ピア・プレッシャーとは?現代で注目されている背景・メリット・デメリット
目次
ピア・プレッシャーとは?
ピア・プレッシャーとは、端的に説明すると、周囲の人々からの様々な圧力のことです。
元々は、同調圧力という意味をあらわす”peer pressure”という英単語から生まれた言葉です。この英単語をさらに分解すると、peerは仲間、pressureは圧力という2つの意味に分けられます。
日本では昔から、他人の気持ちを察することや、他人を思いやる精神が美徳とされてきました。
そのため日本企業は、海外企業と比べてピア・プレッシャーが強いと言われています。
2種類のピア・プレッシャー
ピア・プレッシャーを分解すると、2種類に分けられます。
この2種類のピア・プレッシャーは、どのような理由で生まれたかによって分類されます。
それぞれのピア・プレッシャーを例と共に見ていきましょう。
相互監視のピア・プレッシャー
2種類のピア・プレッシャーの1つが、相互監視のピア・プレッシャーです。
ピア・プレッシャーとは周囲の人々からの様々な圧力だと説明しました。
周囲に複数の人々がいる状況は、集団に属しているといえます。集団の例として職場やチームなどがあります。
そしてこの職場やチームといった集団に存在する、同僚や仲間からの同調圧力によって生まれるのが、相互監視のピア・プレッシャーです。
例として、周りが取っていないから有給が取りづらい、周りが残業していると、やるべきことが終わっても定時に帰りづらいなどがあります。
相互配慮のピア・プレッシャー
2種類のピア・プレッシャーの内もう1つは、相互配慮のピア・プレッシャーです。
ここまでの説明だけでは、ピア・プレッシャーはネガティブなものだと感じるでしょう。
しかし、皆で足並みを揃えようと周囲に配慮する助け合いの心から生まれる、相互配慮のピア・プレッシャーも存在します。
例として、掃除当番の人が体調不良で欠勤した時には、ピア・プレッシャーによって自主的に他の人が代わりに掃除をするでしょう。そして後日、ピア・プレッシャーによって今度は欠勤した人が、代わりに掃除をしてくれた人が掃除当番の日に掃除をするでしょう。
このようにピア・プレッシャーには、仕事の負担を平等にするというポジティブな面もあります。
現代でピア・プレッシャーが注目されている3つの背景
ピア・プレッシャーは時代遅れであるため、必要ないと考える方もいるでしょう。
しかし近年、日本のみならず、世界でもピア・プレッシャーが注目されています。
ここでは現代でピア・プレッシャーが注目されている背景を解説します。
年功序列主義から成果主義への変化
現代でピア・プレッシャーが注目されている1つ目の背景は、年功序列主義から成果主義への変化が起こったからです。
成果主義の導入が進んだ結果、個人の業績を上げることばかりが優先され、職場の協調性やチームワークが低下してしまいました。
この低下に伴い、業務効率や生産性も低下してしまいました。
低下してしまった協調性やチームワークを取り戻すために、ピア・プレッシャーが注目されています。
各個人が成果を求めながらも、協力そして助け合いが活発に行われる組織風土を作り上げるため、相互配慮のピア・プレッシャーを活用できます。
また、成果を求めすぎて倫理的に間違ったことをさせないために、相互監視のピア・レッシャーが活用できます。
フリーランスブームの反動
現代でピア・プレッシャーが注目されている2つ目の背景は、フリーランスブームの反動によるものです。
近年フリーランスがブームになっています。その一方で、チームや組織で働くことが再評価されています。
フリーランスは仕事に対するモチベーション維持やスケジュール管理を自分1人だけでしなければなりません。
しかしフリーランスになると、ピア・プレッシャーによる緊張感が無くなってしまうため、スケジュール通りに仕事を終わらせることが難しいという悩みが多くあります。
しかし会社に所属していれば、ピア・プレッシャーによって納期を厳守しなければならないという気持ちになり、業務へのモチベーションが保ちやすくなります。
