MBOにおける目標設定の方法を解説!メリットや運用方法についてもご紹介!

MBOとは、Management by Objectives and Self-contro(目標による管理)の略称で、1954年に経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した人材マネジメントの手法です。目標による管理とは、「社員の自主的な業務への取り組みを促すための仕組み」を意味しており、日本では「目標管理制度」と呼ばれています。

MBOでは、まず社員本人が業務目標を設定し、上司が目標達成に向けたサポートを行っていきます。組織の目標達成に向けて自分が貢献できることを「目標」として設定し、自ら計画と行動をし、その達成度によって評価を受けます。このプロセスにより、目標が組織の戦略やビジョンに適合し、部下がその達成にコミットメントを持つことが促進されます。

従来の目標管理方法との違いは、社員自らが目標到達までを管理する点です。社員が主体的なるべき理由は、目標を達成するまでのプロセスやアクションを考えることで、方向性が具体的に見え、業務効率の向上が期待できるからです。そうすることで、やりがいやモチベーション向上にもつながり、企業の業績やプロジェクト、個人目標を成功させる可能性などに結びつく、という重要な考え方です。

このように、MBOは社員が自分で目標を決めることによって、個々の自主性を育み、パフォーマンスやモチベーションの向上に繋がります。さらに、組織単位では生産性の向上、人事評価の効率化、適切な人材育成など、さまざまな効果があると言われています。

本記事では、MBOを用いた目標設定のやり方、事例、メリット、コツや具体例などを幅広く解説し、自社で取り入れる際のポイントを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

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目標設定とは

目標設定とは、個人または組織が達成したい具体的な成果を明確に定義し、それに向けて計画を立てるプロセスです。

適切な目標設定は、何を達成したいのかを明確に示し、企業のメンバーの行動の指針となります。目標設定には、目指すべき方向性を示すことによって、達成までの計画を立てやすくし、現状とのギャップを把握させる役割があると同時に、効率的な行動を起こす動機づけも担います。

目標設定の際には、具体的で測定可能な目標を立てることが重要です。なぜなら、「○○をがんばる」「○○を行う」といった曖昧な目標設定では、何を基準に達成とするか、いつ達成となるかの判断も難しくなってしまうからです。また、目標設定にはモチベーションを向上させる効果もあります。達成感や成功体験が想像しやすくなるほか、人事評価との連動によって公平な評価を行うこともできます。

このように、目標設定は目標を立てることのみではなく、達成までの継続的なプロセスも含めて意義があるものです。価値のある目標管理を行う為には、目標を変化する状況や目的に応じて適宜修正する必要があります。目標設定で決めた期間が終了した後には、目標を振り返り、結果を踏まえて新たな目標を設定することで、成長や発展を続けることができます。

目的との違い

目的設定は、なぜその目標を追求するのか、何を達成したいのか、組織や個人の存在意義や価値観に対する「なぜ」を明確にするプロセスです。それに対して目標は、「どのようにそれを実現するのか?」という具体的なステップや達成基準を示します。

例えば、大手飲食チェーンを展開する企業の目的と目標例は、このようになることが考えられます。

目的: 「地域社会においしい料理と快適な食事体験を提供し、人々の生活をより豊かにすること。」
目標: 「今年度中に全店舗で顧客満足度を10%向上させるため、各店舗で月1回のサービス研修を実施し、新メニューの導入を通じて売上を15%増加させる。」

このように、目的は目標を達成したことによって実現する理想的な状態を表し、目標に方向性を与える役割となります。企業では組織の「ミッション」や「ビジョン」が目的を表すことがあります。

MBO(目標管理制度)とは

MBO(目標管理制度)は、1954年に経営学者ピーター・ドラッカーが著書『現代の経営』で提唱した手法です。

MBOという言葉は「Management by Objectives and Self-control」の略で、日本語では「目標管理制度」と呼ばれています。また、企業によっては「業績評価」「業績管理」「成果評価」という言葉で呼ばれている場合も多いです。

