のモチベーションが低下してしまうケースもある点です。なぜなら、目標管理の方向性を誤ることによりマネジメントが単なるノルマの押し付けと化してしまうと、社員は上司の指示に従うだけの存在になってしまうからです。
例えば、社員の能力や進捗に期待ができないとみなして、効率化のために部下に指示を出す上司がいたとします。すると従うことで評価される環境が構築され、部下は言われたことに従うプレッシャーに基づいて動くようになります。すると次第に業務に対する自発性や意欲が低下し、結果として生産性も低下することに繋がります。企業の目標達成を目指す目標管理が逆に企業の弱体化を招く可能性も考えられます。
そのため、目標管理を運用する際には、目標設定の適切さや運用方法について常に考え続けることが重要です。目標管理は単なるツールであり、その目的は従業員の成長や会社の進化を促進し、サポートすることにあります。
適切な目標設定
では、適切に目標設定を行う方法はあるのでしょうか?ここではKGI・KPIを用いた設定の考え方を解説していきます。
KGIの決め方
まずは、重要目標達成指標とも呼ばれるKGIの決め方について説明します。
KGIは、具体的な数値で目標を設定する必要があります。
KGIとは
KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字を取ったもので、重要目標達成指標とも呼ばれます。つまり、プロジェクトの最終的な目標を定量的に示した指標のことです。
目標を達成できたかを判断することが難しくなるため、この最終目標は数値化することが重要なポイントです。
例えば「営業利益最大化」「できる限り多く新規顧客を見つけること」といったような定量で測れないKGIを設定してしまうと、進捗の確認や振り返りができなくなってしまうため、「売上を昨年より120%向上させる」「年間の契約件数100件」「新規顧客開拓50件」のように設定する必要があります。
このように、KGIは達成できたかの判断ができるように数値を用いて具体的に設定するようにしましょう。
KGIの適切な決め方
KGIの決め方には2つの代表的な方法があります。
1つ目は、「自社目線で決める」方法です。「自社目線で決める」方法は、欲しい成果を経営者や事業責任者が決めてしまう方法です。
例えばスタートアップなどでは、投資を受ける際に予め成長曲線を描いているので、それに沿って月間や年間の目標を決めている場合もあります。
しかし、自社でKGIを設定する場合、自社の現状のリソースでは不可能だったり、市場規模的に不可能だったりするために実現不可能な数値が設定されてしまうことが多々あります。目標を未達すると、従業員のモチベーションが低下してしまう恐れがあるので、高く設定しすぎないよう注意が必要です。
2つ目は、「市場目線で決める」方法です。これは、自社の製品・サービスを購入してくれそうな企業や個人がターゲット市場にどのくらいあるのかを調査し、そこから売上目標を決めていく方法です。なぜなら特定の業種や業界を狙った商材・サービスを取り扱っている場合、市場目線で目標を決めないと無謀な目標値になってしまう事が多々あるからです。
例えば「従業員500名以上の人材紹介会社」を対象に、「人材紹介の際に使える管理ツールを売る」ことを考える場合、そもそも「従業員500名以上の人材紹介会社」がどのくらいあるのかを調査し、何%のシェアが取れるかを計算したうえで目標を設定しなければなりません。
このように、ビジネスの形態や業界に合わせて自社目線と市場目線の両方を意識し、適切なKGIを設定する必要があります。
KPIの決め方
KGIとなる最終目標を決めたら、次はKPIと呼ばれる中間目標を決めていきます。
ここではKPIとは何か、どうやって決めたらよいのかについて、詳しく説明していきます。
KPIとは
KPIとは、KGIを達成するために必要となる中間指標のことです。そのため、KPIを追っていけばKGIが達成されるようにKPIを設定する必要があります。また、KPIの達成率を曖昧にしないためにも、各KPIに対して数値目標も決めるようにしましょう。
KPIを作る際にはKPIツリー(ロジックツリー)を作るのがおすすめです。KGIをTOPにして、階層構造を持たせながらKPI、サブKPI、サブサブKPIという順に設定していくのがおすすめです。
KPIの適切な決め方
KPIの決め方には、2つの代表的な方法があります。
1つ目は、KGIから逆算して決めていく方法です。最終目標値であるKGIが決まったあとに、そこから逆算して必要なKPIを埋めていくイメージです。