そのため、一度フリーランスとして独立した人であってもチームを組んだり、柔軟に働ける雇用契約で再び会社に所属する人少がなくありません。
テレワーク・リモートワークの普及
現代でピア・プレッシャーが注目されている3つ目の背景として、テレワークやリモートワークの普及があげられます
新型コロナウイルスの流行を契機に、テレワークやリモートワークが普及しました。
これにより多くの人が通勤や営業先への移動ストレスが減ったという恩恵を感じています。
しかし一方で、従業員同士の繋がりが希薄化してきています。
繋がりの希薄化に伴ってピア・プレッシャーも弱くなるため、モチベーションを保つことが難しかったり、業務への手抜きが起こってしまう可能性が高まります。
これらのことを防ぎ従来の生産性を保つために、テレワークやリモートワークの環境下でのピア・プレッシャーが注目されています。
また、テレワーク・リモートワークにおける業務を円滑にするツール・システムについては以下の記事で紹介しています。
ピア・プレッシャー4つのメリット
現代でピア・プレッシャーが注目されている背景の中で、ピア・プレッシャーのメリットに少し言及しました。
ここでは改めて、ピア・プレッシャーのメリットを4つにまとめましょう。
高いモチベーションを保ち続けられる
ピア・プレッシャーのメリット1つ目は、高いモチベーションを保ち続けられることです。
適度なピア・プレッシャーはお互いに見られているという意識、そして軽い緊張感を生みます。
この緊張感の効果で、決められた時間内に業務を終わらせなければいけないという感情が各個人に生まれ、この感情が仕事に対するモチベーションに繋がります。
またこの緊張感は、業務上での個人のミス減少にも繋がります。
従業員同士が切磋琢磨する環境が生まれる
ピア・プレッシャーのメリット2つ目は、従業員同士が切磋琢磨する環境が生まれることです。
ピア・プレッシャーの緊張感により、従業員の間には互いに同じレベル感で仕事をしなければならないという気持ち、ひいては競争意識が生まれます。
この競争意識により、業務の能率や生産性を互いに意識し、切磋琢磨しながら仕事をする従業員が増えるため、全体としての生産性も向上します。
そして切磋琢磨し続け最終的には、従業員1人1人がプロ意識と高い生産性を持った組織が生まれます。
実際にある企業では、レジを終わらせる速度を計測し、ランキングとして張り出しています。
これは能力が可視化されたランキングを張り出すことでピア・プレッシャーを生み、従業員同士を切磋琢磨させるための施策です。
チームワークの向上に繋がる
ピア・プレッシャーのメリット3つ目は、チームワークの向上に繋がることです。
ピア・プレッシャーが存在する組織では、お互いに仕事ぶりを観察しています。そのため何か問題が発生した場合はすぐに気づき、助け合えます。
例として、仕事が立て込んでいる同僚のために自発的に残業して助けるといったことが挙げられます。
またピア・プレッシャーは、メンバーの自分勝手な行動を抑制し、互いに協調しようという雰囲気を生みます。
このようにピア・プレッシャーはいざという時に従業員同士が助け合う環境や、協調しようとする雰囲気を生み、最終的には強いチームワークの醸成に繋がります。
心理的安全性が高まる
ピア・プレッシャーのメリット4つ目は、心理的安全性が高まることです。
相互監視のピア・プレッシャーは攻撃的な言葉や行動を抑制します。
そのため会議などで意見を言ったときも、すぐに批判する人や厳しい言葉で叱責する人の抑制に繋がります。
このことは、チームメンバーに非難される不安を感じることなく、自分の意見を安心して伝えられる環境の醸成に繋がるため、心理的安全性が高まります。
心理的安全性が高まれば、離職率の低下やイノベーションが起きる可能性の向上に繋がります。
ピア・プレッシャー5つのデメリット
適度なピア・プレッシャーは上記の通り様々なメリットがあります。
しかしピア・プレッシャーは強すぎたり、弱すぎたりする状態になった途端に悪影響を及ぼします。
ここではピア・プレッシャー5つのデメリットをまとめて紹介します。
