人材育成の目的とは?よくある課題の解決策や効果的な進め方も解説!

近年の日本のビジネス環境では、労働人口の減少による採用難や転職の活発化による離職リスク増加などが深刻化してきており、人的資本の増強という面では非常に厳しい状況に立たされつつあります。

そんな局面において、既存の社内人材を強化するための「人材育成」の重要性がますます高まってきていると言えるでしょう。

とはいえ、「人材育成」という言葉自体は一般的であるものの、具体的に何を指してどのような目的で行われるのか、そしてどうすれば効果的に進められるのかなど、明確な答えを持ち合わせていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では人材育成の目的や「あるある」課題に対する解決策、さらに効果的な進め方といった実践編まで幅広く解説していきます。

日々の業務に追われる中で、人材育成は施策としては即効性に欠けるため、優先順位が下がってしまいがちかもしれません。しかし、この記事を読んで改めてその重要性を確認し、自社に合った取り組み方を見つけていただければ幸いです。

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人材育成とは

人材育成とは、社員一人ひとりが持つ能力やスキルを高め、企業の経営目標の達成に貢献できる人材へと成長を促すための、計画的かつ継続的な取り組み全般を指します。

人材育成とは、単に業務に必要な知識や技術を教える「教育」を指すだけではありません。企業にとって「人」は最も大切な財産であり、その価値を最大限に引き出すための戦略的な活動が人材育成なのです

変化の激しい現代のビジネス環境において、企業が持続的に成長し、競争優位を維持していくためには、社員の能力開発が不可欠です。そのため、多くの企業が人材育成の重要性を認識し様々な施策を導入しています。

しかし、その目的や手法が曖昧なままでは、期待する成果を得ることは難しいかもしれません。そこで、まずは、人材育成という言葉が持つ本質的な意味をしっかりと理解することが、効果的な取り組みへの第一歩となるでしょう。

人材育成と人材開発との違い

「人材育成」と似た言葉に「人材開発」がありますが、これらの言葉はどのように使い分けられているのでしょうか。

両者は重なる部分も多いのですが、一般的に「人材開発」はより広範で戦略的な意味合いを持つことが多いようです。具体的には、「人材開発」は企業が経営戦略を達成するために、どのような人材が必要かを定義し、採用から育成や異動、そして時には代謝に至るまで、人的資本の価値を組織全体として最大化するための一連の仕組みや活動全体を指すことが多いです。

つまり、個々の社員の能力向上を目指す「人材育成」は、この大きな「人材開発」という枠組みの中に含まれる一つの重要な要素と捉えることができるでしょう。

例えば、新しい事業戦略を打ち立てた際に、その戦略実行に必要なスキルセットを持つ人材を外部から採用するのか、既存社員を育成して対応するのか、あるいは両者を組み合わせるのかといった判断は、人材開発の視点から行われます。そして、育成すると判断された場合に、具体的な育成計画を立てて実行するのが人材育成の役割、というイメージです。

このように、人材開発はより経営戦略に近いレベルでの人的リソースの最適化を考え、人材育成はその戦略に基づいた具体的なアクションプランを担う、と整理すると理解しやすいかもしれません。企業が目指すゴールに向けてどのような人材ポートフォリオを構築すべきか、という大きな視点が人材開発には含まれており、その中で個々の社員のポテンシャルを最大限に引き出す活動が人材育成と言えるでしょう。

人材育成と人材教育との違い

「人材育成」と「人材教育」、これらの言葉も混同されやすいですが、ニュアンスには違いがあります。

「人材教育」は、主に知識やスキルを教え、伝達することに重点が置かれる傾向があります。学校教育のように、講師から受講者へという一方向的な情報の流れがイメージされやすく、特定の業務遂行に必要な知識や技術、あるいはビジネスマナーといった基本的な事柄を習得させる場面でよく用いられます。

一方、「人材育成」は教えること(教育)という意味を含みつつも、それ以上に社員の内発的な成長を促し、潜在能力を引き出すことに重きを置きます。単に知識を与えるだけでなく、社員自身が考えて行動し、経験から学ぶことをサポートするようなアプローチとなっています。