社員が自ら目標を設定し、その達成までのプロセスを計画し管理することで、個々の自主性を成長させ、パフォーマンスやモチベーション、生産性を向上させることを目的としています。また、達成度や達成までの過程において、公平性のある人材の能力測定を行うことも可能にします。

目標設定の段階では、会社の方針と社員の目指す方向性を擦り合わせ、一人ひとりが具体的な目標を設定し、設定後には成果までの進捗を管理します。進捗管理の段階では、目標達成への業務の進み具合や状況の変化、個人の能力に合わせて、必要であればその都度目標の修正を行うことも重要です。これにより、自発的な行動が促され業務効率が向上し、会社の業績やプロジェクトの成功に結びつきます。

具体的な目標には、能力開発目標、職務遂行目標、業務改善目標、業績目標の4つがあり、期間終了後に自己評価と上長評価を行い、次期の課題を明確にします。この手法は、社員が自ら設定した目標を上司が確認し、組織目標とリンクさせながらサポートする点が特徴です。

MBO(目標管理制度)の目的

MBO(目標管理制度)の目的は、従業員一人ひとりが組織が掲げる戦略の実現に向け、自律的に自身の目標や役割、やるべきこと判断し、目標達成に向けて行動し、課題を解決していくことです。また、設定した期間の終了後には目標の成果を振り返り、評価をもとに自身の成長に繋げていくことも目的としています。

従来のトップに押し付けられる形の目標設定方法とは異なって、本人の自主性に任せる点で大きく異なります。

MBO(目標管理制度)の意味

1954年に経営学者ピーター・ドラッカーが提唱したMBOという言葉は「Management by Objectives and Self-control」の略です。日本語に置き換えると、「共通目標」と「自律的な貢献」によって「組織の成果を上げる」ことを指します。ここでは、MBOの意味をさらに理解するために、それぞれの単語の意味を解説していきます。

組織で成果を上げる(Management)

Management(マネジメント)とは、「組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関」とドラッカーは定義しています。成果とは、売上や利益ではなく、顧客に届いた価値のことを指しています。つまり「組織を使って成果をあげる」ための、あらゆる全てのことマネジメントするという意味です。

共通の目標(Objectives)

Objectives(オブジェクティブズ)は、日本語では「目標・目的・客観」という意味になります。客観的な目標や目的がなければ、組織は進むべき方向を間違い、チームが機能しなくなってしまいます。そのため、ドラッガーは組織に属する一人ひとりに「共通の目的」が必要であると説明しています。

自律的な貢献(Self-control)

最後は、Self-control(セルフ・コントロール)です。よく日本では「Self-control」を除いて、MBOのことを「ManagementByObjectives」のみで表現している場合が多いですが、「Self-control」もMBOおいては重要なパートの一つです。

この「Self-control」は、組織の成果に対して、自分の果たすべきこと(貢献)を自ら考え、貢献に対して責任を持つことです。つまり、組織の成果をあげるために自分自身でやるべきことを考えて、主体的に行動するということです。

そのため、MBOから「Self-control」を抜いてしまうと、目標が「誰かに管理される」ストレスフルなものになってしまうので、自律性を備えていることが非常に重要です。

日本におけるMBOの誤解

日本において、MBOはバブル崩壊後の1990年代に急速に広がりました。バブル崩壊後、企業はコストカットせざるを得ない状況になり、従来よりも成果主義的な人事評価制度や報酬制度が取り入れたのと同時に、主に評価の根拠とするためとしてMBO(目標管理)が取り入れられました。

そのような背景から、前述した「Self-control」の部分が抜け落ち、日本では人事制度の1つという認識でMBOが用いられているのが一般的になっています。

しかしながら、MBOというのは本来ならばマネジメントの考え方であり、人事評価の手法でありません。会社が設定する目標を上手に使って自己管理を促すことで、社員一人ひとりのやりがいやモチベーションを引き出し、その結果として目標を達成するというマネジメントの考え方こそがMBOなのです。

