従業員エンゲージメント調査とは?エンゲージメントの調査方法やメリット、質問例について徹底解説!
会社経営や人事施策の中で、「従業員エンゲージメント」や「社員エンゲージメント」といった言葉がよく聞かれるようになりました。エンゲージメントは優秀な社員の離職防止、社員の生産性向上などの現代の企業が抱える重要課題への解決策として注目されています。
しかし、従業員エンゲージメントは日本人にとってあまり馴染みの無いことが多く、従業員エンゲージメントを調査する方法について知らないことが多いのではないでしょうか。
そのため、本記事では、従業員エンゲージメント調査について説明し、従業員エンゲージメントの測定方法やメリット、質問例について紹介します。
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目次
従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントとは、1990年代に米国で生まれた概念で、「会社をどれだけ信頼し、共感しているか、どれだけ貢献したいと思っているかといった愛着や貢献意欲を表す指標」のことです。
エンゲージメント(engagement)の意味は約束・婚約であることから、ただの雇用といった紙上の契約ではなく、互いを信頼し貢献し合おうという姿勢であるとも読み取れます。
ただし、エンゲージメントという言葉は正確な定義は決まっておらず、どういう状態を「従業員エンゲージメントが高い」とするかは会社によって異なります。そのため、従業員エンゲージメントを高めるためには、まず会社が独自で定義を決める必要があるでしょう。
従業員エンゲージメントが重要な理由
従業員エンゲージメントは多くの企業から注目されている従業員エンゲージメントですが、従業員エンゲージメントが重要な理由には以下の2点があります。
- 予測不能なVUCA時代
- 人材の減少と流動化
予測不能なVUCA時代
1つ目の理由は、「予測不能なVUCA時代」です。現代の社会やビジネス界は、変化のスピードが速く予測不能であるVUCAの時代だと言われています。
- V(Volatility):変動性
- U(Uncertainty):不確実性
- C(Complexity):複雑性
- A(Ambiguity):曖昧性
この頭文字をとってVUCA時代と呼びます。そんなVUCA時代の中で、企業は生き残る必要があります。そして、今後も時代は更に混迷を強くしていくと考えられ、想定外な場面に遭遇する可能性が高まっていくでしょう。そのような事業環境で、企業自体が柔軟で変化に強くなることが求められています。そして、変化に柔軟に対応するための手段として従業員エンゲージメントが期待されています。
人材の減少と流動化
2つ目の背景は、「人材の減少と流動化」です。日本では29歳以下の若者の人口は、昭和50年以降一貫して減少しており、働ける人材が年々減少しています。さらに、終身雇用制度に縛られず自身のキャリアに合わせて転職することも当たり前の時代になりました。これにより、企業にとって、流動的になった人材をいかに会社へ定着させるかが重要な課題となりました。そしてこの会社への定着率を高めるための手段として、従業員エンゲージメントが期待されています。
エンゲージメント調査とは?
