【人事担当者が語る】従業員が離職する理由と離職防止対策への本音

従業員の離職は増え続ける一方

「年間約300万人」これは内閣府のレポート「日本経済2017-2018」による国内の転職者数です。裏を返せば「年間約300万人」がどこかの企業を離職している、ということです。長引く不況により相次ぐ倒産、吸収・合併、そして人々の価値観の変化により、近年転職市場は急速に活性化しています。

ところであなたは離職についてどうお考えでしょうか。
ただ単純に離職を防止しなければ、と考えてはいないでしょうか。

本当に解決したい問題は何なのでしょうか。今回は人事担当者の視点から、離職における真の問題を分析します。


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従業員が離職する理由とは?

離職に悩む人事

会社を辞めていく300万人、彼らは一体どういった理由で会社を去っていくのでしょうか。

中小企業庁の「中小企業白書」(平成27年版)によると、離職理由の1位~3位は以下の通りです。


【離職理由TOP3】

1位 人間関係
2位 業務内容への不満
3位 給与への不満

1位の人間関係は特に入社3年未満の離職者のうち27.7%が離職理由として回答しています。TOP3に挙がったこの3つは入社前と入社後のギャップが生じやすい理由であるため、入社3年未満の離職者が特に多く挙げているのも納得ができます。


一方、入社3年未満と入社3年後以降で変化する離職理由があります。


【入社3年以降に多くなる離職理由】

・会社の経営方針が変わった
・キャリアアップのため
・特に理由はない
・ヘッドハンティングされたため

注目すべき離職理由の一つに「特に理由はない」があります。離職者のうち6%が理由もなしに会社を辞めています。
例えば、あなたも何年も同じ仕事をしていて飽きてしまい、新たな仕事をしたいと思ったことはないでしょうか。
今の職場環境に特に不満はなく、むしろ満足している、でも何か物足りない・・・。そんなことから離職を考え始めるのです。

離職は防止するもの?離職率ゼロを目標にするのは無意味な理由


悩むマネージャー

実際の人事の現場では、退職時面談で離職者が本当の離職理由を話すことは滅多にありません。一方で上記の離職理由にあげられる問題を解決すればずっと会社にいてくれるかというとそうではありません。

中小企業白書の調査の中には、もうひとつ、「離職者が仕事を辞めないために必要だった施策」についてのアンケート結果があります。賃上げ、配置転換、労働時間の削減などの施策が並ぶ中、「どのような会社側の取り組みがあっても離職は避けられなかった」と答えている離職者は40%にも上ります。

つまり、従業員が離職を決意した時点で、もうどんな手を打っても無駄であったことがわかります。また、入社3年未満の離職率は新卒も中途採用者も30%程度であることが調査の中で示されています。このデータからは離職は常に3割程度起こりうるものであるということもわかります。

例えば、入社3年未満の離職率が50%以上などあきらかに離職が多い職場であれば、賃上げ、配置転換などの離職防止施策は有効でしょう。一方で離職率が既に世間水準より低い10%程度の職場で離職を防ぐのは、とても難しいことなのです。

なぜなら、先ほど説明したように従業員は明確な理由なく辞めることがあり、辞める時にはもう辞めると決めているからです。一定数の離職が起こるのは防ぎようのない出来事であり、離職率をゼロにするのは不可能な行為です。

近年は冒頭にあげたような外部環境の変化で今まで離職者が少なかった職場にも離職が発生し始めています。

そのため経営者や人事は離職に敏感になっています。現在の市場環境であれば、数パーセントの離職があるのは企業にとって健全な姿です。むしろ、全く離職する従業員がいないことはある意味異常な状態と言えるでしょう。



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辞めてほしくない人は誰なのか?離職に対する企業のホンネ

対立する部下と上司

パフォーマンスの低い人材は離職してほしい

高度成長期に確立した日本の人事制度は、企業規模が拡大することを前提につくられました。また、戦後の日本では職能資格制度という人材の「職務遂行能力」を基準にした人事制度が採用されることになりました。

