上司と部下の理想の関係とは?コミュニケーション法・育て方・信頼関係・注意点

部下との関係を悪化させるコミュニケーションとは

上司と部下の関係性に軋轢が生まれるとするならば、そこには必ず原因があるはずです。

しかも、その大半は上司側が気づくことで劇的に関係性が変わる原因です。

  • 感情的に叱責する
  • コミュニケーションスタイルが合っていない
  • 部下に無関心である
  • 部下と適切なコミュニケーションが取れていない
  • 世代間に価値観のギャップがある

本パートでは上司と部下の関係が悪くなってしまう原因を上司視点で5つ解説していきます

感情的に叱責する

部下との関係を悪化させるコミュニケーションの1つ目は、感情的に叱責することです。

部下を叱責する場面で「感情的」になってはいませんか。

感情的に怒鳴られたり、過度に否定されると、

  • 委縮して意見が出しづらくなり、認識がずれていきさらにミスが増える
  • 仕事に対する自信を失い最悪離職につながる
  • 論理的に話さないことにより指示の意図が伝わらずさらにミスをする

以上3点の損失が見込まれます。

このような状態は「心理的安全性が低い」状態と呼ばれ、離職率の上昇、新入社員が定着率低下の原因になります。

特に離職率の上昇については、人材不足の現代において非常に重要視されており、上司と部下の関係に限らず離職防止の取り組みは知っておくべきといえます。

退職者1人あたりの損失は1,000万円以上?離職要因と離職防止のためのチェックリスト22

それどころか、人格否定をしてしまった場合はパワーハラスメントとして法律的に訴えられてしまう場合があります。

コミュニケーションスタイルが合っていない

部下との関係を悪化させるコミュニケーションの2つ目は、コミュニケーションスタイルが合っていないことです。

人はそれぞれ性格が違います。

激しく叱責することで闘志に火が付く部下もいれば、そのまま落ち込んでしまう社員もいます。

このように、マネジメントを一辺倒に「自分のやり方」で押し通してしまうと、人によって効果が変わってきてしまうでしょう。

この場合、部下のタイプを見極め、それに応じたコミュニケーションをとることが重要です。

部下に無関心である

部下との関係を悪化させるコミュニケーションの3つ目は、部下に無関心であることです。

指示さえ出していればそれでいいと考え、部下がどう思っているかをあまり考えないようにするのは合理的でしょうか?

長期的に見たとき、部下は意見が出せなかったり、悩み、関心を解決しにくくなるため、

  • 部下のエンゲージメントが下がっていき離職率が上がる
  • 部下の育成が進まずチームとしての成果が落ち込む

以上の損失が見込まれ、とても合理的とは言えないでしょう。

コミュニケーションの絶対量が不足している

部下との関係を悪化させるコミュニケーションの4つ目は、部下と適切なコミュニケーションが取れていないことです。

管理職の方が部下に無関心でなくとも、コミュニケーション不足は起こりえます。

現在日本の部長職の95%以上がプレイングマネージャーと言われており、マネジメントに時間をかけていられないというのが現状となっています。

しかし、適度に業務の悩みや業務外の話を聞かないと、部下と価値観や認識のズレが生まれ、チーム運営にひびが入ってしまうでしょう。

世代間に価値観のギャップがある

部下との関係を悪化させるコミュニケーションの5つ目は、上司と部下で世代間に価値観のギャップがあることです。

「ゆとり世代」や「団塊世代」はよく聞くような言葉になってきました。

なぜなら、生きてきた年代によって仕事に対して価値観が変わってきているからです。

定時で帰る若い社員、厳しく叱咤をしたらハラスメントになっていた管理職の方など、仕事に対する価値観のズレは多くの場面で上司と部下の関係を悪化させます。

違う価値観を持っていることは悪いことでしょうか?