従業員エンゲージメントが企業の持続的な成長に役立つことはわかりました。しかし、実際に従業員エンゲージメントに関する施策をしたい場合は、現状の従業員エンゲージメントを測定することが必要になってきます。そのため、この項では、エンゲージメント調査について説明します。
エンゲージメント調査とは
エンゲージメント調査とは「会社をどれだけ信頼し、共感しているか、どれだけ貢献したいと思っているかといった愛着や貢献意欲を表す指標」である従業員のエンゲージメントを調査することをエンゲージメント調査といいます。エンゲージメント調査のやり方には様々な方法がありますが、「アンケート」を用いた方法が一般的です。
そして、エンゲージメント調査には2種類存在します。
- パルスサーベイ
- センサスサーベイ
パルスサーベイ
パーパスサーベイとは、短い間隔で行うアンケート調査のことです。パルスサーベイのパルスは「脈拍」を意味することから、短い期間(週次や月次)で行い、従業員のエンゲージメンを頻繁に確認することが目的になります。パルスサーベイは従業員のエンゲージメントの変化をつぶさに確認できる一方で、アンケート数が多いと従業員の強い負担になってしまいます。そのため、パルスサーベイでは設問数を、5〜15問くらいにし、1分前後で終わる程度の量が目安となります。
パルスサーベイはリアルタイムに近い頻度で従業員のエンゲージメントを把握できることがメリットになります。短い期間で行うことから、従業員のエンゲージメントの僅かな変化の原因も特定することができます。原因の特定ができれば、従業員エンゲージメントを向上させる施策や改善策を施行する際に有用な判断材料になります。
センサスサーベイ
センサスサーベイとは、パルスサーベイとは違い長い間隔で行うアンケート調査のことです。センサスサーベイは、長い期間(半年次、年次)で行い、設問数は50〜150問程度あり、定期的に潜在的な問題までを把握することができます。一方で、1回のアンケート調査に非常に時間と手間がかかり、回答者・アンケートの集計者の負担になっています。
センサスサーベイは定期的に従業員が抱える潜在的な問題を把握できることがメリットになります。なぜならば、センサスサーベイはパルスサーベイと違い、質問数が多く、従業員エンゲージメントに関する包括的かつ多面的な調査が可能になるからです。
エンゲージメント調査の目的
エンゲージメント調査の目的は、「従業員のエンゲージメントを把握する」ことにあります。従業員エンゲージメントは目に見えるものではないため、従業員エンゲージメント調査をすることで自社のエンゲージメントの実態を把握することが重要になってきます。
特に従業員エンゲージメント調査を行う意味について紹介します。
- 従業員が潜在的に抱える問題の可視化
- 従業員エンゲージメントに関する施策の効果の検証
エンゲージメントが向上することによって得られるメリット
従業員エンゲージメントが向上することによって、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、3つのメリットを紹介します。
- 生産性の向上
- モチベーション向上
- 離職率の低下
生産性の向上
エンゲージメントが向上するメリットの1つ目は、「生産性の向上」です。従業員エンゲージメントを高めることで、業務・生産性が向上し、売上が上がるという効果が期待できます。
引用)株式会社リンクアンドモチベーション(2018)『「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開』
2018年にモチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学が共同研究した「エンゲージメントと企業業績」により、従業員エンゲージメントが高いほど労働生産性が向上することが明らかになりました。
また、同様の研究で従業員エンゲージメントが高いほど、営業利益も高くなることがわかっています。
このデータから、従業員エンゲージメントを高めることで、労働生産性が上がり、売上が上がるという効果が期待できます。
モチベーションの向上
エンゲージメントが向上するメリットの2つ目は、「モチベーションの向上」です。エンゲージメント調査によって、人事・経営戦略のための客観的かつ定量的なデータを得られます。このデータによって、各社員の現状を把握できるため、然るべき社員に然るべき施策を行うことができます。
このことは、従業員のやりたいことと実際の業務を合致させることや、適性のある仕事を与えることで能力を発揮することになるため、従業員のモチベーション向上に繋がります。
また、上記のように会社として良いところと悪いところの改善を一時のものではなく、不断のものにしましょう。これにより、従業員は「表面だけではなく、本当に会社は自分たちのことを大切にしている」と感じられます。このことは、返報性の原理などにより、従業員側も会社に対して貢献しようという意識が生まれ、最終的にはモチベーションに繋がります
