人事評価におけるマイナス査定の影響とは?マイナス査定をする注意点も解説!

人事評価にあたって社員のやる気を引き出すには、成果を給与に反映させる適切な評価を行うことが重要です。特に近年では、働き方改革が進み、年功序列から成果主義に移行する企業も増え、従業員の能力やスキルに対する適切な評価が求められています。

しかし、高いパフォーマンスに対して高い給与を還元する仕組みは確立できていても、低いパフォーマンスに対して給与を減らす仕組みである「マイナス査定」は、なかなか取り入れるのが難しいと感じている人事担当の方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、マイナス査定を取り入れることによって、どのような影響があるのか、注意点を踏まえてご説明します。ぜひ、今後の評価制度見直しの参考にしてみてください。

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人事評価のマイナス査定で基本給を下げて良いのか?

そもそも、人事評価のマイナス査定によって基本給を下げて良いのでしょうか。

結論としては、問題ありません。評価制度に基づく減給は可能となっており、一般的には、人事評価や給与制度での等級が下がることで減給となるケースがあります。

評価による減給を行うことで、社内の雰囲気の悪化や上司と部下間の関係性の悪化など、不安に思うことも多いでしょう。しかし、労働人口の減少や転職が当たり前となりつつある現在の社会では、「優秀な社員の定着率」が求められており、むしろマイナス査定を取り入れることは必要不可欠と言っても過言ではありません。

限られた昇給原資の中で、仕事に対して成果の低い社員の給与を維持すると、成果を上げている社員の昇給額を抑制せざるを得なくなります。

これは、成果を上げていない社員が利益を得るのに対し、成果を上げている社員が不利益を被るという構造を生み出すことになり、従業員のモチベーションの低下、それに伴う企業の生産性低下につながる恐れがあります。

マイナス査定の導入メリット

では、人事評価にマイナス査定を導入することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下に、マイナス査定を取り入れることによるメリットを3点挙げます。

優秀な社員に昇給を実施することが出来る

マイナス査定の導入による1つ目のメリットは、「優秀な社員に昇給を実施することが出来る」ことです。

先ほどご説明した通り、限られた給与原資の中で、優秀な社員に対して成果に見合った報酬を支払うためには、成果が出なかった社員の給与を下げざるを得ないでしょう。そうしなければ、成果を出している社員ほど離職し、成果を出していない社員ほど定着するという、マネジメントの失敗に陥る恐れがあります。

こういった事例を防ぐためにも、マイナス査定を導入することで、減給により浮いた給与原資を、業務に対する成果が高い従業員に回し、成果に対する給与増減の不公平感を緩和させることが重要です。
ただし、マイナス査定を導入する際には、「給与を下げることが目的ではなく、成果を上げた社員が報われる仕組みにするために必要な措置である。その代わりに大幅昇給の仕組みもある。」という意図を、従業員に明確に示すべきでしょう。

人件費のバランスが取りやすくなる

マイナス査定の導入による2つ目のメリットは、「人件費のバランスが取りやすくなる」ことです。

人事評価における人件費の課題としては、「高い給与で雇用したものの、期待したほどのパフォーマンスが得られていない」や「最近入社した社員の給与が勤続年数の長い社員と比べて高く、パフォーマンスが逆転してしまっている」といった人件費のバランスが保てていない状況が考えられます。

このような課題に対して、マイナス査定を導入することで、従業員それぞれのパフォーマンスに対して適切な評価を実施することができ、人件費と業績のバランスを保ちやすくなります。これにより、従業員それぞれの給与とパフォーマンスのギャップを解消することができます。

評価制度が形骸化しにくくなる

マイナス査定の導入による3つ目のメリットは、「評価制度が形骸化しにくくなる」ことです。

マイナス査定を導入することにより、目標管理に対して一定の緊張感が生まれます。「目標に全く取り組まなくても給与は下がらない」という状況と、「目標に取り組まなければ給与が下がる可能性がある」という状況では、社員の目標に対する意識や成果が異なってくるでしょう。