一番大切なことは価値観がずれていることを理解し、押し付けず、相互にコミュニケーションをとることでズレた価値観をすり合わせていくことです。

つまり、総じて世代間のギャップで組織の関係性が悪い企業は、すり合わせる機会が少ないといえるでしょう。


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部下と理想の信頼関係を築けている事例3選

実際に部下と良好な関係が気づけている企業はどんな施策をしているのでしょうか?

  1. 株式会社サイバーエージェント
  2. 株式会社カルビー
  3. 株式会社ぐるなび

従業員のエンゲージメントが高い3社の事例を紹介します。

1. 株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは、人事評価制度の改善を施すために上司と部下で定期的に月イチ面談を行っています。

具体的には、人事評価の納得度に部署ごとで差があり調査をしたところ、納得度が高い部署は他の部署よりも上司と部下が頻繁に話していることがわかりました。

そこで、サイバーエージェントでは月イチ面談の施策をとりました。

月イチ面談の特徴は、3つのポイントを部下と話すことにあります。

  • 先月の成果に対する振り返り
  • 今月どうするのかという議論
  • 中長期のキャリアの話

以上の話をすることで部下のコンディションを定期的に把握し、突然退職するなどのリスクを減らしました。

結果的にサイバーエージェントでは、月イチ面談を取り入れてから離職率が大幅に下がったそうです。

2. 株式会社カルビー

株式会社カルビーでは、出社時にダーツシステムで席を決めるという「オフィスダーツ」を導入しています。役職に限らず実施しているので、一般社員の隣に幹部が座るということも起こりえるそうです。

導入した目的は、様々な部署、役職の社員が日常的にコミュニケーションをとりながら仕事ができる環境を作ることで、新しい発見やアイディアの創出を促進することです。

こうして、株式会社カルビーの職場は、施策の効果としてコミュニケーションの取りやすさが劇的に上がりました。

3. 株式会社ぐるなび

株式会社ぐるなびでは、歩くことで頭が冴え、アイディアを思いつきやすくなるだけでなく、会議室よりものびのびと話し合うことがができることため、「ウォーキング・ミーティング」を導入しています。

上司と部下がコミュニケーションをする方法にも工夫が必要です。

ただ話し合うだけではなく、ぐるなびでは意見が出しやすいような工夫がされることによって良好な関係を保っていることが考察できます。

部下が辞めないための注意点

部下が辞めないために、関係を良好にする過程で注意点がいくつかあります。

  • 個性や特徴に着目する
  • 短期的な成果に固執しすぎない
  • 部下を変えるのではなく上司が変わる

本パートでは部下が辞めないための注意点を3つ解説します。

個性や特徴に着目する

部下が辞めないための注意点の1つ目は、個性や特徴に着目することです。

上述のとおり、人によって性格が違うため一辺倒に同じ接し方をしても人によって効果がバラバラです。

ここでは、人の性格を分類する例として、ソーシャルスタイル理論を紹介します。

ソーシャルスタイル理論では、人のコミュニケーションスタイルは「感情」と「意見」の強弱によって「ドライビング」「エクスプレッシブ」「エミアブル」「アナリティカル」という、4つのタイプに分類されます。

ソーシャルスタイル理論

以下で、ソーシャルスタイルの4分類について簡潔に説明しています。

  • ドライビング:感情表現があまり強くなく、合理的に物事を達成していく傾向。ビジネスライクな性格で、過程よりも結果を重視し、決断力に優れる。
  • エクスプレッシブ:感情表現が豊かで、自ら先頭に立って人を率いていく傾向。どこでもノリが良く、流行に敏感で新しいことにも積極的に取り組む。
  • エミアブル:周囲の気持ちに敏感で、自分の話をするよりも相手の話に耳を傾ける傾向。いつも明るく、自分のことよりも組織全体の調和を重視。
  • アナリティカル:普段はあまり感情を表に出さず、聞き手に回る傾向。独特の価値観や雰囲気を持つ人が多く、データ収集や分析に黙々と取り組む。

