現在、テレワークの推進によって多くの企業の従業員の残業時間が増えています。
十分な制度設計がされていないまま走り出した企業が多く、その原因分析が急務となっており、工数管理の必要性が注目度を増しています。
結果として、業務の進捗確認やコストの計算をして、分析するという工数管理のプロセスの重要性が増してきていると言えるのではないでしょうか。
本稿では、工数管理とは何なのか、そのメリットと運用するうえでのポイント、注意点、どの媒体で行われているものなのかを解説します。
なお、工数管理と似た概念であるタスク管理については、下記の記事にて解説しています。
目次
工数管理とは
「工数管理」とは、工数を管理することであり、「プロジェクト遂行の効率化」「プロジェクトにかかる人件費の算出」などを目的として運用されます。
そもそも工数とは何なのかについて説明していきましょう。
工数とは、ある業務を遂行するために必要な仕事量を示した指標です。
算出方法は以下の通りです。
- 例1:ある業務を終わらせるのに必要な1人当たりの時間 × 人数
- 例2:業務遂行にかかる総作業量 ÷ 一人当たりが一定期間にこなせる作業量
なお、単位はその業務の大小によって「人時」「人日」「人月」が用いられます。
それでは、実際に例を使って工数を計算してみましょう。
例えば、十分な商談を得るために合計1000件のコール数が目標であるテレアポの業務があるとして、1人の従業員が1日に架電できる回数が50件である場合、必要な工数は1000÷50=20人日となります。
工数管理とは、先程テレワークで例を出したように、残業時間が増えている=工数の計算や分析が正しくないから起きている、と捉えられます。
よって、多くの企業はこの工数を管理することによって、作業の効率化を図り、人件費を整理して問題の解決を図ろうとしているのです。
工数管理の重要性とメリット
工数管理が注目を集めている理由は前述の通りですが、具体的に重要視される理由は何なのでしょうか。
- 業務の進捗状況の可視化
- 業務にかかるコストの可視化
- 利益率の高いプロジェクトの創出
本パートでは、工数管理を用いることで得られる3つのメリットを解説します。
業務の進捗状況の可視化
工数管理の第1のメリットは、「業務の進捗状況の可視化」です。
いくら最初に工数を正確に計算し、プロジェクトを進めていったとしても、途中で予想外のエラーが起こることは多々あります。
しかし、想定した工数と乖離がある場合に、業務の進捗状況が細かく分かっていれば、どこに原因があるのかが可視化されていて、プロジェクトの途中でも修正、対策ができ、プロジェクトの遅延を防げるでしょう。
また、従業員が自分の作業効率や工数実績を確認できることで業務へ取り組む意識やモチベーションが向上します。
逆に業務進捗が可視化されていなければ、プロジェクトの途中で修正が図りづらくなるというリスクが増加します。
結果として、予想外のエラーや工数計算にミスがあったとき、プロジェクトの遅延を招き利益率は低くなってしまうでしょう。
業務遂行にかかるコストの可視化
工数管理の第2のメリットは、「業務遂行にかかるコストの可視化」です。
工数管理を適切に行っていれば、会社全体という大まかな枠ではなくプロジェクトごとの利益まで、細かく可視化できます。
したがって、誰が何時間働いてどのくらいの利益が出て、赤字なのか黒字なのかを会社全体ではなく事業ごとに細分化して見ることを可能にし、従業員への客観的で適切な評価、賞与配当ができます。
また、次のプロジェクトを行う際に、従業員の時間単価が分かっていれば、適切な役割分担ができ、プロジェクトをスムーズに運べるでしょう。
そのほかにも、事前に工数を計算することで不採算なプロジェクトを減らす、ということも可能です。
逆にコストが可視化されていないと、大枠の利益しか分からず例えば赤字だった場合、どのプロジェクトで無駄があったのかが計りづらく、不採算なプロジェクトを減らせません。
また、メンバーの時間単価を把握できないことで主観的な評価になってしまったり、仕事の割り振りでも適切な役割分担を困難にするでしょう。
利益率の高いプロジェクトの創出
工数管理の第3のメリットは、「利益率の高いプロジェクトの創出」です。
上記のように進捗状況やコストが可視化されることで、改善点が見つかりやすくなり客観的な分析ができます。
現在取り組んでいる、また、これからのプロジェクトの質を高められて、利益率を高めることも可能になるでしょう。
工数管理ができていないとプロジェクトがうまくいかなかったとき、結果だけしか残らないので分析の作業が困難になり、改善点を見つけ出すことが困難になります。
それどころか、数値から見た客観的な分析できず主観的な分析になってしまい、利益率は低くなってしまうでしょう。
工数管理の注意点とポイント
工数管理をするにあたって、工数予実を計算すればよいというわけではありません。
それを分析、修正するなど「管理」する必要があるのです。
それでは、上述のようなメリットを最大限引き出すには、どのような事を意識して管理していけばいいのでしょうか?