OJT(On-the-Job Training)のように実際の業務を通じた指導やメンター制度による精神的なサポートなど、双方向のコミュニケーションを重視し、個々の社員の主体性やモチベーションを育むことを目指します。つまり、教育が「ティーチング(教える)」に近いとすれば、育成は「コーチング(学びを促す)」であると捉えることができるでしょう。

企業が目指すのは、指示されたことだけをこなす人材ではなく、自ら課題を見つけ解決できる人材ですから、教育的なアプローチと育成的なアプローチをバランス良く組み合わせることが重要になります。
社員の自律的な学びを促す環境を整え、個々のキャリアプランに寄り添った支援を行うことが、真の人材育成であると言えます。


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人材育成の目的

企業が時間とコストをかけて人材育成に取り組むのには、明確な目的があります。社員一人ひとりの成長が、やがては組織全体の力となり、厳しい競争環境を勝ち抜くための原動力となるのです。

ここでは、代表的な人材育成の目的として、「生産性向上」「次世代リーダーの育成」「企業のビジョンやミッションの達成」という3つの重要なポイントに焦点を当てて、それぞれ具体的にどのような意味を持つのかを詳しく見ていきましょう。

これらの目的を意識することで、自社の人材育成の方向性もより明確になるはずです。

生産性の向上

人材育成の最も直接的で分かりやすい目的の一つが、企業全体の生産性の向上です。

社員一人ひとりのスキルや知識が向上することで、即戦力的に個々の生産性が上がり、それが積み重なることで組織全体のパフォーマンスが大きく改善されることが期待できます。また、システム構築のスキルやDXに立脚した視点を習得することで、これまで手作業で行っていた業務を自動化し、大幅な時間短縮と無駄の削減を実現できるといった効率化が叶う可能性もあります。

このように、人材育成を通じて社員が新しい技術や知識を身につけ、それを実務に活かすことで、より短い時間で、より質の高いアウトプットを生み出せるようになるのです。これは単に個人の能力アップに留まらず、チームや部署全体の業務遂行能力の底上げにも繋がります

生産性の向上は、コスト削減や利益増加といった経営目標の達成に直結する重要な要素であり、人材育成がそのための有効な手段であるという認識は、多くの企業で共有されています。

次世代リーダーの育成

企業の持続的な成長と発展のためには、将来の経営を担う次世代のリーダーを計画的に育成していくことが極めて重要です。

現在の経営陣や管理職がいかに優秀であれど、永遠にその役割を担い続けられるわけではありません。組織が活力を維持し、変化に対応しながら成長を続けるためには、新しい視点や発想を持ち、チームをまとめ、目標達成へと導くことができるリーダーが必ず必要とされます。

有望な若手社員や管理職に対して、経営的な視点や人材の管理・育成能力、収益性とミッション性のバランスに優れた事業運営センスといった、リーダーに不可欠な資質を身につけさせ、経営層候補として社内に囲い込むことが重要です。

このような次世代リーダーの育成は一朝一夕に成し遂げられるものではなく、先行投資的な視点に立って、計画的かつ中長期的に取り組むことが求められます。しかし、将来の企業の舵取り役を育てることは、事業承継をスムーズに進め組織の継続性を確保する上で、何にも代えがたい重要な施策であると言えるでしょう。

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企業のビジョンの達成

企業が掲げるビジョンやミッションは、その企業が存在する意義や目指すべき方向性を示す、いわば羅針盤のようなものです。しかし、どれほど崇高なビジョンやミッションを掲げても、それが社員一人ひとりに理解され、共感されなければ、単なる「お題目」で終わってしまいかねません。

人材育成は、企業のビジョンやミッションを社員に深く浸透させ、組織全体で共有するための絶好の機会となります。

研修やワークショップ、あるいは日々のOJTや1on1ミーティングといったコミュニケーションの場で、企業の目指す姿や大切にしている価値観を再確認することで、自社の事業活動が社会にどのような貢献をしているのか、そして自分自身の仕事がその中でどのような役割を果たしているのかを具体的に理解できるようになります。

このように会社のミッションが社員に浸透することで、社員の仕事に対するモチベーションやエンゲージメント(会社への愛着や忠誠心)が高まり、ビジョンやミッションの達成に向けて主体的に行動する人材に育成することができるのです。