職能資格制度は、長期間での人材育成に適しているため長期の雇用を前提にする、つまり、その間に変わっていく従業員の生活も同時に守る必要がありました。結果として、人件費が高く、また年功序列になりやすいという特徴もあります。

しかし経済成長が落ち着いた現代では、雇用を守ること自体が難しくなってきています。従前のような成長が難しい現在の経済環境では、高い人件費は企業の業績を圧迫することとなり、企業はなるべく成果を出せる人材だけを社内に残したいと考えています。

欧米企業ではパフォーマンスの低い人材を解雇して、優秀な人材と入れ替えるのが主流です。数年単位でキャリアアップのために転職をするのが一般的で外部労働市場が発達しており、労働市場で需要のある人材であるために労働者自身も常に自分を高める努力をしています。

一方、日本では「終身雇用」がまだ完全に崩れてはおらず、外部労働市場はまだ欧米ほどには発展していません。多くの人材が大学卒業後、自発的に自分を高めずにいます。労働市場における自分自身の価値を考える機会が少ないため、また今までは、人材育成は企業の役割だと考えられてきたためです。そのため、特に大企業ではパフォーマンスの低い人材を多く抱えています。

また、日本では労働者に優しい法制度が整備されているため、パフォーマンスの低い人材を解雇することはなかなかできません。しかし、実際のところ、不況で会社の成長も難しくなっている中、貢献度の低い社員に給与を払い続けることは企業にとって負担となっているのです。では、離職の何が問題なのでしょうか。


一方、優秀な人が辞めてしまうと

企業は、「優秀な人材には辞めてほしくない」と思っています。「優秀な人材」とはどういった人材でしょうか。「営業成績がよい=売上を上げてくる」など、会社への貢献度合いが大きい社員を優秀な人材、と考えるのが一般的です。

そういった人材がいなくなると会社の業績に大きな影響がある、だから辞めてほしくないのです。単に離職者が出ることは問題ではありません。優秀な人材がいなくなることで企業の生産性が低下することや、売上が減少すること、事業成長が止まることが最も避けなければいけない問題なのです。

逆にいえば離職者が出ても、事業が成長し続けるなら問題ありません。このように、離職防止施策の担当者は、常に「本当に解決したい問題は何なのか」「何の問題を防ぎたいのか」を考え続けなければいけません。

従業員の定着・リテンションには複合的な施策を

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では離職を防止するにはどうすればよいのでしょうか。まず離職防止を考える際には、真っ先に「優秀な人材が定着するにはどうすればいいのか?」を考えましょう。

最近、弊社に置いても社内で離職に関するデータ分析を行い、入社時の性格検査や転職歴、上司への不満、仕事へのモチベーションなどあらゆるデータを調べました。

結果はどの因子も直接的な原因ではないことがわかりました。

それぞれの因子はたしかに離職率と関係がある傾向が非常に弱く見られましたが、その因子だけでは離職原因になったとは言えなかったのです。

つまり、離職の理由は一つではありません。よほどのことがない限り、人は自分自身がいる環境を変えようとはしません。離職は複合的要因から発生すると認識することが重要です。仮に離職理由が一つだけだったとすれば、企業は反省しなければなりません。

多くの場合、まず離職につながる「小さな出来事」が続いて従業員のエンゲージメントが徐々に下がります。

その後、決定打となる出来事が起きて離職が発生します。また、その決定打は内的要因だとは限りません。

仕事に飽きた、たまたま他社にヘッドハンティングされた、など外的要因により離職につながることもあります。あなたも特に理由はないけれど、なんとなく会社を辞めたいと思う瞬間はないでしょうか。

例えば、毎日満員電車に揺られていてふと通勤に疲れた時などです。必ずしも会社の中で起きることが離職の原因ではないのです。会社の中で起きることは離職の「きっかけ」でしかありません。そのため、離職を防止し従業員を定着させるには複合的な施策が必要です。