例えば、KGIを売上600万円とします。このKGIから逆算してKPIを決めていくことになるため、まずは客単価を決めます。仮に客単価を60万と設定したとしたら、新規で獲得する顧客数は10社になります。売上=客単価×顧客数なので、合計で600万円になります。
ここから、顧客数10社をすべて新規から取りに行くのか、それともアップセル狙いで新規を5社、既存を5社と設定していくのか等を決めていきます。決めるときのコツとしては、一部のKPIに負荷が大きくかからないようにバランスを考慮することです。なぜなら、KPIの負荷がどこかに偏り過ぎているとそのKPIにばかり目がいってしまったり、KPIが達成できなかった時にKGIが未達成となる可能性があるからです。
ただし、あるKPIの改善や向上施策に対して、自社のリソースが多くある場合はあえてそのKPIに期待を込めて大きな目標値を設定する事も可能です。
2つ目は、KPIの目標値を社内調査により過去の自社データから決める方法です。
KPIツリー(ロジックツリー)を細分化していくと、だんだん現場に近いKPI設定が必要になっていきます。例えば、営業で言うと「何件架電するのか?」「何件メールをするのか?」といったようなKPI設定が必要になります。そのため過去にメール送付で商談を打診した経験があれば、その際の反応率を過去の担当者に確認し、KPIとしてどのくらいの数値が現実的なのかを見直し判断していきます。
また、デスクリサーチも有効です。デスクリサーチとは、既存の文献や資料、WEBサイトから必要な情報をリサーチすることです。
ネット上にはさまざまなデータがホームページ上で公開されているため、目標値(目安)の参考になるデータが見つかる可能性があります。営業であれば、営業支援の会社のHPやブログ、営業支援の会社の社長クラスのTwitter等に情報が書いてある可能性があります。
以上の代表的な2つの決め方をベースに、KPIツリー(ロジックツリー)の各KPIの目標を決定するとよいでしょう。最初は設定や運用が難しく感じることもあるかもしれませんが、毎月KGIやKPIを作成しながら調整していく事で、徐々に適切な目標を立てる事ができるようになります。
KPIの決め方について詳しくはこちら↓
目標を管理し成果を出させるためのポイント4選
ここまでは目標設定の方法について解説してきましたが、実際にはその目標を管理し達成する方が重要です。ここでは、設定された目標を達成するための4つのポイントを解説します。
目標に納得感を持ってもらう
1つ目のポイントは、目標設定に納得感を持ってもらうことです。なぜなら意図が不明瞭であったり、達成がイメージできないほど高い目標が設定されていると、社員のモチベーション低下に繋がるからです。
例えば、よくある目標への不満として「目標が高過ぎて、達成できるイメージが湧かずやる気が出ない」「目標設定が会社の貢献になっていない気がする」などがあります。
高すぎて達成がイメージできない目標に対しては、SMARTの法則でも知られている通り、達成可能な目標に設定する事が重要です。また、いつもより目標を高く設定する場合は「今月は広告を多めに打ち、商談数の増加が予測されるから目標を高めに設定した」などの理由を説明し、納得感を持ってもらう事が必要です。それによって、なぜその目標を目指すのかという理由が浸透し、ペースを考えて業務に取り組むことができます。
また「目標設定が会社の貢献になっていない気がする」という不満が発生する組織では、KPIが結果に紐づいている場合が多いです。商材の単価が高い会社では、月の目標受注数が1,2件ほどになる事があります。その場合、先月と先々月は0件だったが、今月は4件の受注といったようにばらつきが出る事が多いです。
そのため、KPIの設定には商談数などを組み込む事があります。その場合は、評価をする際に単月ではなく半年や一年での合計で評価をするという説明や、なぜKPIを評価項目に入れているのか、という背景を説明する事で、目標設定への納得感を生み出す事ができます。
このように、目標設定への納得感と目標の意図の明確さは、社員の意識に直結するため重要なポイントと言えます。
目標達成後の評価について話しておく
2つ目のポイントは、目標達成後の評価についてあらかじめ浸透させておくことです。なぜなら、達成のメリットや評価への影響を知ったうえで業務を行うことで、公平感とモチベーションのアップに繋がるからです。
チームでの目標を追う場合、メンバーによって目標を過達する人と大幅に未達する人に分かれてしまう事があります。例えば、目標の2倍を達成した人との1.1倍を達成した人が同じ評価をされたとします。このように目標を過達した人と大幅に未達した人の評価にあまり差がない場合、目標を達成したメンバーが不公平に感じ、モチベーションが下がってしまいます。