以上のように、人によって違ったコミュニケーションスタイルがあるので、相手のタイプに沿ったコミュニケーションの仕方を考える必要があります。

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短期的な成果に固執しすぎない

部下が辞めないための注意点の2つ目は、短期的な成果に固執しすぎないことです。

前提として、部下のエンゲージメントを高めたり、上司との関係性を良好にするには時間がかかります。

もともと関係が良好でなければ、それを挽回することが難しいのは人生経験でわかるはずです。

したがって、粘り強く施策を打ち、価値観をすり合わせていくことが必要で、途中でコミュニケーションがとる仕組みを形骸化させてはいけません。

部下を変えるのではなく上司が変わる

部下が辞めないための注意点の3つ目は、部下を変えるのではなく上司が変わることです。

基本的に部下より上司のほうが会社のビジョンの浸透度が高く、仕事の全体像が見えているため、チーム運営を進めるにあたって価値観の共有は上司から先導しなければならなりません。

また、確実に効果を出したいのであれば、部下が変わるのを待つより自分の対応を変えたほうが早く、ストレスが少ないのは自明でしょう。

上司と部下の関係性を良好にする育て方

職場の関係性を良好に保ちたいのであれば、上司が部下を育てなければいけません。

  • 目的・目標・ビジョンを共有する
  • 性格や価値観に合わせて伝え方を調整する
  • ティーチングとコーチングを組み合わせる
  • 1on1ミーティングで密にコミュニケーションをとる
  • 日報を活用し部下との認識のズレをなくす