従業員が組織に所属し続けるには「誘因」が必要

経営学者のバーナードは従業員が組織に所属する条件を「貢献≦誘因」と定義しました。従業員が組織に所属し続けるには、組織に貢献する労力よりも大きい対価が必要です。対価はお金による報酬だけとは限りません。特に優秀な人材ほど年収以上に、成長の機会や仕事でのやりがいを求める傾向があります。

しかし、自分の会社への貢献と比較してやりがいを感じられなくなった場合は簡単に会社を去っていきます。


人それぞれ会社に対する「誘因」は異なります。年収を求める人もいれば、成長を求める人もいます。その人の「誘因」を把握するためには、定期的にコミュニケーションをとることが重要です。

具体的には、経営者や人事とのカジュアルなミーティングを設定する、数か月に1回アンケートをとることなどがあげられます。こうしたヒアリング内容をもとに優秀な人材には、その人の「誘因」を大きくするような個別の離職防止策を検討することがおすすめです。

社外環境へのケア

離職は社内環境だけでなく、通勤環境や生活環境などの社外環境によっても引き起こされます。通勤時間の長い社員や満員電車など通勤環境が悪い社員に対しては、自宅でのテレワークや会社の近くへの引っ越し支援制度を検討しましょう。

また、生活環境へのケアとして睡眠時間を管理することもおすすめです。睡眠時間が減少すると、脳に疲労が蓄積し判断力が低下します。この状態では、人はネガティブなことを考えるようになります。

イライラしがちになり、ちょっとした出来事でも会社を辞める引き金になり得ます。従業員の福利厚生の一環として快眠を支援する施策を行えば、従業員にとって働きやすさを感じてもらえるようになり離職の間接的な防止にもつながるでしょう。

1on1での積極的な支援

社員がここで働きたい!と強くエンゲージメントを持つ組織は、上司や同僚と心理的安全性が高い状態でコミュニケーションができています。

このような組織は信頼感も高く、仕事の生産性が高まり、離職に繋がりづらい組織になることが様々な研究で判明しています。

そういったエンゲージメントや心理的安全性が高い組織をつくるために「1on1」ミーティングは非常に有用です。

他の社員が参加するミーティングと違い、マネージャーと部下だけの1on1ミーティングは、なるべく本心に近いことが話題に出やすく、本音で話ができやすい場となります。

1on1ミーティングは、週1回〜月1回程度、1回15分〜30分程度の時間で行われることが多く、導入企業は増えています。

1on1形式だとマネージャーはメンバーの心理状況を把握しやすくなり、公私含めて抱えている悩みや、ぶつかっている障害に対して支援できます。

数ヶ月継続するだけで、社員全体のエンゲージメントや士気向上につながる点が特徴です。

コミュニケーション量がチーム内で増加するだけでなく、結果的に離職予防にもつながります。


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離職の解決策に対する、銀の弾丸はない

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離職は唯一の原因ではなく、複合的な原因によって引き起こされることをご理解いただけたと思います。繰り返しになりますが、「単に離職を防止したい」と安易に考えるのではなく離職防止を通じて本当は何の問題を解決したいのかを考えることが重要です。

真に解決したい問題が優秀な人材の流出防止であれば、離職防止施策も変わってくるでしょう。是非、本当に解決したい問題にアプローチできる離職防止施策を考えてみてください。

エンゲージメントを高めて、1on1やフィードバック、称賛でチームの生産性向上につなげる「Co:TEAM(コチーム)」

従業員に離職率を下げたり、定着率を高めたい企業様にご紹介したいのが、「モチベーション」「エンゲージメント」をカンタンに毎日取得して把握できるCo:TEAMです。

コチームは上記取得したデータを基にチーム間のコミュニケーションから「タイムリーなフィードバック」を増やし、「1on1」で困っているメンバーを支援しながら、最終的には「目標管理」「評価支援」機能が連携してエンゲージメントを育成するパフォーマンス・マネジメントプラットフォームです。

導入によりエンゲージメントが向上されることで、休退職リスクやメンタルリスクの低下、生産性の向上などが期待できます。

※参考文献
厚労省 平成27年度 中小企業白書
内閣府 「日本経済2017-2018」

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