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人材育成で直面する課題と解決策

人材育成の重要性は多くの企業で認識されつつありますが、いざ本格的に取り組もうとすると、「計画通りに進まない」「期待した効果が出ない」といった壁に直面するケースは決して少なくありません。

そこで、これらの「あるある」な課題をあらかじめ知っておき、予防策や解決策を準備しておくことによって、人材育成の取り組みをスムーズに進めることができます。

ここでは、多くの企業が人材育成を進める過程で直面しがちな代表的な3つの課題について、課題の内容とそれに対する効果的な予防・解決策について解説していきます。自社の状況と照らし合わせながら、「うちの会社も同じような課題を抱えているかもしれない」「こんな対策が有効なのか」といった気づきを得るきっかけになれば幸いです。

指導するための人材や時間のリソース不足

人材育成を進める上で、おそらく最も多くの企業が頭を悩ませる課題の一つが、「指導にあたる適切な人材が社内にいない、あるいは不足している」「日々の業務が多忙で、育成のための時間を十分に確保できない」といった、人的・時間的リソースの不足問題ではないでしょうか。

特に専門性の高いスキルや、リーダーシップ、マネジメントといった高度な能力を育成しようとする場合、それを効果的に指導できるだけの知識や経験、そして何よりも指導スキルを兼ね備えた人材が社内に見当たらない、というケースは珍しくありません。また、OJTに注力しようにも指導役となる先輩社員や上司が自身の通常業務に追われており、部下や後輩の育成に十分な時間を割けない、あるいは指導方法そのものに自信がないといった状況も散見されます。

これではせっかく育成の機会を設けても、内容が薄くなったり育成が場当たり的になったりしてしまい、期待した効果が得られにくいでしょう。

このリソース不足への対策としては、まず人材育成を日々の業務の「ついで」の余剰タスクと捉えるのではなく、「企業の成長に不可欠な重要業務」と位置づけ、そのための時間確保を支援する姿勢や制度を経営層が整えることが重要です。

例えば、指導者には育成期間中の業務負荷を一時的に軽減する、育成時間を業務目標に組み込むなどの配慮を行う必要があるでしょう。

社内に人材育成のノウハウやナレッジがない

いざ人材育成を始めようにも何から手を付ければよいのか、あるいはどのように育成を進めれば良いのかが分からないというのも、人材育成において直面しやすい深刻な課題です。

新入社員向けのビジネスマナー研修程度であれば社内の研修や勉強会等で賄えるかもしれませんが、より専門的なスキルを持つ中堅社員の育成や、将来の組織を担う管理職・リーダー候補の育成となると、その難易度は格段に上がります。

これらの層の育成には、単なる知識のインプットだけでなく、中規模以上のプロジェクト参画経験やマネジメント経験といった、ある程度の実践を踏まえた上での能力開発が必要になり、さらに個々のキャリア志向や特性に合わせたきめ細かい指導が求められ、そのためには高度な育成ノウハウや体系化されたプログラムが必要となるでしょう。

しかし、社内にそうした知見を持つ人材がいなかったり、過去の取り組みが属人的で共有されていなかったりすると、人事担当者は手探りで育成計画を立てざるを得ず、非効率になったり効果の薄い施策を繰り返してしまったりするリスクがあります。

このような管理職やマネージャーの育成、あるいは極めて専門性の高い技術職の育成といった難易度の高いテーマについては、最初から全てを自社でやろうとせず、外部のコンサルタントや研修会社の力を借りることが有力な解決方法となります。

人材育成のプロの力を借りると、最新の教育メソッドやトレンドなどを踏襲した質の高いプログラムの設計を実現できます。もちろん外部委託には相応のコストがかかりますが、そうした外部の知見を吸収しながら徐々に社内にノウハウを蓄積し、ゆくゆくは自走していくというアプローチも現実的かもしれません。

人材育成の重要性を認識できていない

人材育成は即効性があるものではなく、その効果が目に見える形で現れるまでにはある程度の時間と継続的な取り組みが必要です。

よって短期的な業績向上や効率化に追われていると、どうしても「人は育てたいが、今はそれどころではない」「研修費用はコスト削減の対象」といった考えに陥り人材育成の重要性を軽視してしまう、なんてことも少なくないでしょう。

