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仕事ができない部下の原因は「スキル不足」「モチベーション不足」「適性ミスマッチ」の3タイプに分かれます。しかし多くの場合、部下の能力以前に上司の指示の解像度が低いことが根本原因です。タイプ別の対処法と1on1の質問スクリプトで部下を戦力化し、それでも改善しない場合は見切りの判断基準に沿って配置転換を検討するのが合理的な進め方です。
マネジメントに関する調査では、管理職の約7割が「部下の育成に十分な時間を割けていない」と感じているという報告があります。プレイングマネージャーとして自分の案件も抱える中、部下の指導に使える時間は限られています。
何度注意しても同じミスを繰り返す部下の尻拭いに追われ、結局自分がやり直す。深夜残業が続き、このままでは自分が先に倒れるのではないか。そんな限界を感じているにもかかわらず、感情的に叱ればパワハラのリスクが頭をよぎる。この状態を放置すると、優秀なメンバーがフォローの不公平感から離職し、チーム全体が機能不全に陥ります。
この記事では、部下が動けない原因を3つのタイプに分類した上で、上司側の指示の出し方という見落とされがちな視点から、明日から使える具体的な打ち手を整理しています。
読み終えた後には、自分の部下がどのタイプに該当するかを特定でき、タイプに合った対処法と見切りの判断基準を持った状態になっているはずです。
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目次
仕事ができない部下の原因は3タイプに分かれる
仕事ができない部下の原因は、大きく「スキル不足」「モチベーション不足」「適性ミスマッチ」の3タイプに分類できます。タイプを特定せずに同じ指導法を繰り返しても成果は出ません。まず自分の部下がどのタイプに該当するかを見極めることが、対処法を選ぶ出発点になります。
200社超の営業組織を支援してきた中で、あるSIerの営業課長がこんな計算をしました。「中途4人入ると週の半分が育成で埋まる。半分になったら自分の担当案件に戻れる」。手帳を開いて30秒で弾き出した数字です。育成に時間を取られるマネージャーほど、部下の原因を正確に分類する必要があります。
スキル不足型──業務の分解や報連相ができない
スキル不足型の部下に見られる最大の特徴は、業務を小さなタスクに分解できないことです。大きな目標をステップに落とし込めないため、何から手をつけるべきかの判断が停滞します。
この問題は報連相の質にも直結します。タスクが細分化されていなければ、進捗の報告も曖昧になります。「今どこまで終わったか」を上司に説明できず、結果として上司が全体を把握できないまま期限を迎えるケースが頻発します。
メモを取らないのもスキル不足型の典型です。会議や指示の場で記録を残さないため、情報の漏れや手順の取り違えが繰り返されます。指導する側が同じ説明を何度もする負担も大きくなります。
「スキル不足は本人の努力が足りないだけでは」と感じる方は多いです。しかし、厚生労働省の能力開発基本調査(2023年度)では、自己啓発を行った労働者の割合は34.5%にとどまっています。自ら学ぶ習慣がない層に対しては、仕組みで育てるアプローチが必要です。
スキル不足型は原因が明確な分、対処しやすいタイプでもあります。マニュアルや手順書を細分化することで改善が見込めるため、まずはこのタイプかどうかを確認するのが効率的です。
モチベーション不足型──責任感が薄く言い訳が多い
モチベーション不足型の部下は、業務遂行に必要な能力を持っていても、やる気がないために成果が出ません。このタイプは責任感の欠如や言い訳の多さとして表面化します。
特徴的な行動パターンは3つあります。失敗を他者のせいにする、フィードバックを受け入れない、感情的に不満を表明する。いずれも自己防衛が優先され、業務改善への意欲が後回しになっている状態です。
このタイプが厄介なのは、チーム全体への悪影響が大きい点です。責任を押し付ける言動が常態化すると、周囲のメンバーが信頼を置けなくなります。協働が滞り、結果としてチーム全体の業務効率が低下します。
従来は「根気強く教える」ことがモチベーション不足型への対策とされてきました。しかし現在は、承認と称賛を先行させて心理的安全性を作るアプローチが有効とされています。叱責や指摘から入るのではなく、できている行動を認めることが行動変容の起点になります。
