コンピテンシー評価の目標設定方法は? 例文を交えて解説!

近年多くの企業が、人事評価に「コンピテンシー評価」を採用し始めています。コンピテンシー評価は、従業員一人ひとりの行動特性から精察して評価する手法です。これまでの評価制度に比べ、より客観的で公正な判断ができるとして注目を集めています。社員は評価への納得感を得やすく、企業側は人材の育成イメージがより具体的になるなど、コンピテンシー評価を導入する利点は多いです。ただ、行動特性のモデル化や評価項目の設定などは自社独自の構築が必要になため、導入までにはさまざまなハードルを越えなければなりません。

本記事では、コンピテンシー評価項目の設定方法、評価例文、設計時の注意点などを具体的に解説しますので、お困りの担当者の方、評価者の方はぜひ参考にしてください!

コンピテンシー評価とは?

コンピテンシーとは「企業内で高い成果を上げる人材の行動特性」のことをいいます。既存社員の中で優れた成果を上げる人材をモデル化したり、企業の理念や事業戦略などから作り出したモデルを元に評価基準を細かく定めていくのが特徴です。

それを踏まえ、コンピテンシー評価とは、社員のスキルや知識ではなく「行動特性」を評価するものです。「どのような行動が成果に結びついているか」「なぜその行動をとったのか」などの行動や思考を評価するため、評価のしやすさや評価への納得感も向上、効率的かつ戦略的な人材マネジメントができるようになります。事業の成果を短期間でアップさせる効果も期待できる手法です。

混同されやすい評価手法として、職能資格制度(能力評価)があります。職能資格制度は、人材の能力・スキル・知識などを評価するものです。人材を長期的な視点で育成していく場合はメリットがありますが、「能力」という曖昧な基準であるため、年功序列に陥りやすく、加えて協調性・積極性・責任感などの抽象的な観点で評価されるため、必ずしも公正な評価ができるとは言い切れない側面があります。それに対してコンピテンシー評価は社員の「行動特性」を評価するものなので、「どの行動が評価されたのか」、「どの行動が足りていなかったのか」が明確になるため、納得感が向上するだけでなく、今後の成長も促しやすくなります。

コンピテンシー評価を入れるメリット

この項目では、コンピテンシー評価によるメリットやポイントについて解説します!

社員の評価への納得感が高まる

コンピテンシー評価を入れるメリットの1つ目は、人事評価への納得感が向上することです。

先述した職能資格制度の場合、ジェネラリストとして総合的な能力はどの程度なのか、という観点から最終的な評価がなされるため、「積極性」、「協調性」といったように、恐らくそういった能力があるだろう、といった曖昧な評価基準になりがちです。

そのため、評価が上司の主観で決まりやすかったり、年功序列になりやすいといったデメリットがあります。

対してコンピテンシー評価の場合、具体的に取った行動が評価項目となるため、どのような行動が足りなかったのか、どのような行動が評価されたのかという点について、自分の中でも一定の自覚があるため、納得感を持って評価を受けることができます。

評価業務の負担が軽減される

2つ目は、評価者の負担が軽減されることです。

これまでの職能資格制度の場合、そもそもの評価基準が曖昧であったため、評価する人事担当者や上司の主観や、対象者との関係性によって評価が左右されてしまうことがありました。

また、曖昧であることにより、評価者が評価に悩んでしまうことも少なくありません。コンピテンシー評価の場合、評価基準が「していたか」「していなかったか」に明確化されるため、社員からの納得も得やすいことに加え、評価者としても評価がつけやすくなります。

社員が目指すべき目標が明確化する

3つ目は、社員が目指すべき方向が明確になることです。

コンピテンシー評価は、目指すべきロールモデルを参考にして評価基準を作成します。そのため、社員も目標に向かって明確に行動しやすくなります。

例えば、ハイプレイヤーには「他者と協力しながら仕事を進める」、「指示される前に行動ができている」などの行動特性があります。コンピテンシー評価の場合、このような行動特性が明確かつ具体的に定まっているため、社員も目指すべき目標が明確になり、自分で取るべき行動を決定できるようになります。

