目次
新人・新入社員離職率の推移
大学卒の新入社員の3年目までの離職率は以上のグラフの通りになっています。
このグラフから、厚生労働省から発表されているデータの最新年である2017年まで多少の増減はあるものの、新入社員のおよそ3人に1人が3年以内に入社した企業を退職していることがわかります。
2019年に施行された働き方改革法や働き方の多様化がこの割合を下げる要因となる一方で、転職が容易になった、すなわち労働市場の流動性が上がったことは割合の上昇の要因となるため、現在になってもこの数値は大きく変わっていないものと考えられます。
この事実から、コストをかけて採用した人材の中で早期に離職する人数を可能な限り減らすことは、企業の中長期的な成長において非常に重要だと言えます。
- 退職者1人あたりの企業の損失とは?
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新人・新入社員がすぐに辞めてしまう理由
新入社員の離職についてのデータや現状については以上の通りです。
では、実際の企業の内部に視点を置いた時、新入社員はどのような理由で退職してしまうのでしょうか。
本パートでは、新人・新入社員がすぐに退職してしまう理由として3つ紹介します。
十分な育成が行われていない
1つめの理由は、十分な育成が行われていない点です。
具体的には、内容理解が伴っていない形だけの不適切なオンボーディングであったり、工数が多く且つ効果の低い面倒な仕事ばかり押し付けているという場合が挙げられます。
社内で活躍すると見込まれて採用をした人材でも、業務の説明やコミュニケーションといった育成が十分に行われていなければ活躍はできません。
また、それらを原因として活躍ができないと感じた本人はモチベーションが低下してしまうでしょう。
理想や創造と現実とのギャップがある
2つめの理由は、入社前の理想や創造と現実にギャップがあるという点です。
具体的には、仕事内容や給与といった開示されている情報と実際のものに乖離があったり、本人が感じていた業務の内容の魅力度と現実に差がある場合が挙げられます。
これは企業側の責任の場合と本人が勘違いをしてしまった場合とがありますが、いずれにしても現実に落胆し、モチベーションが低下することで離職につながってしまいます。
参考:採用ミスマッチはなぜ起こる?原因と対策方法についてご紹介!|アルバイト採用のトリセツ「NL+」
能力・適性とのギャップがある
3つめの理由は、新入社員の能力や適性と業務で求められるそれらに差があるという点です。
具体的には、営業職において熱意やフットワークを長所とする新入社員が、提案力や分析力が求められる商材を担当した場合が挙げられます。
このとき、新入社員が自分の長所を理解していなかった場合はモチベーションが低下してしまいますし、自分の長所を理解していた場合はそれらが活かせる企業に転職してしまう可能性があります。
新人・新入社員が退職することによるデメリット
新入社員が退職してしまった場合、企業にどのようなデメリットや悪影響があるのでしょうか。
本パートでは、それらを3つに分けて解説していきます。
中長期的に知識や技術が引き継がれない
1つめのデメリットは、中長期的な視点でみたときに企業内に蓄積されるべき知識や技術が引き継がれないという点です。
新入社員が離職してしまうと、在籍している社員がのちに退職する際の引継ぎ相手の母数が少なくなってしまいます。
これにより、社員一人に対する負担が大きくなる、あるいは知識や技術が体系化されずに消失されることになります。
社員一人の付加の増大や知識・技術の消失による生産性の低下によりモチベーションが低下してしまうと、さらなる離職率の上昇として悪循環を生んでしまいます。
それらの原因を断つためにも、新入社員の定着は重要なのです。
採用活動における競合優位性の低下
2つめのデメリットは、企業が採用活動をする上での競合優位性が低下してしまうことです。
多くの企業は、自らの企業の定着のしやすさ・働きやすさをアピールするために3年以内の離職率を公開しています。この割合が高まってしまうと、新入社員が定着しにくいとみなされ、優秀な人材を獲得しにくくなってしまいます。
また、3年以内離職率が高まったために公開しないという選択をとると、その会社にとってのネガティブな情報であると判断されてしまい、同様の悪影響が生じます。
優秀な人材の獲得可能性が低くなると、企業としての生産性が落ちてしまうといったさらなる悪影響を生じてしまいます。
残った社員のモチベーション低下
3つめのデメリットは、残った側の社員のモチベーション低下です。
社員が後ろ向きな理由で退職してしまうことにより、残った社員は自分のまだ知らない会社の悪い部分があるのかと感じてしまい、不安になってしまいます。
この不安が蓄積してしまうと、会社における心理的安全性が低下してしまい、全体における離職率の向上や生産性の低下を生んでしまいます。
