退職による企業のリスク
社員の退職によって、企業にどんなリスクが生じるのでしょうか。
- 欠員補充にコストがかかる
- 優秀な社員が退職して生産性が下がる
- 業務の負担量が増える
- 社員のモチベーションが下がる
本パートでは、退職による企業のリスクを4点解説します。
欠員補充にコストがかかる
退職リスクの1つ目は、欠員補充にコストがかかることです。
人材が流出してしまうと、新たな人材を補充するための採用コストがかかります。
加えて、補充した社員のオンボーディングにも時間を消費することになります。
このように、退職には金銭と時間の両方のコストを割かなければいけないというリスクがあると考えられます。
優秀な社員が退職して生産性が下がる
退職リスクの2つ目は、優秀な社員が退職して生産性が下がることです。
単純に、優秀な社員は生産性が高く、退職による企業・組織の生産力低下は著しくなります。
また、優秀な社員は、職務を遂行する能力に秀でているため、周囲から慕われている可能性が高く、退職が周りの社員にネガティブな影響を与えることも考えられます。
「この人が辞めるのは会社に問題があるのでは?」と勘ぐってしまう社員も少なくないでしょう。
したがって、社内での影響力が大きい優秀な社員が辞めることによって、退職が連鎖してしまう危険性も秘めています。
業務の負担量が増える
退職リスクの3つ目は、業務の負担量が増えることです。
退職する社員が持っていた仕事は残った社員に引き継がれることになります。
そうなると、必然的に一人ひとりの業務量は増え、業務効率が低下します。
また、既存の仕事だけで組んでいたスケジューリングも変更して工数の管理をしなおさなければならず、手間がかかります。
社員のモチベーションが下がる
退職リスクの4つ目は、社員のモチベーションが下がることです。
組織としてお互いに信頼関係を構築していく中、仲間が辞めてしまうとまた新たに信頼関係を構築せねばならず、従業員のモチベーションは下がっていきます。
また、辞めた社員の業務を押し付けられた社員は、本来自分がやるべき業務ではない仕事をプラスで任されているわけですから、モチベーションが低下すると考えられます。
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離職の原因
社員が離職してしまう原因はどこにあるのでしょうか?
- 待遇に不満がある
- 職場の人間関係に問題がある
- 仕事内容に不満がある
- 労働環境・条件に不満がある
- 会社の将来性に不安がある
本パートでは、離職の原因を5点解説します。
待遇に不満がある
離職の原因の1つ目は、労働環境や待遇面に不満があることです。
令和2年度の雇用動向調査によると、離職者のうち9.4%が「給与等年収が少なかった」と回答しています。
これは、単体で見ると離職理由の第2位に当たります。
待遇が悪いことは、従業員にとって「自分の能力が正当に評価されていない」という印象を与えてしまいます。
したがって、正当に評価されない環境で働き続けたいと思う社員はおらず、退職に繋がってしまいます。
評価への不満に対してのアプローチとして、第一に制度改革が挙げられますが、制度改革には時間的・金銭的なコストが不可欠です。
それらのコストを避けつつ評価への不満をなくす運用法については、以下の資料をご覧ください。
職場の人間関係に問題がある
離職の原因の2つ目は、職場の人間関係に問題があることです。
令和に2年度の雇用動向調査より、「職場の人間関係が好ましくなかった」と答えている人は、特に女性では13.3%と大きな割合を占めています。
組織は立場や考え方が異なった人が互いに調和をとり運営していくものです。
したがって、人間関係が良好でないとお互いにコミュニケーションにストレスを感じるようになり、離職してしまいます。
また、ハラスメントなど一方的に心に傷をつけられた場合も、心理的に不衛生な場所で長く働きたいとは思えないでしょう。
仕事内容に不満がある
離職の原因の3つ目は、仕事内容に対して不満があることです。
仕事の内容に不満があるというのは、業務のレベルが自分と合わなかったり、仕事へのやりがいを見つけられないという意味になります。
業務内容が従業員の能力や目的に合ったものでなければ、当然働き続けたいとは思わないでしょう。
したがって、その人に合った配置をすること、部署異動によってミスマッチを最小化する必要があります。
