行動指針とは?企業理念との違い・作り方・メリット【事例付き】

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行動指針とは?企業理念との違い・作り方・メリット【事例付き】

行動指針とは

そもそもの意味として、行動指針とは行動をするための基本方針のことを指します。

会社の中で使われる場合、企業理念やビジョンを実現するための行動を定めたものを意味し、社員が個々で判断を下す際の判断基準にもなります。

社員の判断基準を定めることは、会社全体での働き方の方向性が定まることにもつながります。

行動指針は社員の働き方の基礎となるだけでなく、その会社全体が社会の中で達成したいことや創業者の思いやメッセージを、社員に共有することのできる重要なものなのです。

企業理念との違い

行動指針とよく混同されがちなものに、「企業理念」があります。

企業理念と行動指針は確かに同じ文脈で一緒に登場することが多い単語ですが、その意味や目的は異なります。

ここでは企業理念の意味と、行動指針との違いについて解説します。

企業理念とは

企業理念とは、創業者が会社創立時に会社に託した会社の存在意義や価値観のことです。

企業理念は、その会社の活動方針のもとになる考え方であり、時代が変わっても引き継がれる不変的なものです。

有名な企業理念の例に、トヨタがあります。

トヨタには創業以来受け継がれてきた「豊田綱領」という企業理念があります。

豊田綱領はトヨタグループの創始者である豊田佐吉の考え方をまとめたもので、創業からトヨタの経営の「核」として貫かれてきたものです。

「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」や「華美を戒め、質実剛健たるべし」など、会社の経営方針や働き方の姿勢など全てのことにおいて基本となるような内容となっています。

行動指針と企業理念の違い

企業理念は簡潔で明快なものが多く、会社が大事にしている創立からの考え方や価値観です。

これに対して、行動指針は企業理念という大枠をもとにして決定します。

会社が目指す企業理念に近づくために、何をすべきか具体的に落とし込まれたものが行動指針です

行動指針の策定が必要な背景

どうして行動指針は重要なのでしょうか?

近年、コロナウイルス流行によるリモートワーク推奨の影響から、会社のあり方や社員の働き方も大きく変容しました。

リモートワークが広く導入されたことで、社員が自己判断でなかなか方針を決めることができず、判断が遅れる事態が多くなりました。

さらにその場合、43.9%の社員が仕事の生産性が低下したと報告されています。

このように、社員のモチベーションや生産性の高さは、行動指針の定着と直結しているのです。

行動指針を策定するメリット

明確な行動指針は作ることは、会社にとってとても重要です。

そのメリットとはなんなのでしょうか。

  • 仕事の質の向上
  • モチベーションの向上
  • 企業理念の達成

ここではこの3つを解説します。

仕事の質の向上

行動指針を定めることで、従業員の仕事精度が整えられます。

行動指針が定まると、何をどのようにこなせばいいのかそれぞれが理解できている状態になります。

そのため、誰がどんな仕事をやっても同じ達成を見込めるようになり、これは仕事の質の向上・標準化につながります。

さらに、仕事の質の向上により会社全体の生産性も向上します

モチベーションの向上

明確な行動指針が仕事のスムーズ化を促進し、社員のモチベーションの向上につながります。

行動指針が定まっていると自分の判断で仕事をすることができます

企業全体が指針通りに行動するので、決定に齟齬が生じにくく、社員が必要以上に不安を感じることが減り、トラブルも軽減するでしょう。

企業理念の達成

行動指針が徹底されることは、企業理念の達成に直結します。

行動指針は企業理念という大きな目標実現のために必要な行動を具体的にまとめたものです。

つまり、これが徹底されるほど企業理念が達成されやすくなるのです。

そのためにも、企業理念から逆算された明快な行動指針は必須と言えるでしょう。

行動指針の作り方の手順

行動指針を作るための手順には大きく分けて5つのステップがあります。

  1. 企業理念を確認する
  2. 企業理念を達成するために必要な価値観・行動をリストアップする
  3. ​​会社として避けたい行動をリストアップする
  4. 現状と照らし合わせて内容を吟味する
  5. 簡潔な標語にまとめる

ここではこの5つの手順についてそれぞれ詳しく解説していきます。

STEP1:企業理念を確認する

まず一番最初に行いたいのは、企業理念を確認する作業です。

会社の大事にしている価値観や会社の目指す社会貢献はなんなのかを改めて認識することで、この後の行動指針を考える上での基準が定まります。

STEP2:企業理念を達成するために必要な価値観・行動をリストアップする

企業理念の達成のために必要な価値観や行動を具体的に考えてみましょう。

企業理念は、抽象度が高くまた例えば「笑顔」「安全」など簡潔な言葉で表されていることも多いです。

それらを実現するためには行動として何をすればいいのか、どの社員にもわかりやすくかつ当てはまるように具体化するプロセスが必要となってきます。

例えば、「笑顔」という企業理念があるとするなら、従業員が笑顔で働けるようにどのような行動をとったらいいか、さらにこの「笑顔」を顧客視点で考えるとするとどんな行動が必要かなど、さまざまな視点からリストアップしてみましょう。

