株式会社O:では、コロナショックを乗り越えようとしている経営者に向けて、当社代表の谷本がインタビュアーをつとめる形式で、各回のテーマに精通したゲストをお招きし、今だからこそ役立つ情報を発信しています。
今回は、DX支援のリーディングカンパニーであり、法人顧客とともに5,000万人が毎月使うインターネットサービスを提供している株式会社ゆめみの代表取締役・片岡俊行様に話をお聞きしました。
※こちらのインタビューは2020年5月に実施いたしました。
株式会社ゆめみは、リモートワークの先進企業としても知られており、今回は、「リモートワークとアジャイルな組織」や「1on1などの個人の感情支援」いうテーマでお届けまします。
【ゲストご紹介】
株式会社ゆめみ
代表取締役 片岡 俊行 様
目次
東日本大震災を機に、本格的にリモートワークの環境を構築
谷本:貴社は、リモートワークの実行や、高いエンゲージメントを維持される取り組みについて国内のトップランナーとしても知られていますが、全社的にリモートワークを推進する上で工夫している点について教えていただけますでしょうか?
片岡:当社は2000年の創業当初から、東京と京都をはじめとした複数拠点で事業を展開してきました。そういった背景もあって、全社会議をオンラインで実施するなど、以前からリモートワークの取り組みを行ってきました。
IT企業ですので、Slack(ビジネスチャットツール)やZoomをはじめ、さまざまなコミュニケーションツールを活用しています。
谷本:リモートワークに本格的に取り組むきっかけがあったのでしょうか?
片岡:最も大きかったのは、2011年の東日本大震災ですね。それを機に、リモートワークの必要性を感じ、そこからリモートワークの環境を構築していきました。
当時はツールもまだ不十分でしたし、直接電話したり、会いに行ったほうが早いという場面もありました。
ただ、フルリモートのメンバーもいたので、そういう人と一緒に働くにはどうすればいいのかを考え、毎年少しずつ努力を重ねてきました。
リモートワークにおける課題と対策
谷本:御社ではリモートワークとオフィスワークと使い分けてこられたそうですが、そのポイントを教えてください。
片岡:震災当時から「いつかどこかで、リモートワークが基本となり、オフィスワークは選択的に使う時代が来るはず」だと考えていました。
それも、一気に雪崩を打つように時代が変わると考えていましたので、その瞬間に備えて準備をしてきました。社内でチームを作って、チーム同士を戦わせながら、やり方を磨いてきました。
もちろん、リモートでは対応が難しいこともあります。それは、大きくは「雑談を行う場面」と「感情を出す場面」のふたつです。
雑談については、一般的なZoom飲み会のようなものは行っていました。
いわゆるオフィスで島があって隣でだれかが座っていて、「ちょっといい?」みたいな気軽な会話したりするのを実現するのに使っているのは、Discord(ボイスコミュニケーションツール)です。
タバコ部屋など、なにげなく集まれる部屋も作っています。そこでは、「最近どう?」というような偶発的な会話ができます。
その他、今年5月にサービスリリースしたspatial.chat(通称:スペチャ)も使っています。
空間上で近い人だけ声が聞こえるビデオコミュニケーションツールで、お昼にみんなで集まったり、夜に焚き火のまわりにみんなが集まって話しています。
なんとなく集まる場(フリースペース)を積極的につくっています。
チームビルディングでエンゲージメントを高めるために大切にしていること
谷本:面白い取り組みですね。当社でもマネしたいです。
そのような取り組みは、社内の声を採用しているのでしょうか?
もしくは、片岡さんが提案しているのでしょうか?
片岡:両方ありますね。現場のメンバーが独自に試すなかで、これは正式に会社の標準的なツールに認定しましょうと推奨するタイミングになると、全社的な仕組みを作る人事チームが取りまとめを行って全社にアナウンスをします。
現場と人事チームが連携して、仕組みを作っている状況です。
谷本:一般の企業でいうと、そういった取り組みを推進する役職がないと思うのですが、御社の場合はどのように取り組みを推進されているのでしょうか?
片岡:当社の場合は、役職者や管理職がいない組織になりますが、一方で、チームの明確な役割が定義されています。
どのチームでも、本人がやりたければどのチームにも参加することができます。
たとえばエンジニアをやりながら、リモートワークを推進するチームに10%くらい関わりたい、ということも可能です。
谷本:これまでのお話を聞きしていますと、御社は、チーム作りを非常に重視されているように感じます。
チームビルディングの上で配慮していること、大切にされている点はありますでしょうか?
