等級制度とは?3種類とメリット・デメリット、作り方を解説!

等級制度は、従業員を能力・職務・役割等によってランク(等級)分けする人事制度です。
人事制度の土台となる基本的な3つの重要項目「評価制度」「報酬制度」と並んで「等級制度」があります。

創業まもない頃は等級制度を作成する必要はありませんが、組織を拡大する際には必要不可欠なものになっています。

本記事では、等級制度の種類やメリット・デメリット、導入手順をわかりやすく解説します。


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等級制度とは

等級制度は、従業員を能力・職務・役割に応じてランク付けし、序列を設ける人事制度です。
等級制度と報酬制度を連動させて給与や処遇の根拠として使われたり、組織に求める人材育成や配置にも利用されます。

等級制度には「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3種類があり、それぞれ企業の経営戦略や事業戦略に基づいて導入されます。
また、企業風土の形成にも役立ち、会社が求める人材像や従業員に期待する役割を明確に示すことができます。

等級制度・評価制度・報酬制度の関係

人事制度の基本的な構成要素は「等級制度」「評価制度」「報酬制度」です。
これらの制度は統一した1つの方針である経営戦略や人事戦略といった共通目的を持って一貫した制度を構築することが非常に重要です。
それぞれの制度の役割は下記のように定義することができます。

  • 等級制度:従業員の社内での立場を明確にする制度
  • 評価制度:人事制度の枠組み(=等級)に基づいて従業員の成果や取り組みを評価する制度
  • 報酬制度:等級や評価結果に基づいて報酬に反映するための制度

このように各制度は密接に関係しており、評価や報酬を決めるのを効率的・効果的に実施するために等級制度があります。
この3つの制度がどれかでも欠けてしまうと人事制度を円滑に実施することができなくなるため、各制度を全社に定着させることが非常に重要です。

等級制度を導入する3つの目的

等級制度にはどのような目的・メリットがあるのでしょうか。
本パートでは3つに分けて解説します。

社員に業務のレベルや種類を明示できる

会社は社員に求める業務のレベルや役割を明らかにするため、それに見合った報酬を社員に与えられます。
等級制度がないと、それぞれの社員が取り組む業務が体系化されず、能力や得意分野に合わない業務を担当することになってしまいます。

賃金の決定がしやすくなる

能力や役割に応じた報酬を決定できるため、賃金の決定プロセスが明確かつ客観的になります。

また、等級制度がないと、賃金の明確かつ客観的な基準がない、あるいは別に作らなくてはならないため、賃金に関する透明性が失われたり、基準を新たに作るコストが発生したりします。

報酬の明確な基準ができるということは、従業員が評価に対する納得感を高めることにもつながります。

適材適所の人材配置が可能になる

能力の高さや役職への適性の高さから適切に社員を配置できるため、会社の生産性を上げられます。

等級制度がないと、能力や適性に合わない人材配置になってしまい、会社全体の生産性が落ちてしまいます。

等級制度の基本的な3つの種類

職能資格制度・役割等級制度・職務等級制度の比較表

等級制度には「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3種類があります。それぞれの制度の概要とメリット・デメリット、各制度の具体例を説明していきます。

種類1:職能資格制度

等級制度の種類1つ目は、「職能資格制度」です。別名「メンバーシップ型等級制度」とも呼ばれます。
職能資格制度は、従業員の能力によって評価し、等級付けする制度です。

特徴として、能力が勤務年数や経験に比例する場合が多いために年功序列の傾向が強いことが挙げられます。日本の雇用慣行である新卒一括採用・終身雇用の形態に非常に相性がよく、日本企業のほとんどは職能資格制度を採用しています。

また、基本的に終身雇用を前提としていることから、ジョブローテーションを行いやすいためゼネラリストを育成しやすいという特徴もあり、ゼネラリスト育成の結果、柔軟性のある組織を作りやすいメリットもあります。

しかし、年功序列型となるために優秀な若手社員が能力に合った評価を受けず、モチベーション低下・離職・転職につながってしまうことがあります。
そして、社員が高齢化すると人件費の高騰につながってしまう点もデメリットとして挙げられます。