STEP3:会社として避けたい行動をリストアップする

会社の価値観に反する行動や避けたい行動を考えましょう。

避けたいことを考えることで、違う視点から働き方を考えることができるため、より広い視点で柔軟な行動指針を作成することができます。

例として、「企業の効率のみを追求しすぎない」、「目的と手段を間違えない」などがあるでしょう。

STEP4:現状と照らし合わせて内容を吟味する

リストアップした行動指針が、現代の価値観や働き方に即した内容か見直してみましょう。

実際の働き方や状況と比較して実現が難しい行動指針は、すぐに形骸化してしまいます。

現代の価値観にそぐわないものは内容を検討したり、また抽象的すぎる表現は排除してさらに具体的な言葉に言い換えてみるなどしてみましょう。

STEP5:簡潔な標語にまとめる

具体化してリストアップした文章を、簡潔な標語や熟語にまとめてみましょう。

実践内容の説明とは別に、簡単な標語としてまとめることで、キャッチーで覚えやすくなるため、社員に浸透しやすくなるという効果があります。

例えば「試行錯誤をたくさんしそこから学び成長につなげよう」という行動指針を考えたとすると、これは「挑戦」や「トライアンドエラー」などに言い換えることができます。

行動指針を作る上での注意点

こうして作った行動指針も、会社の中では形骸化してしまいがちです。

行動指針がなかなか会社に浸透しない理由はなんなのでしょうか?

  • 知名度が低い
  • 実行が難しい

ここではこの2つの注意点について解説します。

知名度が低い

行動指針の存在があまり周知されてなかったり、社員に実践されていない場合、すぐに形骸化してしまいます。

このような場合は、壁に張り出されているだけで存在を知らされていなかったり、会社側も行動指針が浸透しているか積極的に調べたりなどしていないのではないのでしょうか。

このような事態を避けるためにも、社内アンケートを実施して知名度を調査したり、研修や行動指針を実践できているかの振り返りを行う時間を設置するなどの取り組みを行いましょう。

実行が難しい

行動指針自体が古かったり、内容が実行しづらいものだったりすると、現場の社員がなかなか実践できなくなり、結果的に形骸化してしまいます。

改訂せずに放置していた古すぎるものや、内容が現状に即していないものは、見直して改定を行うようにしましょう。

委員会を設置して現状に即した行動指針を新たに作ったり、行動指針がこれでいいのか、どんな行動指針が最適か全体で考える機会を作るなどの取り組みが効果的です。

行動指針の事例

行動指針にはさまざまなものがありますが、会社によっては個性的でユニークな取り組みをしているところもあります。

  • トヨタ
  • Google
  • オリエンタルランド

ここではこの3つの事例についてご紹介します。

トヨタ

国内の自動車業界トップであり日本を代表する企業であるトヨタですが、そんなトヨタには通常の行動指針の他に「トヨタウェイ」という独自の指針があります。

行動指針が、基本的な指針・具体的な留意点をまとめたものなのに対し、この基本理念を実践する上で、全世界のトヨタで働く人々が共有すべき価値観や手法を示したものが「トヨタウェイ2001」です。

理念を実践するための具体的な指針を「行動指針」と「トヨタウェイ」の2軸で説明することでより明確な働き方の指針を社員に共有しているのです。

Google

会社の個性が反映される行動指針において、特にユニークな行動指針を公開している会社がGoogleです。

10個の行動指針は、そのすべてがまるでことわざや格言のような文章であり、それら行動指針の下にはさらに具体的な説明が追記されています。

ウィットに富む自由な言い回しで、Googleの企業文化・価値観をよく表していると言えるでしょう。

オリエンタルランド

ディズニーランドで有名なオリエンタルランドにも、会社の文化を色濃く反映した行動指針があります。

その行動指針とは、「Safety」(安全)、「Courtesy」(礼儀正しさ)、「Show」(ショー)、「Efficiency」(効率)の4つで、これらをまとめて「The Four Keys~4つの鍵~」と呼んでます。

この行動指針は明快かつキャッチーなだけでなく、Safety(安全)から順に、その並びがそのまま社員が行うべき優先順位を表しているため、行動指針として実践的でわかりやすいものとなっています。

まとめ

行動指針は、企業理念やビジョンを実現するための行動を定めた、極めて重要なものです。

行動指針はまさに企業の文化をそのまま反映するものであり、行動指針が社員に浸透していくことで、会社が一丸となって働くことができます。

行動指針の実現は、企業全体の理念やミッションの達成につながります。

社員一人一人の行動指針の浸透を目指すためにも、今の行動指針を見直してみてはいかがでしょうか。

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パフォーマンスマネジメントの平均的な効果

パフォーマンスマネジメントを実践することにより、上記のような効果が期待できます。

パフォーマンスマネジメントには「行動指針」のような理念を浸透させる必要がありますので、コチームは行動指針を浸透させるのに大きく役立ちます。