OKRとは?意味・MBOやKPIとの違い・メリット・デメリット・定着の方法【事例・おすすめ書籍付】

OKRとは?

OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称で、目標とそれを達成するための2~3の指標をピラミッド上に設定し、組織全体で定期的に進捗を管理することで、組織の生産性の向上を目指す目標管理手法のことを指します。

OKRが注目された背景

OKRが注目されるようになった背景として

  • 急速な市場変化
  • 従業員の労働観の多様化

の2つが挙げられます。

急速な市場変化の中、従来の1年単位の目標設定・管理では、そもそも設定した目標が現実にそぐわないことが増えてきました。

また、従業員の労働観も多様化し、働きがいを求めるようになったことで、従来の金銭的な評価だけでは従業員の参加意欲を引き出せないことも増えてきました。

これらの課題の解決が急務であった、IT企業のGoogleやメルカリなどにてOKRが導入され、実際に成果を出したことから、注目を浴びるようになりました。

OKRによる目標管理で使用される指標

OKRは、目標(Objectives)と目標を達成するための2~3の指標(Key Results)から構成されます。

目標 O(Objectives)

Oは、全社・部門・個人それぞれで達成したい目標のことです。

  • 定性的
  • シンプルでわかりやすいこと
  • 従業員の挑戦を喚起できる
  • 決められた期間で達成できる

などの条件を満たしているOが望ましいです。

具体的には、「企業価値を向上させる」や「トップシェアの確保」などが該当します。

目標を達成するための2~3の指標 KR(Key Results)

KRは、Oが達成されているかを測る指標のことです。

  • 数値での測定が可能
  • 1つの目標に対し2~3つ程度
  • 目標達成との関連性がわかること
  • やや挑戦的な目標設定であること

などの条件を満たしているKRが望ましいです。

具体的には、「リピート率を5%上昇」や「受注率を10%上昇」などが該当します。

OKRの特徴

OKRの特徴としては、次の5つが挙げられます。

SMARTを用いた目標設定や測定をすること

OKRは、状況に関わらず、SMARTを用いた目標設定や測定がされます。

SMARTとは、ピーター・ドラッガーによって提唱された目標設定・測定のフレームワークのことです。

  • S=Specific「具体的である」
  • M=Measurable「計測可能である」
  • A=Achievable「達成可能である」
  • R=Relevant「方針にあっている」
  • T=Time-Bound「時間的制約のある」

の5つが条件となります。

従来の手法では、部門ごとの状況に合わせた曖昧な目標設定や測定も許容されていました。

しかし、OKRでは、客観的の高いものであることが前提となります。

目標設定水準が高いこと

野心的な目標達成を実現するために、実績として達成が期待できる水準よりも、高めの目標(ストレッチゴール)が設定されます。

このような目標設定手法をムーンショットといいます。実際に立てた目標を100%達成できなくても、60~70%の達成率で成功とされます。

反対に、100%の達成を求める目標設定手法をルーフショットといいます。

MBOやKPIではルーフショットで目標が設定されます。

実際に立てた目標を100%達成できない場合は、失敗とみなされます。

頻繁に評価すること

OKRを組織に定着させるために、頻繁に評価します。

MBOなどの従来の仕組みでは、期初にたてた目標を1年後に評価するということが一般的です。

OKRでは、年初に立てた目標を四半期ごとなどより短いスパンで評価し、必要に応じて目標の修正も行います。

OKRは全員に公開されること

個人目標も含め、組織のOKRは全て誰でも見ることができるようにします

組織全体に公開されることで、全体像を把握することも、個人の業績を定期的に確認することもできるようになります。

報酬と連動性が無いこと

OKRの運用にあたっては、別に人事評価の仕組みを用意することが前提となります。

OKRの最大の目的は、人事評価ではなく、組織の生産性を高めることです。

OKRの指標を報酬に連動させることもできますが、達成しやすい目標設定を誘導してしまい、OKRの効果を最大限に発揮できない可能性があります。

OKRと他の目標管理手法(MBO・KPI)の違い

OKRと混合しやすい考え方としてMBOやKPIがあります。それらとOKRの違いを見ていきます。

MBOとの違い

MBO(Management by Objectives)は、目標達成・能力の向上・人事評価の3つを目的とした、目標管理手法のことを指します。

個人の目標と部門の目標をつなぎ合わせ、ピラミッド構造を形成する点で、OKRと似ています。

MBOがOKRと最も異なるのは、人事評価を目的としている点です。

人事評価を目的としているため、OKRとは以下の点が異なります。

  • 目標設定・測定方法はSMARTに限らず、会社や部門によって異なる
  • 目標は100%達成できる水準で設定する
  • 一般に、年単位で評価する
  • 上司や本人など、人事評価に関わる最低限の人にのみ、目標を共有する
  • 人事評価と連動する

