目次
経営ビジョンとは
経営ビジョンとは、企業のビジョン実現のため経営理念をもとに定められる、経営方針や従業員の行動指針など、企業全体の行動を統一するものです。
また経営理念とは、企業という多くの人の集合体である組織を同じ方向に導くために、企業全体の価値観や考え方を統一するものです。
経営理念を基礎として経営ビジョンが定められます。
企業の経営に関する基本的な考え方や価値観は社会情勢などに影響されないため、経営理念はまず変わることがありません。
一方で、社会情勢や市場環境の変化によって企業がとるべき行動は刻々と変化するため、経営ビジョンは定期的に見直されなければなりません。
経営ビジョンが重要視されている3つの背景
近年経営ビジョンや経営理念が重要であると再注目されています。
かつてより重要なものであると理解されていたのに、なぜ再び重要性が注目されているのでしょうか?
VUCA時代への突入
経営ビジョンが重要視されている理由の1つ目は、現代そして今後が「VUCA時代」であるからです。
VUCAとは
- Volatility(変動)
- Uncertainty(不確実)
- Complexity(複雑)
- Ambiguity(曖昧)
の頭文字をとったものです。
かつてのビジネス環境は安定していて変化も激しくなかったため、未来の予想が比較的簡単でした。
しかし現代のビジネス環境は過去のビジネス環境に比べて、日々目まぐるしいスピードで、そして短い期間に大きく変化し続けています。これはビジネスサイクルが短縮したといえます。
そのため経営者であっても先を読むことや企業の将来の姿を示すことが難しくなり、成果も出しづらくなっています。
このようにビジネスサイクルが短縮した環境で成果を出し続けるためには、柔軟に変化へ対応し、素早く行動することが大切です。
そのためには現場の従業員一人ひとりが自律的に判断して行動することが求められます。
経営ビジョンの浸透によって従業員の思考・行動の判断基準を与えられれば、自律的に従業員が行動してくれるでしょう。
テレワーク・リモートワークの浸透
経営ビジョンが重要視されている理由の2つ目は、IT技術の進歩、そして新型コロナウイルスの流行を契機に、テレワーク・リモートワークが浸透したからです。
多くの人が通勤や営業先への移動のストレスが減ったという恩恵を感じています。
しかし一方で、環境の急激な変化によって従業員の将来への不安の増加や、社内のコミュニケーション不足などの問題もあります。
不安のある職場では従業員のモチベーションは上がりづらく、コミュニケーションが不足している企業は従業員エンゲージメントが低くなってしまいます。
モチベーションや従業員エンゲージメントを高める施策として、従業員が共感できる経営ビジョンを定めることが注目されています。
またリモートワークによって、従来のように職場の雰囲気から自分が何をすべきか判断することが困難になりました。
このような環境下でも、経営ビジョンの浸透によって従業員の思考・行動の判断基準を与えることで自律的な行動が期待できます。
人材の流動性の高まり
経営ビジョンが重要視されている理由の3つ目は、人材の流動性が高まったからです。
近年人材の流動性が高まったため、人材の定着が難しくなってきています。
流動性が高まった理由として、価値観の変化により転職を前提として定年まで勤務しようと考えず入社してくる人や、企業の中核として活躍する中堅社員であっても機会があれば転職することにためらいを感じない人が増えてきていることが挙げられます。
このような環境の中で人材の流動性を抑えるためには、会社が実現しようとしているビジョンに対して従業員に共感してもらい、自身の将来的なビジョンと重なっている状態を作り上げて、従業員の働くモチベーションを高めることが大切です。
そのために従業員にとって最も関係のある経営ビジョンを柔軟に変化させ、浸透させる必要があります。
経営ビジョン浸透のメリット
上記でも触れたようにしたように、適切な経営ビジョンを定めて浸透させることには様々なメリットがあります。
ここではそのメリットをわかりやすくまとめて解説します。
自社に合う人材を維持・確保できる
経営ビジョン浸透のメリット1つ目は、自社に合う優秀な人材を維持・確保できることです。