MBOとOKR・KPIの違い

MBOとよく比較される考え方として「OKR」と「KPI」の2つがあります。

OKRとKPIは、MBOと何が異なるのでしょうか?OKR・KPIの違いについて説明していきます。

MBOとOKRの違い

OKRとは、「ObjectivesandKeyResults」の略で、日本語に訳すと「共通の目標と主要な結果指標」です。OKRは、GoogleやFacebookなどのGAFAに含まれる企業が導入するなど、近年注目を高める有名な目標管理制度で、もともとはインテル社の元CEOアンディ・グローブ氏が、ドラッカーのMBOをインテル流にアレンジした実施方法のことを指します。

OKRは、MBOとOKRは別物として比較される事が多いですが、実際はMBOという考え方の中にOKRがあるというイメージが適切です。OKRもMBOと同じく定量的な目標の立て方をすることで、より良い目標設定をする事ができます。

MBOとの大きな違いは、設定する目標の難易度にあります。MBOでは100%達成を目標にして設定しますが、OKRでは目標(Objectives)が70%程度となるように、ある程度の努力が必要なストレッチな目標を設定します。なぜなら、今まで通りの意識では簡単に達成できない目標に挑戦する事で、自主性を育て、本来予測していた達成度よりも大きく上回った成果を出すことを目的にしているからです。

そのためインテル社では、平均として4割の目標が未達成に終わる傾向があり、むしろ目標を100%達成した部門においては「目標設定が低すぎたのではないか」とフィードバックを受けることも。

また、OKRの要素である「Key Results(主要な結果指標、以下KR)」は、OKRのO(目標)の部分の進捗状態をチェックためのものです。KRは、目標を達成する道筋を具体的にするために、期日や手段を明確にし、客観的に評価が判断できるように数値での基準を設定します。

例えば、「月の売上200万円を創出する」というOを目標として設定した場合は、結果指標であるKRは「月間50社顧客に訪問する(KR結果指標)」のように設定します。

このように、OKRはMBOをより効果的に実現するために、インテル流にアレンジした手法のことです。目標の100%を目指すようなMBOで行うのか、目標を70%のストレッチな物にして目指すようにするのかは、会社の雰囲気や進捗管理の様子に応じて納得のいくように使い分けると良いでしょう。


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MBOとKPIの違い

KPIとは「KeyPerformanceIndicator」の略で、企業の目標管理の際に必要となる中間指標のことです。そのため、KPIを追っていけば最終目標であるKGIが達成されるように、プロセスを組み立てながら半期ごとまたは1年ごとに目標設定する必要があります。また、KPI自体の達成率を曖昧にしないためにも、各KPIに対しては具体的な数値目標も決めるようにしましょう。

MBOでは、まず社員本人が業務目標を設定し、面談などで上司と進捗状況を共有し、目標達成に向けたサポートを行っていきます。MBOとKPIの違いとしては、MBOでは目標の達成度を計測するのに対して、KPIは目標に対する中間指標ということですが、KGIも含めると目標管理という考え方では、本質的には違いはほとんど無いと言えるでしょう。

例えば、KGIが「市場シェアの前年比5%拡大」だったとします。この場合、KPIには前年のシェア率データを把握したうえで「前年比で月間市場シェアを10%増やす」のように、必ずKGIを達成に導くようなKPIを設定する必要があります。

このようにKPIを設定することで、組織や部門のパフォーマンスを定期的に測定し、現状のレベルを分析することが可能になります。この分析により、問題や改善の必要性を特定し、効果的な意思決定を行う基盤が提供されます。

このように、MBOとKPIに関しては本質的ほとんど違いがありませんが、達成度を計測するタイミングが最終段階にあるMBOに対し、KPIは中間目標にまつわる目標管理であるため、最終ゴールのKGIも見据えた目標管理制度となります。