「積極的に業務に臨む」といった目標の場合、何を以て積極性と見なすのかが不明確であるため、従業員もどのように行動していいか迷ってしまいますが、コンピテンシー評価の場合この点が明確になっているため、従業員のモチベーション向上にも寄与します。

優秀な人材を育成しやすくなる

4つ目は、企業にとって優秀な人材を育成しやすくなる点です。

コンピテンシー評価は、実際の業務に即したロールモデルの行動特性や思考特性を分析し作成されています。そのため、企業にとって優秀な人材とはどのような人物なのか、ということが評価基準にによって明確化されているため、「優秀である」という基準が従業員にとって分かりやすくなります。

基準が分かると自ずとやるべきことが見えてくるため、自発的な成長を促して即戦力のある人材が育成しやすくなります。また、課題点も可視化されるので、自分では気付きにくい欠点にも気付くことができ、改善・成長してさらに企業へ貢献してくれるはずです。

評価モデル3選

コンピテンシーには、目標とするモデル作成が必要です。その際、参考になるのが以下3つの型です。

1.理想型モデル

「理想形モデル」は、自社が理想とする人物像を策定し、その人物像の行動特性を抽出してコンピテンシーを定める手法です。企業理念や事業戦略などから、どのような思考をもって行動できる人物を求めるのか策定します。

メリットとしては、実在する社員の行動の洗い出しやヒアリングが必要無い点、明確なロールモデルが不在な場合でも作成できる点です。モデル作成の手間となる部分が少ないことに加え、企業間も無くで明確なモデルが作成できない場合にも有効な手法となります。

注意すべき点としては、現実から乖離しすぎた実現可能性の低いモデルとしないことです。現実から導き出す手法と異なり、あくまで理想像から作成するモデルのため、その点を意識して作成しないと現実に即したモデルが作成されかねません。あまりにもハードルが高すぎる場合、社員のモチベーションを低下させる可能性もあるので、理想と現実のバランスを取ったモデルとなるように意識することが重要です。

2.実在型モデル

「実在型モデル」は、社内で実際に成果を上げている従業員にヒアリングを行った上でモデルを作成する方法であり、最も主流の方法です。実在する人物を対象とすることで、現実に合わせた形でモデルの設計となるため、比較的実用性のある型であると言えるでしょう。

また、成果を上げるために必要な行動特性をイメージしやすく、他の従業員の納得感を得やすいのもポイントです。

一方で、モデルとなる従業員と他の従業員を比較し、達成可能なモデルであるかどうかという点には注意する必要があります。あまりにも難易度が高い場合、理想型の場合と同様他社員のモチベーションの低下に繋がってしまう可能性もあるため、ハイパフォーマーの行動特性について、他社員でも再現性があるかどうかを検討し、さまざまな社員にあてはめて策定していくことが重要です。

3.ハイブリッド型モデル

「ハイブリッド型モデル」は、実在型と理想形のメリットを組み合わせた手法です。まずは実在型のモデルを作成し、そこに理想型モデルの要素を組み込んで完成させます。

2つのモデルのよい部分をうまく取り入れられるため、他の従業員だけでなく、ハイパフォーマーにとっても役立つものです。どのようなレベルの従業員にも適用できるという点において、ハイブリッド型のモデルは優れています。

評価項目例

ここでは、どのような評価項目を作成するのか、具体例を基に説明します。

目標達成率

目標達成率は、設定された目標に対してどの程度達成したかを示す指標であり、成果評価の中核を担う重要な項目です。ただし、単に結果だけを評価するのではなく、達成に向けた行動やプロセスを重視することが必要です。

例えば、「どのように計画を立てたか」「課題に直面した際にどのような対策を講じたか」など、目標達成に至るまでの努力や工夫を評価の要素に含めることで、成果だけでない社員の行動や成長ををより公平に評価することができます。