モチベーション不足型を放置すると、優秀なメンバーが不公平感から離職するリスクが高まります。早期にタイプを見極め、次のセクションで紹介する対処法に移ることが重要です。
適性ミスマッチ型──能力はあるのに成果が出ない
適性ミスマッチ型は、能力があるのに成果が出ない部下です。配置が本人の強みと合っていないことが原因であり、指導や叱責では解決しません。
たとえば、コミュニケーションが苦手な社員を顧客対応に配置しているケースは典型です。同じ社員をデータ分析やバックオフィス業務に移したところ、高い集中力を発揮してハイパフォーマーに変わった事例が複数の企業で報告されています。
200社超の営業組織を支援してきた経験から言えるのは、「能力があるのに成果が出ない」部下は、本人ではなく配置が間違っているケースがほとんどだということです。スキルを足すのではなく、環境を変える発想が解決を早めます。
このタイプを見極めるチェックポイントは2つあります。1つは、以前の部署や業務で成果を出していた経歴があるかどうか。もう1つは、現在の業務で繰り返しつまずく工程が特定の領域に偏っているかどうかです。
3タイプの分類を整理すると、以下のようになります。
| 分類軸 | スキル不足型 | モチベーション不足型 | 適性ミスマッチ型 |
|---|---|---|---|
| スキル水準 | 低い | 十分にある | 十分にある |
| 意欲の状態 | やりたいが方法がわからない | やる気が出ない | やっているが成果に結びつかない |
| 典型的な行動 | メモを取らない、手順を間違える | 言い訳が多い、責任を回避する | 真面目に取り組むがミスが特定工程に集中する |
| 有効な対処 | マニュアル細分化+段階的ゴール | 承認ファースト+心理的安全性 | ジョブローテーション+配置転換 |
この表から見えるのは、全タイプに共通の万能策は存在しないという事実です。タイプごとに打ち手を変えなければ、指導の時間だけが消費されます。ただし、ここで見落としがちな原因がもう1つあります。部下ではなく、上司の指示の出し方に問題があるケースです。
部下が動けない原因は「上司の指示の解像度」にある
仕事ができない部下の問題を深掘りすると、原因の多くは部下の能力ではなく上司の指示の出し方にあります。指示が曖昧なまま仕事を振れば、どんな部下でもミスをします。上司が指示の「解像度」を上げるだけで、部下のパフォーマンスは大きく変わります。
「アレやっといて」が部下を仕事ができない人にしている
上司の曖昧な指示こそが、部下を「仕事ができない人」に仕立てている最大の原因です。「アレやっといて」「前と同じ感じで」という言葉は、上司の頭にある完成イメージを部下と共有できていません。
部下は上司の意図を推測しながら動くことになり、推測がズレた瞬間にミスと見なされます。上司は「なぜできないのか」と感じ、部下は「何が正解かわからない」と萎縮する。この行き違いが繰り返されることで、部下はますます動けなくなります。
「指示が悪いと言っても、部下自身も努力すべきでは」という声は少なくありません。これはその通りです。ただし、上司と部下の双方に原因がある場合、先に変えられるのは上司側の行動です。部下の意識改革を待つより、指示の精度を上げるほうが即効性があります。
上下関係のある職場では、指示の不明点を積極的に質問できる部下はごく一部です。特に叱責を受けた経験のある部下は、質問すること自体を避けるようになります。結果として不明点を抱えたまま業務に着手し、やり直しが発生します。
プレイングマネージャーとして自分の業務も抱えている場合、指示にかける時間を削りがちです。しかし、曖昧な指示による手戻りのほうが、結果的に多くの時間を消費します。指示に5分かけることで、やり直しの2時間を防げるなら、投資対効果は明白です。
プレイングマネージャーが陥りやすい時間配分の問題については、こちらの記事で詳しく解説しています。
指示の解像度を上げる5項目チェックリスト
上司が指示を出す前に確認すべき項目は5つに集約できます。この5項目を埋めてから指示を出すだけで、部下の理解度とアウトプットの精度が格段に上がります。
5項目を「指示の解像度チェックリスト」として整理すると、以下のようになります。
| No. | 確認項目 | 曖昧な指示の例 | 解像度を上げた指示の例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的(なぜやるのか) | 「資料作っといて」 | 「来週の役員会で予算承認を取るための資料が必要」 |
