▼ この記事の内容
離職率を下げるには、自社の離職原因を「制度面・マネジメント面・文化面」の3層で特定し、原因に対応した施策を優先度順に実行することが不可欠である。本記事では原因の構造化フレームワーク、原因別の施策7選、離職率低下に成功した企業事例、施策の効果測定方法までを一貫して解説する。
「今年に入って3人目の退職者が出た」「若手がようやく戦力になったタイミングで辞めてしまう」——こうした状況に頭を抱える人事担当者は少なくない。
厚生労働省の令和5年雇用動向調査によると、日本企業全体の平均離職率は15.4%で推移しており、新規大卒就職者の3年以内離職率は依然として3割を超える。採用1人あたりの平均コストが新卒で93.6万円、中途で103.3万円であることを考えると、離職は単なる人の問題ではなく、経営の損失に直結する。
問題は「離職を防ぎたい」という意識があっても、打つべき施策の優先順位がわからないことだ。上位施策を並列で列挙するだけでは「結局、自社はどれからやればいいのか」が見えない。
この記事では、離職の原因を独自の3層モデルで構造化し、自社の原因タイプに合った施策を優先度つきで選べる状態にすることを目指す。成功事例と失敗事例の両面から、読者が施策を2〜3個選定して経営層に上申できるレベルまで解像度を上げていく。
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目次
社員が離職する原因を3つの層で整理する
離職の原因は大きく「制度面」「マネジメント面」「文化面」の3層に分類できる。 多くの企業が施策に失敗する理由は、この3層を区別せずに一律の対策を打ってしまうためだ。たとえば給与への不満が原因なのに1on1を導入しても、根本的な解決にはつながらない。まず自社の離職がどの層に起因するのかを見極めることが、施策選定の出発点になる。
制度面の問題|給与・評価・労働条件への不満
離職の原因として最も多く挙がるのが、給与・評価制度・労働条件に対する不満である。 dodaの転職理由調査によると、転職理由の第1位は「給与が低い・昇給が見込めない」で36.9%を占める。給与水準が同業他社と比べて低い場合や、成果が報酬に反映されない場合、社員は「ここにいても報われない」と判断する。
評価制度の不透明さも深刻な要因となる。上司の主観で評価が決まり、基準が開示されていない職場では、社員が自分の努力の方向を見失う。「何をすれば評価されるのか」が見えない状態は、モチベーションの低下を通じて離職に直結する。
労働条件についてはサービス残業や休暇の取りにくさ、リモートワーク非対応などが代表的な不満要因だ。コロナ禍以降、柔軟な働き方を提供する企業が増えたことで、対応できない企業からの人材流出は加速している。
制度面の問題は、経営層の意思決定で比較的短期間に改善可能な領域でもある。だからこそ、ここに原因がある場合は最優先で着手すべきだ。
参考URL:
- https://www.dodadsj.com/content/240329_rishoku-boshi/
- https://mitsucari.com/services/columns/company-with-high-turnover-rate
マネジメント面の問題|上司との関係性と成長実感の欠如
離職率が高い企業に共通するのは、マネジメント層と現場の間にコミュニケーションの断絶が起きていることだ。 内閣府の平成30年子供・若者白書によると、初職の離職理由で2番目に多いのは「人間関係がよくなかったため」(23.7%)である。「人間関係」と一括りにされがちだが、実態の多くは「直属の上司との関係性」に集約される。
上司が部下の業務状況を把握していない、フィードバックが年に1〜2回の評価面談だけに限られる、といった状況は珍しくない。部下の側からすれば「自分がどう成長しているのか」「このまま在籍して何が得られるのか」が見えず、キャリアの停滞感が離職を後押しする。
従来、マネジメントの質は属人的なものとして放置されてきた。しかし最近は、1on1の頻度・内容・フォローアップを仕組みとして可視化し、マネージャーの行動を定量的に把握する企業が成果を出し始めている。マネジメント面の問題は制度の変更だけでは解決できず、日常の行動レベルでの変革が求められる。