KPIとの違い

KPI(Key Performance Indicator)は、重要業績評価指標とも呼ばれ、目標を達成するために各プロセスを定量化し管理していくことを指します。

定量化することで、プロセスの観測や対策が可能になります。

KPIがOKRと最も異なるのは、目的がKGI(Key Goal Indicator)を達成することである点です。

あくまでKGIを達成するためのプロセスとしてKPIが設定されるため、組織の生産性を高めることが

目的であるOKRと必ずしもゴールが一致するとは限りません。

OKRとは以下の点が異なります。

  • 目標は100%達成できる水準で設定する
  • 毎日などより短いスパンで進捗確認をする
  • 全社ではなく、部門まで目標を共有する
  • 定量的な指標のみを用いる

OKR導入のメリット

MBOやKPIではなく、OKRを導入するメリットとしては、次の3つが挙げられます。

環境変化に合わせた目標を修正できる

定期的に評価や修正することで、環境変化への対応力の向上が期待できます。

MBOの場合、期初に立てた目標が、環境変化により形骸化してしまっても人事評価などとの兼ね合いから、変更することが困難です。

対して、OKRでは、四半期単位などで目標を変更することを前提に設計されているため、柔軟に環境に対応できます。

社員の参加意欲が向上する

社員が日々の作業へのやりがいを見出すことで、事業への参加意欲の向上が期待できます。

全社の目標に対して、どのようにどれくらい関わっているのかを把握できるため、社員が貢献性を感じやすくなり、やりがいへと繋がっていきます。

全社目標達成への意識づけができる

全社目標とその達成への道筋が明確になることで具体的な行動がしやすくなり、全社目標達成へ意識が向かっていくことが期待できます。

また、目標を企業ビジョンと関連のあるものにすれば、ビジョンの浸透も期待できます。

OKR導入のデメリット

上手く運用できれば大きな効果が期待できる反面、MBOやKPIと比べても運用にあたっての難易度が高いという欠点があります。

具体的には次の2つが挙げられます。

手間がかかる

OKR導入時には、仕組みの整備や社員を巻き込むための説明などに、時間や労力がとられます。

また、運用を開始してからも、定期的な進捗確認や評価が必要となります。

こういった業務は、社員であれば誰でもできるわけではなく、特定の社員に業務が集中する原因となります。

失敗すると従業員の参加意欲低下を引き起こす

MBOやKPIと違って、60~70%の達成率で成功という高い目標が設定されます。

難易度が高すぎる目標を設定したときや、60~70%の達成率で良いことが伝わっていなかったときには、従業員が、目標達成の難易度が高すぎると感じ、参加意欲の低下を引き起こす可能性があります。


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OKRの定着手順~導入・目標設定期~

ここからは、実際にOKRを組織に定着させるにあたっての一連の流れを紹介します。

一連の流れを

  • 導入・目標設定期
  • 運用期、評価
  • 修正期

にわけて説明します。

OKRを導入する目的や方針を従業員に共有する

導入の目的や方針を共有することで、従業員との認識のすり合わせをします。

すり合わせによって、従業員との期待感のズレの解消や目的達成への動きを促せます。

全社のOKRを設定する

全社のOKRを始めに設定します。

各部門と調整をし、ボトムアップで設定することが、納得度の観点から理想的です。

部門ごとのOKRを設定する

全社のOKRに連動する形で部門のOKRを設定します。

全社のOKRと方向性がずれることが無いようにするとともに、個人の意見を盛り込むことで従業員の納得感を高める効果があります。

個人のOKRを設定する

部門のOKRに連動する形で個人のOKRを設定します。

部門のOKRのみならず、全社のOKRも念頭に入れつつ、設定することで組織全体での一貫性を保つことができます。

OKRの定着手順~運用期~

OKRが設定された後は、実際の運用に入っていきます。

週の始めにチェックインミーティングを実施する

毎週、週の始めに1時間程度、OKRの進捗や対策について話し合う、チェックインミーティングをします。

チェックインミーティングでは、

  • OKRの進捗確認
  • 自信度の確認や調整
  • OKRが上手くいかない要因の解消
  • その週にやることの確認

をします。

特に、OKRに対する自信を10段階で示す自信度では、適切な値である5からどれほど乖離しているかや、どうすれば5に近づくかを調整していくことが、より適切な目標設定に繋がります。

定期的なフィードバックを行う

複数人によるミーティングのみならず、個別へのフィードバックを定期的に行っていくことも重要です。

具体的には、1on1360度評価を実施することによって、フィードバックの頻度や正確さを賄えます。

効果的な1on1ミーティングのために必要なツールの比較・紹介は以下の記事で行っています。

週の終わりにウィンセッションを実施する

毎週、週の終わりには1時間程度、進捗を確認しお互いを称賛し合う、ウィンセッションミーティングをします。

OKR達成への意欲を高めることが目的であるため、どんな小さなことでも共有し、称賛を忘れないことが求められます。

OKRの定着手順~評価修正期~

OKRは四半期ごとなど多めの頻度で評価します。

レビューを実施する

OKRの達成状況を確認するレビューをそれぞれのOKR別に行います。

結果への評価に終始するのではなく、プロセスを評価することや上手く行かなかった原因を洗い出すことによって、次期のOKR設定に繋げたり、根本的な問題の解決を図ったりすることが重要です。