労働環境・条件に不満がある
離職の原因の4つ目は、労働環境に不満があることです。
雇用動向調査において、退職の理由として「労働条件がに不満がある」と答える人は男女問わず多い結果となっています。
環境は働く上での前提であり、いくら会社の業績や将来性に不安がなくとも、従業員を取り巻く状況に問題があれば業務を遂行しづらくなってしまいます。
したがって、まずは業務に集中できるように、環境を整えることが大切になります。
会社の将来性に不安がある
離職の原因の5つ目は、会社の将来性に不安があることです。
もし会社がこの先潰れてしまう危険性があれば、従業員はその会社に残ろうと考えないはずです。
また、会社自体は残っていても、成長を望めない環境であれば、従業員はその会社で働くモチベーションを失ってしまうかもしれません。
したがって、事業や体制に将来性があるか考えることは、変化の速い時代において必須になってきます。
離職防止の具体的な対策
離職の原因が分かったところで、具体的にどのような対策をとればいいでしょうか。
- 労働条件や待遇の見直し
- ライフワークバランスの推進
- ハラスメント対策
- 360度評価の導入
- ピアボーナス制度の導入
本パートでは、離職の対策を5点解説します。
また、上に挙げた方法以外にも、チェックリスト形式で職場環境や行動をチェックしていくことによって離職を防ぐことは可能です。チェックリストについては以下の資料をご覧ください。
労働条件や待遇の見直し
離職防止の具体的な対策の1つ目は、労働条件や待遇を見直すことです。
先述のとおり、待遇に関しては離職理由のトップを占めており、重大な問題だと言えるでしょう。
ポイントは、単に給与を上げればいいのではなく、従業員を正当に評価することだと言えます。理由は、待遇は会社からの評価で決まるものであり、待遇に不満がある=自分の能力に見合った評価がされていないという式が成り立つからです。
したがって、競合と比べて給与水準に差がないか、能力や成長に見合った待遇ができているかをリサーチする必要があります。
ライフワークバランスの推進
離職防止の具体的な対策の1つ目は、ライフワークバランスを推進する施策をとることです。
労働環境は働くうえでの前提であり、重要な要素になります。
したがって、ライフワークバランスの定義に則り、「仕事と仕事以外の生活に調和をとる」ことができれば、従業員が業務に集中しやすい環境ができると言えるでしょう。
しかし、ライフワークバランス施策の内容は多岐に渡るため、本記事では種類を分けて以下に記述します。
- 休業制度
育児休業・介護休業・休職者の復帰支援 - 休暇制度
看護休暇・配偶者出産休暇・年次有給休暇の積立制度 - 働く時間の見直し
勤務時間のフレキシビリティ・短時間勤務制度長・時間勤務の見直し - 働く場所の見直し
勤務場所のフレキシビリティ・転勤の限定 - その他
経済的支援・事業所内保育施設・再雇用制度情報提供・相談窓口の設置等
全てに取り組むことは難しいため、会社の状況や課題に合致した施策を選定することが重要です。
ハラスメント対策
離職防止の具体的な対策の4つ目は、ハラスメント対策を徹底することです。
ハラスメントは「他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること」であり、職場の人間関係を壊し、従業員を離職に追い込んでしまう危険性があります。
したがって、ハラスメントに関する認識を会社の中ですり合わせることによって、ハラスメントの抑制、未然防止を心掛けましょう。
具体的には、未然防止のためには、研修等の認識を共有する機会を設けることで、ハラスメントの存在、基準を認知させることができます。
また、もし起こってしまった際の処置として、会社のハラスメント相談室の完備をさせておきましょう。
360度評価の導入
離職防止の具体的な対策の1つ目は、360度評価を取り入れることです。
360度評価とは、一人に対してさまざまな階層の社員からフィードバックを行い評価基準とする人事制度の1つです。
この制度の特徴は、決まった上司が決まった部下に対して評価をするといった限定的な枠組みを取り去っている点です。
同じ頑張りでも人によって見方が違うため、従来の評価では評価のつけ方が一方向に偏ってしまいます。
この制度を利用すれば、自分のことを正当に評価されている実感が出ることによって、離職率は下がるのではないでしょうか。