近年、日本企業も終身雇用が当たり前でなくなってきた背景から、職能資格制度から別の制度に移行を進めていこうという動きも見られてきています。

職能資格制度のメリット

  • 業種や職種を問わず導入しやすい
  • 組織の柔軟性を保てる
  • 人事異動や職務変更に向いている
  • ゼネラリストの育成に適している
  • 勤続年数を重ねるほど等級が上がるため、従業員の帰属意識が高まりやすい
  • モチベーションが向上しやすい
  • 離職率の低下につながる
  • コアスキル習得に長い時間がかかり、そのコアスキルが企業競争力となる場合に向いている

職能資格制度では、1人が多様な職種・業務を経験する制度であるため、特定の部署で欠員が生じたときや大きな組織改編があったとき、人員の配置転換が容易です。外部から採用をしなくても、企業内で人材を確保しやすく、柔軟性のある制度といえるでしょう。

また、職能資格制度では基本的に降格がなく、勤続年数によって等級が上がるので、従業員は安心感を持って長く働き続けることができます。また、職務の範囲にかかわらず他の従業員に仕事を教えたり作業を分担したりすることも評価の対象となるので、臨機応変にチームで協力し合えることもメリットといえそうです。

他にも「年功序列」「終身雇用」を前提に、勤続年数を重ねるほど等級が上がる職能資格制度は、10年、20年などの時間をかけて熟練工や企業管理職などを育成する場合など、企業内で長期的に人材を育成できる制度ともいえます。

職能資格制度のデメリット

  • 資格等級と職務内容にずれが生じやすい
  • 年功序列的運用になりやすい
  • 中高年者が多い企業では組織がいびつになる
  • 人件費が高騰しやすい
  • 明確な評価基準を設けにくく、評価の公正さや分かりやすさに欠けることがある
  • 等級と貢献度に乖離が生まれやすい

職能資格制度の評価基準となる主な要素は、従業員の能力と勤続年数です。能力を評価することが難しい一方で勤続年数によって等級が上がるので、結果として年功序列に近くなり、従業員の能力と賃金のズレが生じる可能性があります。
また、能力に賃金が見合っていないという不公平感を抱いた従業員、特に若手でハイパフォーマーのモチベーションが下がるおそれもあります。

他にも、年功序列になりやすいことから、組織にとって貢献度の低い従業員も勤続年数が長いだけで、評価されるため、人件費が高騰化する危険性もあります。

職能資格制度では従業員個人の能力を評価しますが、明確な評価基準を設けにくいため、公正でわかりやすい人事評価が困難な場合があります。
各等級ごとの定義を明確にするなどの工夫が必要になってきます。

また、2020年以降のコロナ禍では、リモートでおこなうべき一人ひとりの業務の線引きがあいまいなため、在宅勤務への移行がスムーズにいかないという問題が生じました。

種類2:職務等級制度

等級制度の種類2つ目は、「職務等級制度」です。別名「ジョブ型等級制度」とも呼ばれます。
職務等級制度は、従業員を職務によって評価し、等級付けする制度です。

あらゆる職務(職種)について詳細な「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」を作成し、職務記述書に明示された職務を遂行できれば、誰でも賃金は同じ(同一労働・同一賃金)が特徴です。
学歴や年齢、職歴が考慮されず、完全に成果が軸となるため、仕事ができるほど報酬も高くなるという「成果報酬型」の等級制度と言えるでしょう。

職務等級制度は、海外、特にアメリカにおいて発達したものです。属人的な要素が一切入らず、仕事のみで評価できる人事制度は、人種差別などで企業側が訴えられるリスクを減らすのに非常に効果的でした。

また、職務の価値と業績に対して公正な評価が行うことができることが最大のメリットです。

各個人の職務が明確であることから、専門性が高い業務の遂行能力を持つ、スペシャリストを育成しやすい等級制度といえるでしょう。

一方で、すべての職務について職務記述書(職務基準書、職務明細書、ジョブディスクリプション、とも呼ばれる)を作成する必要があります。業務を遂行するために必要な知識、資格、熟練度、権限・責任、危険度、身体的・精神的負荷などをポイント化し、そのポイントによって給与テーブルを決めていきます。