ピア・プレッシャーが強い場合のデメリット:相互監視による過剰なストレス
ピア・プレッシャーが強い場合のデメリットは、相互監視によって過剰なストレスが生まれる可能性です。
ピア・プレッシャーが強すぎる組織では過度な相互監視が行われるため、周囲の目を常に気にするようになります。
このような環境では仕事に集中することが難しくなり、生産性が下がることがあります。
また過度なピア・プレッシャーによって度を越した競争意識が生まれる可能性もあります。
強い競争意識によって生産性が一時的に向上にすることもあるでしょう。
しかしこのように周囲から常に監視され、競争意識が強すぎる環境は従業員にとって大きなストレスとなり、メンタルヘルスの問題を引き起こします。
ピア・プレッシャーが強い場合のデメリット:劣悪な職場環境の醸成
ピア・プレッシャーが強い場合のもう1つのデメリットは、過度な同調圧力が生まれた結果、劣悪な職場環境が醸成されてしまう可能性です。
例として
- 残業が断りづらい
- やるべきことが終わっているのに定時に帰りづらい
- 有給や育休が取得しにくい
- 企業内のイベントが断りづらい
といった環境があります。
これらの環境が慢性化ししてしまうと、極端な長時間労働や過剰なノルマ、ハラスメントが横行した従業員が大切にされないブラック企業になってしまいます。
また企業として出産・育児の支援制度や残業を減らす取り組みをしているにもかかわらず成果が上がらない職場は、根強いピア・プレッシャーが部署やチームごとに残っている可能性があります。
その対処としては、チームリーダーが率先して有給を取るなど、役職の高い人間が先陣を切ることで部下たちも自由な働き方ができるような雰囲気を作り出す必要があります。
ピア・プレッシャーが強い・弱い場合のデメリット:積極的な社員の減少
ピア・プレッシャーが強い場合と弱い場合、両方で起こりうるデメリットは、積極的な社員が減少してしまう可能性です。
まずピア・プレッシャー強すぎる場合は、過度な同調圧力によって周囲と同じような意見しか許されない風潮が生まれてしまいます。
その結果、斬新で新しい意見を言うなどの自己主張が難しくなり、企業としての多様性が失われてしまいます。
また、批判や失敗することを恐れるあまり、新しいチャレンジがしにくくなってしまいます。
そのような環境ではイノベーションが起きづらくなり、組織の発展が阻害されてしまいます。
次にピア・プレッシャーが弱すぎる場合は、職場に緊張感が無くなってしまうため、成果を出そうという意欲が失われてしまいます。
その結果職場に活気がなくなり、生産性の低下に繋がります。
またこのような職場環境が慢性化すると、今度は仕事に対してモチベーションが低いことを良しとする同調圧力が生まれ、モチベーションが高い人の疎外に繋がってしまいます。
ピア・プレッシャーが弱い場合のデメリット:連帯感や信頼感の欠如
ピア・プレッシャーが弱い場合のデメリットは、連帯感や信頼感が欠如してしまう可能性です。
ピア・プレッシャーが弱すぎると、行き過ぎた個人主義が蔓延しやすくなります。その結果職場の仲間への配慮が無くなり、連帯感や信頼感が消えてしまいます。
企業活動は、従業員同士が連携してこそ大きな生産性を生みます。
そのため、このような環境下ではチームワークを発揮できず、業務効率や生産性が低下してしまいます。
ピア・プレッシャーが弱い場合のデメリット:手抜きの発生
ピア・プレッシャーが弱い場合のもう一つのデメリットは、仕事への手抜きが発生する可能性です。
相互監視のピア・プレッシャーは強すぎるとストレスになってしまいますが、弱すぎる場合は仕事への手抜きに繋がります。
ピア・プレッシャーが弱い場合、誰かが仕事の手抜きをしても注意する人がいません。
そして注意しないどころか、誰しも損をしたくないため、「他の人が手抜きをしているのであれば自分も手抜きをしよう」というように皆が考え始めます。
その結果仕事への手抜きが職場全体に伝染してしまいます。
組織でピア・プレッシャーを有効に活用する3つの具体的な方法
適度なピア・プレッシャーを保ち、活用するためにはどのような施策を取ればよいのでしょうか?