| 2 | 期限(いつまでに) | 「なるべく早く」 | 「木曜15時までに初稿を共有」 |
| 3 | 完成イメージ(何がゴールか) | 「いい感じにまとめて」 | 「A4で3枚以内。売上推移グラフと競合比較表を含める」 |
| 4 | 判断基準(迷ったらどうするか) | 指示なし | 「数字の正確性を最優先。デザインは後で調整するので気にしなくていい」 |
| 5 | NG行動(やってはいけないこと) | 指示なし | 「過去のテンプレをそのまま流用しない。数字は必ず最新月のものを使う」 |
このチェックリストが既存のタスク管理手法と異なるのは、「判断基準」と「NG行動」を含めている点です。部下がつまずくのは、作業手順ではなく「迷ったとき」です。何を優先すべきか、何をやってはいけないかを先に伝えることで、上司への確認回数と手戻りを同時に減らせます。
実際にこのチェックリストを導入した組織では、指示出しに要する時間は1件あたり3分程度増えます。しかしその3分の投資で、やり直しや認識のすり合わせにかかる30分以上の工数を削減できます。
5項目すべてを毎回完璧に埋める必要はありません。最低限「目的」「完成イメージ」「期限」の3つを伝えるだけでも、曖昧な指示による混乱は大幅に軽減されます。まずはこの3つから始めるのが現実的です。
曖昧な指示を明確化したらミスが激減した現場事例
指示の解像度を上げた結果、チームのパフォーマンスが劇的に変わった事例があります。あるアパレル企業(従業員15名の営業チーム)では、研修導入時に12人がPCで別の作業をしているほど、現場の抵抗が強い状態でした。
この案件では、最初の1ヶ月は研修を一切行わず、全員に15分ずつ「何が嫌か」を聞くことから始めました。12年目の女性社員はこう話しています。「研修で教わったことを現場でやると、お客さんに『今日なんか違うね』って言われる。それが恥ずかしくて元に戻る」。この声を受けて、「教えない。数字だけ見る」に設計を変更しました。結果、売上は6ヶ月で130%向上しています。
この事例の成功要因は、上司側の「教え方」を変えたことです。部下に新しいスキルを押し付けるのではなく、部下が自分の数字を見て自分で気づく仕組みに切り替えました。つまり、指示の解像度を上げると同時に、指示そのものの量を減らしたのです。
「指示を減らしたら部下が余計にサボるのでは」という不安は自然な反応です。しかしこの事例では、3ヶ月目にリーダー格の男性社員が朝礼で自分のクロージングの遅さを自ら指摘し、改善を宣言する場面が生まれています。数字という客観的な判断基準を共有したことで、上司が指摘しなくても部下自身が行動を修正し始めました。
指示の出し方を仕組みとして型化したい場合、属人的なスキルに頼らない方法があります。指示の型化やマネジメント研修のアプローチを検討する際には、無料の資料もあわせて確認するとスムーズです。
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ここまでで、部下の原因タイプと上司の指示の問題を整理しました。次は、タイプごとに具体的にどんな打ち手を取るべきかを解説します。
※具体的な数値は導入企業の許可を得た範囲で一部加工しています
原因タイプ別・部下を戦力に変える対処法
部下を戦力に変えるには、原因タイプに応じた対処法を選ぶことが不可欠です。スキル不足型にはマニュアルと段階的なゴール設定、モチベーション不足型には承認を先行させた関わり方、適性ミスマッチ型には配置転換が有効です。全タイプに共通して効くのは、1on1での本音の引き出しです。
スキル不足型にはマニュアルの細分化と段階的ゴール設定
あなたの部下がスキル不足型なら、最も効果的な打ち手はマニュアルの細分化と段階的なゴール設定です。「業務を覚えろ」という抽象的な指示を、具体的なステップに分解します。
マニュアルを細分化する際のコツは、1ステップあたりの作業を「15分以内で完了する粒度」にまで落とし込むことです。タスクが大きいまま渡すと、部下はどこから手をつけるべきか判断できません。15分単位に分解することで、各ステップの完了を確認しやすくなります。
ゴール設定はティーチング(直接的な指導)の一環として行います。最終目標だけを示すのではなく、週単位の中間ゴールを3段階程度に分けて設定するのが効果的です。仮に最終目標が「月30件の提案書作成」なら、1週目は「テンプレートを使って10件」、2週目は「自力で20件」のように段階を刻みます。