この作業は非常に煩雑であり、多くの時間と労力がかかるほか、それぞれの仕事を理解する必要があります。新しい部門や職務ができた場合には、その都度、職務記述書を作成する必要があり、頻繁に組織や業務が変化する企業には向いていません。配置転換が難しく、職務が変わらない限り、給与の上限が限られるため、向上心やモチベーションを維持できないといった問題も指摘されています。

日本でも1990年代以降、多くの企業で導入が検討されましたが、日本企業の良さである「チームワークでお互いに助け合って業務を遂行する」ことが発生しづらくなることから、導入は見送られ、エンジニアやデザイナーなどのスペシャリストの等級で部分的に導入されています。

職務等級制度のメリット

  • 明確な評価基準を設けやすく、人事評価の公正さを保ちやすい
  • 職務と処遇が合理的に対応する
  • 採用時に仕事内容とのミスマッチを防止できる
  • 職務によって賃金が決まるため人件費を管理しやすい
  • スペシャリスト育成に適している
  • 成果主義の組織に相性が良い

職務等級制度の最大のメリットは、評価の際に公平な評価を実現することができることです。従業員の成果が評価の主軸となり、成果に応じた報酬や昇格があるため、納得度の高い評価を実施することができます。

また、各等級によって必要な能力が明確にされているため、スキルアップに対する意欲が高まり、スペシャリストの育成に適しています。

他にも、採用時にも役割が明確で、採用要件の選定が容易で、採用後のミスマッチも起こりづらいところもメリットでしょう。
加えて、職務内容と報酬がリンクしているため、人件費の予想がしやすく、人件費を抑えることもできます

職務等級制度のデメリット

  • チーム内の連携が生じにくい
  • 組織の柔軟性に欠ける
  • 職務記述書の作成が煩雑
  • 組織や職務が固定化しやすい
  • 職務が変わらない限り、給与も上がらない
  • 成果が主な基準となるため、誠実さや勤勉さ等が評価に反映されにくい

職務等級制度では職務記述書を用いて職務の内容を定義し、その内容に基づいた職務を各個人が行います。

個人プレーが重要視される事業では適しているかもしれませんが、記述されていない業務に対する取り組みが評価されないことにより避けられることで、メンバー間の助け合いが生じにくくなるなど、組織の柔軟性が損なわれてしまいます。

職務記述書の範囲を超えた柔軟な対応が求められる場合には、職務等級制度の運用には注意が必要です。

種類3:役割等級制度(ミッショングレード制)

等級制度の種類3つ目は、「役割等級制度」です。別名「ミッショングレード制度」とも呼ばれます。
役割等級制度とは、職務と職能の考えを併せた役割(ポスト)という考えに基づいて等級づけを行う制度で、日本型の「職能資格制度」と欧米型の「職務等級制度」の中間のような性質を持つ制度です。

例えば、A課長・B課長・C部長・D武将といった役割に対して、等級が紐付けられる制度です。
その役割で行わなければならない職務内容は多岐にわたるため、役割の定義は職務等級制度の定義よりも広い範囲を定義づけるものになります。

職能資格制度から脱却したいが、職務等級制度も会社にマッチしないという日本企業の多くで、急速に導入が推進されている制度でもあります。

役割等級制度のメリット

  • 役割の大きさと処遇が合理的に対応する
  • 従業員の役割が明確である
  • ポジションに応じた評価ができる
  • 従業員の主体的な行動を促進できる
  • モチベーションが向上しやすい
  • 人件費を抑制できる
  • 従業員の貢献度に応じた評価ができる

役割等級制度は、役割や責任の大きさ、業務の難易度、成果に基づいて従業員を評価する制度です。
成果だけでなく日々の取り組みや姿勢も評価対象となるため、職務等級制度のデメリットにあった「チーム内の助け合いが生じにくい」を解消できます

また、職能資格制度のように勤続年数ではなく、その役割を果たせる人が評価されるため、昇進意欲の向上など従業員のモチベーション向上につながります
他にも、人に依存しない評価が実施できるので、人件費の管理でき、人件費を抑制できます。