MBO(目標管理制度)のメリット

それでは、企業がMBOを取り入れて目標設定し、管理制度を運営していくメリットとはどのようなものがあるのでしょうか?
組織側と社員側のそれぞれの観点から紹介していきます。

方向性が明確になり効果的な行動が促進される

1つ目のメリットは、社員の具体的かつ効果的な行動が促進される点です。

MBOでは会社から設定された個人目標ではなく、組織の目標の方向性に合わせて自身で設定した目標の達成を目指します。自身が設定した目標であるからこそ、目標に対しての責任感も生まれ、自分の課題に対して努力することができます。

目標を自分で考え、現状に対して必要なことは何かを分析し、達成までの計画を立てることによって、自分に必要な行動が明確になり、時間を無駄にすることなく能力を発揮できるようになります。また、目標設定時には目標の内容自体が簡単すぎず、尚且つ難しすぎない範囲であるかなどを上司と部下ですり合わせることも重要です。

このように、自分で設定した目標を達成するために、自身の業務量やスピードをコントロールすることを通して、自己管理能力の向上も期待できるでしょう。

社員のモチベーションが高まる

2つ目のメリットは、社員のモチベーションを高められる効果がある点です。
MBOでは、誰かに強制された目標ではなく、自分で設定した目標に向かって意欲的に計画を実行し、成果を出す必要があります。

目標達成を成功させるためには、上司やチームによるノルマのような外発的動機づけではなく、個人の内発的動機づけで取り組むことが重要です。目標達成をイメージし、自分の状況を客観的に把握しながら自律性を持って持続的に努力することで、成果と評価に反映される経験が、さらに次の目標達成までのモチベーションアップに繋がります。

このように、自分で設定した目標を達成する経験によって社員は自己成長を感じることができ、その成功経験から仕事のエンゲージメントやパフォーマンスも向上が期待できるでしょう。

透明性の高い評価をつけることができる

3つ目のメリットは、人事評価の透明性が高くなる点です。

なぜなら、目標の達成度に対応した評価基準をあらかじめ決め、伝えておくことによって、評価の判断に納得感が生まれるからです。

透明性の高い評価を行う為にも、目標設定の際は定量的に測れる達成基準を定めておきましょう。定量的な目標があることで、計画で定めた到達度合いと進捗状況を照らし合わせて効果的な分析と改善を行うことができるほか、数字で測れる成果に基づいた客観的で公平な評価が可能になります。

キャリア目標など、数字での設定が難しいの定性的な目標もありますが、そのようなケースでは「どんなをしている状態が達成とされるのか」を明確にすることで評価がしやすくなるでしょう。

このように、ドラッガーが提唱したMBOでは自己評価を実施し、その人自身で振り返ることが基本ですが、日本企業の多くではMBOと評価制度を紐づけています。評価の結果は、最終的には給与にも反映される重要なものです。そのため、査定としての評価のみではなく、社員の成長のためにも評価面談時にフィードバックの実施を忘れないようにしましょう。


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MBOでの目標設定をする際に気をつけること

ここまではMBOの導入方法や実践でのメリットについて解説してきました。
ここからは、MBOを活用した効果的なマネジメントを行うための、成功ポイントを説明していきます。

企業の全体目標から個人目標を設定する

MBOの成功ポイント1つ目は「企業の全体目標から個人目標を設定する」ことです。

MBOは個人の主体性を引き出すものですが、各従業員が企業としての全体目標を無視して個人目標を設定すると、本来組織として達成・実現したいことが達成されなくなってしまいます。そのため、企業としての目標を設定してから、その企業目標に関連した各個人の目標を設定していく必要があります。

そうすることによって、個人目標が達成されることにより自然と全体目標も達成される構造を作ることができます。また、従業員が自主的に全体目標と自身の目標の関連性について考えることで、組織全体を意識するきっかけにもなり、従業員の視座の向上やメンバー同士の協力にも役立ちます。

