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#1 組織開発におけるマネジメントの役割 組織開発の”理論”と”現場”に精通する異才AMI&I 溝口博重氏インタビュー 「令和の組織の在り方とは?」

最終更新日:2020/10/21

医療機関を専門とした組織開発事業に従事し、一般企業でも活用可能な組織活性化ツールや研修プログラムを開発されているAMI &I 社代表の溝口博重さんのインタビューを3回に分けてお届けします。溝口さんは、エムスリーキャリアさんの「病院経営事例集」や医療系専門誌で「組織マネジメントを中心とした経営支援」について連載されており、そのマネジメントに関する知見は、医療業界だけではなく、一般企業の方々でも参考になるはずです。

【お話を伺った方】 株式会社AMI&I  代表取締役 溝口博重さま

溝口博重(みぞぐち ひろしげ) 2010年より、医療機関を専門とした組織開発事業に従事。医療・ヘルスケアの専門家として、全国各地の医療機関で活躍する。また病院経営が高度に資本集約型のビジネスモデル(高額な医療機器が必要)であり、それらを活用する為に、高度に労働集約型のビジネスモデル(国家資格所有者が多数必要)である事から、一般企業でも活用可能な様々な組織活性化ツールや研修プログラムを開発。合理的かつ実践的な組織開発をモットーに、HRMに注力する。 株式会社 AMI & I 事業内容   ①10年後の医療・ヘルスケアを変える仕事全般 ②組織活性化ツールや研修プログラム開発 設立 2010年1月

目次

  1. ▶︎ 病院の組織を活性化させる、という仕事
  2. ▶︎病院の全スタッフ、清掃担当者まで全員が当事者
  3. ▶︎「睡眠の質と働く意欲」は関連はしている
  4. ▶︎きちんと寝てオペをするのと寝ないでするのでは、同じ人でも全然パフォーマンスが違う
  5. ▶︎大企業のマネジメントの役割は、設計図を書くこと。 中小企業では、 マネージャーも前線で戦う

▶︎ 病院の組織を活性化させる、という仕事

─まず最初に、代表を務められている株式会社 AMI&I 様の事業について教えてください。

溝口:病院の組織マネジメントを主に行っています。 組織を活性化させる、という仕事です。

病院というのは院長を頂点に専門職ばかりで、診療科が違えば使っている言葉も違えば文化も違います。僕は病院のことをよく「島国」「群島国家」と言いますが、インドネシアのように、ひとつの名前だけど400の大小の島々でできているイメージです。循環器が強いなら循環器科に医師がいっぱいいて権威があるけど、他にも一人しかいないような診療科も色々あるよね、という。そういった状態が顕著で、しかも職種等で科の横のつながりが全部分断されている。だからなかなかリレーションがとれてない。

日本だけでなく、世界中の医療機関でコミュニケーションの問題があります。そこを解決するために、マネジメント・モチベーション・リーダーシップ、この3つを縦軸として、「コミュニケーション」の横串を設定して実現する、という仕事をメインでやっています。

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▶︎病院の全スタッフ、清掃担当者まで全員が当事者

─ それはどういったレベルまで介入していくのでしょうか。例えば、現場の細かいところまでもタッチされるのでしょうか。

溝口:全スタッフ、清掃担当者まで含めてタッチしますね。院長は「自分はできている」と思っていることが多いですが、まず「院長ができてない」という話から始めないといけないことが現実的には多い。

─ 全スタッフ、ということですが、例えばどういう風に介入していくんでしょうか?

溝口:例えば、亀田総合病院は「always say yes」というキャッチフレーズでやっていますが、患者さんから何か言われたら「全スタッフがまず yes と言う」という指導をしています。まず Yes と言ってから考えろ、と。

─ 大事ですよね、それ。

溝口:大事ですよ。コミュニケーションの基本です。基本的に「患者の要望は全部聞く」スタンスで、「それはうちではできません」というのはやめようと。できるかどうかの確証がとれなくても、ちょっと上と掛け合ってみます、という話をするのも大事なことで、要は全員が「当事者」となるんです。「私は掃除のおばさんだから、そんなこと言われてもわかりません」と思うかもしれませんが、お客さん(患者さん)からみたら、みんな一律に亀田病院のスタッフ。これは外注だろうが契約だろうが関係ない。亀田病院に雇われて働いている以上は、患者さんとのコミュニケーションに関して No というのはありえません。そういう話をするところからスタートします。「全員が患者さんに向けて、同じ対応をできるようにしてください」と。

頭の下げ方など振る舞いに対して不快に思うかどうかは個人によるので、もっと本質的に、「我々のスタッフがお客様からの要望に対して、yesと言わないことは、いついかなる場合でもあり得ない」というスタンスで、「院長が断言しろ」とそういうところからスタートします。

─ そもそもなぜ医療の分野でビジネスをしようと思われたのでしょうか?

溝口:競合が少ないからです!笑 いや、端的にいうと、一番難しいんです。

医療の分野では、従業員がほぼ国家資格者なんです。専門職で、プロフェッショナルで、全員が自分の仕事に誇りを持っている。そういう人とたちの間でのコミュニケーションが悪い。一般企業で起きているコミュニケーション不全は、医療機関でのそれと比べると大した問題ではない。そういう一番難しいところで経験を積んでおけば、原理原則で言えば、一般企業でも対応できる。医療機関でのコミュニケーション不全が世界大会レベルだとすれば、一般企業でのそれは県大会レベルだから。言い過ぎかもしれません!笑

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▶︎「睡眠の質と働く意欲」は関連はしている

─ O:のサービスについては、どういうようなところが面白そうだと感じていますか?