役割等級制度デメリット

  • 制度設計が難しい
  • 配置転換や異動によるモチベーションを下げる可能性
  • 処遇に対する不満が出やすい

役割等級制度は、制度の設計段階に非常に負担が大きい制度です。

役割等級制度には、役割の設定と分析が重要ですが、この分析が不十分な場合、企業の生産性が低下するだけでなく、人件費の増加を招くことがあります。
そのため、制度の設計段階において綿密な定義づけが必要となり、その際の人事部門への負担は非常に大きくなります。適切な役割設定のために外部コンサルタントの力を借りるという企業も多いです。

また、人事異動や役割の変更により一時的に等級が下がることがあり、従業員のモチベーション低下につながる可能性もあります。

職能資格制度と役割等級制度のいいとこ取りのため、デメリットは少ないですが、曖昧な役割設定や評価基準となりがちで、評価に不満を生じさせる恐れもあり、制度の設計と運用には細心の注意が必要です。


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等級制度の構造・階層の違い

等級制度には基本的な型があります。ここでは、最もシンプルな「簡易職位等級」から「多層職位等級」、最も複雑な「事業・職位別複線型等級」の5つの類型について解説していきます。

1.簡易職位等級

簡易職位等級とは、管理職と一般職の2分類しかない、最もシンプルな等級制度です。
等級制度が存在していない、創業まもない企業はここに分類されることが多いのでないでしょうか?
社長と社員数名がミニマムな形で、この規模の企業では、等級制度は不要である場合が多いため、簡易職位等級を導入している企業は非常に少ないでしょう。

2.多層職位等級

多層職位等級の説明画像

多層職位等級は、簡易職位等級から発展した形で、管理職・一般職のそれぞれの区分に、職責や職務能力を基に細分化された等級区分が存在する制度です。

小規模から中規模までの日本企業の多くで、採用されている等級制度です。
この多層職位等級から職責(役割)や職種(事業)に分岐する形で「複線型等級」「事業・職種別多層職位等級」「事業・職種別複線型等級」があります。

2-1.複線型等級

複線型等級の説明画像

複線型等級は、管理職・一般職に加えて、専門職(スペシャリスト)の等級区分を加えたものです。

多層職位等級では、大きく管理職(マネジメント層)と一般職の関係しかなく、マネージャーとしての役割で組織に貢献できない人は、上位等級になれないという問題点がありました。
そのため、マネジメント業務には向かないが、高度な専門知識で組織に貢献できる人がキャリアアップできなかったところを解決するのが「複線型等級」です

2-2.事業・職種別多層職位等級

事業・職種別多層職位等級の説明画像

事業・職種別多層職位等級は、職種や事業ごとに多層職位等級を作ったものです。
職種や事業ごとに大きく役割が異なる場合に、事業・職種別多層職位等級を導入することがおすすめです。

例えば、飲食店を展開していた企業が、新たにEC部門を設立した際に、EC部門に適した等級制度を導入するというイメージです。
他にも営業職と事務職などの職種ごとに分けられる場合も考えられます。

2-3.事業・職種別複線型等級

事業・職種別複線型等級の説明画像

事業・職種別複線型等級は、事業・職種別多層職位等級に専門職コースを設立する複線型等級を導入した形です。
組織が大規模になり、各職種や事業でのスペシャリストを必要とする場合に導入する場合が多いため、大企業に見られる形です。

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等級制度の作り方の7ステップ

それでは、等級制度の作り方の具体的な手順を説明していきます。
現行の等級制度を見直す場合には8ステップ、新しく等級制度を作成する場合は7ステップとなっています。

STEP0(等級制度を作り直す場合):現行の等級制度の課題を抽出する

等級制度を見直す場合は、現行の等級制度の状態を分析し、課題を明確化する必要があります。
分析の視点としては以下のようなことが考えられます。

  • 各等級の定義は明文化しているか?
  • 等級定義の内容は企業の実態にあったものか?
  • 各等級の違いは明確になっているのか?