上司・部下で話し合って目標設定を行う

MBOの成功ポイント2つ目は「上司・部下が納得した目標設定を行う」ことです。
MBOで重要なのは、最初にも説明した通り「Self-control(セルフ・コントロール)」の意識を忘れずに、各個人が目標に対して自律的に自身をマネジメントすることです。

従業員それぞれが自律的に目標に向かって行動するためには、従業員自身が達成意欲が湧く納得した目標である必要があります。そのため、部下自身が目標設定を行うことで、目標に対して納得度が上がるだけでなく、責任感も同時に生まれ、目標に向かって確実に行動します。

一方で、部下だけが納得する目標では、組織の目標とズレが発生する可能性もあるので、部下が設定した目標を上司が確認し、双方が納得する目標を設定することが重要です。その際には上司からアドバイスを行うことも重要ですが、目標・計画の修正に関しても、目標設定時と同様に本人を主体として検討させるように意識しましょう。

おすすめなのは、目標設定時に1on1ミーティングなどの上司・部下の面談を実施し、ズレの解消や組織・チーム目標等の設定の意図などを伝達する機会を作る方法です。上司と部下が個別に時間を確保し、しっかりとコミュニケーションを取りながら目標管理に取り組むことができます。

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設定した目標を全社で共有する

MBOの成功ポイント3つ目は「設定した目標を全社で共有する」ことです。

目標を社員全員が見える形で共有することによって、形だけのMBOになってしまうことを防ぐことができます。

目標を全社公開することによって、組織としての目標の構造が明確になり、全体目標がどのように個人目標につながっているのかを認識しやすくなります。また、部署やチームの目標の進捗が公開されていると、進捗が滞ってしまった際に、他部署から支援を受けるなどの部署間でのサポート作用が働きやすくなるのもメリットです。

さらに、個人目標も公開されることによって、人に見られているという適度なプレッシャーがかかる状態になり、目標へのモチベーションの低下を防ぐこともできます。

このように、目標を全社で共有することで、モチベーションの維持や協力体制などのメリットがあります。現在目標が公開されていない場合には、ぜひ検討してみてください。

目標が評価制度に紐づくようにする

MBOの成功ポイント4つ目は「目標を評価制度に紐づける」ことです。
MBOは本来、自己評価を基本とした概念ですが、ほとんどの企業はMBOと人事評価を結びつけています。そのため、MBOで立てた目標の成果をきちんと評価をする仕組みを整えることが重要です。

評価に対して不満が発生してしまう場合、不満の矛先は評価制度そのものではなく、どのような評価をされているのかのプロセスや根拠など、評価の運用に関わるものがほとんどです。会社によっては評価システムがどのように行われるかが周知されておらず、社員が「なぜこの評価になったのかわからない」と感じ、人事に不信感を抱く原因となる可能性もあります。

そのため、MBOを運用する際には、目標に対する結果がどのように評価されるのかを明確にして、認識を社内に浸透させることが必要です。そして実際に評価を行う際も、きちんと基準に則い、公正に評価するようにしましょう。

SMARTの法則に則って目標設定する

目標設定の際には、フレームワークの一つであるSMARTの法則に従うのも良いアイデアです。SMARTとは、「Specific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Related(上位目標との関連)・Time-bound(期限)」の5つの頭文字を組み合わせた略語からなるフレームワークのことです。

目標設定の際には、まず年間や半年ごとに期限を設定し、そこから逆算して四半期や月間の目標、そしてできる事なら一週間や1日の目標を作っていく事がおすすめです。細かいアクションや期限が決まっていることによって、進捗の管理がしやすくなり、優先順位が明らかになるほか、早めに改善すべき点を発見できます。

実際に目標の内容を決める際には、取り組みたいアクションについて具体的に言及しましょう。この時、目標が組織やチームの目標と関連性があるかどうかが重要です。また、測定可能な定量的な目標であることが大切です。さらに「〇日までに○○を済ませる」のように期日と関連させた進捗の測定しやすい目標を立てるとよいでしょう。

