エンゲージメントを高める5つの施策|低スコアの原因と改善ステップ

▼ この記事の内容

従業員エンゲージメントとは、会社への愛着や貢献意欲を示す指標です。単なる満足度とは異なり、自発的な行動と業績向上に直結します。本記事では、サーベイによる現状把握から施策実行までの4ステップと、成果が出ている5つの施策、成功企業3社の事例を紹介します。

CEB社の調査によると、エンゲージメントが低い従業員の離職率は9.2%に達する一方、高い従業員はわずか1.2%にとどまります。この約8倍の差は、従業員エンゲージメントが組織の定着率を左右する決定的な指標であることを示しています。

「サーベイを実施したがスコアが低いまま改善しない」「施策を打っても離職が止まらない」「チームの一体感が薄く、MVVが浸透しない」――こうした課題は多くの組織に共通しています。放置すれば優秀な人材の流出が加速し、採用・育成コストが膨らみ続けます。

本記事では、エンゲージメントの定義と従業員満足度との違いを整理したうえで、サーベイによる現状把握からゴール設定、施策実行、効果測定までの4ステップを解説します。さらに、多くの企業で成果が出ている5つの施策と成功企業3社の具体的な取り組みを紹介します。

読み終えるころには、自社のエンゲージメント課題を特定し、最初に取り組むべき施策を選定できる状態になっているはずです。すでにサーベイを実施済みの方も、結果の活かし方を見直す視点が得られるはずです。


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エンゲージメントとは?

エンゲージメント(engagement)とは、従業員が会社や組織に対して抱く愛着・信頼・貢献意欲を総合的に示す概念です。単に「働きやすい」と感じる状態とは異なり、「この会社のために自分から動きたい」という自発的な姿勢を指します。

この概念は1990年にボストン大学のカーン教授によって提唱されました。その後、ギャラップ社がコンサルティング業界で活用し始めたことをきっかけに世界的に普及しています。

2002年にはユトレヒト大学のシャウフェリ教授が「ワーク・エンゲージメント」を提唱し、従業員の心身の健康と仕事への熱意を統合的に捉える概念として定着しました。日本企業のエンゲージメントスコアは国際的に低い水準が続いており、改善の余地が大きい領域です。

詳しくは「従業員エンゲージメントとは?意味と定義をわかりやすく解説」も参考にしてください。

従業員満足度との違い

エンゲージメントと混同されやすい概念に「従業員満足度」があります。満足度は給与や福利厚生といった待遇への納得感を測る指標であり、会社への貢献意欲を直接示すものではありません。

エンゲージメントが高い従業員は「会社のために貢献したい」という動機で自発的に行動します。一方、満足度が高いだけの状態では現状維持にとどまり、さらなるパフォーマンス向上にはつながりにくいのが特徴です。

組織の成長を持続的に牽引するには、満足度だけでなくエンゲージメントを高める施策が不可欠です。

詳しくは「従業員満足度とエンゲージメントの違い」も参考にしてください。

従業員のエンゲージメントに着目すべき理由

多くの経営者や人事担当者がエンゲージメント向上に注力する背景には、組織にとって明確なメリットがあるからです。ここでは代表的な3つの効果を紹介します。

離職防止に強く働く

エンゲージメントの向上は、離職率の低下に直結します。CEB社の調査によると、エンゲージメントが低い従業員の離職率は9.2%であるのに対し、エンゲージメントが高い従業員の離職率はわずか1.2%にとどまります。

この約8倍の差は、待遇面だけでは説明できません。転職市場が活性化するなか、給与や福利厚生では防ぎきれない「心の離職」が増加しています。仕事への意義や組織への信頼が薄い状態では、より好条件のオファーがあれば容易に離職に至ります。

従業員一人ひとりのキャリアや心の健康に寄り添い信頼関係を築くことで、「この会社で働き続けたい」という安心感が生まれます。1on1ミーティングやキャリア面談を通じて個別に関わる仕組みが、定着率向上の基盤となります。