離職率の低下
エンゲージメントが向上するメリットの3つ目は、「離職率の低下」です。従業員エンゲージメントを高めることで、退職や転職を防ぐことができます。
2019年に株式会社アスマークが従業員の離職とエンゲージメント(愛着心・思い入れ)の関係について調査しました。
出典)株式会社アスマーク(2019)『1万人データから探る、社員の離職要因とエンゲージメントに関する分析レポート【職種別・役職別】』
その結果によると、職種によって差はあるものの企業への満足度が高くなれば離職意向も低くなるということがわかりました。
このことから、従業員エンゲージメントを向上させることで、従業員の離職を防止することができると考えられます。
エンゲージメント調査方法
前項でエンゲージメントが向上することによって企業に様々なメリットをもたらすことがわかりました。そのため、本項では実際にエンゲージメント調査を行う方法について説明します。
適切な質問を制定する
従業員エンゲージメントを測定する手順の1つ目は、「適切な質問を制定する」です。従業員エンゲージメントを測定するためには、従業員が何に課題を感じているのかを考え、質問を制定する必要があります。
従業員エンゲージメントを向上させるためには、現在の自社に何が欠けているのかを発見し、改善する必要があります。そのため、従業員が何に対して課題を感じているのかを理解し、アンケート調査での質問に反映させなくてはいけません。そのため、現在の課題に対する仮説をたて、仮説に基づき質問項目を作成することが求められてきます。
質問を洗い出し始めると、あれもこれもと、本来の目的達成に関係のないことも聞きたくなってしまいます。また、最終的には設定した目的を達成するために何を質門するべきか念頭に置き、質問数も多くなりすぎないようにしましょう。質問数が増えれば増えるほど、は回答者の負担になってしまいます。
そのため、回答時間が1回10分を超えない程度の設問設定にします。そしてこの程度のアンケートを複数回行うことで知りたいことを突き止められるように設計しましょう。
調査目的と調査スケジュールを共有する
従業員エンゲージメントを測定する手順の2つ目は、「調査目的と調査スケジュールを共有する」です。調査前に従業員に目的とスケジュールを周知しましょう。
従業員エンゲージメントのアンケートを取る上では、目的の周知とスケジュールを共有することが非常に重要です。従業員も目的が分かったうえで調査を受ければ、回答者も調査の意義を感じられるため、回答率や回答の質の向上に繋がります。また、事前にスケジュールを共有しておけば、アンケート調査に余裕を持って回答することができます。
回収の集計・分析
従業員エンゲージメントを測定する手順の3つ目は、「回答の集計・分析」です。アンケート調査の結果が出たら、アンケート回答を集計し、分析しましょう。
回答を集めたら、アンケート結果を分析しましょう。アンケートを分析をし、現在の自社に何が欠けているのかを考察することが重要です。分析では「現在うまくいっていること」と「今後の課題」を明確に見つけましょう。
分析の方法は大きく分けて3つあります。
- 単純集計
単純集計は項目ごとの平均値を出す方法で、全体の傾向を把握するのに適した分析方法です。例えば、回答数が100人いた場合、満足だと答えた人数が50人であれば、満足度50%と表します。
- クロス集計
クロス集計は、「男女別」「入社年数別」「国籍別」など、特定の条件下で集計結果を分類し、条件ごとの傾向の違いを見る分析方法です。単純集計ではわからない、特定グループの傾向を把握できます。
- 満足度構造分析(相間分析)
満足度構造分析は、設問間の相関関係や因果関係を導き出す分析方法です。例えば、「満足度の高い従業員は、有給消化率が高い」という相関結果が出たとします。このことは、満足度を高めるためには有給消化率を上げると良いという仮定に繋がり、有給消化率上昇のための施策の根拠となります。
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エンゲージメント指標と質問例
エンゲージメント調査を実施するにはアンケートを利用することが多いです。しかし、適当にアンケートを作ればよいのではなく、指標を踏まえてアンケートをつくることで効果を感じやすくなります。
ここでは、エンゲージメント調査で代表的な3つの指標について説明します。
- エンゲージメント総合指標
- ワークエンゲージメント指標
- エンゲージメントドライバー指標
エンゲージメント総合指標
「エンゲージメント総合指標」とは、従業員から企業に対する評価を把握するための指標のことです。
エンゲージメント総合指標を測定したいときの質問例
・「この企業を友人に勧める可能性はどのくらいですか?」