片岡:基本的なところでいうと、メンバーのスキル、プロフィールは可視化されています。
細かいスキル表があり、小学校からどういう背景で育ってきたかを公開している人もいます。
相手のことを知った上でチームビルディングしていくことを前提としています。
ほとんどの企業と大きく異なるのは、人事異動や配置、アサインメントに関する権限が本人にあるという点です。
自分がどの仕事をするか、どういう役割を担うかは自分が決めることができます。
エンジニアでも人事に関わる仕事をしたいとなればできますし、その役割のチームがなければ作ってもいい。
自分がやりたいことを自分で決めるという哲学が基本にあります。
一方で、自分勝手によって無秩序にならないように 、原則、ガイドラインもつくり、役職にこだわらず、いろんな人がいろんなことを言いながら、自然に決まっていく。
みんなが意見をいいながら、連携している、そんなエンゲージメントの高いチーム状態になっています。
目標にしている、リスペクトしているチーム
谷本:私もそんな組織を作っていきたいなと考えておりますが、これまでいろんなチームをみてきた中で、「目標にされていたり、リスペクトしている」チームはありますか?
片岡:たくさんありますが、一番参考になっているのはトヨタです。
トヨタの生産方式は、アジャイル開発の原点のようなものですね。
組織全体という観点でいうと、ブラジルのセムコという会社があります。1954年に創業した3,000名くらいのコングロマリットです。
組織図や階層、就業規則、事業計画がなく、給与も自分で決められる。
それでも事業成長して、離職率も数%というブラジルの人気企業です。
それから、オランダのビュートゾルフという訪問介護の会社。
1万人くらいの介護士がいるなかで、管理部門が40人くらいしかいない。
販管費も8%くらいで、その分IT投資を行ってイノベーションを起こしています。
ネット系の企業であれば、Spotify、Netflixなども参考にしています。
さらに、GitLab(ギットラボ)社は、あらゆるドキュメントがオンライン上で公開されています。
あらゆる意思決定がレビューをもらった上できめていける助言プロセスがあるのも特徴です。ほかには、海兵隊の組織やサッカーのリバプール、シロアリ(組織ではないですが笑)などをリスペクトして参考にしています。
谷本:片岡さんは、もともと組織論に興味あったのでしょうか?
片岡:学生時代に創業して、会社経験がなかったので色々な本を読みました。痛い目にもあい、一生懸命色々調べていくなかで、参考になる企業や組織を見つけてきました。
透明性を重視するのは、効率性の観点から
谷本:透明性を重視しているのは、どんな観点からなのでしょうか?
片岡:効率性の観点ですね。従来から情報共有の会議は無駄だと思っていまして、議事録をまとめて関係者に周知すれば、共有できる。無駄を省いてITを活用すると、自然に情報公開するようになりました。
ただ、情報は公開すべきですが、我々が重視しているのは「感情」です。
一般的には、電子メールなどで、「感情的な表現はやめましょう」というマナーがあります。しかし、リモートワークが当たり前になる時代においては、そうはいってられない。感情をいかにうまく伝えるか。マナーをなくすと対立が生まれますが、それをどう扱うかが、一番難しい課題だと考えています。私たちは、この2年くらいかけてその課題に取り組んでいます。
1on1などリモート下でのコミュニケーションで工夫している点
谷本:リモートになるとノンバーバル(非言語)コミュニケーションが損なわれますよね。その点で工夫している点を伺っても良いでしょうか。
片岡:ロボットのように感情を出さずに会社のために働きましょうということになると、人間性が失われてしまいます。
感情を出していこうという時代です。
ティール組織では、研修・訓練で行って、NVC(Nonviolent Communication=非暴力的コミュニケーション)を行いましょうということが言われていいます。
一方で、我々は、ついつい荒々しい表現するような人がいても、その人が悪いのではなく、反応する受け手に課題があると考えて、トレーニングも行っています。
谷本:コロナ禍になってからはじめたことはありますか?
片岡:コロナがくるとは予測はしていなかったんですが、何かをきっかけに必ず一気にリモートワークの時代になだれ込むと確信していました。
そのために準備してきました。
実際そうなってみると、想定と異なるところ、準備が間にあってなかったところはありました。具体的には、ウィルスの恐怖への対応ですが、外部カウンセラーを契約しました。Discordやstand.fmなどを通したボイスコミュニケーションも推奨しています。
1on1などの周囲のメンバーが他のメンバーの感情を支援する流れが、現場に習慣として根付いています。
また、生活面で困った状況になったメンバーに対して一時金を付与するなど、危機対応はしています。
「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」
谷本:最後に、コロナショックを乗り越えようとしている経営者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
片岡:経営者は本当に大変な状況だと思います。私も寝られない日があります。
そういったなかで、自分自信、社内に言い聞かせている言葉があります。
それは京セラの稲盛さんの言葉で、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という言葉です。
現在は危機の状況なので、さまざまなシナリオを考えて、悲観的な計画を想定して進めるのは経営者の役割です。
その上で、行動するときは楽観的になるのが大事だと思います。悲観的にならずに行動していけば、周囲も協力してくれると思います。
谷本:本日は、大変貴重なお話をありがとうございました。
エンゲージメントを高めて、1on1やフィードバック、称賛でチームの生産性向上につなげる「Co:TEAM」
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