- 途中経過の監視
- メンバー同士でデータを共有すること
- 適切な役割分担
- 計算する工数の定義を明確にする
- 工数を多数の軸から計算、分析する
本パートでは、工数管理を用いる際の5つの注意点とポイントを解説します。
途中経過の監視
工数管理の第1のポイントは、「途中経過の監視」です。
工数管理の運用において、確かに業務の進捗は可視化しようと思えばできますが、最初に工数の計算だけしてプロジェクトの終了まで放置してしまえば最終結果だけしか残りません。
それでは途中のエラーに気づけませんし、客観的な分析もできません。それでは生産性がないので、途中に予想以上の工数がかかってしまった場合にはその都度修正して、プロジェクトの質を高めることが求められます。
メンバー同士でデータを共有すること
工数管理の第2のポイントは、「メンバー同士でデータを共有すること」です。
メンバーが自分の時間単価を把握し、その貢献度を知るためにはメンバー同士で進捗やコストのデータを共有しなければなりません。
各メンバーが自分の進捗、実績を把握することで、自分の業務に対する上手くいった点や改善点など、新たな気づきが生まれます。
また、時間単価は言ってしまえば「その人のそのプロジェクトにおける価値」に直結するものです。よって、時間単価や貢献度を共有することは従業員の成果に対する意識が高められるでしょう。
適切な役割分担
工数管理の第3のポイントは、「適切な役割分担」です。
たとえ同じ部署やチームで働いているメンバーだとしても、各個人の時間単価は役割や等級によって異なります。
また、抱えている案件の難易度、仕事量にもばらつきがあるためプロジェクトにかけられるコスト、各個人の時間単価を考慮して適切な役割分担ができる環境を整える必要があります。
その環境を構築するためには、日々の工数予実を可視化し、分析することで、ズレている場合は修正を施す必要があるでしょう。
計算する工数の定義を明確にする
工数管理の第4のポイントは、「計算する工数の定義を明確にする」です。
プロジェクトの工数を計算するとき何を基準に工数を分割するか決まっていますか?
例として、テレアポ業務の場合で考えてみましょう。
テレアポ業務の場合、コール数を工数とする場合とお客様との通話時間を工数とする場合が考えられます。
コール数の場合は、データ上では、「コール数÷アポイント獲得の数」で工数計算は容易に可能です。
一方で、チームの中で数さえこなしてしまえば良いという意識が生まれるかもしれません。
工数管理をする際には、どの要素を工数をすべきなのか、特定の要素を工数として考えた場合のデメリットは何かについて検討する必要があるでしょう。
工数を多数の軸から計算、分析する
工数管理の第5のポイントは、「工数を多数の軸から計算、分析する」です。
4)ではどのような軸で工数を分けていくのか、について説明しましたが、カテゴリはある程度細かくする必要があります。
なぜなら、密度の濃い分析をする際にはデータが細分化されていたほうが各メンバーの単価など、細かく考慮できるからです。
工数管理で用いられるツールとは?
工数管理はどのような媒体で行われているのでしょうか。各ツールのメリットとデメリットを中心に紹介していきます。
Excel
工数管理にExcelを利用するメリット
第1のメリットは、導入、運用に費用が掛からないことです。
多くのパソコンに標準のソフトとしてExcelがすでに入っているため、導入、運用に費用が掛かりません。
第2のメリットは無料のテンプレートも豊富なため管理シートを作る手間も省けるということです。
Excelでは1から入力作業をする必要はなく、無料のテンプレートをダウンロードすれば管理シートなどの作成の手間は省けます。
工数管理にExcelを利用するデメリット
第1のデメリットはモバイル機器での操作性の低さにあります。
確かにExcelの使用はモバイル機器でも可能ですが、操作性、利便性は低いと言えます。オフィスを離れ現場で働いている人などのための場所やデバイスにとらわれない管理方法としての有用性は低いといえるでしょう。
第2のデメリットは各メンバーに共有がしづらいということです。
Excelは工数管理に特化したツールではなくあくまで表計算ソフトなので、一台のパソコンで一つの表を操作するという形になり、多数のメンバーに進捗を共有するツールとしては適切とは言えません。
工数管理ツール
工数管理に工数管理ツールを利用するメリット
第1のメリットは時間的コストのが削減できるという点です。
実績を入力してしまえば自動でツールが分析してくれるため、作業表計算ソフト等を使って分析作業にのぞんでいた場合にかかっていた時間的コストを削減し、定量的な振り返りを迅速に行えることで生産性を向上させます。
第2のメリットはデータをメンバーと共有しやすいということです。
進捗状況や必要コストのデータをメンバー同士で共有することが大切であることは上述のとおりですが、ツールはそれを可能にします。
Excelと比べ、スマホ利用も想定しているツールが多いため、場所を選ばず、すべてのメンバーが状況を確認できます。
また、このようなツールはUI/UXが優れているものが多いため、視覚的にも状況を確認しやすいといえるでしょう。
工数管理に工数管理ツールを利用するデメリット
第1のメリットは導入、運用にコストがかかるということです。
そのツールを導入するにはそのツールを購入、またはサブスクリプション方式で契約しなければいけないので、当然コストはかかります。
よって、導入を検討する場合はその値段に価値が見合っているのかをしっかりと検討しなければなりません。
第2のメリットは導入後、学習コストがかかるということです。
導入した後メンバーはそのツールを使い慣れていかなけれいけないので、学習コストがかさみます。懸念としては、分かりやすく言えば「使うのがめんどくさい」という状態になることです。
しかし、企業側も導入後の長期サポートをしているところが多く、学習コストの負荷は軽減されていっています。
Co:TEAM(コチーム)とは
コチームとは、組織に発生する「仕事への認識」のズレを可視化、注力すべきポイントを明確にすることで最適なコミュニケーションを可能にする、「プレイングマネジメント支援」サービスです。
Co:TEAMを活用する事で、マネージャーは、チーム及びメンバーの目標と目標に紐づくアクションの進捗度と優先順位を簡単に確認する事ができ、適切な工数管理を可能にします。
Co:TEAMの詳細については下記より資料をダウンロードください。
まとめ
工数管理の重要性とメリット、運用のポイント、ツールについての解説はいかがだったでしょうか?
本稿で工数管理の重要性については理解していただけたかと思いますが、一番大変なのはその運用にあり、適切に、継続して行うという作業は想像以上に困難です。
なぜなら、入力、分析という作業にも工数がかかってくるため、面倒くさくなって形骸化してしまう恐れがあるからです。
したがって、継続して行っていけるような仕組みづくりが必要となるでしょう。
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