参考:Driving Performance and Retention Through Employee Engagement|Corporate Executive Board

業績が向上する

エンゲージメントが高い従業員は、与えられた業務をこなすだけでなく、会社の目標を自分事として捉えて自発的に行動します。チーム内で自主的に改善策を話し合ったり、部署の垣根を越えて協力し合うことで、組織全体の生産性が底上げされます。

ギャラップ社の調査では、エンゲージメントが上位25%の組織は下位25%と比較して、生産性が17%高く、収益性が21%高いという結果が報告されています。個々の自発的な行動の積み重ねが、売上や利益の数字にも明確に表れるのです。

エンゲージメントは個人のパフォーマンスだけでなく、組織全体の活力を生み出す基盤です。チーム間連携の活発化やナレッジ共有の促進など、数値に表れにくい組織力の向上にも寄与します。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を浸透させられる

MVVは会社の存在意義や目指す方向性を示す羅針盤です。エンゲージメントが高い組織では、MVVが従業員一人ひとりの行動指針として根付いています。

逆にエンゲージメントが低い組織では、MVVが「壁に貼ってあるだけのスローガン」に留まりがちです。日々の業務判断とMVVが結びつかず、部署ごとに行動基準がバラバラになるケースは少なくありません。

従業員がミッションに共感し「このチームの一員として貢献したい」と感じている状態こそ、MVVの浸透が実現した姿です。エンゲージメント向上は、バラバラだった組織を同じ方向へ導く力になります。


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従業員エンゲージメントを高めるためのステップ

エンゲージメントを高めるには、現状を正しく把握したうえで計画的に施策を進めることが重要です。以下ではPDCAサイクルに沿った4つのステップを解説します。

ステップ1:現状を測定・把握する

最初のステップは、エンゲージメントサーベイを実施して組織の現状を数値化することです。サーベイでは、職場環境・人間関係・仕事へのやりがいなど多角的な項目を調査し、部署ごとの傾向や課題を可視化します。

サーベイの目的は単なる数値化ではありません。「どの部署にどのような課題があるか」「何がモチベーションに最も影響しているか」を特定することが重要です。

さらに結果を社内に開示し「皆さんの声をもとに改善策を検討しています」と伝えることで、サーベイ自体がエンゲージメント向上のきっかけとなります。

ステップ2:ゴールを設定する

現状を把握したら、次は数値で測れる具体的な目標を設定します。「半年後までにエンゲージメントスコアを5ポイント向上させる」のように、期限と数値を明確にしましょう。

目標設定の際は、全社一律ではなく部署ごとの課題に応じた個別目標を併設するのが効果的です。スコアが特に低い部署には重点施策を設け、改善幅を大きく設定することで、全体の底上げを狙えます。

サーベイの分析結果によっては、エンゲージメントそのものではなく関連変数を目標にすることも有効です。たとえば「コミュニケーションが活発な部署ほどスコアが高い」という傾向が見られた場合、1on1ミーティングや懇親制度の導入がアプローチとして適しています。

ステップ3:現状とゴールを踏まえて施策を検討する

現状分析とゴール設定が完了したら、目標達成に最も効果的な施策を選定します。ポイントは、自社の課題に対応した施策を選ぶことです。

たとえば「キャリアパスへの不安」がスコアを下げている場合は、人事評価制度の見直しや社内公募制度の導入が有効です。「上司とのコミュニケーション不足」が課題であれば、1on1ミーティングの習慣化やメンター制度の導入が効果的でしょう。

他社事例をそのまま導入するのではなく、自社固有の課題に対応する施策を選定することが成功の鍵です。分析や施策設計に不安がある場合は、人事コンサルタントなど外部の専門家の知見を借りることも有効な方法です。

詳しくは「人材育成コンサルタントの選び方」も参考にしてください。

ステップ4:実行後、効果測定と改善を行う

施策実行後は、再度エンゲージメントサーベイを実施して効果を検証します。施策前後のスコア変化を分析し、何が効果的だったか、何が不足していたかを特定しましょう。

効果測定のタイミングは、施策導入から3〜6か月後が目安です。短すぎると変化が表れず、長すぎると因果関係の特定が難しくなります。パルスサーベイを月次で実施し、傾向を追跡する方法も有効です。