このように等級制度は等級ごとの違いが明らかであることが必要です。きちんと違いがわかるようになっているのかを分析しましょう。
意外にもこの部分が不明確でわかりづらいため、等級制度が機能していない企業が多いです。

上記の部分に問題がなければ、以下の要素を分析しましょう。

  • 社員が自分の等級定義を認識しているのか?
  • 各等級の在籍人数は妥当か?
  • 各等級の年齢構成は会社の方針と合っているか?

「社員が自分の等級定義を認識しているのか?」については、等級制度よりも等級に関する説明不足が原因かもしれません。説明会を実施するなどをして、社内の等級制度の認識を浸透させていく必要があります。また、等級の定義の文言がわかりづらい可能性もあるため、文言の見直しも検討しましょう。

「各等級の在籍人数は妥当か?」と「各等級の年齢構成は会社の方針と合っているか?」に関しては、ある等級に著しく多い、少ないと言ったことが起こっていないかを分析します。多い場合は、等級数を増やしたり、少ない場合は減らしたりするようにしましょう。また、昇格・降格の要件を見直すことも効果的です。

STEP1:等級制度の導入目的・導入方針を決定する

まずは自社の課題を整理して洗い出し、等級制度を導入する目的と方針を設定します。等級制度の目的に沿って計画的に等級を作成していきましょう。

等級制度は、会社の求める人物像を体現したもので、上位の等級に行くほど、会社の求める人材に近づいていきます。
そのため、会社の経営戦略をもとに、会社の求める人物像を明確にし、等級制度の指針となるものを決めましょう。

STEP2:等級制度の種類を決定する

設計した等級制度の目的・方針をもとに等級制度のコンセプトとなる等級制度の種類を決めていきましょう

先に紹介した「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3種類のメリット・デメリットを考慮しながら、自社にあった制度を選ぶ必要があります。

基本的には、等級制度において1種類ですが、基本は「役割等級制度」で部分的に「職務等級制度」を導入するなど、会社に応じて種類を組み合わせて決定していくと良いでしょう。

STEP3:等級の構造・階層を決定する

等級制度のコンセプトとなる種類を決めたら、等級の構造と階層を決定していきます
会社の規模に応じて、紹介した5つの構造(簡易職位等級/多層職位等級/複線型等級/事業・職位別多層職位等級/事業・職位別複線型等級)から選択すると良いでしょう。

会社の現在の状況から決めることも重要ですが、経営戦略を基に将来のあるべき組織の構造を踏まえて、等級の構造を決めることが重要です。
そうすることによって、今の組織の等級上の空き部分が明確になり、採用戦略に活かすこともできます。

STEP4:等級数を決める

採用する制度と構造を決めたら、細分化して等級数を決定します
企業によって異なりますが、一般的には管理職で2〜3つ、一般社員で3〜4つ程度です。

等級数が多すぎると、管理が難しくなり、従業員が理解できないほどの複雑な等級制度となり形骸化の要因となってしまいます。
一方で、等級数が少なすぎると、等級の幅が広くなり、同じ階級の中にレベルの異なる社員が混在することとなり、多すぎると等級の差が不透明になるため、注意して等級数を定める必要があります。

等級に関する具体的な決定の前に数を決めることで、各等級の担うべき役割やレベルを明らかにできます。

STEP5:等級ごと名前と定義を決める

等級数を決めることができれば、各等級の名称と定義を決めましょう
等級名は、1級・2級・3級などなんでも良いのですが、M(マネージャー)1やGM(ゼネラルマネージャー)のように意味のある名称の方が良いでしょう。
また、上位の等級を目指したくなるように、カッコいい魅力的な名称にしている企業もあります。覚えやすさとカッコ良さを両立できる名称がベストです。

等級ごとの定義は、各等級の要件や役割、有するべき能力を決めましょう。公平な評価を行うためには、等級の定義を明確にすることが重要です。定義があることで、等級や役職について具体的な目標設定がしやすくなり、キャリアアップの基準としても機能します。

ここでは、各等級に違いをざっくりと抽象的に定義する程度にとどめ、次ステップの「等級ごとに具体的な内容を決める」でより詳細で具体的な定義を決めるという方法もあります。