新人・新入社員の退職への入社前の対策
新入社員が離職してしまうことによるデメリットは以上の通りですが、それらを防ぐために新入社員の入社前にできることはあるのでしょうか。
本パートでは、新入社員の入社前に行うべき対策を2つに分けて紹介します。
入社前認識とのギャップになりうる情報を開示する
1つめの対策は、入社前の新入社員の認識とのギャップになりうる情報を開示する、という点です。
待遇面や福利厚生に関して虚偽の情報を載せないことはもちろん、新入社員が誤って認識しやすい業務内容やその魅力についても丁寧に説明し、認識を合わせることが重要です。
これにより、入社後のショックを軽減させるだけでなく、スムーズに業務に取り掛かることができるのです。
ただし、多くの時間をかけすぎても人事担当者の負担となるのみなので、情報の開示には人事担当者の工数とのバランスを考え、最適な時間を内定者にかけることに注意しなくてはなりません。
入社前手続きを計画的に取り組む
2つめの対策は、入社前手続きを早めに、かつ抜け漏れなく行うことです。
入社後にあらゆる書類の提出を要求してしまうと、新入社員にとって業務への適応と書類の提出という非常に大きな負担となってしまいます。
新卒入社であれば学生という比較的時間のある段階で書類の提出をさせ、入社後に業務への適応以外の負担をかけないことで離職の可能性を低下させることができます。
新人・新入社員の退職への入社後の対策
入社前の対策については以上の通りですが、入社前の対策を徹底しただけでは新入社員の退職可能性を最大限低下させたとはいえず、むしろ入社後の対策が重要です。
本パートでは、新人・新入社員の入社後における退職を防ぐための対策を2つに分けて解説します。
人材育成に適切な工数を割く
1つめの対策は、人材育成に適切な工数を割くということです。
オンボーディングやメンター制度といった制度面だけでなく、部署内でも業務に関する細かいサポートや、理解を促進するためのフォローなど現場においても人材育成のために積極的に行動する必要があります。
その一方で、そればかりに工数を割いてしまうと普段の業務を加えた一人当たりの負担が非常に大きくなるため、適切な工数を意識することが重要です。
キャリアプランの相談機会を作る
2つめは、新入社員のキャリアプランの相談機会を作るということです。
新入社員が長期的にはどのような目的・目標意識をもって業務に取り組んでいるのかっを上司との間で共有することで、それに応じたサポートを行うことができます。
また、新入社員にとっても自分の目的・目標を言語化することにより、自分が会社で何をやりたいのかが定かになり、モチベーションが向上するでしょう。
相談機会においては、1on1ミーティングのような形式で新入社員が主体的に話せる場とし、上司は傾聴することが重要です。
この環境を作ることにより、新入社員が上司の顔色をうかがうことなくキャリアプランを語ることができます。
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辞めそうな新人・新入社員を引き留める方法
全ての新入社員への退職防止策を上にて述べましたが、それらにより退職の可能性がゼロになることは考えにくいでしょう。そのため、次のフェーズとして退職しそうな新入社員への対策を考える必要があります。
本パートでは、会社を辞めそうな新入社員を引き留める方法について、2つ紹介します。
悩み・迷いを聞く
1つめは、その社員の悩みや迷いを聞くことです。
退職を考えている社員は、必ずと言っていいほど現職や現状における悩みや迷いを抱えています。それを共有してもらうことにより、退職させずに上司自らがその悩みや迷いを解消することができるかもしれません。
悩みや迷いが解消可能か否かは共有されないとわからないため、まずはそれらを聞くことが重要です。
配属の見直しを行う
2つめは、配属の見直しです。
部署内で対策が難しい退職理由の一つに、人間関係の悪化があります。こればかりは当事者の問題ということが多いため、根本的な解決は第三者には難しいでしょう。
しかし、異動させることによって退職を回避し、問題を解決することができるかもしれません。
新入社員に対し、その部署に残るか退職をするかの二者択一にさせず、部署異動の選択肢があることを伝えることがファーストステップとして重要でしょう。
まとめ
本記事では、新入社員が退職する理由や、それによるデメリット、入社前・入社後の対策について解説してきました。
本記事で挙げたようなミクロ的取り組みも重要ですが、ツールやシステムを導入することで、工数を最小限に抑えつつ社員の離職を防止することができます。
これらを踏まえ、新入社員、ひいては社員全体の離職防止に対する取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。
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