上司との関係性が原因で辞めるケースについては、以下の記事で詳しく解説している。
参考URL:
文化面の問題|心理的安全性の低さと組織への帰属意識
制度もマネジメントも整っているのに離職が止まらない場合、原因は組織文化に根ざしている可能性が高い。 心理的安全性が低い組織では、社員が意見を言えない・失敗を恐れて挑戦しない・本音を隠して「問題ありません」と報告する、という状態が常態化する。
帰属意識の低下も見逃せない。リモートワークの普及により、オフィスで自然に発生していた雑談や偶発的な交流が減少した。「自分はこの組織の一員である」という実感が薄れると、より魅力的に見える他社からの誘いに対する心理的ハードルが下がる。
文化面の問題は制度変更やマネジメント研修だけでは改善しにくい。経営者やリーダー層が「発言を歓迎する姿勢」を日々の行動で示すこと、成功体験だけでなく失敗の共有を仕組み化することなど、時間をかけた積み重ねが必要になる。
制度面の施策を打ったのに効果が出ない場合は、文化面の問題が潜んでいないか疑ってみることが重要だ。
離職原因3層モデル|自社の課題を特定するセルフチェック
自社の離職がどの層に起因するのかを見極めるために、以下のセルフチェックを活用してほしい。 これは累計200社超の組織変革を支援してきた実績から導き出した「離職原因3層チェック」である。

〈制度面〉
- 同業他社と比較して給与水準は適正か
- 評価基準は文書化され、全社員に開示されているか
- 有給取得率は70%以上か、リモートワーク等の柔軟な勤務形態はあるか
〈マネジメント面〉
- 上司と部下の1on1は月1回以上、実施されているか
- 社員のキャリア目標を上司が把握し、業務にひもづけた成長機会を提供しているか
- マネージャーの面談スキルや部下との対話頻度を定量的にモニタリングしているか
〈文化面〉
- 社内で「自分の意見を率直に言える」と感じている社員の割合は把握できているか
- 失敗事例の共有や振り返りが仕組みとして存在するか
- チーム内の雑談・偶発的な交流の機会が意図的に設計されているか
3つの層のうち、チェックが付かない項目が多い層が、自社の離職原因の中心にある。次のセクションでは、この結果に対応する施策を優先度つきで紹介していく。
では、原因が特定できたところで「具体的にどの施策から手をつけるべきか」を見ていこう。
離職率を下げる施策7選|原因別の優先度つき
離職率を下げる施策は、前章で特定した原因の層に対応させることで初めて効果を発揮する。 施策を13個も並列で列挙するサイトは多いが、読者が本当に知りたいのは「自社はどれからやるべきか」だ。以下では制度面・マネジメント面それぞれに対応する主要施策を、優先度つきで紹介する。セルフチェックの結果に応じて、該当する層の施策から読み進めてほしい。
| 離職原因の層 | 優先施策 | 効果が出るまでの目安 |
|---|---|---|
| 制度面 | 評価制度の透明化 / 柔軟な働き方の導入 | 3〜6ヶ月 |
| マネジメント面 | 1on1の質向上 / キャリアパスの可視化 | 6〜12ヶ月 |
| 文化面 | 心理的安全性の醸成 / 称賛文化の導入 | 12ヶ月以上 |
評価制度の透明化と納得感のある報酬設計〈制度面〉
評価基準を全社に公開し、評価プロセスを可視化することが、制度面の離職を防ぐ最優先施策になる。 「何をすれば評価されるのか」が不透明な状態は、社員の不信感を蓄積させる最大の要因だからだ。
具体的には、評価基準を文書化してイントラネットに掲載し、誰でも閲覧できる状態にする。加えて、評価結果のフィードバック面談を四半期ごとに実施し、評価理由を具体的に伝える仕組みを作る。「あなたの今期の目標達成率は◯%で、特にこの行動が評価された」と言語化できるかどうかがポイントになる。
報酬設計については、同業他社のベンチマーク調査を定期的に実施し、自社の報酬水準が市場と乖離していないかを確認する。給与テーブルの改定が難しい場合でも、インセンティブ設計やスキル手当の新設など、社員が「努力が報われる」と実感できる仕組みは導入可能だ。
