▼ この記事の内容
オンライン研修と対面研修は、どちらが優れているかではなく、研修の目的、対象者、演習の必要性、受講環境、研修後の実践機会を対応させて選びます。形式だけを先に決めると、実施後に何を確認するかが曖昧になります。
人事担当者が形式を選ぶ際は、受講しやすさだけでなく、受講者にどの場面で何を試してほしいかを言葉にします。知識の共通理解、対話の練習、現場での振り返りでは、必要な設計が異なるためです。
厚生労働省のオンライン研修に関する検討資料では、形式の効果を一律に比較することには限界があり、環境整備や運営支援を含めて考える必要が示されています。この記事では、その点を企業研修一般の優劣に広げず、選定時の確認手順として整理します。
目次
オンライン研修と対面研修を比較する基準
オンライン研修と対面研修は、形式の優劣ではなく、研修で扱う仕事と実施条件を対応させて比べます。目的、対象者、演習、受講環境、研修後の実践機会を同じ基準で確認してください。
形式の優劣ではなく研修で扱う仕事を比べる
厚生労働省のオンライン研修に関する検討資料は、形式の効果を一律に比較することには限界があると整理しています。企業研修一般の優劣へ広げず、知識をそろえる、参加者同士で対話を練習する、現場で試した結果を振り返るという仕事を分け、どの場面にどの形式が必要かを確認します。
比較の最初に、研修後に受講者が行う行動を一つ書き出します。たとえば、管理職が部下との面談で確認したい問いを使うことなら、説明の時間だけでなく、練習と振り返りの場所まで選定条件に入ります。
参考:オンライン研修の「効果」に関するエビデンスの蓄積|厚生労働省
同じ確認表で判断項目を整理する
形式を決める前に、目的、対象者、演習、受講環境、研修後の実践機会を同じ表へ記入します。費用や移動の条件は受講環境の欄で扱い、目的そのものと混ぜません。
空欄が残る場合は、オンラインか対面かを決める前に担当者へ確認します。条件が未確定のまま形式を固定すると、必要な演習やフォローを後から追加することになります。
| 確認項目 | 確認する質問 | 選定時の見方 |
|---|---|---|
| 目的 | 何を理解・練習・実践してほしいか | 説明、演習、振り返りを分ける |
| 対象者 | 経験や役割はそろっているか | 同じ前提で参加できるかを確かめる |
| 演習 | 観察とフィードバックはどこまで必要か | 画面上で行う範囲と集合する範囲を決める |
| 受講環境 | 通信、端末、会場、参加時間は確保できるか | 参加の障害を事前に洗い出す |
| 実践と振り返り | 誰が次の業務での試行を確認するか | 研修後の場と記録を決める |
この表では、目的と演習の欄が固まってから、受講環境と実践・振り返りの条件を照らして形式を選びます。いずれかが未確認なら、形式の決定を保留して担当者に確認します。
研修の目的に合わせて実施形式を選ぶ
知識をそろえること、対話を練習すること、現場で実践を振り返ることでは、必要な場と運営が異なります。オンライン、対面、ハイブリッドの役割を研修目的ごとに分けて選びます。
知識の共通理解が中心なら受講条件を確認する
制度の変更点や共通ルールの説明では、同じ内容にアクセスできることが重要になります。オンラインを選ぶ場合は、資料の見方、質問の受け方、理解を確かめる方法をあらかじめ決めます。
視聴できたことだけで理解を判断せず、受講後に確認したい問いを置きます。理解確認の形式は、対象者の業務や研修内容に合わせて選び、全社共通の正解を置かないようにします。
対話の練習が中心なら観察とフィードバック方法を決める
面談、フィードバック、合意形成のように相手の反応を扱う研修では、練習した発言を誰がどう返すかを先に決めます。対面を選ぶ理由は、集合すること自体ではなく、そこで行う演習と確認に置きます。
短い説明はオンラインで共有し、集合時はロールプレイや相互の確認に使う組み合わせもあります。ハイブリッドにする場合は、各回の役割を分けずに両方へ同じ内容を重ねないことが実施条件になります。
目的と実施条件がそろわない場合は判断を保留する
知識共有と対話演習の比重、参加者の接続環境、進行担当、研修後に確認する行動が決まらない場合は、オンライン、対面、ハイブリッドのいずれかを先に選びません。未確認の条件を確認表に戻し、決定に必要な情報をそろえます。
対象者と受講環境から実施形式を絞る
実施形式は、対象者が参加できる条件と、運営側が支えられる条件を確認して絞り込みます。拠点、時間、端末、通信、集合が必要な演習を分けて確認してください。
参加しにくい条件を形式の利点で見落とさない
拠点が分かれている、勤務時間が異なる、共有端末しかないなどの条件は、研修の内容とは別に確認します。オンラインを選んでも、接続、参加状況の確認、演習の進行を支える担当がいなければ、計画どおりに参加できないことがあります。
厚生労働省のオンライン研修に関する検討資料は介護支援専門員研修の検討範囲を扱うもので、企業研修の効果差を確定する資料ではありません。そのため、ここではオンライン運営の事前確認という限定された示唆として参照します。
参考:オンライン研修の「効果」に関するエビデンスの蓄積|厚生労働省
対象者別に準備と参加の負担を整理する
人事担当者は、対象者を一括りにせず、新任者、経験者、管理職など、研修中に求める参加の仕方が異なる単位で整理します。対話演習が必要な対象者には、発言する時間とフィードバックを受ける時間を確保できるかを確認します。