よって、経営トップが人材育成を「コスト」ではなく、将来の成長に向けた「重要な投資」であると明確に位置づけて予算やリソースを確保する強いコミットメントを示さなければ、現場の管理職も部下育成に本腰を入れにくくなります。また社員自身も、日々の業務で成果を出すことが優先され、育成プログラムへの参加や自己研鑽を負担に感じてしまっているかもしれません。

この課題を解決するためには、まず経営層が率先して人材育成の重要性を社内外に発信し、自らも育成活動に関わる姿勢を示すことが必要になってきます。そして、人材育成が企業の将来の生き残りや従業員のエンゲージメント向上に具体的にどのように貢献するのかを、社内に粘り強く周知していく必要があります。

例えば、「育成に力を入れている部署は離職率が低い」「特定の研修を受けた社員の生産性が向上した」といった誰が見ても明確な成果を共有することで、人材育成の価値を実感してもらいやすくなります。
人材育成は人事部だけの仕事ではなく、経営戦略の一環として全社的に取り組むべき重要課題であると、全社的に意識を共有していく必要があるでしょう。


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人材育成の進め方

効果的な人材育成を実現するためには、場当たり的な研修を実施するのではなく、戦略的かつ体系的に進めていくことが重要です。しっかりとした計画に基づいて段階的に取り組むことで、育成の成果を最大化し、企業の成長へと着実に繋げていくことができるでしょう。

「何から手をつければ良いのか分からない」と感じている担当者の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は人材育成の考え方にはある程度確立された4つのステップがあります。

これらのステップを一つひとつ丁寧に踏んでいくことで、自社の課題や目標に合った、実効性の高い人材育成プランを実行していくことができるはずです。自社の状況に合わせてアレンジしながら、ぜひ参考にしてみてください。

1.企業のなりたい姿を明確にする

人材育成の最初のステップは、まず「企業として将来どのような姿を目指すのか」というビジョンや経営戦略を明確にすることから始まります。これが曖昧なままでは、どのような人材を育成すべきかという方向性も定まりません。

中長期的な事業計画や市場の変化、競合の動向などを踏まえ、自社が今後どのような分野で成長し、どのような価値を提供していきたいのかを具体的に描く必要があります。

そして、その「なりたい姿」を実現するためには、どのような知識、スキル、経験、そしてマインドセットを持った人材が必要になるのか、という「理想の人材像」を具体的に定義していきます。

例えば、「グローバル市場で競争力を高めたい」というビジョンがあるならば、語学力はもちろん、異文化理解力や交渉力に長けた人材が必要になるでしょう。また、「DXを推進して業務効率を抜本的に改善したい」という目標があるならば、ITスキルやデータ分析能力、変革をリードするマインドを持った人材が求められます。さらに、この理想の人材像は、役職や階層(新入社員・若手・中堅・管理職など)といった各ケースによっても異なるはずです。

このように、企業の目指す方向性と、それを実現するために必要な人材の具体的なイメージを最初にしっかりと確立することが、その後の育成計画全体の土台となる非常に重要なプロセスとなります。

この段階で経営層と人事部が密に連携し、全社的なコンセンサスを得ることが、後の施策の成功につながります。

2.現状とのギャップを特定する

企業の「なりたい姿」と「理想の人材像」が明確になったら、次のステップは、現状の社員の能力やスキルレベルと、その理想像との間にどのようなギャップがあるのかを正確に把握することです。このギャップこそが、人材育成を通じて埋めていくべき課題となります

現状分析の方法としては、まず社員のスキルマップを作成したり、保有資格や研修受講歴、人事評価のデータなどを整理したりすることが考えられます。さらに、従業員へのアセスメントテストやヒアリング、上司や同僚からの多面的な評価(360度評価など)も、能力を把握するための指標として有効でしょう。

これにより、組織全体として、また個人として、どのようなスキルが不足しており、どのような能力を強化する必要があるのかが具体的に見えてきます。

例えば、理想の人材像として「高い提案力を持つ営業担当者」を掲げた場合、必要なスキルとしては、「顧客ニーズの把握能力 / 解決策構成能力 / 訴求・プレゼンテーション能力」といったように切り分けることができます。現状分析の結果、「的確なヒアリングにより顧客のニーズを把握しているものの、それに基づいて具体的な解決策を組み立て、説得力を持ってサービスを訴求することは十分にできていない」といった現状が明らかになったとすると、理想的な人材像に必要であるスキルと比較して、不足している部分も見えてくるはずです。