溝口:睡眠という誰しもが一家言あるところに着眼している点と、睡眠に関してはまだまだそれ自体ブルーオーシャンで色々やれる余地がある、という点ですね。睡眠については、数値化はされていなくても自分でコンディションというものがなんとなくわかっている。例えば、若いうちはあんまり感じなかったけど歳を取ってきてただ寝ていても疲れとれないよね、とかコンディションよくするために2日続けて早めに寝てみたらやっぱり今日体軽いなとか。目に見えないところのコンディションだとか、そういうものを僕の観点からいうと「睡眠の質と働く意欲」は関連はしているだろうと。

そこを掘り下げていけばマネジメントのやり方も変わるだろうし、セルフケアの観点からしても、体調が悪いんだったら、コンディションが低いまま、総量の80パーセントで3日間働くよりも、2日間60パーセントでやって早めに帰って、休息して最後の日に100パーセントで仕上げてもいい。そういうふうに、自分でバランスをとってパフォーマンスあげてく方法をやってもいいのではないかなと思います。

今後、管理型の会社から、自主的にプロフェッショナルに仕事しろという方向性になると、プロフェッショナリズムという点で自分のパフォーマンスを最大限上げる、というのも仕事のうちだという流れになっていくと思います。そこに、潮流というか可能性がある領域だと思っています。

▶︎きちんと寝てオペをするのと寝ないでするのでは、同じ人でも全然パフォーマンスが違う

─ 睡眠からマネジメント、というのは一般的には飛躍していて「どう結びつくの?」という人が多いと思います。溝口さんのなかではそれが結びついているようですが、それはなぜですか?

溝口:それは質問が悪いです! 笑

普段僕病院の仕事をやっているんですよ、病院は夜勤のある人がほとんどじゃないですか。夜勤明けの医者のパフォーマンスが悪いことはもうわかっているんです。夜勤が終わって手術をやらせたら、ミスが多いんです。インシデント報告めっちゃ増えるわけです。「あ!」っていうのが。だから当直明けには手術をやらせないし、オペをやらせるんだったらその前の日は早めに帰らせろという話になる。内科の医師でも同じです。

私は、「日勤・夜勤・日勤」という36時間労働の現場をよく知っています。ようやく、医療の現場ではそういうのはやめましょうという話になってきましたが、逆にいうと「日勤・夜勤・日勤」というのが常態化している。そういうところで寝てないとよくないっていうのはもうわかっている。36時間労働は異常だけど、きちんと寝てオペやるのと寝ないでやるのでは、同じ人でも全然パフォーマンスが違うっていうことを考えると、睡眠と疲労との関連でも「ちゃんと眠る」ということは大事なので、当直室のベッドが硬いから変えてくれとか、枕変えてくれということがあります。

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▶︎大企業のマネジメントの役割は、設計図を書くこと。中小企業では、マネージャーも前線で戦う

─ 話は変わりますが、「オンボーディング・マネジメント・育成」について、中小企業/大手企業とそれぞれに現状ある課題をどのように捉えていますか?

溝口:そもそも育成の仕方が違う、ということがありますね。

僕はすべての規模の会社に行っていますが、中小零細企業はオールインワンなんですよ。ひとりが全部やれ、みたいな話で。極めて属人的で、できる人はできるし、できない人はできない、という風になりがちですし、教育も基本的にOJT、通称「お前が自分でトレーニングをやってくれ」ですよね。OJT中心だとどうしても属人的なものに偏ってきてしまって、その人しかできない仕事が増えてきてしまう。優秀な人が多ければ会社としては伸びるし、その人がいなくなれば下がる。それが中小零細企業の特徴です。

逆に大手企業の場合、「脱属人化」というのがポイントになり、「標準化・分業化」をしましょうということになる。この「標準化・分業化」によって再現性を担保するのが大手企業なので、全部できなくていい。逆にいうと、全体像が見えない人が多いわけです。どこかで工場のラインみたいに合体させて製品になる、その設計図がかける人がいないと駄目で、それがいわゆる大企業のマネジメントの役割です。一方で中小企業では、「ワンマンアーミー」たちを率いて作戦を遂行する、自分も前線で戦う人をマネージャーと言っているから、その差はありますよね。

─ その中で、中小企業でいうと「属人的」という言葉が出ましたが、誰か倒れると代えがきかず、あの人辞めたけど、この仕事はどうなってんだっけ、という状態に陥るということも多いですよね。

溝口:属人的だとブラックボックスが多いですからね。ほかには、「ホウレンソウ」が問題になることが多いですね。アーミーだから報告連絡相談がないと何やってるかわかんなくなるから、「ホウレンソウ」は必ずしろというのが鉄則としてあって、少なくともそれを上司が理解していないとまずいということはありますね。 ─ 逆に大手はどういう課題がありますか?

溝口:「ホウレンソウ」笑、組織の「幹(みき)」の部分にホウレンソウがないと、でたらめな報告を受けたらでたらめな判断しかできないしクズ情報を入れればクズな指示しかできない。クズ入れて金(きん)が出てくることはあり得ない。中小であろうが大企業であろうが、組織として見たときにまずは「ホウレンソウ」ができているかが重要で、まずホウレンソウができているかが第一ステップで、ここができていないならばそこから先はやる必要ありません、という話になります。

# 2  「新卒・中途社員の早期戦力化の鍵は ”自己効力感”」へ続きます

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