例えば、マネージャーの等級では「経営戦略に基づき、部組織の戦略を策定・実行することで組織の差異化を最大化する」というものが考えられます。

STEP6:等級ごとに具体的な内容を決める

各等級の定義を設定できたら、より具体的な等級定義を決めていきましょう

前述の例(経営戦略に基づき、部組織の戦略を策定・実行することで組織の差異化を最大化する)を具体的な等級定義にすると以下のような項目が考えられます。

  • 企業理念を体現し、組織に広めている
  • 経営・部門戦略の立案に貢献し、実現に向けた担当組織の方針・目標・計画を立案・浸透・実行する力がある
  • 目標実現に向け、複数の部下・メンバーをマネジメントし、動かす力がある
  • 部下・メンバーの能力開発を促し、自らの後人を育成する人材育成力がある

このように、具体的な内容を定めることで現場レベルで等級への理解がしやすくなり、社内に等級制度が浸透します。
また、具体的な項目があることで、人事評価の際の基準となり、上司から部下へのフィードバックの手助けにもなるでしょう。

等級定義を抽象的なままにしてしまうと、各等級について従業員によって認識がバラバラになり、等級制度への納得感が薄れ、形骸化してしまう恐れがあります。
従業員全員が自身の等級を把握できるようにすることがポイントです。

STEP7:シミュレーションし、等級制度の運用方法を決定する

完成した等級制度を実際の従業員に当てはめてシミュレーションします。シミュレーションにより、評価や仕組みに問題ないかがチェックできます。あわせて、評価制度や報酬制度との整合性も確認しましょう。

シミュレーションせずにいきなり導入してしまうと、適切な人材配置ができなくなってしまうだけでなく、想定よりも人件費がかかってしまうなどの設計時には気づけなかった課題も明らかにすることができます。
シミュレーションをすることで、制度の導入をスムーズにするだけでなく、制度の欠陥を運用前に解消できます。

シミュレーションに問題がなければ、現制度からの移行方法や、給与・処遇等の運用体制を決定しましょう。

等級制度作成の3つの注意点

等級制度を作成するにあたって押さえておくべき注意点を3つ解説していきます。

注意点1:従来の制度を残しつつ部分的な導入を検討する

注意点1つ目は「従来の制度を残しつつ部分的な導入を検討する」です。

人事制度を改める場合、一から作り直すのではなく部分的に新たなシステムを導入したり、改善することの方がよい場合があります。
部分的な導入や改善により、コストや実際の運用までの時間を削減できるためです。
自社の課題の規模や種類によって最初のステップである方針決定で考えるとよいでしょう。

注意点2:新制度に移行するときに再格付けを実施する

注意点2つ目は「新制度に移行するときに再格付けを実施する」です。

新しい制度の導入に伴い、格付けが上がる人もいれば、下がる人が出てくるのも当然でしょう。逆に旧制度と同じ人ばかりなら、新制度を導入した意味がありません。

等級が下がった人に対して「かわいそう」という気持ちで、旧制度と同じ格付けにしてはなりません。人事担当者はつらいかと思いますが、本来の目的を達成するべく、制度に厳格になって、その人の能力に見合った等級に再格付けしましょう。

一方で、等級制度の導入・改訂は「会社の都合」で実施されるものであるため、際格付けによって報酬が下がるのであれば、当面の間は「調整給」などを支給して、移行期間を作ってあげるという配慮も必要でしょう。

注意点3:専門職の定義を厳しくしすぎない

注意点3つ目は、「専門職の定義を厳しくしすぎない」です。
社員の勤務志向やキャリア志向が多様化する現代において、従来の総合職や一般職だけでなく、複線型の等級制度を導入し、。専門職を設置して多様なコースを考慮しておくことも重要です。

しかし、この専門職コースが形骸化してしまうケースも非常に多いです。
形骸化の原因の1つは、専門職の定義を厳しくしすぎて、社内に該当する人がほとんどいないという状態です。

