近年、「連鎖退職」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?連鎖退職は従業員が次々と辞めて行く状況のことを指します。連鎖退職が起きてしまうと、会社に残っている従業員の負担が増え、残っている従業員も辞めやすくなってしまい、最悪の場合、企業が組織崩壊や倒産してしまうかもしれません。
そのため、連鎖退職が起きやすい状況は即刻改善すべきであり、企業の持続的な成長には人材の定着が必要不可欠です。
しかし、連鎖退職が起きやすい状況を客観的に判断することは難しく、独力で解決するのは非常に労力がかかります。そのため、本記事では連鎖退職の意味や影響・原因について説明し、職場内で実施できる改善策について紹介します。
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目次
連鎖退職とは?
連鎖退職とは、1人の社員が退職したことをきっかけに、次々と社員が会社を退職してしまう現象のことを指します。一度連鎖退職が起きてしまうと、会社に残っている従業員の負担が増え、残っている従業員も辞めやすくなってしまいという悪循環に陥ります。そして、最悪の場合、連鎖退職が企業の組織崩壊や倒産を引き起こしてしまうかもしれません。
そして、注意が必要なのは、連鎖退職はどの企業でも起きてしまいます。そのため、連鎖退職は大企業と中小企業・ベンチャー企業といった企業形態に関わらず、起きる可能性があるでしょう。
また、青山学院大学経営学部教授の山本寛氏の著書『連鎖退職』(日本経済新聞出版社刊,)によると、連鎖退職には2種類存在すると記されています。
- 「ドミノ倒し」型
- 「蟻の一穴」型
「ドミノ倒し」型の連鎖退職は中小企業やベンチャーで起こりやすく、「蟻の一穴」型は大企業で起こりやすいです。
次の項からこの2つの連鎖退職について詳しく解説します。
「ドミノ倒し型」とは?
「ドミノ倒し型」とは、退職者の業務が原因で従業員の負担が増加することが原因で引きおこる連鎖退職のことです。
業務に対して余剰人員が少ない状態で、退職者が出てしまうと、残されている従業員は退職者の分の仕事を引き継ぐことがきっかけで「ドミノ倒し型」連鎖退職が始まります。
しかし、人員補充する余裕が無いと、残された従業員の負担が増えてしまいます。この退職者の業務による負担が増加する事で、従業員の不満が募り、最終的にその従業員が退職してしまうという負のスパイラルに陥ることが「ドミノ倒し型」の連鎖退職の特徴です。
そのため、余剰人員を確保しにくい中小企業やベンチャー企業で見られやすい連鎖退職ですが、部署の人員が少ない大企業では起こる可能性があります。
「蟻の一穴型」とは?
「蟻の一穴型」とは、1人の社員が退職したことがきっかけとなり、潜在的に抱えていた企業の問題が明確になったことが原因で引きおこる連鎖退職のことです。
業務の慣習や人事制度、コンプライアンスなどの企業が潜在的に抱える問題が原因で、退職者が出たことで、「蟻の一穴型」連鎖退職は始まります。企業は時にその潜在的な問題に対応しなくてはなりません。しかし、潜在的な問題に対応したとしても、企業の対応が従業員が満足できるものでないと、従業員に不満が溜まってしまいます。最終的に、企業の対応が原因で、従業員が連鎖的に退職してしまうことが「蟻の一穴型」連鎖退職の特徴です。
そのため、潜在的な問題が増えやすい長い歴史を持つ大企業で見られやすい連鎖退職ですが、中小企業・ベンチャー企業では起こる可能性があります。
連鎖退職が企業・職場に与える影響とは?