また、目標は達成可能な範囲・レベルで立てます。目標が達成不可能な、現実味の無いものになってしまうと、達成までのプロセスが想像できずにやる気を削いでしまうほか、未達成だった場合の改善点の洗い出しが難しくなってしまいます。

このように、SMARTの法則にはメンバーが目標の立て方を学習し、効率化を図る方法を検討するようになることで、メンバーの成長とモチベーションのアップに繋がるというメリットがあります。

目標設定の具体例(営業)

営業職とは、企業や組織が提供する製品やサービスを顧客に販売することを主な職務とするポジションです。営業職は主に、顧客との関係構築を通じて売上を増やし、市場シェアを拡大することを目指したり、営業事務によって顧客情報や対応内容の管理も行っています。

営業職は、もともと営業スキルがある人材が成果を発揮できる部署のように見られがちですが、実際のところは異なります。目標達成に対して、計画的かつ戦略的に行動し、自分自身のモチベーションを高く維持できる人材こそが、こつこつと努力して達成を実現できる仕事でもあります。

また、個人でありながらチーム全体で高いレベルの生産性を維持し、同時に効率化を行っていかなければならない点では、目標達成までのシビアな進捗状況の管理も欠かせません。そのため、一人ひとりが自発的に自己管理を行う必要のあるMBOを活用することで、自分の到達点を把握し、達成を意識した取り組みを目指せます。

ここでは、営業職におけるKGI・KPI目標の設定例や、評価項目の具体例を見ていきます。営業職の効果的なMBO目標管理の事例として、業務の改善やパフォーマンス向上の参考にしてみてください。

KGI・KPIの設定

新規開拓の営業部で月の売り上げ600万を目指す営業マンのKGI・KPI設定の例について解説します。

まずは、600万という目標のままだとKPIを設定しにくいので、社数に変換します。商材の値段が決まっていれば、「600万÷商材の値段」で出ますが、プランによって値段が変わる商材も多いので、その場合は今までのデータから、商材の平均単価を出します。

計算式としては「今までの売り上げ÷今まで契約した社数」になります。

目標が600万なので、平均単価を割ることで、今回契約しないといけない社数を出す事ができます。
計算の結果、商材の平均単価が60万だとしたら、今回追うべき社数は600万÷60=10社になります。

もし仮に電話で商談機会を獲得し、商談する会社の場合は、ここから1日で電話をかけないといけないかを計算します。(実際はメールでの商談の獲得もありますが、ややこしくなるので今回は省きます)

例として、電話をして商談機会を獲得できる確率が5%(電話獲得率5%)で、商談から受注する可能性が20%(受注率20%)だとします。この場合は、10社契約するためには、10社×5=50社の商談アポイント)が必要です。さらに、50社の商談をするには、50社×20回=1000回の架電が必要です。さらに営業日を20日とすると1000回÷20日=50回で、毎日50回の架電が必要です。

営業時間が8時間で、うち2時間を商談時間に費やす、業務時間や会議が1時間あるとすると8時間(業務時間)-2時間(商談時間)-1時間(業務時間や会議)=5時間(架電時間)の計算になり、5時間で50回の架電が必要です。

そのため、KPI目標を「1時間で10回の架電」とすれば、「月の売上600万」というKGI目標が達成できることになります。

最初は上記のような細かい設定を上司がサポートし、部下には行動をメインにしてもらっても良いですが、徐々に部下自身に主導権を握ってもらうことで、部下の思考力と自律心を向上させる事ができます。

評価項目の決定

営業職の能力には定量で測定できるものと、定量での測定が難しい定性のものが存在します。そのため、営業職の目標設定では、評価項目をどうするかについても明確にしておきましょう。

ここでは、定量で表せる目標・定性で表せる目標それぞれの評価について解説していきます。

定量評価

KGI・KPIなどで目標の設定を終えたら、次に目標を達成するための手段や行動を決めていきます。このとき、個人目標を達成するための計画を、目標の期日から逆算して設計するのがポイントです。