経営ビジョンが浸透している企業は、社員が同じ方向を向いているため、企業のカラーが生まれます。
この企業カラーは自社の価値観や行動方針に共感してくれる人材を集めることにつながります。
価値観などが自社にマッチした従業員が多くなれば、離職率の低下が期待できます。
しかし、もし経営ビジョンが定められていなかったり浸透していなかったりすると、価値観や進むべき方向性が明示されていない状態になります。
そのような状況下では、求職者は給与や福利厚生といった表面的な部分でしか会社選びの判断を下せず、人材のミスマッチが起きて離職に繋がってしまいます。
また、明確な経営理念がある環境では、従業員が判断に迷いにくいため実力を発揮しやすくなり、実績を出しやすくなります。
実績が上がれば評価も上がるため、企業に対する従業員の満足度は向上します。
社員のモチベーションの向上
経営ビジョン浸透のメリット2つ目は、社員のモチベーションの向上が期待できることです。
経営ビジョンが浸透している環境は、会社として向かうべき方向が明確になっているといえます。
そのため社員は自分が会社の中で何をなすべきかはっきりとわかります。
社員が自分の役割を知っていることは、自分の存在意義を見出すことに繋がり、仕事のモチベーションの向上になります。
さらに、モチベーション高く仕事をしているということは満足度が高いことでもあるため、離職率の低下や優秀な人材の流出防止にも繋がります。
経営ビジョンを浸透させる2つの具体的な方法
経営ビジョンを定めることは簡単でも、社内に浸透させることは難しく、自社の経営ビジョンを大半の従業員が知らない企業も多く存在します。
ここでは、経営ビジョンを浸透させる具体的な方法を紹介します。
1on1ミーティング
1つ目は1on1ミーティングです。
1on1ミーティングとは週に1回30分や、隔週に1回30分といった短いサイクルでリーダーとメンバーが定期的に1対1で話すことです。
会社が実現しようとしているビジョンと各従業員が持つ自身の将来的なビジョンが重なることで、モチベーションが生まれます。
2者のビジョンを一致させるには、ただ経営ビジョンを張り出したり伝えたりといった押し付けではうまくいきません。
経営者層やリーダーとのコミュニケーションの中ですり合わせ、浸透させていく必要があります。
日本を代表する電気メーカーのSONYでは、巨額な赤字が続いていた時期に全国の拠点の社員一人ひとりと1on1ミーティングを実施して、社員の想いや今後のビジョンを共有して経営ビジョンの変化・浸透を進めました。
その結果、赤字から黒字に転換させ、その後も大きく売り上げを伸ばしていきました。
このように、1on1ミーティングは経営ビジョンの浸透やすり合わせに大きな効果があります。
1on1ミーティングは簡単に始められるという良さがあります。
しかしスケジュールを前もって押さえ、当日までにお互いに準備することが大切です。
リーダーは、なにを話すべきか決めておきましょう。またメンバーには、事前に聞きたいことを整理しておいてもらいましょう。この準備によって1on1ミーティングを有意義な時間にできます。
また簡単に始められる一方、予定の調整や話す内容を毎回決めることに労力が必要なため、なかなか継続できないというケースが多くあります。
社内表彰制度
2つ目は、社内表彰制度です。
社内表彰制度とは、勤続賞など企業が自社の従業員を独自に表彰する制度のことです。
表彰制度によって、自社の経営ビジョンに合った人材を指し示すことで、従業員に会社の方向性を明示できます。
会社の設けた基準に則って何度も表彰される人物は経営ビジョンが反映された、会社が求める人材であり、その企業にとってのロールモデル(理想像)と言えます。
他の従業員や新人にとって、そういったロールモデルがはっきりと示されることで目指す人物像が明確になるため、その理想像を目指して仕事に取り組むようになります。
そうすれば自然に経営ビジョンに則った行動をする社員が増え、企業としての成長に繋がるでしょう。
経営ビジョンを浸透させるための2つのポイント
経営ビジョンを浸透させる方法がわかりました。
しかし、これらの方法を実施するにあたって気を付けなければならないポイントが3つあります。