そのため、目標を大幅に達成した人には未達の人よりメリットのある評価制度にする事をおすすめします。また目標設定を行った際には、もしその目標を達成したらどのような評価や報酬が得られるのか?ということをメンバーに具体的に共有しておくと良いでしょう。
目標をタスクに落とし込む
3つ目のポイントは、目標を達成する過程をタスクに落とし込むことです。なぜなら、達成までの内容を計画的に周知することによって、いつ何をすればよいのかが明確になるためです。
例えば成約率を10%アップさせたい場合に「ヒアリングを徹底して提案力を上げる」「ヒアリングシートを作成して質を高める」といったタスクを作ることが想定できます。このように目標達成までの具体的なタスクを設定することによって、どのようなプロセスを踏んで達成を目指すのかが明確になります。また、タスクを細分化することによって実行の可能性を高めることができ、目標達成の確実性もアップします。
このように、目標達成までのタスクを細分化し、一つ一つのタスクを実行に移してPDCAサイクルを回す事が、最終的に目標の達成に繋がります。
進捗管理を定期的に行う
4つ目のポイントは、目標達成に向けた進捗状況を定期的に管理する事です。なぜなら、定期的な観察により問題点や停滞を素早く見つけ出すことで、必要なサポートにより達成に近づける事ができるようになるからです。
例えば、月の初めに「アポ数を1.2倍にする事で、売り上げを1.2倍にする」という目標を立てたものの、半月が経過した時点で「アポ数は上がったが、その分受注率が下がってしまい、目標の売り上げに達しそうにない」という状況に陥っていたとします。その際は、アポ数1.4倍を目指すのか?それとも受注率を元に戻すのか?と注力すべき部分を見直す事で、目標達成できる確率を向上させる事ができます。
また、進捗管理が定期的に行われていることによって上司が状況を把握していることが前提となり、「今こういう状態なんですが、どうしたら良いでしょうか?」と聞くだけでアプローチを貰いやすくなります。
このように、目標管理においては定期的な進捗管理が必要であり、コミュニケーションの効率化にも重要なポイントとなります。
1on1を活用した目標管理
目標管理とマネジメントを行う際には、1on1ミーティングがおすすめです。
1on1ミーティングは、離職改善などの守りの施策として認知されていますが、マネジメントと目標管理においても有効な施策です。
1on1がおすすめの理由
1on1は、メンバーが抱えている課題を上司が直接アドバイスできる点でおすすめです。なぜなら、個別の対話を通じて目標の進捗や課題を詳細に把握し、個々のニーズやモチベーションに効果的なサポートやアドバイスを提供できるためです。
例えば1on1ミーティングが行われておらず、複数人でのミーティングのみが行われているとします。複数人で行われるミーティングにおいては、どうしても発言や相談ができない人が上司と話すことができずに終わってしまうこともあるでしょう。また全社研修等が開かれても、一人ひとりに合った改善活動までは注力できないといったデメリットもあります。
しかしこのような課題には、個別の1on1ミーティングによってアプロ―チすることが可能です。1on1ミーティングによって一人一人に時間を取って向き合うことで、業務におけるつまづきや疑問点を明確に洗い出し、共に課題解決に向けた取り組みを行うことが可能になります。
このように、目標管理において1on1を導入することでメンバーとマネジメント側間のコミュニケーションが円滑となり、目標管理における課題のサポートがしすくなります。
1on1の運用方法
マネジメントにおいてメリットのある1on1。では、実際の目標管理においてはどのように運用したらよいのでしょうか?ここでは1on1の効果的な運用方法の5ステップをご説明します。
目標についての擦り合わせを行う
1つ目のステップは、目標についての擦り合わせです。最初に目標の擦り合わせを行うことによって、目的の明確化を行い、どのような結果を目指すかついての方向性の誤認を避けることができます。
例えば、「次の四半期までに新しい製品の開発を完了し、市場投入する」という具体的な目標を設定します。このように明確に共有することによって、この1on1ミーティングによってどのような状態を目指すのか、またどこに疑問点や課題が発生しているのか等の認識を統一し、ミーテングの目的を明らかにします。
また、個人の数値目標に限らず新しいメンバーのオンボーディングや他の部門との連携など、他の数値化できない目標がある場合もあるので、そういった点も擦り合わせるようにしましょう。