期待した効果が見られなかった場合は、分析・目標設定・施策選定のどこに問題があったかを振り返ります。このPDCAサイクルを継続的に回すことで、施策の精度は着実に上がっていきます。

従業員エンゲージメントを向上させやすい施策5選

ここでは多くの企業が実践し効果を実感している5つの施策を紹介します。自社の課題と照らし合わせながら、導入を検討してみてください。

社員に合った働き方を提供する

リモートワークやフレックスタイムなど、働く場所や時間を選べる制度はエンゲージメント向上に効果的です。従業員一人ひとりに合った働き方を実現できれば、ライフイベントによる離職も防ぎやすくなります。

多様な働き方を認める姿勢は「自分を大切にしてくれている」という信頼感を生みます。ただし「多様な働き方の容認」とは、ワークライフバランスの推進だけを意味しません。

成長意欲の高い社員には挑戦的な案件を任せるなど、個々の志向に寄り添うことが重要です。「特定の働き方の押し付け」ではなく「それぞれの価値観を尊重する」という視点が、エンゲージメント向上につながります。

人事評価をアップデートする

公正で納得感のある人事評価制度は、エンゲージメントの土台です。「自分の頑張りが正当に評価されていない」と感じる従業員は、モチベーションが低下しエンゲージメントも下がります。

具体的には、評価基準の透明性を高めることが第一歩です。「何をどの水準で達成すれば評価されるのか」を明文化し、評価者間のバラつきを減らすキャリブレーション会議を導入する企業が増えています。

年に一度の評価面談で全てを判断するのではなく、日常的に上司と部下が対話しフィードバックを行う「パフォーマンスマネジメント」の考え方が重要です。1on1ミーティングはその代表的な手法であり、キャリアや悩みに寄り添うことで深い信頼関係が築かれます。

社内のコミュニケーションを活性化させる

エンゲージメントが高い組織は、社員同士のコミュニケーションが活発で風通しがよいのが特徴です。円滑なやり取りはチームワークの向上だけでなく、職場の心理的安全性の強化にもつながります。

心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した概念です。メンバーが対人関係のリスクを気にせず率直に意見を言える状態が、組織の学習能力やパフォーマンス向上に不可欠であると示しています。

心理的安全性が確保されたチームでは、失敗を恐れず挑戦したり新しいアイデアを提案する行動が促されます。

参考:Amy C. Edmondson – Faculty & Research|Harvard Business School

社内メディアやイベントを通じてMVVをアピールする

MVVは従業員に「自分ごと」として受け止めてもらってこそ効果を発揮します。社内報やイントラネットでMVVを体現している社員を特集したり、ワークショップで理念を自分の言葉に落とし込む機会を設けることが有効です。

たとえば四半期に1回の全社ミーティングで「MVV体現エピソード」を共有する企業や、部署横断のワークショップでMVVを自分の業務に紐づけるワークを実施する企業もあります。一方的に掲げるだけでなく、対話を通じて理念を咀嚼する場が浸透には不可欠です。

「どのような行動が評価されるのか」を従業員が実感できる仕組みをつくることで、MVVが日常の行動指針として根付いていきます。理念への共感が高まれば、日々の業務に対するモチベーションも向上します。

社内における目標やロールモデルを設定する

「自分もああなりたい」と思える目標やロールモデルの存在は、エンゲージメント向上に大きく寄与します。身近で再現性のある成功例を見ることで、自分の可能性を実感し努力するモチベーションが生まれるためです。

社内報や全社イベントで優秀な社員やプロジェクトを紹介し、成功体験を共有する文化を醸成しましょう。ポジティブな競争意識とチームワークが生まれ、組織全体のエンゲージメントが底上げされます。