また、目標未達成の場合でも、その原因をどのように分析し、次回の改善に繋げたかを評価することで、社員のモチベーションを低下させず、継続的に社員が自ら改善のプロセスを踏むようになります。数値目標の達成率は非常に重要ですが、それだけを評価してしまうと、短期的な成果だけに注力し、「結果だけ出していれば良い」という思考にもなりかねないため、注意が必要です。

マネジメントやサポート

マネジメントやサポートを評価する際には、リーダーやメンバーとしての役割に応じて、チーム全体を支える行動や環境づくりが重要な指標となります。

例えば、「目標達成のために適切な指示やアドバイスを提供したか」「メンバーそれぞれの課題や成長ニーズを理解し、それに応じた支援を行えたか」などが評価の中心となります。特に、問題が発生した際にそれをどのように解決に導いたかや、メンバーの成長を支える行動があったかは重要なポイントです。

ただし、マネジメントやサポートの評価項目は、企業や組織が重視するマネジメント像やサポートの考え方によって異なる場合があるので、具体的な評価基準は組織の目指す文化やビジョンと整合性を持たせることが求められます。

認知領域(考え方)

認知領域は、課題や状況をどのように理解し、分析し、適切な行動に結びつけているかを評価する指標です。具体的には、分析的思考や論理的思考、専門知識の活用力などが評価対象となります。

例えば、「データや事実に基づいて意思決定を行っているか」「複雑な問題を分解して本質的な課題を見出せているか」といった点が重視されます。特に、エンジニアや研究者、ものづくりに関わる人々にとっては、客観的かつ論理的に物事を捉える力が求められます。

このため、認知領域を評価する際には、単なる結果だけでなく、課題をどう理解し、どのようなプロセスで解決に導いたかといった過程も含めて評価することが重要となります。そのため、企業や職種の特性に応じて、評価基準を柔軟に設けることが望ましいでしょう。

個人の効果性(性格)

個人の効果性(性格)は、その人が業務やチームに与える影響や、状況に対する適応力、自己管理能力を評価する指標です。性格は抽象的な要素ですが、会社としてどのような人物像を求めているのかを明確に示すメッセージを打ち出すことができます。

例えば、「困難な状況に直面した際でも冷静さを保ち、行動を継続できるか」「業務のスケジュールを自分で管理し、他者に頼らずとも目標を進められるか」「想定外のトラブルが発生しても柔軟に対応し、周囲と協力して解決に向けた行動を取れるか」といった点が評価対象となります。

会社ごとに求める性格像は異なりますが、個人の効果性を適切に評価することで、組織全体の目標達成やミッション・ビジョン・バリューや企業理念のような価値観の浸透にも役立ちます。

コンピテンシー評価の例

コンピテンシー評価を人事評価に落とし込む際には、以下3つの要素から考えることが大切です。

  • 評価項目
  • 評価軸
  • 評価基準

ここでは、どのような評価項目を作成するのか、具体的に1つ例を挙げて説明します。

評価項目

評価項目は、上記で紹介したような項目から求める要素を抽出します。上記で紹介したような評価項目を設定し、それぞれに評価軸と評価基準と決めていきましょう。ここでは一例として、認知領域(考え方)の項目について考えて行きます。

評価軸

認知領域(考え方)における評価軸は、社員がどのように状況を分析し、適切な判断を下すか、またその思考がどのように行動に反映されるかを評価するために設定されます。具体例は以下のようになります。

課題解決力:課題に直面した際、その原因を的確に分析し、解決に必要なプロセスを論理的に組み立てているか。単なる表面的な解決策ではなく、根本的な問題を見極めた対応ができているか。