マニュアルにはミス発生時の対応手順も記載しておくのがおすすめです。「失敗したらどうするか」が明確になっていると、部下が新しい業務に挑戦する心理的ハードルが下がります。失敗を恐れて手が止まるスキル不足型にとって、失敗後のリカバリー手順の明示は安心材料になります。
スキル不足型の成長には時間がかかりますが、マニュアルとゴール設定を仕組み化すれば、上司が毎回つきっきりで教える負担は確実に減ります。「教える時間がない」と感じている場合こそ、最初にマニュアルを作る時間を確保するのが結果的に近道です。
モチベーション不足型には承認ファーストで心理的安全性を作る
あなたの部下がモチベーション不足型なら、指摘や改善要求の前に「承認」を先行させることが最も有効な対処法です。できていない点ではなく、できている行動にまず目を向けます。
心理学ではこの効果をピグマリオン効果と呼びます。期待をかけられた相手は、その期待に応えるように行動が変わるという現象です。毎日1つでも具体的な行動を承認することで、部下は「自分の仕事が見られている」と感じ、自発的に改善に向かう土台ができます。
「承認ばかりしていたら甘やかしになるのでは」という懸念は当然です。しかし、承認と甘やかしは明確に異なります。甘やかしは基準を下げること、承認は基準を維持しつつ達成した事実を認めることです。「期限どおりに提出できた」「前回より報告の粒度が上がった」など、事実ベースの承認は基準を緩めません。
ある導入企業では、5人のマネージャーの1on1記録を横に並べたとき、対話の構造が似てきた瞬間がありました。「マネジメントの型が揃った」と経営者が表現した場面です。承認を先行させる1on1を仕組みとして定着させた結果、マネージャーの前向き度は73.3%から81.8%に向上しています。上司自身の負担感も軽減する効果が確認されています。
部下のモチベーション向上に特化した具体的な声かけ手法については、こちらの記事で解説しています。
適性ミスマッチ型にはジョブローテーションを検討する
あなたの部下が適性ミスマッチ型なら、指導の強化ではなくジョブローテーションの検討が正しい打ち手です。本人の強みと業務内容のズレが原因であるため、教え方を変えても根本は解決しません。
ジョブローテーションを検討する際の判断材料は2つあります。1つは、現在の業務以外の場面で強みを発揮した実績があるかどうか。もう1つは、ミスの発生箇所が特定の工程に集中しているかどうかです。両方に該当すれば、適性ミスマッチの可能性が高まります。
配置転換を提案する際は、「あなたが向いていないから」ではなく「あなたの強みを活かせる場所がある」という文脈で伝えることが重要です。本人の自尊心を傷つけると、異動先でもパフォーマンスが上がりません。
ジョブローテーションは部下育成の一環として体系的に設計するのが理想的です。単発の異動で終わらせず、異動後のフォローアップまでを含めた育成計画が必要です。部下の育成手順やフレームワークの全体像については、こちらの記事で体系的に整理しています。
全タイプ共通──1on1で本音を引き出す質問スクリプト
タイプを問わず、部下の指導が改善しない場合に最も効果があるのは1on1ミーティングの質を上げることです。鍵は上司が「教える場」ではなく「聞く場」として1on1を設計することにあります。
部下が同じミスを繰り返すとき、上司はつい「なぜできないんだ」と原因を追及しがちです。しかしこの問いかけは部下を防御モードに追い込み、言い訳を引き出すだけです。必要なのは、ミスの原因を部下と一緒にトレースする質問です。
ミスを繰り返す部下との1on1で使える「つまずきトレース質問」を5つ紹介します。この質問は、コーチングの技法を応用し、上司が答えを教えるのではなく部下自身に原因を発見させる設計です。
- 「この業務のどのステップで、一番手が止まりましたか」
- 「手が止まったとき、最初に何を確認しましたか」
- 「もし同じ業務をもう一度やるなら、どのステップを変えますか」
- 「完成イメージと実際のアウトプットで、一番ズレが大きかった部分はどこですか」
- 「次にこのズレを防ぐために、事前に上司に確認しておきたいことはありますか」
この質問スクリプトが従来の「なぜなぜ分析」と異なるのは、「なぜ」ではなく「どこで」「何を」で聞いている点です。「なぜ」は個人の責任を問う響きがあり、部下が萎縮します。「どこで」「何を」はプロセスに焦点を当てるため、部下が事実ベースで答えやすくなります。
1on1は週1回30分、または隔週1回30分の短いサイクルで実施するのが効果的です。頻度が低いと部下の課題が蓄積し、1回のミーティングが重くなります。1on1の基本的な進め方や目的については、こちらの記事で詳しく整理しています。