多くの企業は給与を下げることを目的としていないかと思いますが、マイナス査定を仕組みとして取り入れることで、社員や会社の成長スピードを高めることができるでしょう。


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マイナス評価を実施する際の注意点

このように人事評価を導入することには様々な利点があります。とはいえ、なんとなくでマイナス評価を取り入れてしまうと、社員からの不満が発生したり、成果を出している従業員が離職してしまう危険性があるでしょう。

こういった問題を防ぐための、マイナス査定を導入するうえでの注意点は下記の通りです。

事前に評価説明会を実施し、従業員に周知する

マイナス評価を実施する際の1つめの注意点は「事前に評価説明会を実施し、従業員に周知する」ことです。

従業員が評価制度に対する理解と納得を得られなければ、不満や誤解が生じ、モチベーションの低下を招く恐れがあります。そのため、マイナス評価を導入する際には、従業員にその理由や目的、評価基準を説明する説明会を開催することがおすすめです。

特に、先ほどご説明した通り従業員に周知する際には、「給与を下げることが目的ではなく、成果を上げた社員が報われる仕組みにするために必要な措置である。その代わりに大幅昇給の仕組みもある。」という意図を、明確に示すことが大切です。

評価基準を明確にしておく

マイナス評価を実施する際の2つめの注意点は「評価基準を明確にしておく」ことです。

評価基準が曖昧であると、評価者の主観が強く反映されやすくなります。これにより、評価者の無意識のバイアス・先入観などが影響して誤った評価が生じる「評価エラー」につながる恐れがあります。

例えば、営業成績の評価を行うとき、その基準が曖昧であれば、営業担当者AとBが同じ成績をあげても、評価者の主観で評価が異なることになります。この場合、マイナス査定を実施する際にも減給の幅が異なることになり、評価の公平性が失われ、社員の信頼を損なうことになります。

こういった問題を防ぐために、具体的な評価項目や基準を明確に定義し、それを評価者に徹底して周知することで、基準に基づいた客観的な評価が可能になります。具体的で明確な評価基準を設定し、それを従業員全員に明示することで、エラーの発生を抑制し、公正で納得感のある評価を行うことができます。

大幅な減給はしない(減額幅が基本給の10%を超えない)

マイナス評価を実施する際の3つめの注意点は「大幅な減給はしない(減額幅が基本給の10%を超えない)」ことです。

大幅な減給は社員の生活に大きな影響を与え、モチベーションや会社への信頼感を著しく低下させる可能性があります。また、減給する場合は、その減額幅も法令に準拠する必要があります。実際に、労働基準法91条では、懲戒処分としての減給の上限が以下のように定められています。

『就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない』

例えば、問題を起こした従業員の月給が30万円だった場合には、賃金総額の10分の1である3万円が罰則の限度ということになります。ただし減給の限度額は、平均賃金の1日分の半額以下と決められていることから、実際に減給額が賃金総額の10分の1を超えることはほとんどありません。

このように、大幅な減給はしない(減額幅が基本給の10%を超えない)ことで、法令に準拠するとともに評価制度の目的を達成することができます。

ただし、人事評価制度としてマイナス査定の基準が定められていなかったり、明らかに客観的とはいえない評価基準といえなかったりすると、人事権の乱用と見なされる可能性もあります。違法と認定され、不当な減給に該当する可能性があるため注意しましょう。

絶対評価で評価する

マイナス評価を実施する際の4つめの注意点は「絶対評価で評価する」ことです。

相対評価ではなく絶対評価を用いることで、個々の社員の努力や成果に対する公正な評価が可能となります。例えば、相対評価の場合、ある程度の成果を収めていても周囲がそれ以上の成果を上げていれば、減給になってしまいます。しかし、絶対評価の場合は、しっかりと組織に貢献すれば、減給されることなく評価してもらえるため、公平性や安心感があります。