ここではピア・プレッシャーを有効に活用するための具体的な方法を3つ紹介します。
1on1ミーティングの実施
組織でピア・プレッシャーを有効に活用する具体的な方法1つ目は、1on1ミーティングの実施です。
1on1ミーティングとは週に1回30分や、隔週に1回30分といった短いサイクルでリーダーとメンバーが定期的に1対1で話すことです。
1on1ミーティングを通して部下の業務の進捗状況や問題を聞けるだけでなく、リーダーがメンバー1人1人と定期的に話をすることでピア・プレッシャーを与えられるため、チームとしての適度な緊張感を維持することにも役立ちます。
また部下は自分の目標達成度合や成果をアピールできる機会になるため、評価に対する不安の解消に繋がります。
不安の解消は自己主張や挑戦に繋がり、チームメンバー全員を同一化しようとするピア・プレッシャーへの対策にもなります。
1on1ミーティングの良い点として、簡単に始められるという良さがあります。
しかしスケジュールを前もって押さえ、当日までにお互いに準備することが大切です。
リーダーは、なにを話すべきか決めておきましょう。またメンバーには、事前に聞きたいことを整理しておいてもらいましょう。この準備によって1on1ミーティングを有意義な時間にできます。
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360度評価の導入
組織でピア・プレッシャーを有効に活用する具体的な方法2つ目は、360度評価の導入です。
360度評価によって、様々な角度から自分自身が周囲からどのように見られているか認識できます。
このことは自分への自信や反省に繋がります。
自分に自信を持つことや周囲からの意見を聞いて改善することは、強いピア・プレッシャーに負けることなく自己主張することや、弱いピア・プレッシャーによる行き過ぎた個人主義に気付かせて改善させる機会を与えます。
このことはモチベーションが高い社員や良いチームワークを育むことに繋がります。
360度評価をスムーズ且つ効果的に行うためのシステムについては以下の記事にて紹介しています。
明確な役割と責任を各従業員に与える
組織でピア・プレッシャーを有効に活用する具体的な方法3つ目は、明確な役割と責任を各従業員に与えることです。
日本は今でも職務範囲が明確ではない、メンバーシップ型の雇用形態が中心です。
そのため職場の中での協調性が重視・評価される傾向があります。このような傾向は、ピア・プレッシャーによる過度な同調圧力が生まれやすい環境です。
そのため従業員1人1人に明確な役割と責任を与えることで、過度なピア・プレッシャーを生まない環境を整える必要があります。
また明確な役割と責任を与えることは、ワーク・エンゲージメント向上に役立ちます。
ワーク・エンゲージメントが高い職場は、仕事に対するモチベーションが高い従業員が多く存在し、そのような職場では互いに切磋琢磨しあうピア・プレッシャーが生まれやすくなります。
個人で行えるピア・プレッシャーへの対処法
既に現在ピア・プレッシャーの過不足による問題が存在する職場において、各個人が行える対策はないのでしょうか?
ここでは各個人で行えるピア・プレッシャーへの対処法を紹介します。
課題の分離
個人で行えるピア・プレッシャーへの対処法1つ目は、課題の分離です。
課題の分離とは、自分でコントロールできる自分の課題と、相手にしかコントロールできない相手の課題を明確に区別して考える、アドラー心理学の1つの考え方です。
例として、報告書を上司に提出したら、不快になるくらい強い言葉でミスを指摘された状況を考えます。
この状況を課題の分離で考えると
- ミスを反省し、同じミスを繰り返さないという自分の課題
- ミスを指摘するだけなのに相手が不快になる言葉を使ってしまった上司の課題
このように2つの課題に分けられます。
指摘の際の言葉遣いは上司しかコントロールできないことなので、そのことで落ち込んだり、悩んだりする必要はありません。
この考え方を過度なピア・プレッシャーにより、残業が断り辛い職場などに活用しましょう。
自分がやるべき業務が終われば、自分の課題は解決しているので迷わず定時に帰りましょう。
あなたが定時に退社することによって、他の社員から「なぜ自分だけ定時で帰るんだ」と思われるかもしれません。
しかしそのように思うことや、定時に帰れないことは他の社員の課題であって、あなたがコントロールできるものではありません。
自分でコントロールできる自分の課題だけに意識を向ければ、ピア・プレッシャーによる同調圧力から解放されるでしょう。
モチベーションに転換
個人で行えるピア・プレッシャーへの対処法2つ目は、ピア・プレッシャーを自分自身のモチベーションに転換することです。
例として、とても厳しいノルマを何としても達成しなければいけないというピア・プレッシャーが職場に存在している状況を考えます。
このピア・プレッシャーを諦めや怒りといった感情に繋げるのではなく、「厳しいノルマを達成できれば昇進や昇給もありえる」と考えることでピア・プレッシャーをモチベーションに転換させます。
モチベーションへの転換は、思考法をポジティブにすることと言えます。
そのため明日からでも簡単に取り組めるでしょう。
そしてモチベーションが上がれば、成果が出る確率も上がるでしょう。
まとめ
ピア・プレッシャーは適度であれば生産性やチームワークの向上に繋がる一方、過不足が生じると様々な悪影響を及ぼす諸刃の剣です。
そのため、普段から上司や人事担当は1on1ミーティングなどを活用してピア・プレッシャーをコントロールし、全従業員がストレスを感じることなく働ける職場の維持を目指しましょう。
1on1ミーティングのツール比較については、以下の記事をご覧ください。
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