1on1の質問スクリプトを属人的なスキルに頼らず型として定着させたい場合、対話の構造を可視化する仕組みが有効です。マネージャーごとの1on1の質にバラつきがある組織では、型化のためのツール導入で指導品質が安定します。自分のチームでの指導の仕組み化を具体的に検討するなら、サービス資料で詳細を確認するのがおすすめです。
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タイプ別の対処法と1on1の質問スクリプトを試しても改善が見られない場合があります。そのとき必要なのは、指導を続けるか見切るかの判断基準です。
指導を続けるか見切るかの判断基準
指導を続けるべきか、配置転換に踏み切るべきかの判断は、感情ではなく客観的なシグナルに基づいて行う必要があります。判断を先延ばしにするほど、上司自身の疲弊とチーム全体の業績低下が加速します。
見切りをつけるべき3つのシグナル
指導を続けても改善が見込めない部下には、共通する3つのシグナルがあります。3つのうち2つ以上が該当する場合、配置転換を本格的に検討する段階です。
200社超の営業組織を支援してきた経験を踏まえると、指導を続けるべき部下と配置転換に踏み切るべき部下の分岐点は、「変化の兆候があるかどうか」に集約されます。スキルの伸び幅ではなく、行動が1ミリでも変わっているかを見るのが判断の核心です。
3つのシグナルを整理します。
- シグナル1: 同じフィードバックを3回以上繰り返しても行動が変わらない。 1回目は理解不足、2回目は定着不足の可能性があります。しかし3回目以降も同じ指摘が必要な場合、そのフィードバックが本人に届いていない構造的な問題があります。
- シグナル2: 1on1で「どこでつまずいたか」を聞いても、毎回答えが変わらない。 つまずきの原因を本人が特定できていない、または特定する意欲がない状態です。前のセクションの質問スクリプトを使っても同じ回答が繰り返されるなら、現在の業務との適性に根本的なズレがあります。
- シグナル3: 周囲のメンバーのパフォーマンスが目に見えて低下し始めている。 できない部下のフォローが特定のメンバーに集中すると、不公平感からチーム全体の士気が下がります。優秀な社員ほど負荷の偏りに敏感であり、放置するとエース人材から先に離職するリスクがあります。
「見切りをつけるのはパワハラにならないか」と不安に感じる方は多いです。しかし、配置転換は懲罰ではなく、本人の適性に合った環境を用意する行為です。適切な手順を踏めば法的リスクは回避できます。その手順を次のH3で解説します。
配置転換を成功させるための手順と注意点
配置転換を進める際に最も重要なのは、本人に「罰」ではなく「適材適所」として伝えることです。伝え方を間違えると、部下のモチベーションがさらに低下し、異動先でも成果が出ません。
手順は3ステップで進めるのがスムーズです。まず、1on1の中で本人の強みと現在の業務のミスマッチを事実ベースで共有します。次に、異動先で活かせる強みを具体的に提示します。最後に、異動後3ヶ月間のフォローアップ計画を本人と一緒に作成します。
配置転換の前にPIP(業務改善計画)を実施しておくと、法的なリスクをさらに低減できます。PIPとは、改善目標と期限を文書で合意し、期限内に達成できなかった場合の対応を事前に明確にするプロセスです。記録を残しておくことで、万が一トラブルになった際の根拠資料になります。
部下の適性を客観的に把握するには、上司個人の観察だけでは限界があります。タレントマネジメントの仕組みを使い、スキルや適性をデータで可視化すると、配置転換の判断精度が上がります。属人的な「感覚」ではなく、データに基づいた判断は部下本人への説明もしやすくなります。
配置転換は上司にとっても勇気がいる決断です。しかし、合わない環境で指導を続けることは、上司と部下の双方にとって時間の浪費になります。判断基準を明確にしておくことで、「もう少し様子を見よう」の先延ばしを防ぎ、チーム全体のパフォーマンスを守ることにつながります。ここまでの対処法と判断基準を整理した上で、最後に上司自身が気づきにくいNG行動を確認しておきます。
上司が無意識にやっている2つのNG行動
対処法や判断基準を整理しても、上司自身が無意識にとっている行動が部下の成長を阻害しているケースがあります。自分では気づきにくい2つのNG行動を確認し、当てはまっていないかを振り返ることが改善の第一歩です。
質問・相談しにくい雰囲気を作っている