会場へ集まりにくい場合は、対面を不可能と決めるのではなく、集合が必要な演習だけを切り出せるかを検討します。反対に、オンラインを選ぶ場合も、通信や参加の支援が未確認なら、その事項を選定メモに残します。
演習とフィードバックを形式に合わせて設計する
演習では、受講者が試す行動、観察する人、次に確認することを先に決めます。オンラインか対面かにかかわらず、返却方法まで設計してから実施します。
演習で確認する行動を決める
演習は、受講者が何を試し、何を観察され、次に何を直すのかを説明できる形にします。たとえば面談研修なら、質問を一つ使う、相手の回答を要約する、次の確認を約束する、といった行動を記録します。
説明を聞いた後に感想だけを集める設計では、次の業務で試す内容を決めにくくなります。オンラインでも対面でも、演習の後に本人が振り返る項目と、返却する人を置いてください。
フィードバックの記入例を用意する
研修担当者は、評価語だけで終わらない記入欄を準備します。次の例では、観察した発言、本人の受け止め、次に試す行動を分けています。
この表は研修の効果を測定する共通指標ではなく、演習後に話し合う材料の例です。職種や研修テーマに合わせて、観察する場面と質問を入れ替えてください。
| 欄 | 記入例 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 観察した発言 | 相手の話を要約して確認した | 要約後に相手の補足を聞けたか |
| 本人の受け止め | 質問の順番に迷った | どの場面で迷ったか |
| 次に試す行動 | 次回の面談で確認質問を一つ使う | 誰が振り返りを行うか |
記入例は、評価のための点数ではなく、次の演習で確認する行動を決めるために使います。観察した発言と次の行動を対応させると、返却の担当と確認する内容を決められます。
研修後の実践と振り返りで定着条件を整える
研修後の実践は、形式だけでは決まりません。試す業務の場面、振り返る担当、見直す時点を実施前に決め、上司と人事の役割を分けて残します。
研修直後ではなく実践する場面を先に決める
研修後に何を確認するかは、実施前に決めます。管理職研修であれば、次の1on1、評価面談、部門会議など、学んだ内容を試せる場面を選び、本人と上司が何を振り返るかを記録します。
対面研修なら定着する、オンライン研修なら定着しないという判断はできません。実践の機会、振り返る担当、見直す時点がそろっているかを、形式とは別に確認します。
上司と人事の役割を分けて記録する
受講者だけに実践を任せず、上司が確認すること、人事が研修の設計を見直すことを分けます。振り返りでは、できたかどうかの結論だけでなく、試せなかった条件や次回の支援も残します。
オンラインで実施する管理職研修の設計例を確認したい場合は、オンライン管理職研修の設計を参照してください。研修形式より先に、対象者と実践の場を整理する視点を補えます。
形式選定を社内で説明するための確認項目
社内説明では、形式の結論とともに、その結論を支える確認条件を示します。目的、対象者、演習、受講環境、振り返りの未確認事項を残し、次に確認する担当者を決めてください。
選定理由を一枚の確認表にまとめる
社内説明では、オンラインか対面かの結論だけでなく、目的、対象者、演習、受講環境、研修後の確認を並べます。未確認の項目を残すことで、見積や日程の比較で何を確認すべきかも共有できます。
費用は重要な条件ですが、未確認の運営作業や研修後の支援を含めずに比較しないようにします。比較対象へ同じ確認項目を渡し、回答の違いを選定理由にしてください。
管理職研修との接続を確認する
管理職向けの研修では、形式を決めた後に、管理職が現場で使う面談やフィードバックとのつながりを確認します。研修だけで課題を解決すると約束せず、実践の場で誰が何を見直すかを決めます。
目的や対象者の整理から始めたい場合は、管理職研修の目的と内容も確認してください。形式の比較に入る前に、研修で扱う課題を言葉にする際の参考になります。
| 確認項目 | 記入する内容 | 未確認なら次に聞く相手 |
|---|---|---|
| 目的 | 研修後に試してほしい行動 | 現場責任者 |
| 対象者 | 役割、経験、参加条件 | 対象部門の責任者 |
| 演習 | 観察する行動と返却方法 | 講師・研修担当 |
| 受講環境 | 端末、通信、会場、時間 | 運営担当 |
| 振り返り | 実践する場、確認者、時点 | 上司・人事 |
この確認表は、形式の結論だけでなく、その判断に必要な未確認事項と担当者を共有するために使います。回答がそろわない項目は決定を急がず、確認後に比較対象へ同じ条件を当てはめます。
まとめ
形式の決定と定着の設計を分けて考える
オンライン研修と対面研修は、目的、対象者、演習、受講環境、研修後の実践機会を対応させて選びます。どちらかの形式に一律の優劣を置かず、研修で扱う仕事に必要な条件を確認してください。
選定後は、演習で観察する行動、振り返る担当、実践する場を決めます。社内説明では、形式の結論だけでなく、未確認の条件と次に確認する相手も含めると、判断の根拠を共有できます。
参考:オンライン研修の「効果」に関するエビデンスの蓄積|厚生労働省
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