本パートでは職場の関係性を良好にする部下の育て方を5つ解説します。

また、以下の記事でも新入社員の育て方について解説していますので、ぜひご覧ください。

目的・目標・ビジョンを共有する

職場の関係性を良好にする部下の育て方の1つ目は、目的・目標・ビジョンを共有することです。

業務の向かう方向、目指していることが共有されていなければ、細かなアクションでも「その行動をする目的」からズレが生まれて上司と部下の間で壁ができてしまうでしょう。

よって、定期的に目的・目標・ビジョンを共有する機会を作り、上司も部下も納得感をもってスムーズに業務が進むように体制づくりをしていきましょう。

ここでは、目的・目標・ビジョンを共有する具体的な施策を3つ紹介します。

研修

会社・チームの目標やビジョンを詳しく説明する場としては最適であるのが研修です。

新入社員時しか研修を行わないという企業は多くありますが、定期的に研修を行い具体的に理解できるように育成しましょう。

日々のミーティング

目標やビジョンは、具体的に詳細に伝えることも大切ですが、従業員が日常的に何度も目にして浸透させることが大切です。

したがって、日々のミーティングは、事実の報告だけではなく目標やビジョンの浸透の時間に活用しましょう。

1on1ミーティング

1on1ミーティングとは、人材育成を目的として上司と部下が1対1で行う面談のことです。

研修よりもビジョンや目標を理解しやすいよう直接共有できるのが強みです。

具体的には、以下の項で再度説明します

性格や価値観に合わせて伝え方を調整する

職場の関係性を良好にする部下の育て方の2つ目は、性格や価値観に合わせて伝え方を調整することです。

本記事では、一辺倒な接し方では社員それぞれ性格や価値観が違うことから効果が薄いことを述べてきました。

したがって、

  • 頻繁に価値観のすり合わせをする機会を作る
  • その人に性格に合わせた接し方をする

以上の2点が必要となります。

ここでは、前述のソーシャルスタイル理論における4つの類型から具体的な接し方のポイントについて解説します。

ドライビングへの接し方

無駄がなく、意見を前に出すドライビングには、だらだらとしたコミュニケーションはNGです。

エミアブルの人からすれば、ドライビングの人は威圧的で、怒っている感じに受け取られるため、そりが合わないことが多いです。

したがって、提案や議論の場では、本題から入り簡潔に話を進めましょう。

エクスプレッシブへの接し方

感情表現が豊かで、どこにいてもノリが良いエクスプレッシブには、感情豊かに接してあげることが大切です。

したがって、ドライビングやアナリティカルのような感情をあまり出さない人は、意識して感謝の言葉を伝えてあげると、エクスプレッシブの人のモチベーションは高まります。

逆に、感情表現が豊かで気配り上手なエミアブルの方は、依存されすぎることもあるので、断らなければいけない場面でははっきりと断れるようにしましょう。

エミアブルへの接し方

調和を大切にし、周囲の気持ちに敏感なエミアブルには、威圧的な態度はNGです。

例えば、周囲の気持ちに敏感なエミアブルには、ドライビングの無駄がない姿を「怒っている」と捉えてしまいます。

したがって、エミアブルには感情豊かに接してあげれば、不安を抱えずに過ごすことができます。

関連して、感情表現が豊かなエクスプレッシブとも相性がいいとされます。

アナリティカルへの接し方

感情表現が少なく、情報やデータに基づき行動するアナリティカルには、論理的に話を組み立てるようにしましょう。

客観的な事実に基づいた話をしなければ、アナリティカルの方はイライラしてしまいます。

ドライビングとの違いは、意見をあまり前に出さないことにあります。

したがって、提案や指摘をしたとき、相手が検討する時間を大切にしてあげましょう。

ティーチングとコーチングを組み合わせる

職場の関係性を良好にする部下の育て方の3つ目は、ティーチングとコーチングを組み合わせることです。

なお、コーチングとティーチングの定義は以下の通りです。

  • コーチング:相手に答えがあると考え、その答えを引き出す手法
  • ティーチング:答えは伝える側にあると考え、必要な情報や知識を共有し、相手が同じことをできるようにサポートする手法

双方にメリットはありますが、ティーチングばかり行っていると、部下は自分で思考する力が付きにくくなり、コーチングばかり行っていても、自分で答えるには知識が足りず、上司との認識のズレが起こり、行き詰ってしまいます。

したがって、知識を共有してアドバイスしつつも、相手に答えを出させれば、上司と部下の認識に差異がつかないように部下を成長させることができるでしょう

1on1ミーティングで密にコミュニケーションをとる

職場の関係性を良好にする部下の育て方の4つ目は、1on1ミーティングを活用することです。

1on1ミーティングとは、人材育成を目的として上司と部下が1対1で行う面談のことです。

社員はそれぞれ違ったことに関心や悩みがあります。

センシティブなこともあるので、なかなか日々のコミュニケーションのでは解消できないかもしれません。

そこで、上司と部下で1on1ミーティングを行うことで、

  • 上司と部下の価値観のすり合わせられる
  • 部下の悩みを解消する
  • 1対1で向き合うことで安心感が生まれる

以上の成果を得られることができます。

1on1ミーティングの効果を高めるツール・システムについては以下の記事で紹介しています。

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日報を活用し部下との認識のズレをなくす

職場の関係性を良好にする部下の育て方の5つ目は、日報を活用することです。

具体的には日々の業務のうまくいったことや改善点、次回からどうするかを基本として書いてもらい、上司からフィードバックをもらうまでが1セットです。

日報は、「業務報告書」と呼ばれますが、一方的に部下が報告するだけではなく上司からのフィードバックを活用することで、有効なコミュニケーションツールとなります。

もちろん自分で改善点やうまくいったことを考えて書いてもらうのですが、それを上司が見たとき、認識のズレを感じることがあるでしょう。

そこで、上司がフィードバックで意見を送ることで、認識のズレはなくなっていきます。

日報の有効な活用法に関して下記の記事に詳しく書いてありますので、ぜひご覧ください。

まとめ

以上本記事では上司と部下の関係を良好にするための育成方法や事例等について解説しました。

部下の関係性を良好にする適切なコミュニケーションに一つの答えはありません。

なぜなら人それぞれ性格や価値観が違うからです。短期的にも成果が出にくいので、難しいと感じる上司の方は多いでしょう。

しかし一方で、関係性を良好にすることがいかに大事かということも本記事で述べました。

ぜひ、この記事で育成の指針を見つけ、日々の業務に取り入れてみてください。

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