同時期に何人もの社員が離職してしまうことは会社にとって大きな損失です。具体的に、どんな影響やデメリットがあるのでしょうか。
この項では、連鎖退職が企業・職場に及ぼす影響について4つ詳しく解説します。
- 業務・プロジェクトが停滞する
- 新たな採用コストがかかる
- 会社のブランドイメージが低下する
- 社員のモチベーションが下がる
業務・プロジェクトが停滞する
連鎖退職が企業・職場に与える影響の1つ目は、「業務・プロジェクトが停滞する」です。
会社の社員が一度に何人も辞めてしまうと、進行中だったプロジェクトや業務が停滞してしまいます。
また、残された従業員は、退職者の仕事を引き継がなくてはいけなくなり、負担が増加します。人員補充をしようと考えても、さらにそういった業務に対応できる次の人材を探すまで、また作業が停止または滞ってしまいます。その結果、会社にとっても社員にとっても負担がより大きくなってしまうため、次なる連鎖離職に繋がってしまうでしょう。
新たな採用コストがかかる
連鎖退職が企業・職場に与える影響の2つ目は、「新たな採用コストがかかる」です。退職者の代わりの人員を補充するために、新しい従業員を雇う必要があります。2019年度では、新卒採用には1人あたり平均93.6万円、中途採用には1人あたり103.3万円かかると言われています。(就職みらい研究所『就職白書2020』)
そのため、同じ時期に何人もやめてしまうと、これらの採用コストが増えていきます。採用コストがかかるだけではなく、採用するための面接などの時間や手間をかけなければなりません。そういった点でも、離職が度重なってしまうことは会社にとって損失と労力が大きいです。
会社のブランドイメージが低下する
連鎖退職が企業・職場に与える影響の3つ目は、「会社のブランドイメージが低下する」です。ブランドイメージは、世間的に企業に抱くイメージが向上し、売上・業績アップにつながるといった側面があります。しかし、その逆にブランドイメージが低下してしまうと、企業に多大な悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、社員が何人も離職する会社は、客観的に会社へのブランドイメージが悪化し、会社の印象や評判が低下することに繋がります。ブランドイメージが毀損した状態では、人材を採用する際にも悪影響を及ぼします。
社員のモチベーションが下がる
連鎖退職が企業・職場に与える影響の4つ目は、「社員のモチベーションが下がる」です。人が次々とやめてしまう会社では、社員のモチベーションが低下してしまいます。周囲の人間が離職することで、頻繁に同僚や上司が入れ替わったり、仕事内容が変更を余儀なくされたりすることが増えます。このように従業員への負担が増加し続けていくと、社員の働くことへのモチベーションや士気が低下してしまう結果に繋がってしまうでしょう。
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連鎖退職が起きてしまう原因
連鎖退職には様々な影響やデメリットがあります。では、社員の離職が連鎖してしまう原因はなんなのでしょうか。
この項では、連鎖退職が起きてしまう原因について3つ詳しく解説します。
- エース社員や幹部メンバーの退職
- 労働環境への不満
- 従業員エンゲージメント・帰属意識が低い
エース社員や幹部メンバーの退職
連鎖退職が起きてしまう原因の1つ目は、「エース社員や幹部メンバーの退職」です。エース社員や幹部メンバーが退職したことがきっかけで、周りの従業員も退職してしまうことがあります。
エース社員や幹部メンバーが退職してしまうと、残されている従業員が頼れる人がいなくなってしまいます。そのため、残されている従業員は、本当にこの会社に居続けていていいのかと不安感に駆られてしまい、連鎖的に退職してしまうことに繋がってしまうのです。
労働環境への不満
連鎖退職が起きてしまう原因の2つ目は、「労働環境への不満」です。会社の労働環境が悪いと、離職が連鎖しやすいです。従業員が不満を抱える原因は多岐に渡り、待遇面や評価制度、仕事内容、ハラスメントなどと様々あります。これらの原因は、企業のエンゲージメントが低下したり、部署の人手が慢性的に不足していたり、残業が増加するなどといった、離職の直接的な原因になります。そのため、これらの原因を改善しないと、連鎖退職が起きてしまうことになります。
従業員エンゲージメント・帰属意識が低い
連鎖退職が起きてしまう原因の3つ目は、「従業員エンゲージメントが低い」です。エンゲージメントが低いと、社員は会社に定着せず離職してしまいやすくなります。
社員のエンゲージメントが低いということは会社に対しての帰属意識も低いということであり、会社に対しての愛着が低いということでもあります。その会社への愛着や、他の会社ではなくその会社で働きたいという意識が薄くなってしまうことは大きな離職の原因となるでしょう。具体的には、社員が消極的な会社だったり、全体の士気が低く社員の仲が悪い会社ではエンゲージメントが低いと言えます。
連鎖退職を防ぐためには?
