人材育成に活かす!コミュニケーションを円滑にするためのマインドセット~安田雅彦氏が外資企業で経験して得たココだけの話~

マネジメントのやり方は究極的にはなんでもいい。ただ概念的な理解があった方が安定的に成果が出る確率が高い。

宜しくお願いします。本日はテーマとして、「多忙なマネージャーが取り組むべき効率的な人材育成」ということで、安田さんがこれまでに様々な会社をご支援されてきた中でマネージャーの底上げというのは大きなテーマかと思いますが、そのあたりをお伺いできればと思います。

宜しくお願いします。

プレイングマネージャーとしてまだ時間が経っていなくて(3年以内ぐらい)、現場とマネジメントバランスがとれず、プレイングに目が向いてしまってマネジメントになかなか手が回らない、忙しくて育成したくてもできないという方に向けて安田さんにお話しをお伺いできればと思います。

「背中で見せて育成していくべきだ」「マネジメントは1つの理論が合ってそこに基づいてやるべきだ」など様々な考えがありますが、安田さんはどのようにお考えですか?

基本的にマネジメントというのは技術の話だと思っているので、どの技術を用いるのかは置いておいて、きちんとテクニックというか、マネジメントとしての概念的な理解はちゃんとした方がいいですね。

結局どこまで成果結果にこだわるかという話だと思います。責任構造にもよりますが、マネージャーというのはマネジメント、すなわちスタッフをマネジメントしてチームとしての結果を出すことを求められているのだとすると、究極的にはやり方はなんでもいいと思っています。チームとして結果が出れば。

ただ、その結果を安定的あるいは永続的に出していくためには概念的な理解や本に書いてあるような方法をとった方が確率は高いと思います。

以前安田さんがマネジメントとは何か、という質問において「努力して人間関係を維持する能力である」とご回答なさっていたのがすごく分かりやすかった記憶があります。

マネジメントに限定した話というよりは、組織全体に当てはまることだと思いますけどね。

安田さんはマネージャーのマネジメントの理解を深めていくためのアプローチをどのような方法でおこなうことが多いですか?

研修やワークショップなどなんでもいいんですが、「マネジメントとはそもそも何か」ということを理解すべきだと思います。さらに、一般論としてのマネジメントと、自社が求めるマネジメントの概念ということをクリアにしておくべきだと思います。

一般論としての概念とその会社が求めるマネジメントというのがあるんですね。

やはり会社のフェーズによってあると思います。会社が変革フェーズだったり成長フェーズであったりなど、そういう場合であれば一般論としてのマネジメントと別に必要だと思いますよ。

私がいたジョンソンエンドジョンソンではour credo(我が信条)に則って仕事をする、その価値観・概念をもって組織を安定的に会社を成長させていくというのは本に書いてあるものではないですから、別で理解しておくことは重要ですよね。

クレドなどそういうのがルールになっていない会社さんも多いと思いますが、やはり大事ですよね。

そういうものでしか経営理念は浸透しないので、非常に重要ですね。

経営理念の浸透というのもマネジメントに密接にかかわってくるんですね。

日々の業務からでしか経営理念は浸透しないですから。価値基準・判断基準だとすると、どういう営業をするのか、お客様にどういう対応をするのか、どういうプロダクトを作るのかなど、そういうところで活きてくるわけなので。

例えば売上1億円を目標とするのなら、そこへの到達の仕方は会社それぞれの色となると思います。

その中で従業員に成果をあげさせるために、とるべきマネジメントスタイル(クレドを遵守させる、飲み会で信頼関係を築く、1on1をするなど)というのは部下のタイプに合わせるべきなんですかね?

なんでもいいと思います。ただ、会社で求められるマネジメントは何なのかということは意識しなくてはならない。さらにあなたが求められている組織としての結果を安定的に出しつつ、人材を成長させ、かつエンゲージメントを上げるというようなところが達成できているのであればなんでもいいと思います。ただ、これを全て両立させようとすると本に書いてあるような内容になるんですよね。

なるほど、スタイルというよりも根本のところを体現することが大事であって、その根本を追求すればある程度同じになるということですね。逆に安田さんが見てきた中で、会社の要求に乖離しているような独自のマネジメントスタイルの方っていらっしゃいましたか?