現在の状況の確認
2つ目のステップでは、現在の進捗状況をメンバーに教えてもらいましょう。
KGIやKPIをエクセルなどで記録している場合は、進捗の把握が簡単ですが、今注力している事や失敗してしまった事など、数値で確認できないことに関しては直接話を聞いてみないと気づけない事が多いです。
また、スケジュールの流れによっては定量で測れない成果もあります。例えば人事部においては、確保したい新入社員の数に対する問い合わせ数・面接者・採用者の数が、説明会や面接のプロセス数や日程によって大きく左右されたりなど、成果がまとまった日に集計される業務もあります。
そのため、定量でわかる物と定性でないと分からないものの両方について質問し、進捗を把握するようにしましょう。
課題と改善点を出してもらう
3つ目のステップは、目標に対して抱えている課題や、改善しようとしている事の確認です。
例えば、営業部のメンバーがこのように報告を行ったとします。
「現在20日が経過しているが、目標の30%に達していない。この課題の原因は、電話でのアポが少ないこと。そのため、電話でのアポが得意なメンバーに話を聞き、具体的なテクニックを学び試しています。」
まずはこのように、状況と取り組んでいる課題について最後まで聞いてみましょう。ただし、アドバイスをする前に十分に情報を収集することが重要です。信頼関係を築くためにも、メンバーの意見や思考に耳を傾け、尊重する姿勢を見せましょう。
情報を聞き終えたら、具体的なアプローチについて質問を投げかけることで、理解を深めサポートしていきましょう。「具体的にどんなテクニックにチャレンジしていますか?」などと聞くことで、彼らの取り組みに対して的確なアドバイスができるようになります。
フィードバック
4つ目のステップは、フィードバックです。現在の状況とチャレンジしている事を最後まで聞いたら、的確なアドバイスを行うようにしましょう。
アドバイスの際には、ティーチング形式で全てを教えるのではなく、コーチングによってメンバー自身の考える力を引き出すことがポイントです。
先ほどの例であれば、「アポのテクニック以外で伸ばせるところってある?テクニックって取得するのに時間がかかる可能性があるから」と問いかけ、他にもできる事がないかを本人に確認します。
そこでメンバーから「現在1日50架電していますが、もっと伸ばせるコツはありますか?」という質問があれば、メンバーの架電の様子を観察し、無駄な作業がないかを確認したり、架電のフォーマットを作るようにするなどのアドバイスを行うと良いでしょう。
このようなサポートにより、メンバーが自分で課題を解決する能力を伸ばすことができ、本人にもマネジメント側にもメリットとなります。
評価のすり合わせ
最期に、目標を達成した時の評価についてを摺り合わせます。なぜなら、達成時の評価についてを明確にイメージすることによってメンバーのモチベーションを上げ、効果的なアクションへの取り組みと自律を催促できるからです。
人間は「報酬を手に入れる事ができそう」という実感があることによってモチベーションを維持する事ができます。例えば、目標が未達になりそうな場合に「このままだとまずいよ!」と伝えるよりも、「このギャップを埋められればこんなメリットがある」と伝える方が、達成に向けて諦めずにポジティブな気持ちを持ってもらうことができます。
またメンバーの中には、目標100%達成でも120%達成でも評価が同じであれば、100%達成でもいいかなと思う方もいます。そのため、「今の進捗だと目標120%以上達成できる可能性あるから、ぜひ目指してほしい。達成できた場合、うちの人事評価制度的に〇〇になると思う」のように具体的にどんなメリットがあるのかを伝えると良いでしょう。
このように、評価についても曖昧にせず伝えることによって、達成へのモチベーションをアップさせ、評価に対する納得感を持たせることが重要です。
まとめ
このように、マネジメントによって適切に目標管理を行うことは、メンバーとマネージャー・管理職側の双方にメリットをもたらします。
時代と共に日本ではビジネスの成長スピードが速まっています。その変化に対応するには、組織全体の具体的な方針が組織目標として設定され、全員が一貫した方向性を理解し、達成に向かって効果的に行動できるようなマネジメントに、より一層価値が置かれることでしょう。
効果的な目標管理の実施と戦略により、メンバーのパフォーマンスを向上させ、目標達成に向けて取り組んでいきましょう。
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