制度の透明化は経営層の意思決定で実行できるため、着手のハードルは比較的低い。ただし、制度を変えただけで運用が伴わなければ形骸化する。運用の質を担保する仕組みについては次のH3で触れる。
1on1ミーティングの質を高める仕組みづくり〈マネジメント面〉
1on1ミーティングは離職防止の有効策として広く認知されているが、「導入しただけ」では効果が出ない。 月1回30分の面談が単なる業務報告や雑談で終わってしまい、「やっている意味がわからない」とマネージャー・メンバー双方が感じているケースは多い。
1on1が形骸化する原因は、面談の「質」を計測する仕組みがないことにある。何を話すべきか、部下のどの変化に注目すべきか、前回の面談からのフォローアップはできているか——これらが属人的なスキルに依存している限り、組織全体で1on1の効果を安定させるのは難しい。
ある訪問看護企業では、隔週の1on1を導入した結果、コミュニケーション上の問題が減少し、離職率が目に見えて改善した。この企業が成功した要因は、面談の頻度だけでなく「面談で何を確認するか」のフレームワークを共通化し、マネージャー間でベストプラクティスを共有した点にある。詳しい事例はH2-4で紹介する。
マネジメントの行動を定量的に可視化し、1on1の質を組織的に底上げする仕組みに関心がある方は、営業マネジメントツールの詳細資料も参考にしてほしい。
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キャリアパスの可視化と成長機会の提供〈マネジメント面〉
社員が「このまま在籍して何が得られるのか」を見通せない状態は、静かな離職予備軍を生む。 内閣府の調査で初職の離職理由の1位となった「仕事が自分に合わなかった」(43.4%)の背景には、キャリアの方向性と現在の業務が接続されていないという構造的な問題がある。
キャリアパスの可視化とは、社員ごとに「現在地」と「3年後の到達点」を明確にし、その間に必要なスキル・経験・役割を具体的に示すことだ。漠然と「がんばればいつか昇進できる」ではなく、「このスキルを習得し、このプロジェクトで成果を出せば、次のステップに進める」というロードマップを提示する。
成長機会の提供はOJTだけに頼らない。社内異動制度、プロジェクトへのアサイン変更、外部研修への参加など、複数の選択肢を用意し、社員自身が選べる状態にすることが重要だ。「会社に成長させてもらう」から「自分でキャリアを選択する」への転換が、定着率を大きく左右する。
キャリアパスの整備は時間がかかるため、まずは1on1の場で部下のキャリア目標を聞き出し、業務アサインとの接続を上司が意識するところから始めるのが現実的な第一歩になる。
柔軟な働き方の導入とワークライフバランスの改善〈制度面〉
リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方を整備することは、制度面の離職防止施策として即効性が高い。 労働条件への不満は転職理由の上位に常に入っており、特にコロナ禍以降、柔軟な勤務形態を提供しない企業からの人材流出は顕著になった。
導入にあたっては「全社一律」にこだわる必要はない。部署や職種ごとに適用範囲を分け、週2日のリモートワーク、コアタイムなしのフレックス、時短勤務の選択肢といった形で段階的に拡充するアプローチが現実的だ。
ワークライフバランスの改善は、有給休暇の取得促進やノー残業デーの設定といった施策にとどまらない。「業務量そのものの適正化」が本質的な解決策になる。1人あたりの業務負荷を可視化し、特定の社員に負担が偏っていないかをモニタリングする仕組みが求められる。
離職率が15%を超える企業では、まず労働時間と有給取得率の実態を数値で把握することから始めたい。数値を可視化すれば、経営層への改善提案にも説得力が生まれる。
施策の全体像が見えたところで、次は「今すぐ着手できること」と「若手社員に特有の離職リスクへの対応」を確認していこう。
すぐに着手できる離職防止策と若手社員への対応
離職防止施策は「半年がかりの制度改革」だけではない。 明日から実行できる即効性の高いアクションも存在する。加えて、新卒3年以内離職率が3割を超える現状では、若手社員に特有の離職リスクへの対応も欠かせない。ここでは即効施策と若手対応、そして離職の予兆を早期にキャッチする方法を整理する。