この質問はeNPS(Employee Net Promoter Score)を測定する質問として有名です。eNPSは従業員エンゲージメントを測定するうえで非常に役に立つ指標のことです。
・「今の会社で定年まで働き続けたいですか?」
・「今の会社で働けることに誇りに思っていますか。」
ワークエンゲージメント指標
「ワークエンゲージメント指標」とは、従業員の仕事に対する熱量を測定するための指標のことです。
ワークエンゲージメント指標を測定したいときの質問例
・「仕事に対して喜びを持てていますか?」
・「今の職場での役割や役職にやりがいを持てていますか?」
・「チームメンバーが仕事の質を高めようとしていると感じる瞬間はありますか?」
エンゲージメントドライバー指標
「エンゲージメントドライバー指標」とは、仕事の難易度や満足度を測定するための指標のことです。
エンゲージメントドライバー指標を測定したいときの質問例
・「より難易度の高い仕事に挑戦したいという気持ちはありますか?」
・「仕事の内容で褒められたり、認められたことはありますか?」
・「新しい仕事に挑戦したい気持ちはありますか?」
エンゲージメント調査後に行うべきこと
エンゲージメント調査は行うだけでは意味がなく、エンゲージメント調査後に効果のある施策を行うことが非常に重要になってきます。
本項では、エンゲージメント調査後に行うべきことを2つ紹介します。
- データや問題点を可視化する
- 改善策の検討を行う
データや問題点を可視化する
エンゲージメント調査後に行うべきことの1つ目は、「データや問題点を可視化する」です。エンゲージメント調査をおこなうことで、自社の従業員エンゲージメントのデータや従業員が抱える潜在的な問題点を把握することができます。しかし、それらのデータや問題を可視化しなくては、改善のための施策をおこなうことはできません。そのため、エンゲージメント調査後は前述した分析方法などを駆使してデータや問題点を可視化しましょう。
改善策の検討を行う
エンゲージメント調査後に行うべきことの2つ目は、「改善策の検討を行う」です。集計・分析によって今後の課題を見つけたら、その課題を解決するためにどんな施策を講じるか検討します。改善策を考える上で個人・チーム・組織といった階層ごとに対策を考えると高い効果が出るでしょう。例として、チームとしてモチベーションが低い、コミュニケーションが少ないという課題を見つけたら、ピア・ボーナスや1on1ミーティングといった施策を実施するなどがあります。
エンゲージメント調査の注意事項
最後にエンゲージメント調査を行ううえで気を付けるべき注意事項について紹介します。
調査目的を明確化する
エンゲージメント調査の注意事項の1つ目は、「調査目的をはっきりとする」です。エンゲージメント調査は目的を明確化することが重要になります。エンゲージメント調査自体はアンケート形式で行うことが多いです。そのため、回答者である従業員は適当に回答したり、気を遣って回答することが多くなってしまい、従業員の本来の回答を引き出せないままに終わってしまうことがあります。これらを防ぎ、従業員の率直な回答を得られるように目的を明確化し、従業員にしっかりと周知しましょう。
継続的に行う
エンゲージメント調査の注意事項の2つ目は、「継続的に行う」です。エンゲージメント調査は継続的に行い、従業員のエンゲージメント状態を常に把握することが重要です。また、エンゲージメント調査は従業員エンゲージメントに関する施策の効果を検証できる面も持っています。そのため、継続的に行い従業員エンゲージメントの変化を確認するためにもエンゲージメント調査は継続的に行いましょう。
現場の負担にならないようにする
エンゲージメント調査の注意事項の3つ目は、「現場の負担にならないようにする」です。エンゲージメント調査は現場の負担になりすぎてしまうと、従業員の率直な回答を得ることができなくなってしまいます。また。エンゲージメント調査は回答者だけではなく、アンケート結果を分析する集計者の負担を考えなくてはなりません。アンケート結果があまりにも膨大だと分析する側の負担が増えてしまい、適切な原因や施策を実施することが出来なくなってしまいます。そのため、自社でエンゲージメント調査は継続的に行うことが難しい場合は他社サービスを利用することを考えましょう。
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まとめ
本記事では、従業員エンゲージメント調査について解説しました。従業員エンゲージメントを高めることは、企業の成長には重要になってきます。従業員エンゲージメントの調査方法や指標、注意点について紹介しました。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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