実際の360度評価を運用するにあたっての負担をなくすためのツール・システムについては以下の記事にて解説をしています。
ピアボーナス制度の導入
離職防止の具体的な対策の5つ目は、ピアボーナス制度を導入することです。
ピアボーナス(Peer Bonus)とは、従業員同士が仕事における成果・貢献・サポートに対して、称賛や承認の言葉に添えて、「少額の金銭的報酬」を送り合う仕組みのことを指します。
ピアボーナス制度の導入によって、称賛の文化を醸成され、組織で働く人々にとって「非金銭的な報酬」を受け取る機会を増やし、会社への愛着であるエンゲージメントやモチベーションの向上、心理的安全性の醸成といった様々なメリットをもたらすと考えられます。
ピアボーナスについて、また、ピアボーナスの浸透を促進させるツールについては以下の記事をご覧ください。
離職防止のポイント
施策を行う上で、気を付けるべきポイントがあります。
- 従業員と定期的な相談の場を設ける
- ミスマッチングを防ぐ
本パートでは、離職防止のポイントを2点解説します。
従業員と定期的な相談の場を設ける
離職防止のポイントの1つ目は、社員と定期的な相談の場を設けるということです。
離職の原因に通ずる共通点は、マネジメント層と従業員の認識がすり合っていないという点です。
認識をすり合わせるためには、お互いコミュニケーションをとる機会が必要です。
具体的な施策としては、1on1ミーティングの実施が挙げられます。定期的な相談の場を設けて、従業員の考えを知るところから始めましょう。
1on1ミーティングの効果を最大化させるツール・システムについては以下の記事で紹介しています。
ミスマッチングを防ぐ
離職防止のポイントの2つ目は、ミスマッチングを防ぐということです。
問題が起こってから対処を行っても、退職意思が固まっている場合があります。加えて、会社によっては残業時間など方針上対処できない問題もあります。
したがって、採用段階で価値観がフィットするか精査し、ミスマッチングを防ぐのも一つの手となります。
そうすれば、全体的な施策の難易度は下がると考えられます。
離職防止の成功事例
実際に、離職防止に成功してる企業はどのような取り組みをしているのでしょうか?
- 株式会社サイボウズ
- カネテツデリカフーズ
本パートでは、離職防止の成功事例を2点解説します。
株式会社サイボウズ
離職防止の成功事例の1つ目は、株式会社サイボウズです。
株式会社サイボウズは、組織のツール・風土・制度を改革することで、28%であった離職率を4%にまでもっていきました。
株式会社サイボウズの取り組みは、社員一人ひとりの個性が違うことを前提に、それぞれが望む働き方や報酬制度が実現されればいい、という考え方から始まりました。
制度の構築から始まり、いくら制度を作っても受け入れられる環境がなければいけないので風土の改革に乗り出しました。
そして、働く環境の最適化を目指し、ツールの改革に取り組んだのです。
施策の具体例を挙げると、「働き方を時間と場所の9分類から選択できる制度」があります。
働き方も自由度を認めるべきという主旨であり、事情に関わらず、働き方をいつでも変更できるようにしています。
このように、「1人1人に合った働き方」を追求し、離職率を大幅に下げました。
カネテツデリカフーズ
離職防止の成功事例の2つ目は、カネツカデリカフーズです。
食品製造のカネテツデリカフーズは、育成の制度を変えることによって50%前後だった入社後3年の離職率が10%に改善されました。
元々、現場に立ち先輩社員の背中を見て学ぶ方法が主流だった若手の育成制度を改めました。
具体的には、入社2、3年目の若手社員を指導員に指名し、新入社員にマンツーマンで技術を伝えるようにしました。
これにより、若手社員に「教える技術」を身につけさせ、忙しさに遠慮して先輩社員に話しかけられずにいた新入社員との会話を増やすことを狙いとして、うまく成功を収めたのです。
まとめ
離職の原因は、そのすべてが認識のズレから生まれていると言っても過言ではありません。
待遇に不満が出るのも、評価に納得感を得られないからであり、職場の人間関係が悪くなるのも価値観がすり合っていないからです。
したがって、そのことを念頭に置いたうえで、本記事に記載の施策を試していただければ幸いです。
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