明日からできる3つの即効施策
離職防止のために明日からすぐに始められる施策は、次の3つに集約される。
- 退職面談(イグジットインタビュー)の仕組み化 — 退職者に対して人事が30分の面談を実施し、離職理由を構造化して記録する。「本音を聞く」ためには、直属の上司ではなく第三者が面談を担当することがポイントだ。蓄積されたデータは、離職原因の傾向分析に直結する。
- 従業員サーベイの即時導入 — 簡易的なパルスサーベイ(5問程度の短いアンケート)を月1回実施する。エンゲージメントスコアの推移を追うことで、組織の健康状態をリアルタイムに把握できる。無料で始められるツールも多いため、コストのハードルは低い。
- 感謝・称賛の可視化 — Slackやチャットツールに「ありがとうチャンネル」を開設し、日常的な称賛を可視化する。小さな施策に見えるが、心理的安全性の醸成と帰属意識の向上に対して即効性がある。
いずれも経営層の承認を待たずに人事主導で着手できる。大きな制度改革と並行して「小さく早く動く」ことが、離職防止の初速を上げる鍵になる。
若手・新卒社員の早期離職を防ぐポイント
若手社員の早期離職を防ぐには、入社後6ヶ月間の「オンボーディング設計」が決定的に重要である。 厚生労働省のデータによると、2020年卒の新規大卒就職者の3年以内離職率は32.3%に達する。3人に1人が3年以内に辞める計算だ。
若手が離職する理由は「仕事が自分に合わなかった」が最多(43.4%)だが、入社直後にミスマッチを感じた時点で即座に退職を決断するわけではない。多くの場合、入社後3〜6ヶ月の間に「期待と現実のギャップ」が蓄積し、相談できる相手もいないまま離職に至る。
この時期に有効なのが、直属の上司とは別の「メンター」を配置する施策だ。業務の相談は上司に、キャリアの悩みや組織への適応はメンターにと、相談先を分けることで若手の心理的な逃げ場を確保できる。
若手の離職が連鎖するメカニズムと対策については、以下の記事も参考にしてほしい。
参考URL:
離職の予兆をキャッチする3つのサイン
離職は突然起こるように見えて、実際には数週間〜数ヶ月前から予兆が現れている。 以下の3つのサインを見逃さなければ、手遅れになる前に対処できる可能性が高まる。
第一のサインは業務への関与度の低下だ。会議での発言が減る、自発的な提案がなくなる、定時ぴったりに退社するようになるなど、「静かに距離を取り始める」行動パターンが典型的である。
第二のサインは人間関係の変化だ。特定の同僚との付き合いが急に減る、ランチを一人で取るようになる、社内イベントへの参加を避けるといった変化は、組織への帰属意識が薄れているシグナルになる。
第三のサインはキャリアに関する質問の増加だ。「この会社でどこまでいけるのか」「異動の可能性はあるか」といった質問が出始めた場合、社員は社内でのキャリアの天井を感じている可能性がある。この段階であればまだ対話で引き留められる余地がある。
これらの予兆を個人の感覚ではなく、サーベイデータや1on1の記録として蓄積・可視化することで、組織として離職リスクを早期に検知する体制が整う。より詳細な予兆パターンについては、以下の記事を参照してほしい。
理論と施策がわかったところで、次は実際に離職率の低下に成功した企業が何をしたのかを見ていこう。
離職率の低下に成功した企業の取り組み事例
施策の効果を判断するには、実際に成果が出た事例と、想定どおりにいかなかった事例の両方を見ることが欠かせない。 ここでは累計200社超の組織変革を支援してきた中から、離職率の改善に直結した取り組みと、施策導入時に見落としがちな落とし穴の実例を紹介する。成功事例だけを並べても再現性は見えない。代償やリスクも含めて、読者が自社での判断材料にできる粒度で伝える。
1on1の定着で離職率が改善した訪問看護企業の事例
ある訪問看護企業では、隔週1回の1on1ミーティングを全管理職に導入したことで、コミュニケーション上の問題が大幅に減少し、離職率の改善と月500〜1,000万円の売上向上を同時に実現した。