柔軟な思考:既存のルールや慣例に縛られることなく、新しい方法やアプローチを模索できているか。特に、変化する状況に迅速に適応し、適切な判断を下せているか。

データ活用力:意思決定や提案において、客観的なデータを根拠として利用しているか。感覚や経験だけでなく、事実に基づいた判断が行われているか。

先見性:短期的な成果にとらわれず、長期的な視点でリスクとチャンスを見極め、計画を立てられているか。特に、新たな市場や業務上のニーズを予測して行動できているか。

批判的思考:与えられた情報や状況を鵜呑みにするのではなく、自分の視点で検証し、改善の余地を見つけられているか。また、他者の意見に対しても建設的に議論を行い、より良い結論に導けているか。

評価軸においては、このような点を大まかに決めていきます。

評価基準

評価基準は、上記で決めた評価項目や軸に対して、どの程度できているのかを決めるものです。大まかには共有基準と個別基準に分けられます。共有基準と個別基準に関し、先述した例を基に具体例を作成すると、以下のように考えられます。

共通基準

1.課題解決力

  • 問題発生時、迅速に原因を特定し、2つ以上の解決策を提示できるか。
  • 解決策を実行した際に、その結果を分析し、再発防止策を提案できているか。

2.柔軟な思考

  • 環境の変化や想定外の事態に対し、1日以内に具体的な対応策を提示できるか。
  • 新たなアイデアや改善提案を、月に1回以上上司やチームに共有しているか。

3.データ活用力

  • 提案や意思決定の際、データを用いた根拠を示しているか(例:提案書やプレゼンでデータ活用の有無をチェック)。
  • 定量データと定性データをバランスよく活用し、結論の裏付けを取れているか。

4.先見性

  • 部署またはプロジェクトの長期的なリスクやチャンスを3つ以上挙げ、それに基づく行動計画を半年に1度作成しているか。
  • 現在の業務や市場環境の変化を予測し、関連する情報を週に1回以上収集しているか。

5.批判的思考

  • 他者の提案や意思決定に対して、少なくとも1つの改善案を建設的に提示できるか。
  • チームや会議での発言内容が、感情や直感ではなく、客観的な事実に基づいているか。

個別基準

1.エンジニア職の場合(柔軟な思考)

  • 新しい技術トレンドについて月1回以上リサーチを行い、それを業務に取り入れる提案をしているか。
  • トラブルシューティング時に複数のアプローチを提示し、その効果を比較して判断できているか。

2.営業職の場合(データ活用力)

  • 顧客データを基にしたアプローチを月3件以上実施し、成果を分析しているか。
  • 成約率や顧客満足度に関するデータを毎月確認し、改善策をチームで共有できているか。

3.バックオフィス業務の場合(課題解決力)

  • 業務フローの課題を特定し、改善提案を年2回以上提出しているか。
  • 他部署からの問い合わせに対して、1営業日以内に対応し、必要な解決策を提示できているか。

このように、2つの基準を組み合わせることで、網羅した評価基準を作成することができます。

コンピテンシー評価と1on1は相性が良い

コンピテンシー評価は、社員のスキルや行動特性を基準に個々の能力を評価し、強みや改善点を明確にする方法です。一方、1on1は社員と上司が定期的に対話を行い、業務課題やキャリアについて話し合う場として活用されています。

この2つを組み合わせ、評価基準に基づいた具体的なフィードバックを定期的な1on1で行うことにより、上司の認識と部下の認識の目線合わせを行うことが可能になり、成長の方向性を見つけやすくなります。

また、1on1を通じて評価項目の進捗を確認し、必要に応じて目標や行動計画を調整することも可能です。この項目では相性が良い理由について具体的に解説していきます!

1on1と人事評価に関しては下記の記事で解説しておりますので、以下のページを参照してください!