次期のOKRの設定

当期のOKRの達成度を測定・評価し、次期のOKRを設定していきます。

この際には、当期の成果も踏まえて適切な難易度のOKRを設定することや市場環境の予測を反映することが、より良いOKRの設定に繋がります。

OKRを組織に定着させる上での注意点

OKRを導入するにあたって最も難易度の高いことは、形骸化させることなく組織に定着させることです。

そのために、注意すべき点を3つ説明します。

フィードバックの頻度を減らさない

フィードバックの頻度を保つことが、従業員のOKR達成への意欲向上に直結します。

また、全体への画一的なフィードバックのみならず、1on1などで個別へのフィードバックが可能な環境を作っていくことが求められます。

トップダウンで目標設定しない

OKRを設定する際には、一方的に目標を押し付けるのではなく、全体の意見を取り入れていくことが運用期の従業員の納得感に繋がります。

全体の意見を取り入れることで、従業員の納得度が向上し、全体の方向性を一致させることが期待できます。

各階層のOKRがずれないように定期的に調整する

全社・部門・個人でそれぞれがOKRを設定していると、目標の変更が生じた際に、方向性がずれてしまう恐れがあります。

そのまま放置してしまうと、OKRの目的である組織全体の生産性向上の達成が難しくなってしまうので、積極的に調整していくことが必要不可欠となります。

OKR運用の事例3選

この章ではOKRを運用している企業を3例ご紹介し、特徴と共に解説します。

Google

OKR事例の一社目は「Google」です。

現在ではGoogleはOKRを運用する代表的な企業として様々な企業の模範となるほどにOKRを活用しています。

GoogleのOKRでは70%達成すれば称賛されるような高い目標を掲げることが求められます。

このように高い目標設定をするで、社員がよりモチベーション高く業務に従事することができ、さらに難しい課題や目標に真剣に打ち込むと、社員も大きく成長できます。

それだけでなく、GoogleのOKRの評価として、1点満点で0.6~0.7に収まるのが望ましいとされています。

スパンごとに前回のOKRを評価し、共有することになっており、そこで前回のOKRの反省、評価に関する全社会議を踏まえて次のOKRを検討するような改善のサイクルがあります。

このようにGoogleはOKRに対しても絶えずPDCAを回し、改善を続けています。

メルカリ

OKR事例の二社目は「メルカリ」です。

フリマアプリを運営する急成長企業であるメルカリもOKRを運用する代表的な企業です。

メルカリはOKRの達成度合いの定量項目を人事評価と結び付けておらず、その代わりにOKRへの貢献度合いや注力するプロセスなどが評価されるような仕組みになっています。

OKRで定量評価を行い、それとは別に、バリューの実践度合いで定性評価を下すような人事評価制度を取っており、どちらの評価においてもバリューを重視した評価制度となっています。

またメルカリのバリューを始めとした行動指針については以下のリンクで紹介しています

freee

OKR事例の3社目は「freee」です。freeeは法人・個人事業主向けのSaaSクラウドサービスを開発、運営するフィンテック企業です。

急成長ベンチャーであるfreeeもまたOKRを運用し、成果を納めている企業です。

freeeのOKRの特徴は、OKRを管理するOKR進め隊を用意していることです。

OKR進め隊はOKRが上手く運用されていくように促す組織です。

Googleの事例と同様に、全社に対してOKRが浸透し、意義の理解が進むように尽力しています。

またメンバーのOKRに対するOKR再設定や評価のディスカッションを行っており、効率的なOKRの実現のサポートをしています。

また、freeeのOKRでは自社の利益などの視点だけでなく、顧客満足など顧客を意識した目標を設定しています。

これにより、自分たちの業績や成長ばかりでなく顧客を想定することで業務のやりがいも強くなり、OKRへのワクワク感もより大きくなります。

OKRに関する本・書籍

OKRは非常に難解な考え方です。今後のOKR学習の手助けとなる書籍を3冊紹介します。

OKR(クリスティーナ・ウォドキー)

1冊目はクリスティーナ・ウォドキー著の『OKR』です。

前半部ではシリコンバレーの企業を舞台にしたストーリー調、後半部ではOKRの設定から運営までのノウハウがまとめられています。

ストーリー調でOKRを理解したい人におすすめです。

本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR(奥田和広)

2冊目は奥田和広著の『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』です。

日本人リーダーの視点からOKRを紹介していることが特徴です。

日本的な組織管理を前提に噛み砕かれた一冊であるため、より日本の実状に沿った理解をしたい人におすすめです。

Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR (ジョン・ドーア)

3冊目はジョン・ドーア著の『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法』です。

著者のジョン・ドーア氏はシリコンバレーで有名なベンチャーキャピタリストです。

内容がやや難解なため、ある程度OKRを理解しており、更に理解を深めたい人におすすめです。

まとめ

OKRは、組織の生産性を高めるための目標管理手法です。

MBOやKPIと比べ、目標修正の適切さや従業員の参加意欲の向上を期待できますが、組織に浸透させる難易度は高く、より頻繁で適切な評価やフィードバックが求められます。

導入を検討する際には、組織内外の環境・目標管理手法導入の目的そして、導入後の管理方針を予め確認した上で、適切な管理手法を選ぶようにしましょう。

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