ポイントは、目標を「社内でしか実現できないもの」に設定することです。「年収1,000万円」のような社外でも達成可能な目標ではなく、「特定のプロジェクトに参画する」「社内コンペで入賞する」といった自社固有の目標が、定着とエンゲージメント向上の両方に効果的です。


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従業員エンゲージメントが高い企業の事例紹介(3選)

ここでは従業員エンゲージメントの高さで知られる企業3社の取り組みを紹介します。自社の状況と照らし合わせながら、参考にしてください。

株式会社LIFULL

株式会社LIFULLは「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」で日本一働きたい会社に選ばれた企業です。エンゲージメントサーベイの結果をもとに施策を実行・検証するPDCAサイクルを徹底しています。

特徴的なのは、従業員の「挑戦」を応援する制度です。社員交流スペース「LIFULLハブ」や学びの場「LIFULL大学」を整備し、業務に直結しない分野でも自主的に学べる環境を提供しています。

多様なキャリアパスや教育機会が用意されているため、志向が変わっても離職せず社内で新たなキャリアに挑戦できる点が、高いエンゲージメントにつながっています。

フューチャー株式会社

フューチャー株式会社は、テクノロジーを活用したコンサルティング事業を展開し、エンジニアのエンゲージメント向上に注力しています。社員個人やチームの成果を認め褒賞する文化を大切にしている企業です。

同社の「Best Project of the Year(BPY)」は、年間で最も優れた成果を挙げたプロジェクトを全社員の前で表彰する制度です。成果が正当に評価され全社に共有されるという強いメッセージが、「この会社で成果を挙げたい」というモチベーションを後押ししています。

スターバックスコーヒージャパン

スターバックスコーヒージャパンは、従業員を「パートナー」と呼び「最も大切なブランドのコア」と位置づけています。同性パートナーにも戸籍上の配偶者と同等の福利厚生を適用するなど、多様な人材が安心して働ける環境を整備しています。

同社の現場では詳細なマニュアルがほとんどなく、パートナーが「どうすれば顧客体験をよりよくできるか」を自発的に考えて行動します。この自律的な姿勢こそ、高いエンゲージメントが生み出す成果の一例です。

よくある質問(FAQ)

「従業員満足度」を高めれば、エンゲージメントも上がりますか?

必ずしもそうとは限りません。満足度は給与や福利厚生などの待遇への納得感を測る指標であり、エンゲージメントは会社への信頼や貢献意欲を指します。待遇改善だけでは自発的な貢献は引き出せないため、エンゲージメント向上には別のアプローチが必要です。

エンゲージメントを高めるために、まず何から始めるべきですか?

エンゲージメントサーベイを実施し、組織の現状を数値で可視化するところから始めましょう。勘に頼らず、データでどの部署のどの要素に課題があるかを特定することで、効果的な施策を選定できます。

離職率を下げるのに最も効果的な施策は何ですか?

1on1ミーティングの習慣化が有効です。上司と部下が定期的に対話しキャリアや悩みに寄り添うことで、強い信頼関係が築かれます。エンゲージメントが高い従業員は離職率が大幅に低いことが調査で確認されています。

会社の理念(MVV)が浸透せず、組織がバラバラです。どうすればよいですか?

MVVを体現している社員を「ロールモデル」として称賛することが効果的です。社内報やイベントでMVVに沿った成功事例を紹介し、どのような行動が評価されるかを実感できる仕組みをつくることで、理念が自分事化されていきます。

心理的安全性を高めると、甘えが生じませんか?

心理的安全性は「馴れ合い」ではなく、率直に意見を言える環境を指します。失敗を恐れずに挑戦でき、懸念点をすぐに報告できる状態がミスの防止とパフォーマンス向上につながります。適切な目標設定とセットで運用することで、健全な組織成長を促せます。

まとめ

従業員エンゲージメントを高めることは、離職率の低下・業績向上・MVVの浸透といった多面的な効果をもたらします。まずはサーベイで現状を把握し、自社の課題に合った施策をPDCAサイクルで継続的に改善していくことが重要です。

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