高頻度でコンピテンシー評価に添いながら話す事で、人材育成がしやすい

1on1は、社員と上司が定期的にコミュニケーションを取り、業務の課題や目標について話し合う場です。1on1をコンピテンシー評価と結びつけることで、評価が単なる結果の確認に留まらず、人材育成を効率的に行うために有効なツールとしても利用することができます。

1on1は人事評価面談と混同されてしまうことも少なく無いですが、人事評価は上司が主体となり、上司が適正な評価をするために部下に質問を行う場合、1on1は部下の成長をサポートすることを目的とした部下が主体となる場です。

また、頻度の面でも大きな違いがあり、評価面談は通常、四半期や半期に1回行うケースが多いです。一方、1on1は週1または、月に1回は実施します。このような1on1の特徴を活かすことで、コンピテンシー評価に基づいたフィードバックをタイムリーに行うことができます。

例えば週次で行っていた場合、現状の進捗や課題感を毎週認識できるため、現状がこうだから次はこうするといったプランや取り組みを立てやすくなり、部下の成長を効率化することができます。ただ、高頻度で行いすぎると現場の負担が高まってしまったり、取り組みに対するPDCAを回しにくくなってしまうこともあるため、現場の状況に合わせた運用にするよう日々見直しを行うことも重要です。

1on1で細かく評価をする事で評価に納得してもらえやすい

従業員が人事評価へ不満を持つ原因として、「評価の根拠が明確でない」という点が非常に多いです。従業員が評価の根拠が明確ではないと感じる理由としては、①評価基準が見えない②改善点が分からない③評価が恣意的にで公平性がないように感じられるの3点が多く、上司と部下の間でのコミュニケーションの齟齬があることで起きてしまっている問題でもあります。

1on1において細かく評価をすることで、それぞれの点を解消することが可能です。
例えば①評価基準が見えないに関して考えてみると、上司が明確に評価基準を持っている場合、部下に対してそれを伝えられていないことが原因です。1on1を一定の頻度で行うことができれば、目標に対する振り返りや悩みを聞く中で、評価基準を1on1の度に伝えることができるため、上司と部下の間で双方一定納得した状態を作ることが可能になります。

②と③に関しても同様に、1on1内で都度目標と現状を擦り合わせて改善案を作る、評価基準を明確に伝えることで恣意的ではなく明確な基準で作っていることを伝えるのような形で解消することができます。いずれにしろ、部下の現状をしっかり上司が把握し、段階に応じてコミュニケーションを頻度高く取ることが重要なアクションとなります。


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コンピテンシー評価を作成する時の注意点

ここまで、コンピテンシー評価の仕組みや作り方、有効な運用方法について解説してきました。この章では、コンピテンシー評価を作成する時の注意点について解説していきます。

具体性を持たせる

コンピテンシー評価を行う際には、評価基準を具体的に設定するが重要です。具体性を欠いてしまうと社員にとって分かりにくく、組織にとって逆に悪影響を及ぼしてしまう場合も少なくありません。具体性がないことによるデメリットとして、下記3点があります。

①評価の納得感と公平性の低下
そもそもの評価基準が曖昧な場合、社員が評価の理由に対して納得できず、不公平感を感じやすくなります。また、上司としてもどう評価していいのか分からず、職能資格制度の時と同様、上司の主観が強く影響してしまうため、社員間の評価における一貫性を損ねてしまう場合があります。

②行動指針や目標が不明確になる
具体性がない抽象的な評価基準の場合、社員が「何を求められているのか」「どのように改善すれば良いのか」を明確に把握することができなくなります。評価者である上司に関しても同様で、共通の基準がないため、何を指導して良いのか分からない、正確に部下の状況を把握できないといった事態が生じてしまいます。

このような状態では例え定期的な1on1を行ったとしても上司と部下の目線が揃わないため、コンピテンシー評価における重要な姿勢が伝わりにくくなり、適切なスキル向上や行動の徹底が難しくなってしまいます。

③組織全体の信頼関係が損なわれる
明確な評価基準が存在しないことにより、上司への信頼の低下、社員同士や組織全体の連携にも悪影響を与え、結果として全体のモチベーションや生産性・パフォーマンスが低下してしまうリスクがあります。具体性がなく、上司の主観による部分が増えれば増えるほど、部下は「上司が自分の仕事を正当に理解していない」と感じ、不信感を抱いてしまいます。