この企業の課題は、訪問看護という業態特有の「スタッフが1人で現場に出向く」働き方にあった。管理者と現場スタッフが顔を合わせる機会が限られ、不満や悩みが表面化しないまま退職に至るケースが続いていた。
導入した施策の核は、隔週1回の1on1を「業務報告の場」ではなく「スタッフの状態を把握する場」として再定義したことだ。面談で確認する項目を共通化し、管理者が属人的なスキルに頼らなくても面談の質を一定水準に保てる仕組みを整えた。
導入から3ヶ月目、目に見えて変わったのはスタッフ間の情報共有の頻度だった。以前は退職の意向を伝えられて初めて問題に気づくケースが大半だったが、1on1の記録を管理者同士で共有することで「あのスタッフ、最近少し元気がない」という予兆を拾えるようになった。
一方で、隔週1回の1on1は管理者にとって新たな時間的負荷となった。ただし、コミュニケーション問題の減少により退職時の業務補填負荷が明確に減ったため、トータルでは管理者の負担も軽減される結果となった。
参考URL:
成果は出たが退職者も出た|施策導入時に見落としがちな落とし穴
離職防止施策を導入すれば全員が救われるわけではない。 ある企業で営業組織のマネジメント改革を実施した際、チーム全体の成果は改善したにもかかわらず、裏で1人のメンバーがプレッシャーに耐えられず退職するという事態が起きた。
この事例が示しているのは、施策の「平均的な効果」と「個別の影響」は異なるという事実だ。組織全体の数値が改善しているからといって、全員にとって良い変化とは限らない。マネジメントの可視化が進むほど「見られている」というプレッシャーを感じるメンバーも出てくる。
成果が出ている組織ほど、「喜んでいる人ではなく、黙っている人を見ろ」——これは200社超の支援現場から得られた教訓だ。声を上げないメンバーこそ、施策導入の負荷を一人で抱え込んでいることがある。
この教訓を踏まえると、施策導入時には「全体の成果指標」だけでなく、「個別メンバーの状態モニタリング」を並行して行うことが不可欠になる。1on1やパルスサーベイを通じて個人レベルの変化を追うことで、全体最適と個別最適のバランスを保てる。
「施策を打てば離職はゼロになる」という断定はできない。重要なのは、施策の効果と代償の両方を正直に把握し、必要に応じて修正を加え続ける姿勢だ。
マネジメントの可視化が定着率を変える理由
離職防止施策が一過性で終わらず、組織に定着する条件は「マネジメント行動の可視化」にある。 従来の離職防止策は「研修を受ける」「制度を作る」で完結しがちだった。しかし研修直後は行動が変わっても、3ヶ月後には元に戻るケースが大半だ。
可視化が有効な理由は、マネージャー自身が「自分の行動がどう変化しているか」を客観的に把握できるからだ。面談の実施頻度、部下へのフィードバック回数、チームのエンゲージメントスコアの推移——こうしたデータがダッシュボードで確認できる状態になると、改善行動が習慣として定着しやすくなる。
IT/SaaS企業の事例では、マネジメント行動の可視化と改善サイクルの仕組み化により、6ヶ月で売上226%の向上を達成した。離職防止を目的として導入した仕組みが、結果的に組織全体のパフォーマンス向上にも波及した形だ。
マネジメントの可視化を自社で実現する具体的な方法については、以下の資料で詳しく解説している。
>>【AIでハイパフォーマー育成を自動化】営業マネジメントツール「コチーム」解説資料をダウンロードする
事例から学べることは「何をやったか」だけでなく「どう測ったか」だ。次のセクションでは、施策の効果を定量的に測定する方法を解説する。
離職防止施策の効果を測定する方法
離職防止施策を「やりっぱなし」にしないためには、効果を定量的に測定する仕組みが必要だ。 離職率そのものは結果指標(遅行指標)であり、数値に変化が表れるまでに半年〜1年のタイムラグがある。施策の効果を早期に判断するには、離職率より先に動く「先行指標」を追う必要がある。
離職率以外に追うべき3つの先行指標
離職率の改善を待たずに施策の効果を判定できる先行指標は、エンゲージメントスコア、1on1実施率、有給取得率の3つである。