このように、理想と現状を比較してギャップを特定することで、育成すべき具体的なスキルや知識が明確になり、より的を射た育成プログラムの策定へと繋げることができます。このギャップ分析は、育成の優先順位を決定する上でも非常に重要な情報となります。

3.人材育成の目標・KPIを設定する

理想の人材像と現状とのギャップが明らかになったら、次に行うべき重要なステップは、そのギャップを埋めるために、人材育成活動を通じて具体的に何を達成したいのかという「目標」と、その達成度合いを測るための「KPI」を明確に設定することです。

この目標とKPIの設定が曖昧であったり不備が有ったりすると、実施した施策の効果を客観的に評価することが難しくなり、結果として「やりっぱなし」の育成に終わってしまうリスクがあります。

まず人材育成の目標としては、前の過程で明確にした理想の人材像に近づくために、「どのような能力を / いつまでに / どのレベルまで」向上させるのかを具体的に設定しましょう。

例えば、「入社3年目までの若手社員のプレゼンテーション能力を、〇〇研修を通じて、評価レベルBからAへ向上させる」「管理職候補者に対し、リーダーシップ研修を実施し、部下からの信頼度に関するアンケートスコアを平均〇点向上させる」といった形です。

さらに、これらの目標の達成度を計測し改善に繋げるためにも、明確なKPIを設定する必要があります。
具体例を挙げると、研修の受講率や修了率、理解度テストの平均点、研修後の行動変容に関する上司評価の平均スコア、長期的な生産性向上率や従業員エンゲージメントスコア、離職率の低下などがKPIとなり得ます。

重要なのは、設定した指標が達成したい人材目標としっかりと連動しており、かつ客観的に測れる指標となっているかという点です。

これらの目標とKPIを明確に設定することで、育成プログラムの企画・実行段階での意思決定がスムーズになったり、実施後の効果検証を正確に行えるようになります。また社員自身も具体的な目標や数字を意識するため、学習へのモチベーションが高まり、より主体的に研修や講座受講に臨むようになることが期待できるでしょう。

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4.育成プログラムを策定する

理想の人材像と現状とのギャップが明らかになったら、いよいよそのギャップを埋めるための具体的な育成プログラムを策定するステップに入ります。

ここで重要なのは、特定された課題や必要なスキルに応じて、最適な育成手法や内容を組み合わせることです。

例えば、新入社員に対しては、ビジネスマナーや社内ルールといった基礎知識を習得させるための集合研修やeラーニングが効果的でしょう。一方、中堅社員のリーダーシップ能力を強化したいのであれば、OJTを通じて実際の業務で部下指導の経験を積ませたり、外部のマネジメント研修やセミナーに参加させたりすることが考えられます。また、専門知識の習得が目的ならば、専門機関が提供する講座の受講支援や資格取得奨励制度を導入するのも良いでしょう。

育成プログラムを策定する際には、対象者(誰を)、育成目標(何をどこまで)、育成内容(どのような方法で)、実施期間(いつからいつまで)、そして予算(いくらかかるか)といった要素を具体的に計画に落とし込んでいく必要があります。

この際に、一つの手法に偏るのではなく、OJT、Off-JT、自己啓発支援など複数の手法をバランス良く組み合わせることで、より高い学習効果が期待できます。

また、プログラムの内容が実務に直結し、実践しやすいものになっているかという視点も非常に重要です。

スキルを習得する上で知識のインプットももちろん重要ですが、座学ばかりでは効率的な学びを得られないことも事実であり、米国の人事コンサルティングファームであるCCLによると、リーダーシップ習得について分析する過程で「実践経験:対人からのアドバイスや学び:座学」は、「70:20:10」という比率で行うのが最も効果的であるといいます。

よって、実践ベースでの育成プログラムを組み立て、事前・事後学習やスキマ時間の活用等に補完的に座学を取り入れるというスタイルが最も理想的であると言えますが、実践の機会を作るにはまとまった時間や会場、準備コスト等も発生するため、自社の状況に合わせてバランスを取る必要があるでしょう。