上司のNG行動として最も多いのは、部下が質問や相談をしにくい雰囲気を無意識に作っていることです。本人は「いつでも聞いてくれ」と言っていても、実際の態度がそれを裏切っています。
具体的には、部下が質問したときにイライラした表情を見せる、相談に対して「それくらい自分で考えろ」と突き返す、忙しいアピールで話しかけるタイミングを失わせる。これらの行動が重なると、部下は不明点を抱えたまま業務を進め、後から取り返しのつかないミスにつながります。
対策はシンプルです。上司から定期的に声をかける仕組みを作ることです。部下の質問を待つのではなく、上司が先に「困っていることはないか」と聞きにいく。この先手のコミュニケーションが、相談しやすい雰囲気を作ります。上司が無意識にやりがちなNG行動の詳細と、部下が離れていく上司に共通するパターンについては、こちらの記事で体系的に整理しています。
自分の指導スタイルを全員に押し付けている
もう1つのNG行動は、自分のやり方を部下全員に一律で押し付けることです。「自分はこうやって成長した」という成功体験が、部下への指導の型を固定してしまいます。
仕事に対するスタイルや考え方は人によって異なります。データ分析から入るタイプの部下に「まず現場を見ろ」と指導しても、その部下の強みは活かされません。部下の個性に合わせて指導法を変える柔軟性がなければ、適性ミスマッチ型の部下をさらに追い詰める結果になります。
部下の意見をバッサリと否定し、自分の方法を押し通す行動はモチベーション低下に直結します。個々の考え方に寄り添いながらアドバイスする姿勢が、部下の成長を促す土台になります。優秀なマネージャーとダメなマネージャーを分ける具体的な行動特性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ここまでで、部下の原因タイプ別の対処法、上司側の指示の見直し、見切りの判断基準、そしてNG行動の確認を整理しました。最後に、よくある質問への回答をまとめます。
よくある質問
仕事ができない部下にイライラしてしまうときの感情コントロール法は?
イライラの根本原因は「期待と現実のギャップ」です。部下に対する期待値を事前に明文化し、ギャップが発生した時点で感情ではなく事実ベースで差分を伝える習慣を作ることが、感情的な反応を防ぐ最も実用的な方法です。
仕事ができない部下を放置するとチームにどんな悪影響がある?
できない部下を放置すると、そのフォローが優秀なメンバーに集中し、チーム内に不公平感が蔓延します。結果として優秀な社員から順に離職するリスクが高まり、チーム全体の業績が低下する負のスパイラルに陥ります。
退職勧奨を検討する場合に注意すべき法的リスクは?
退職勧奨は強制力を伴わない限り違法ではありませんが、繰り返しの面談や退職を前提とした言動は「退職強要」と見なされるリスクがあります。PIP(業務改善計画)の実施記録と本人の同意書面を残しておくことが、法的トラブルを防ぐ最低限の備えです。
まとめ
仕事ができない部下の原因は、スキル不足・モチベーション不足・適性ミスマッチの3タイプに分かれ、タイプごとに有効な打ち手は異なります。同時に、部下が動けない原因の多くは上司の指示の解像度の低さにあり、5項目チェックリストで指示を明確化するだけでミスは大幅に減ります。対処法を実践しても改善が見られない場合は、3つのシグナルに基づいて配置転換を判断するのが合理的です。
タイプ別の対処法を実行に移した後、次に体系的な育成計画を整備したい場合は、部下育成の手順やフレームワークの全体像をこちらの記事で確認するとスムーズです。
1on1の質問スクリプトや指示の型化を、マネージャー個人のスキルに頼らず組織の仕組みとして定着させなければ、担当者が変わるたびに同じ問題が繰り返されます。指導の属人化を解消し、チーム全体のマネジメント品質を安定させる具体的な方法は、サービス資料で確認するのがおすすめです。
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※具体的な数値は導入企業の許可を得た範囲で一部加工しています
この記事の著者: 谷本潤哉
Sales Science Company FAZOM / 株式会社オー(O:) 代表取締役CEO。元電通プロデューサー。営業組織のマネジメント・営業研修の設計と実施を専門とし、研修実施回数は合計400回以上。累計200社超の支援実績を持つ。
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