営業職においては、売上や契約した社数を追うために具体的な数値目標を設定し、進捗を見える化するようにしましょう。

しかし中には、サービスや商品の単価感が大きく「平均契約が月に1社」といった定量化が難しい場合もあります。そのような場合には、0社だった月と2社だった月において、平均社数には達成していても、0社だった月の評価が理不尽に低くなってしまいます。このような場合には「何件商談するか」等の契約獲得までに発生する業務の件数等で目標を設定するとよいでしょう。

最後に、決めた手段や行動の進捗を確認するために週数や日数で割った目標数値を、Excelやスプレッドシート、専用のツールに記入できたらMBO運用の準備が完了です。定量で目標設定を行うことで、目標の達成度や到達度をパーセンテージ等で算出することができ、公平な評価が可能になります。

定性評価

では、定量で測れない目標に関してはどのような評価制度とすればようのでしょうか?

例えば、営業職には新人のオンボーディング、また部門間の連携等が必要となるシーンが存在します。このような業務への評価に関しては、能力評価項目としての定性評価の設定が適切です。

定性目標は数値で設定できないとはいえ、明確な達成時期とセットで設定しましょう。その際には、行動にまつわる目標ではなく、目指したい状態を掲げた目標に設定しましょう

例えば、「~~の変革をする」という目標は行動目標になってしまうので、「~~な状態にする」という状態目標にすることが望ましいです。営業のシーンにおいては「ロールプレイングを毎日行い、スクリプトを見なくても先方からの質問に答えられるようになる」のように設定できます。

このように、達成の判断が可能なように、頻度や期日に言及した目標を設定することで、定性的な目標に関しても評価が可能になります。

MBOでの目標設定をうまく運用するコツ

MBOでの目標設定を組織で取り入れる際には、継続的な運用があってこそ目標管理制度が存在する意味があるといえます。この章では、具体的な運用のコツについてご紹介します。

継続的なモニタリングと修正をする

1つ目のコツは、継続的にモニタリングを行い、必要な修正を加えていくことです。

MBOの目標設定後には、目標達成までのプロセスにおいて定期的に進捗状況を振り返りましょう。進捗のモニタリングでは、目標に対する取り組みの達成度を把握し、必要に応じて計画の修正や調整をといった対応を行うことができる点が効果的です。

このように、継続的に振り返りを行い進捗を把握することで、目標達成までに修正が必要な点がないかを見極め、手遅れになる前に必要な対策を講じることができます。

評価者(管理職)のMBOについての理解を促進する

2つ目のコツは、評価担当者である管理職やマネージャーなどにMBOへの理解を浸透させることです。

パーソル総合研究所の調査によると、上司の研修経験の実態として、評価者研修を受けたことがない割合は37.4%、目標設定に関する研修・トレーニングを受けたことのない人は46.7%と、約半数が評価に関する研修の受講経験がないことが明らかになっています。(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/personnel-evaluation.pdf

MBOでは、社員それぞれが自身の目標を設定し、どの程度達成できたか、どういったプロセスを歩んだのか、といった点を評価します。MBO本来の目的を上司自身が理解していないと、本来の一人ひとりの自主性を尊重する目的から外れ、目標の押し付けやストレスの高い目標管理が起こってしまう可能性もあります。

そのため、MBOを実施する際は、目標設定における上司のかかわり方や評価に関するスキルを学ぶための研修をあわせて取り入れるのがおすすめです。また、新たにMBOを取り入れる場合は、評価制度との関わりを説明する説明会を開催して、自社の評価制度への理解も高めましょう。

まとめ

MBOにおける目標管理は、社員の自主性に任せた目標管理の方針であり、従来の上司や組織が目標を押し付ける形とは異なります。MBOの運用によって、メンバー個人の成長に繋がるほか、納得感のいく目標設定によってモチベーションの向上も期待できるでしょう。

ぜひMBOのメリットや運用のコツを参考に、売り上げ向上や社員の成長などの効果が実感できる目標設定を行ってみてください。

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