連鎖退職には様々な影響やデメリットがあります。そのため、連鎖退職を防ぐことは非常に重要です。
この項では、4つの連鎖退職を防ぐ方法について詳しく解説します。
- 会社で適切な職場管理を行う
- 社員それぞれにやりがいを作成する
- 心理的安全感を高める
- コミュニケーションを活性化する
会社で適切な職場管理を行う
連鎖退職を防ぐ方法の1つ目は、「会社で適切な職場管理を行う」です。会社側が適切な職場環境の管理を行い、職場環境を改善することで、社員の離職を防ぐことができます。
会社の評価体制が杜撰で仕事をやっても正当に評価されなかったり、残業だらけでやりたい仕事ができないような職場では、働くモチベーションは湧きません。例えば、人手不足により仕事量が増えて残業が多くなってしまっている場合、会社側が適切なタスク管理を行い社員の仕事量を調節して働きすぎを防ぐことで、離職防止にもつながります。
社員それぞれにやりがいを作成する
連鎖退職を防ぐ方法の2つ目は、「社員それぞれにやりがいを作成する」です。社員の働く上でのやりがいを会社側が支援することで、エンゲージメントを向上させて離職を防ぐことができます。
会社や仕事への愛着・熱量が高くなることで、その会社で働く必要性が生まれ、社員が継続して働くようになるでしょう。例えば、会社で研修や講演会などキャリアアップのために必要な成長支援の機会を設けたり、積極的に裁量権の大きな仕事を任せてみるなどやりがいを作成することが有効でしょう。
心理的安全感を高める
連鎖退職を防ぐ方法の3つ目は、「心理的安全感を高める」です。会社の中で社員同士の心理的安全性を高めることで、その会社への定着率が向上し離職防止につながります。
心理的安全性が高いということは、社員同士が親密であるという意味ではありません。心理的安全性が高いというのは、ネガティブなフィードバックや衝突が怒るかもしれない指摘も安心して発言することができ、またリスクを恐れずに仕事することができる状態であり、こういった状態が続くことは社員にとって仕事のやりがいや楽しさにつながっていきます。そのためにも、例えば、上司と気軽に話せる機会を設けたり、まずは積極的なフィードバックを行うなどが有効でしょう。
コミュニケーションを活性化させる
連鎖退職を防ぐ方法の4つ目は、「コミュニケーションを活性化させる」です。職場のコミュニケーションの活性化は、離職防止に直結します。
ある調査結果では、9割の人が「コミュニケーションの円滑さが仕事に関係する」と回答しています。(「職場でのコミュニケーション」意識調査ー『エン派遣』ユーザーアンケートー)
職場のコミュニケーションが活性化されることで、仕事の連携や分担が円滑になります。さらにミスやストレスも軽減されトラブルも防止されやすいでしょう。そのためにも、例えば、社内チャットなどの設置やサンクスカードといった賞賛制度を導入すると良いでしょう。
【3選】企業・職場内で実践できる連鎖退職を防ぐための改善策
離職連鎖を予防するために、会社が導入できる具体的な施策はなんなのでしょうか。
ここでは、3つの施策をご紹介します。
この項では、企業・職場内で実践できる連鎖退職を防ぐための3つの改善策について詳しく解説します。
- 評価制度を見直す
- レコグニション制度を導入する
- 1on1ミーティングを実施する
評価制度を見直す
企業・職場内で実践できる連鎖退職を防ぐための改善策の1つ目は、「評価制度を見直す」です。評価制度を見直すことは、評価への納得感を高め、社員の会社への定着を促進します。
会社が評価制度をブラッシュアップし、公平かつ納得感のある評価(例えば人事評価方法や給与のはじき出し方に透明性がある)を行うことは、社員側の仕事へのやりがい・モチベーションにつながります。
例えば、社員に現状の評価制度への不満などがないかアンケートを行って定期的に改善を行ったり、360度フィードバックを導入するなど行うと良いでしょう。
レコグニション制度を導入する
企業・職場内で実践できる連鎖退職を防ぐための改善策の2つ目は、「レコグニション制度を導入する」です。レコグニションの文化を取り入れることも、社員の離職防止に効果的です。
レコグニション(賞賛・承認)とは、従業員の仕事上の成果や本人の努力を認め、感謝の気持ちを示すことやチームや組織で表彰を行う事を指します。レコグニション制度により、些細な業務や努力が評価されやすくなるため、日々の業務へのモチベーションが向上します。それだけでなく、普段から周りを意識して仕事をするようになるため、業務への理解も進み円滑に仕事が進行するというメリットもあります。
レコグニション制度として代表的なものには、サンクスカードや表彰制度などがあります。
1on1ミーティングを実施する
企業・職場内で実践できる連鎖退職を防ぐための改善策の3つ目は、「1on1ミーティングを実施する」です。1on1ミーティングを行うことで、社員一人一人の悩みやキャリア希望に寄り添い、社員の離職を予防することができます。
全体のマネジメントだけでは掬い上げられない社員のトラブル解消や、個人に合わせた目標設定も行いやりがいの作成を支援するなど、1on1の時間を使って行えることはさまざまです。また、こういった時間を定期的に設けることで、上司や会社との信頼関係も深めることができます。
このように、優秀な上司やロールモデルとなりそうな管理職と接する機会を設置すると、社員もその会社での自分のキャリアやそこで働くメリットを感じやすく、会社への定着につながります。
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まとめ
本記事では、連鎖退職の原因や防ぐ方法を説明しました。特に連鎖退職を防ぐ改善策を3つ紹介しました。連鎖退職を防ぐことができれば、企業には多くのメリットがあり、企業の持続的な成長を遂げることができます。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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