5.効果測定・改善を行う

育成プログラムを策定し、実行したら、それで終わりではありません。人材育成の成果を最大化するためには、実施したプログラムの効果をきちんと測定し、その結果に基づいて改善を重ねていく、いわゆるPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回していくことが不可欠です。

効果測定の方法はいくつか考えられます。

まずは、研修直後のアンケートやテストによって参加者の満足度や理解度を確認することですが、しかしこれだけでは真の効果測定とは言えません。研修の成果が紙面上のアセスメントや調査では測れなかったり、あるいは実際の業務を通して会得していくような場合があるためです。よって研修から一定期間後(例えば半期後など)に測定時期を設定し、周囲による評価やフィードバック、成績や業績指標の変化など、複数の視点から効果を検証しましょう。

測定した結果に基づいて、「計画通りに進んだ点はどこか」「期待した効果が得られなかったのはなぜか」「改善すべき点は何か」といった項目を明らかにし、次回の育成計画に反映させましょう。

この継続的な見直しと改善のPDCAサイクルを回すことこそが、人材育成の質を長期的に高めていくための鍵となります。効果測定とそれを基にした改善は、育成プログラムの有効性を客観的に判断してより効果的な施策へとブラッシュアップしていくために欠かせないプロセスなのです。

人材育成の具体的な方法

人材育成の効果を最大化するためには、目的や対象者、育成したいスキルに応じて、さまざまな実施スタイルを適切に使い分ける必要があります。

ここでは、代表的な人材育成の実施スタイルとして、4つの代表的な育成手法を紹介します。これらの内容を参考にして、自社の状況や育成ニーズに最も合ったスタイルは何か、あるいはどのように組み合わせるなどを検討してみてください。

集合研修

集合研修は、特定のテーマについて、複数の社員を同じ場所に集めて行う育成スタイルです。新入社員研修でビジネスマナーや会社の基本ルールを学んだり、管理職研修でリーダーシップや労務管理の知識を習得したりする場面でよく用いられます。

このスタイルの大きなメリットは、一度に多くの対象者に対して均一的且つ効率的に情報や知識を伝達できる点です。また、他の参加者とのグループワークやディスカッションを通じて、多様な意見に触れたり連帯感を醸成したりする機会にもなります。

一方デメリットとしては、参加者一人ひとりの理解度や進捗に合わせた個別対応が難しいこと、会場費や講師への謝金、参加者の移動時間といったコストや手間がかかる点が挙げられます。また、研修内容が実務から乖離していると、せっかく学んだ知識が現場で活かされないという課題も生じがちです。

そのため、集合研修を企画する際には、目的を明確にして参加者のレベルやニーズに合った内容にすること、そしてメンバーのレベル感によっては個人にコミットしたプログラムを個別に提案するなどのフォローが必要になります。


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OJT

OJTとは「On-the-Job Training」の略で、実際の業務を通じて、上司や先輩社員が部下や後輩に対して直接的に指導や教育を行う育成スタイルです。新入社員や部署に新しく配属された社員が、具体的な仕事の進め方や必要なスキルを実践的に学ぶ上で非常に効果的な方法と言えるでしょう。

OJTの最大のメリットは、実務に即した知識や技術が効率的に習得できる点です。教科書的な知識だけでなく、現場で実際に役立つノウハウや、その職場ならではの仕事の進め方、社内外の関係者とのコミュニケーションの取り方などを、日々の業務の中で体験しながら学ぶことができます。また、指導者とのコミュニケーションが密になるため、個々の成長度合いに合わせたきめ細かい指導やフィードバックが可能ですし、より早期に職場に馴染む効果も期待できます。

しかし、OJTにはいくつかの課題もあります。例えば、指導者の性格やスキル、やる気といった個人差によって育成効果にばらつきが出やすいこと、「ながら」指導ゆえに指導者が自身の業務で忙しい場合は指導が不十分になってしまうことなどが挙げられます。

したがって、OJTを効果的に機能させるためには、指導者に対する育成スキル向上のための研修を実施したり、明確指導項目リストや基準を用意したりと、指導の質を均一化する取り組みが必要です。