ありはしましたが、安定的でなかったり再現性がなかったりするんですよね。そこをクリアしようとすればやはり原理原則にのっとることになるんですよね。

優秀であるかどうかでマネジメントスタイルは変わらない。誰でもまずは共通の話題を持つことから。

かなり具体的な話になってしまうんですが、言っても響かないような部下に対して安田さんはどのようにマネジメントしますか?

パーソナリティとして反応が薄いという人もいますが、その人(マネージャー)に対して不満があるんだと思います。なので関係性をどのように作っていくかが大事だと思います。

反応が薄い、レスポンスがないとしても自分のチームメンバーとして一緒にやっていかなくてはならない事を考えると、なんとかして彼/彼女のやる気に火をつけることが必要で、手を変え品を変え共感してくれる接点を持つ事が必要ですね。

実体験として、具体的に~をした、というエピソードってありましたか?

シンプルに共通の話題を持つことだと思います。仕事の話に乗ってこないのであれば仕事以外の話をするということですね。

趣味の話で合ったり、「ご家族元気?」みたいなことだったり。

口を開けば仕事の話、という感じじゃ、いい関係は作れないことが多いです。

関係性を作っていく中で、時間軸ってどうお考えですかね?関係性の構築は2~3カ月もあればできるのか、やはり長時間かけなくてはならないのか。

時間はかかりますよね。一方でパフォーマンスマネジメントの観点からすると待ってくれないじゃないですか。やはり人材育成とは言いますが、あれってパフォーマンスマネジメントとして彼/彼女を育成して成果を出さなくてはならないタイムラインがあると思うので、その点はやはり考えなくてはならないですよね。

関係性の構築はOK、というタイミングはなくて、関係性をキープすることは常に、ずっとやらなくてはならないです。なので関係性の構築はこれくらいやればOKということはないです。

2:6:2の法則というものがありますが、企業はどうしても戦力化されていない2に目が向きがちで、優秀層の離職を引き留められないという問題が起こりがちです。これを防ぐにはどうしたらいいんですかね?

基本的には全員に目を向けなきゃいけないですよ。それぞれの層にそれぞれの課題があって、優秀層はより高いパフォーマンスを出して次のオポチュニティにやる気が向くようにしなくてはならないし、6の部分は(トップの)2に行かなくてはならないからより高い層に行かなくてはならないし、ボトムの2はボトムにならないようになど、それぞれに課題があってどこにフォーカスするかということだと思います。

自分だったらボトム層がパフォーマンスを発揮てきていない状態はマネジメント側の責任なのでボトムにフォーカスしてしまうと思います。

ただ、いわゆる日本的な会社であれば全部にフォーカスすべきだというのが僕の回答です。

その中で目標や達成しなくてはならない数値がある中で、それを達成できるように一人ひとりに寄り添っていくようなイメージでしょうか?

シンプルにきちんとフィードバックして、自分の期待を示す・実態のあなたとの差分を示すということですね。

パフォーマンスが上がらない人に対して、あなたは要求レベルにある、要求レベルにないということを正面から言う人ってなかなかいないんですよね。まず「あなたは私の期待のレベルを超えてる/超えてない」ということを言うのが大事。

特に期待のレベルを満たしていない人に対して、ギャップを満たすためにはあなたはどうしたらいいと思う?私はこうしたらいいと思うと言うことが原則だと思います。

その中で、素直じゃない(フィードバックを受け止められない)方もいると思うんですが、そういう場合って安田さんはどうするんですか?

僕に言い返せる人はなかなかいなかったんですが(笑)。自分はどういうリーダーである、ということを示すことが大事で、「そもそもリーダーが言い返されるなよ」というのが正直なところですね。

リーダーとしての尊敬を集める・威厳を示すということはやはり大事で、以下の3つがマネジメントにおいては重要だと思うんです。

1つめはその仕事のプロフェッショナルとしての尊敬。2つめは人間としての共感。3つめはポジションパワーだと思います。

そこのバランスが崩れている人が結構いて、1つめに関してはその道15年の部下の方がその分野に詳しいということもあるし、2つめに関しては口を開けば仕事の話しかしない、なのにポジションパワーだけで仕事をさせようとするということも多いですよね。

逆に、プロとしての尊敬があって人間としての共感もあるのにポジションパワーを使ってマネジメントをしてこないと、部下からワーワー言われて上と下の板挟みになる、ということがあるんですよね。

2つめ、難しそうですね

そこが前回言った、「どういう風に接点を持っておくか」ということなんですよね。

優秀な方・ハイパフォーマーな方に対してのアプローチは何か工夫されていることはありますか?