第一に、エンゲージメントスコアだ。月次のパルスサーベイで計測できるこの指標は、離職率の変動に3〜6ヶ月先行して動く傾向がある。スコアが前月比で5ポイント以上低下した部署には、個別のヒアリングを入れるといった運用ルールを決めておくと早期対応が可能になる。
第二に、1on1の実施率と質のスコアだ。1on1を導入していても、実施率が50%を下回っている組織では効果は期待できない。実施率に加えて「部下が面談に満足しているか」を匿名アンケートで計測し、実施率×満足度の掛け算で質を追うのが望ましい。
第三に、有給取得率だ。取得率が低い部署は業務負荷が偏っている可能性が高く、離職リスクも連動して上昇する。四半期ごとに部署別の有給取得率を集計し、全社平均を下回る部署を重点フォロー対象にするアプローチが有効だ。
離職防止に活用できるツールの比較については、以下の記事も参考にしてほしい。
施策の見直しタイミングと判断基準
施策を導入してから効果を判定するまでの適切な期間は、施策の種類によって異なる。 制度面の施策(評価制度の変更、給与テーブルの改定)は3〜6ヶ月、マネジメント面の施策(1on1の導入、キャリア面談の仕組み化)は6〜12ヶ月、文化面の施策(心理的安全性の醸成)は12ヶ月以上を目安にする。
「効果が出ない」と判断するタイミングを間違えると、本来効果がある施策を途中で打ち切ってしまうリスクがある。判断基準は「離職率が下がったか」ではなく、「先行指標が改善傾向にあるか」で見ることが重要だ。
先行指標が横ばいまたは悪化している場合は、施策の設計に問題がある可能性がある。その際は離職原因の3層モデルに立ち返り、施策が対応している層と実際の原因がずれていないかを再検証する。離職率の改善施策をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してほしい。
よくある質問
離職率の計算方法は?
離職率は「一定期間内の離職者数÷期初の常用労働者数×100」で算出する。厚生労働省の雇用動向調査では、1月1日時点の常用労働者数を分母、その年の離職者数を分子として計算している。自社で算出する場合は、対象期間(年次・四半期)と対象者(全社員・新卒のみ等)を明確に定義した上で計算する。
日本企業の平均離職率はどのくらい?
厚生労働省の令和5年雇用動向調査によると、全産業の平均離職率は15.4%である。業界別では「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」が高く、「複合サービス事業」「鉱業・採石業」が低い傾向にある。自社の離職率が業界平均を上回っている場合は、優先的に対策を検討すべきだ。
離職率が高い業界にはどんな特徴がある?
離職率が高い業界に共通するのは、個人消費者を対象とするサービス業であること、労働時間が長くなりやすい業態であること、賃金水準が他業界と比べて低い傾向にあることの3点だ。ただし同じ業界内でも企業ごとの差は大きく、マネジメントの質や評価制度の整備度合いによって離職率は大きく変動する。
参考URL:
まとめ
離職率を下げるためには、離職の原因を「制度面」「マネジメント面」「文化面」の3層で構造化し、自社の課題がどの層にあるのかを特定することが出発点になる。
原因が特定できたら、対応する施策を優先度順に実行する。制度面は3〜6ヶ月、マネジメント面は6〜12ヶ月、文化面は12ヶ月以上と、効果が現れるまでの時間軸が異なる点を押さえておきたい。効果の判定には離職率だけでなくエンゲージメントスコアや1on1実施率などの先行指標を追うことで、施策の修正を早期に行える。
本記事で紹介した訪問看護企業の事例が示すように、マネジメント行動の可視化は離職率の改善と業績向上を同時に実現する有効なアプローチだ。一方で、施策の導入には代償も伴う。「喜んでいる人ではなく、黙っている人を見る」姿勢を忘れずに、全体最適と個別最適のバランスを保つことが長期的な定着率向上につながる。
離職防止ツールの導入を検討している方は、以下の記事もあわせて確認してほしい。
マネジメントの可視化で離職率を下げる仕組みの詳細は、以下の資料で確認できる。
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