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eラーニング

eラーニングは、パソコンやマートフォンなどのデジタルデバイスを利用して行われる学習スタイルです。動画コンテンツやオンラインテストなど、多様な形式があります。

このスタイルの最大のメリットは、時間や場所に縛られずに、個人のペースで気軽に学習を進められる点です。通勤時間や業務の合間など、ちょっとしたスキマ時間を有効活用できますし、理解が難しい部分は何度も繰り返し学習することが可能です。特に、ITスキルや語学、コンプライアンス知識、資格取得のための学習など、知識のインプットが中心となる内容の教育には非常に適していると言えます。また、集合研修に比べて、会場費や講師への謝金といったコストを抑えられる場合が多いのも魅力です。

デメリットとしては、自己管理能力が求められるためモチベーションの維持が難しい点や、リアルタイムでのコミュニケーションがないため質問や相談にタイムラグが生じる点が挙げられます。また、実践的なスキルの習得には限界があります。

ただ、集合研修やOJTの事前学習など実践的な研修方法と組み合わせることで、「理論→実践」のサイクルを作ることができ、より効果的な学習効果を得ることができます。

公開講座

公開講座は、外部の教育機関や研修会社が提供している既存の学習プログラムです。様々なテーマやレベルの講座が用意されており、自社の状況や個人のニーズに合わせて、専門性の高い内容や最新のトレンドを学ぶことができます。

さらに、少人数の社員を対象としてスキルを身につけさせたい場合は、自社で一から講座や教材を作成するよりも、既存の講座を契約して社員に活用させる方がコストパフォーマンスに優れると言えるでしょう。

特に専門性の高い分野や、社内に講師となる人材がいない場合など、自社内で完結して教育を行うにはハードルが高いようなシチュエーションにでは、非常に有力な選択肢となるでしょう。

外部委託も有力な選択肢

自社だけで人材育成の全てを担うのは、リソースやノウハウの面でなかなか大変だと感じている企業も多いのではないでしょうか。

特に、専門的な知識や高度なスキルが求められる分野の育成や、新しい研修プログラムの開発・運営には、人事担当者の負担も大きくなりがちです。

そんな時は、外部の契約講座やコンサルティング会社を活用するという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。

プロの力を借りることで、自社だけでは実現が難しかった質の高い育成プログラムを導入できたり、人事担当者がより戦略的な業務に集中できるようになったりと、多くのメリットが期待できます。もちろん費用はかかりますが、その費用対効果は決して悪いものではないでしょう。

最大のメリットとしては、なんといってもやはりその専門性と質の高さです。

人材育成のプロフェッショナルは、最新の教育理論や効果的な指導方法、さまざまな業界や企業規模における成功事例や失敗事例といった豊富な知見を持っています。また、研修プログラムの設計においても、現状の課題分析から目標設定、カリキュラム作成、教材開発、効果測定に至るまで、一貫して専門的な視点からサポートを受けることができます。

さらに、外部からの新しい視点が入ることで、社内の人間では指摘しづらい課題や「当たり前」に、客観的な立場から気付かせてくれるということも無視できない効果でしょう。

外部委託は、人事部門の負担を軽減し、より戦略的な人事業務にリソースを集中させることにも繋がるため、かえってリソースの節約になったり業務効率化を達成することができるのです。

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まとめ

この記事では、人材育成の基本的な意味や目的、具体的な進め方、そして多様な実施スタイルに至るまで、幅広く解説してきました。

人材育成とは単に社員に知識やスキルを教えるだけでなく、会社の最も重要な資本である「人材」の成長を通じて、競争力強化や経営目標達成を実現するための戦略的な取り組みです。

人材育成は一朝一夕に成果が出るものではなく、中長期的な視点での継続的な取り組みが不可欠です。
変化の激しい時代だからこそ、「人材」という最も重要な資本への投資を惜しまず、未来を担う人材を育てていく必要があるのです。

この記事が、皆さまの人材育成に関するお悩みを少しでも解決し、より良い企業経営を進めるための一助となれば幸いです。

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    組織開発・1on1 ・評価の設計運用で 100 社以上の企業に伴走してきた弊社の知見をもとに作成したガイド資料になります。

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