このような状況がエスカレートすると、部下が上司に積極的に相談することをやめてしまうだけでなく、優遇されている社員が存在しているように感じてしまい、社員間での連携や信頼も揺らいでしまいます。社員間で適切な連携ができなくなってしまうと、通常業務の遂行に支障が起こり、最悪の場合組織運営が乱れ、業績が悪化してしまうような事態にもなりかねません。

上記のような理由から、コンピテンシー評価に具体性を持たせることは重要な要素です。具体的な目標設定に関してより詳しく知りたい方は、ガイドとして下記記事もおすすめですので、ぜひご覧ください。

長期運用を前提にする

コンピテンシー評価を作成する際にが、すぐ結果には結びつくことを期待するのではなく、長期的な運用を前提にすることが重要です。理由としては下記3点があります。

①社員の成長には時間がかかる
コンピテンシー評価は、社員の行動特性や思考特性の変容を促す評価方法であるため、社員自身がその基準を理解し、行動を変え、スキルを向上させるまでには一定の時間を要します。評価基準に従った行動を継続的に行うことにより、初めてそれが習慣化され、評価としてもワークするようになっていきます。習慣化は一朝一夕でできるものではなく、時間をかけて積み重なっていくものであるため、経営層や管理職の方々も含め長期的な視点を持つことが基本です。

② 評価基準の浸透と定着が必要
コンピテンシー評価は、概念として比較的新しいものでもあるため、基準を全体に浸透させ、自然に業務の中に組み込まれるようになるためにはやはり一定の時間が必要になります。また、被評価者だけでなく評価者にとっても新しい基準であるため、前提としてどの組織でも慣れるまでに期間を要します

また、仮に頻繁に評価基準を変更してしまうと、社員が「次はどの基準に合わせるべきか」と迷い、行動がブレやすくなります。結果として、評価制度そのものに対する信頼が失われ、「評価は信用できない」「公平ではない」という不満が生じる可能性があります。一貫した基準を長期的に運用することで、社員は「この基準に従って行動すれば、正しく評価される」という安心感を持てるようになり、制度そのものが組織文化として根付きます。

③変化への対応と柔軟性の確保
現代はVUCA時代と言われるように、市場や組織を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。評価制度自体が短期的なものだと、変化に対応する時間や柔軟性を保つことができず、結果として精度が陳腐化してしまう可能性があります。しかしながら長期的な運用を前提と知ることで、現状の現場ニーズや外部環境の変化を適切に取り入れつつ、評価基準や手順を効果的に更新していくことができます。

例えば、ベンチャー企業の場合、導入当初は社員数も少ないため多様な業務に対応していくことができるスキルが必要になりますが、社員数が増えれば部門ごとに業務分掌も狭まってくるため、より各業務に対しての専門性が重要になってきます。このように、会社の状況や他の外部環境等を踏まえ、改善のプロセスを長期的に繰り返すことで、社員や組織の成長に即した評価制度の運用が可能になります。

以上のような理由から、コンピテンシー評価を作成する際には短期的な成功だけを求めず、長期的な方針を持つことが重要です。

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まとめ

以上が、コンピテンシー評価の基本や特徴、導入手順など一連のまとめです。導入の難易度は高めですが、うまく機能させることができればさまざまなメリットをもたらし、企業全体の成長につながります。企業の発展に欠かせない「人材の定着化」や「業績の安定化」にも一役買うはずです。

今回紹介した流れの中でも、コンピテンシーの評価項目を設計するステップが最も難易度の高い作業になります。決して導入を急がず、さまざまな事例を参考にしながらハイパフォーマーの選定、ヒアリングなどから始めてみてください。一歩ずつ着実に進めることが、コンピテンシー評価制度確立成功のカギと言えるでしょう。

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