この場合におすすめなのは、あえて専門職の定義をある程度抽的にしておき、申請制度を導入することです。
「医者が通う病院が本当に良い病院」ということと同じで、専門職にふさわしいかの判断は本質的には同じ専門職しか判断できないということです。

そのため、最低限の実績と基準を設定し、その基準に満たした人のみが専門職コースに立候補できる申請制度を導入し、判断を現専門職のメンバーを含めて会議で決定するということをするだけでも、形骸化のリスクは非常に低くなります。

このように専門職であるが故に厳しく基準を設定してしまうケースが多いので、あえて基準を緩めて他の制度でカバーするという考え方も必要です。

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等級制度の事例3選

定義から作る際の注意点まで、一般的な等級制度の詳しい解説をしてきました。
実際の企業において等級制度はどのように活用され、どのような効果をもたらしているのでしょうか。

最後に、3つの具体事例を紹介します。

株式会社ココナラ

スキルのフリーマーケットサービス「coconala」の運営をしているベンチャー企業である株式会社ココナラ
株式会社ココナラではそれまで、マネージャーのタイプによって人事評価が異なるといった評価の属人性が課題となっていました。

その解消のため、役割等級制度の枠組みの中で、裁量・コミット範囲などの5項目から11段階でグレードを分類する等級制度を採用しました。

また、等級制度改定とともに、給与の決定ロジックを明確化し、客観的な給与決定を可能にしました。

これらの結果、人事評価の評価者間のずれを解消し、給与決定をスムーズかつ納得度の高いものにできたのです。

参考:評価に「曖昧さ」は不要。5つの軸で11段階のグレードを定める、ココナラの等級制度 | SELECK [セレック](https://seleck.cc/disclaimer)」2018年6月5日

株式会社Colorkrew(旧:株式会社ISAO)

「バリフラット」と呼ばれる、階層と管理職を設けない組織運営を行っている株式会社Colorkrewは、その組織形態・企業文化に合わせて等級制度を活用している例です。

株式会社Colorkrewでは、同じ等級の社員にも強み弱みがあり、そのフィードバックの方法に課題がありました。

その解消のために、等級を5等級から11等級に増やし、市場価値に対応する「コア」を基礎点として、フィードバックの観点となる5つの要素から加点・減点を行うことで等級を決定することとしました。

これにより、等級の内訳を明らかにすることで「成長に向かうためのフィードバック」をより明確に伝えられるようになりました。

また、以上の施策の結果、タイミングを問わず昇降級ができる制度や等級と給与の完全紐づけとの相乗効果により、等級や給与への納得度が上昇しました。

参考:評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度 | SELECK [セレック]( https://seleck.cc/1226 )2018年6月12日

ユナイテッド株式会社

アドテクノロジー、コンテンツ、インベストメントの3つを中心領域として事業を展開しているユナイテッド株式会社では、人材育成を重視した等級制度を導入しています。

自ら中核人材となることを宣言した社員の自律的成長をサポートする「グレードアップ宣言」を運用し、「次のグレードに上がるために必要だが、現業だけでは身につきづらい」スキルと目線を獲得するためのカリキュラムを用意しています。

個人の成長を最大化させるために、職種により3つに分けたうえでリーダーシップを発揮する「L(Leadership)職」と「P(Professional)職」の2つに分かれる合計6つの軸から等級を決定しています。

そのうえで、グレードごとに細かく定義したり、細かいスキルマップを作成したりすることによって成長へのプロセスを明確化します。

これらの施策の結果、以前は指名制で受け身がちになっていたものを挙手制にしたことで、能動的な参加がみられ、年間の昇格数がそれまでの倍以上に増加しました。

参考:自ら手を挙げて「昇格」宣言!自律的な成長を全力サポートする「グレードアップ宣言」 | SELECK [セレック] ( https://seleck.cc/1234 )2018年6月17日

まとめ

本記事では、等級制度の定義や目的・種類・作り方と注意点・事例について解説してきました。

等級制度のみを考えても多種多様であり、普遍的な正解はありません。

会社全体の生産性を上げるために、より自社に合った等級制度の設計や改正を検討してみてはいかがでしょうか。

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