このように、絶対評価で評価することにより、公正な評価を実現でき、従業員個人の成長を促進し、公平性を保つことが可能になります。

最低賃金を下回らないこと

マイナス評価を実施する際の5つめの注意点は「最低賃金を下回らないこと」ことです。

どんなに評価が低くても、法定の最低賃金を下回ることは許されません。最低賃金を下回る給与設定は法令違反となり、企業の信頼性を損なうだけでなく、法的な問題も引き起こします。

マイナス評価の場合であっても、最低賃金を遵守しつつ、適正な評価と報酬を提供することが重要です。

マイナス査定を運用するための工夫

ここまで、マイナス査定を導入するにあたってのポイントや注意点についてご説明してきました。

従業員にとって公正で納得感のある評価を実施するには、評価する立場の人にフェアであることを徹底させ、適切に運用していくことが条件になります。社員から反感を買わずにマイナス査定を推進していくためには、工夫を凝らすことも求められるでしょう。

では、マイナス査定を運用するうえで、どのような点を意識すればよいのでしょうか。以下に、マイナス査定を運用するための工夫について、4点ご解説します。

昇給の基準も明確にする

マイナス査定を運用するための1つめの工夫は「昇給の基準も明確にする」ことです。

これまでご説明した通り、マイナス査定においては、減給の基準を明確化することは重要です。しかし、それだけだと評価される側にとっては減給ばかりに目が向いてしまうため、ストレスがかかることにつながります。

そのため、昇給の基準も明確にすることが求められます。昇給の基準も明確化することで、従業員にとって目標が明確になり、やる気が醸成され、結果として生産性の向上につながります。それによって会社の業績が向上し、評価結果と整合性のある賃上げで社員に還元するという好循環が生まれるでしょう。

評価者教育を実施する

マイナス査定を運用するための2つめの工夫は「評価者教育を実施する」ことです。

「評価基準を明確にしておく」でもお話ししましたが、評価エラーは誰にでも起こりうるものです。評価者の中には、不確かな方法で評価している評価者がいる場合があり、その影響で評価の公平性が保たれなくなる恐れがあります。そのため、適切に評価を実施するうえでは、説明会や評価者研修を導入することが効果的です。

評価者の教育を通して、評価基準や評価方法などの情報を評価者が正確に理解し、共通認識を持てている状態を目指しましょう。マイナス査定においても、その目的や注意すべき点、正しい考え方について学ぶことで、より公正な評価の運営が可能になります。

評価調整を実施する

マイナス査定を運用するための3つめの工夫は「評価調整を実施する」ことです。

評価調整とは、「厳しすぎる評価」や「甘すぎる評価」など評価の偏りを事後的に調整することを指します。評価者同士で基準のすり合わせを行なったとしても、人が評価している以上、どうしてもバラツキが生じてしまうものです。

そのため、第3者から見て客観的に同じ基準で評価できているかを、経営層や人事部で最終チェックを行い、バラツキを調整することが必要です。評価者による評価基準の違いを防止して、評価の偏りを修正することで、マイナス査定を運用する場合でも、より公平で納得度の高い評価が実現できます。

減給に猶予を持たせる基準を作る

マイナス査定を運用するための4つめの工夫は「減給に猶予を持たせる基準を作る」ことです。

一度の評価で減給を実施してしまうと、評価に不満が溜まりやすいのはもちろんのこと、外部環境の影響が否定できない場合もあるでしょう。そのため、マイナス評価を運用するにあたっては、減給に猶予を持たせる基準を作ることが効果的です。

例えば、人事評価において、「マイナス査定が二回連続した場合に減給する」などの基準が考えられます。こうすることで、従業員にとって減給までの猶予が生まれるとともに、改善を促すことにもつながります。これにより、評価の運用に対する納得感が高まり、より公正な評価を実施できるでしょう。

まとめ

この記事では、人事評価におけるマイナス査定の影響と、その注意点を解説してきました。

マイナス査定を適切に運用することで、優秀な人材の定着率やモチベーションの上昇、従業員エンゲージメントの向上につながります。

「マイナス査定は、なかなか取り入れるのが難しい」と感じていた人事担当の方も、本記事を参考に、注意点や工夫できる点を把握したうえで、適切な評価の運用に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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