基本的には他の層と変わらないですね。どちらかというと個人の性格や趣向によって変えることが多いです。

あえて挙げるとすれば、次にどういうことをしたいか、ということは常に気にしてますね。

優秀な人は基本的にどこへ行っても成果を出したり、ステークホルダーのマネジメントが上手なので、個人の意思に反しないようなマネジメントを心がけています。

パワハラが起きるのは、信頼関係を築けていないから。信頼関係があれば言いづらいことも言える。

人によって接し方を意図的に変えているということですが、例えば成果を出すけどプライドが高くて接しづらいという方にはどう接するんですか?

プライドを認めてあげる・敬意を払う事は大前提ですね。さらに、100点満点の人はいなくて、どこかは弱いはずなので、そこをサポートしてあげることは意識しています。プライドが高い人は自分の弱いところを隠して自分の内面に入ってこないようにすることが結構あるので、それを受け入れてあげることは大事ですね。

素晴らしいですね。弱みをカバーする、ということで言うと、フィードバックによって行うんですか?それとも自ら手を動かすんですかね?

立場に寄りますけど、困ってるときに「俺から言ってあげようか?」だったり、部下だったらきちんとフィードバックすればいいと思いますけど、上司やステークホルダーだったらいきなりフィードバックするわけにはいかないと思うので、ケースによりますよね。

例えばリーダークラスの方が、役割には含まれていても心理的障壁や苦手意識からやるべきことをやり切れていない場合に、安田さんが弱みを発見されている場合は安田さんはどう対処されるんですか?

まず、ある程度受け入れやすい形でフィードバックをしますね。

ただ強みと弱みは表裏一体なので、「克服しろ」みたいなことはあまり言いませんね。「こういう形にした方がいいんじゃないの」とか、あるいは「気にするな」というときもありますね。

強みと弱みは表裏一体だから突然変わる必要はないと思うし、こういう強みがあるからこういう弱みもあると思うけど、あるかないかで言ったらある方がいいよね、またはないほうがいいよね、と言いますね。

苦手なところを埋めて少しずつ伸びていくというよりは、普遍的に苦手な部分とどう付き合っていくか、という考えに近いんですかね?

今の話は相手にズバッと言わなきゃいけない時の序章みたいなもので、言いたいことを言いたいから人間関係・信頼関係を作るというもので、ただ信頼関係を作るのではなくて言いたいことを言いたいから信頼関係を持っておくという考えですよね。

LUSHで人事の最終責任者になったときに僕の暴君度がグッと上がったんですけど(笑)、言いたいことを言えなかった部下は一人もいなかったですね。言わなきゃいけないっていう仕事だと思ってたので。

信頼関係がないのにガツッと言ってしまうからパワハラになってしまうんですよね。先ほど言った3つの中で1つめと2つめがなくて3つめだけでやろうとするからあらゆる問題が起きると思うんですよ。

全てはボロカスに言うためなんですよね。これは本気で。

安田さんがボロカスに言うのってどんなシーンですか?

決めたことをちゃんとやらないときです。あと、「なんで?」って聞いた時に「いやーなんでですかね」って言われたときですね。「なんで考えないの?」って思います。

決めたことをやらなかったときに「なんで俺とディスカッションしてるときに(決めたことができない)リスクを話さなかったの?」って思いますね。そういうところもマネージャーが成果に対する責任を持っていれば当然気になるはずです。

ガツッと言った後の関係性の修復というか、そこらへんもめちゃくちゃ上手そうですね。

いやー永遠にムカついている人もたくさんいると思いますよ(笑)。ただ前提として信頼関係がある中で言っているのでね。

非常に生々しい話を聞かせていただきました。

マネジメントや人事の本や勉強するものって世の中にたくさんありますけど、今話したような「リアルな問題が現場で起きたときにどうすればいいか」ということについてもっと考えた方がいいと思うんですよ。もっと現実は生々しいじゃないですか。なのでジョブ型がどうしたとかいう前にもっとやれることはたくさんあると思うんですよね。

新しい旬なワードに飛びつく前に、今話したような「こういうときにどうするのか」というような生の悩みをどう解決するかということを重要視した方がいいと思います。

もっと上司部下の関係性を解決していった方が急がば回れで組織開発にはいいと思うんですけどね。

– ありがとうございました。

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