経営ビジョンの目的をしっかり伝える
経営ビジョンを浸透させるためのポイント1つ目は、経営ビジョンの目的をしっかり伝えることです。
経営ビジョンが浸透している多くの企業は、その目的が言語化されています。
言語化されていることで社員も目的が理解しやすく、対外的にも公表できるため、浸透しやすくなります。
また、経営者層が社員に対して経営ビジョンの目的を伝える努力も大切です。
社内報のような媒体を使って経営ビジョンの目的を丁寧に解説したり、朝礼などで定期的に話すなどすると良いでしょう。
具体的で理解しやすい表現にする
経営ビジョンを浸透させるためのポイント2つ目は、具体的で理解しやすい表現にすることです。
経営ビジョンは社員だけでなく、取引先や顧客、社会全体に対しても伝えなければいけません。
そのため、だれが見ても同じ解釈ができる内容にする必要があります。
経営ビジョンはKGIのようにある数値を達成することが目的ではなく、少ない文章で簡潔にまとめる必要があるため、抽象的になってしまう傾向があります。
しかし、抽象的な表現で提示しても、結局何を伝えたいのかわからなかったり、人によって解釈が異なってしまう恐れがあります。
経営ビジョン浸透に成功した2社の事例
ここでは経営ビジョンの浸透によって、大きな業績を上げている実際の企業例を紹介します。
スターバックス
カフェのチェーンとして世界トップクラスの収益を誇るスターバックスは、アルバイトにまでしっかりと経営ビジョンが浸透しています。
その理由として、社員やアルバイトなどの立場に関係なく、新人には80時間の研修をしていることが挙げられます。
この研修時には接客のやり方やコーヒーの作り方だけでなく、経営ビジョンの浸透にも多くの時間が割かれています。
また、4ヶ月に1回、アルバイトも含め人事考課が実施されています。
この人事評価の中では「将来自分がどうなっていたいのか」「なりたい自分になるためにはどうすればいいのか」ということがヒアリングされ、経営ビジョンとのすり合わせが行われます。
これらのことはインナーブランディングと呼ばれ、企業が自らのブランド価値や経営ビジョンなどを社員に正しく理解してもらい浸透させることを目的として、自社の従業員に向けてブランディングしています。
またスターバックス社は、従業員の接客用マニュアルをあえて作成していません。
経営ビジョンをしっかりと浸透させ、従業員1人1人が会社のミッションやバリューを理解した上でマニュアルが存在しない環境を作ることで、内発的動機によって理想像を目指して従業員1人1人が自主的な行動をとることに繋がっています。
その結果、心のこもった明るい接客の従業員が多くなり、満足度の高いサービスの提供に繋がっています。
キリンビール株式会社
キリンビール株式会社は、「一番搾り」や「氷結」といった人気アルコール商品を販売する、キリンホールディングスの中の主要企業で、理念浸透によって売り上げを大きく向上させた企業です。
かつて「ビールといえばキリン」といわれたほど、キリンビール株式会社はビール市場のトップに君臨していました。しかし、時代の変化に対応できず2001年にはトップの座から陥落してしまいます。
この出来事を受けて、当時の布施社長は対話集会をスタートさせ、その中で「お客様のことを一番に考える」という経営ビジョンを浸透させようとしました。
この対話集会は経営者層や管理職だけでなく、若手社員や労働組合までをも巻き込んで行われたもので、多くの労力をかけてでも従業員1人1人に経営ビジョンを浸透させようとした取り組みでした。
そしてこの取り組みにより社員の意識改革に成功し、企業としての成長に繋がりました。
結果として、年々ビール市場が縮小してきている現代の状況でも収益を上げることに成功し、メイン商品の一つである「1番絞り」は2019年に過去最高売り上げを達成するほどの成長を遂げました。
まとめ
経営ビジョンを浸透させることは簡単なことではありません。
しかし、それに比例するように大きなメリットがあります。この記事が、経営ビジョン浸透の手助けになれば幸いです。
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