BANTとは?営業の成約率を高めるヒアリング手法を解説

BANTとは、予算・決裁権・ニーズ・導入時期の4項目で見込み顧客の受注確度を判断するフレームワークです。

本記事では、BANTの基本から具体的なヒアリング質問例、SFA/CRMへの設定方法、組織への定着ステップまで徹底解説します。

商談の優先順位がつけられない、案件管理が属人化している、営業とマーケの連携がうまくいかないといった課題を抱える営業組織の方に向けて、受注確度を見極め成約率を高める方法をまとめました。

▼ この記事の内容

  • BANTの定義: 顧客が「買える予算があるか」「決める権利があるか」「解決したい課題があるか」「いつまでに必要か」を可視化する指標です。これらが揃っていない案件にリソースを割きすぎるのを防ぎます。
  • 導入のメリット: 勘に頼った案件管理を卒業し、SFA/CRM上で「確度A〜D」といった客観的な判定が可能になります。チーム内での引き継ぎがスムーズになり、クロージングのタイミングを逃しません。
  • 成功のポイント: 尋問にならないヒアリング技術(質問例)を習得し、日本特有の「稟議文化」に合わせた決裁ルート把握を行うことが不可欠です。

BANTとは

BANTとは、営業活動において見込み顧客の受注確度を判断するためのフレームワークです。Budget、Authority、Needs、Timeframeという4つの英単語の頭文字を取った言葉で、1960年代にアメリカのIBM社が法人営業の案件評価基準として開発しました。

項目英語意味
BBudget予算
AAuthority決裁権
NNeedsニーズ
TTimeframe導入時期

BtoB営業では、商談相手が本当に購入を決められる状況にあるのかを早い段階で見極めることが成約率アップの鍵となります。

例えば、製造業の営業担当者が100件の商談を抱えている場合、すべてに同じ時間をかけるのは非効率です。そこで、この4つの条件をヒアリングで把握できれば、受注の可能性が高い案件に時間と労力を集中でき、営業活動全体の効率化につながります。

B(Budget):予算

Budgetは、顧客が製品やサービスの導入のために確保できるお金の額のことです。BtoB営業では、いくら顧客が自社の商品に興味を持っていても、予算がなければ購入には至りません。

例えば、IT企業が年間500万円のシステム導入を提案しても、顧客の予算枠が200万円しかなければ商談は成立しません。今期の予算枠が確定している場合と、来期に向けて検討中の場合では、商談の進め方が大きく異なります。

予算が確保済みの案件は受注確度が高いため優先的に対応すべきです。一方、検討中や未確定の案件は、顧客が社内で予算を通すための支援を行うことで、商談を前に進められます。

A(Authority):決裁権

Authorityは、購入を最終的に決める権限のことです。法人営業では、商談の窓口となる担当者と、最終的に買う・買わないを決められる決裁者が異なるケースが多くあります。

例えば、人材サービス会社が採用システムを提案する場合、窓口は人事部の担当者でも、最終決裁は人事部長や役員が行うことがほとんどです。日本企業では稟議制度により、何人もの承認者が関わることが一般的です。

決裁権を持つキーパーソンを特定し、その人物が何を重視するのかを理解することが商談成功の分かれ道です。可能であれば、決裁者に直接提案できる機会を作れるかどうかを早い段階で確認しておきましょう。

N(Needs):ニーズ

Needsは、顧客が抱える課題や解決したいことを指します。営業活動において、顧客のニーズを正しく理解することは提案の質を大きく左右します。

ニーズには顧客自身が認識している顕在ニーズと、まだ気づいていない潜在ニーズの2種類があります。例えば、営業部門が成約率を上げたいという顕在ニーズの裏に、実は営業プロセスの属人化という潜在的な課題が隠れていることがあります。

優れた営業担当者は、「なぜそれが必要なのか」「それが解決したらどのような状態になっているか」といった質問を通じて潜在ニーズを引き出します。ニーズと自社商品の提供価値が合っていなければ、無理に商談を進めても失注するリスクが高まります。

T(Timeframe):導入時期

Timeframeは、顧客が製品やサービスを導入したいと考えている時期のことです。導入スケジュールが明確な案件ほど受注確度が高く、営業リソースを優先的に割り当てるべき対象となります。

例えば、来年4月から新システムを稼働させたいという顧客であれば、逆算して1月までに契約、2月に導入準備、3月にテストというスケジュールを設計できます。一方、いずれ検討したいという曖昧な回答の場合は、優先度を下げる判断も必要です。

導入時期を把握する際は、希望時期だけでなく、なぜその時期なのかという理由も確認することが重要です。

BANT営業を導入するメリット

BANT営業を組織に導入するメリットは以下の4つです。

  • 案件情報をチームで共有できる
  • 顧客目線の提案ができる
  • 課題を明確にできる
  • 適切なタイミングでクロージングできる

案件情報をチームで共有できる

BANT情報をSFAやCRMに記録することで、案件の進捗状況をチーム全体で見える化できます。担当者が不在でも、予算や決裁者、導入時期といった重要情報が共有されていれば、他のメンバーがすぐにフォローに入れます。

例えば、不動産会社で営業担当者が急な異動になった場合でも、SFAに予算3000万円、決裁者は総務部長、導入希望は来年4月と記録されていれば、後任者はスムーズに引き継ぎできます。情報が属人化していると、引き継ぎだけで1〜2週間かかることも珍しくありません。

CRMを活用することで顧客情報や商談履歴が一元化され、引き継ぎミスや対応漏れを防ぎやすくなります。情報共有の基盤を整えることは、組織全体の営業力強化に直結します。

顧客目線の提案ができる

BANTのヒアリングを通じて顧客の状況を深く理解することで、相手の立場に立った提案が可能になります。一方的な商品説明ではなく、顧客の課題解決を軸にした会話を展開することで、信頼関係の構築にもつながります。

例えば、予算に制約がある顧客には段階的な導入プランを提案する、決裁に時間がかかる顧客には余裕を持ったスケジュールを提示するなど、顧客の事情に寄り添った対応ができます。こうした配慮は、競合との差別化につながります。

この営業担当者は自分たちのことをよく理解してくれているという印象を持ってもらえれば、価格だけで比較されることを避けられます。結果として、顧客満足度の高い取引を実現でき、リピートや紹介にもつながるのです。

課題を明確にできる

BANT項目を体系的にヒアリングすることで、顧客自身も気づいていない課題が浮き彫りになることがあります。表面的な要望の背景にある本質的な問題を特定できれば、自社商品がどのような価値を提供できるかを具体的に示せます。

例えば、広告代理店の営業で新規顧客を増やしたいという要望を聞いた場合、「なぜ今この時期に検討を始めたのですか」と掘り下げると、実は既存顧客の離反が増えているという根本課題が見えてくることがあります。

課題が明確になれば、顧客の意思決定を後押しできます。漠然と何となく便利そうと思っている状態では導入を決断する動機が弱いままですが、具体的な課題と解決策が示されれば、顧客は行動を起こしやすくなります。

適切なタイミングでクロージングできる

BANT条件が揃った段階でクロージングに移ることで、成約の可能性を最大化できます。条件が整わないまま無理に契約を迫れば、顧客との関係悪化や失注を招きます。逆に、条件が揃っているのにアプローチを躊躇すれば、競合に機会を奪われかねません。

例えば、予算が確定し、決裁者との面談も済み、導入時期も3ヶ月以内と明確な案件であれば、すぐに具体的な契約条件の提示に進むべきです。一方、予算も時期も未定の案件に対して強引にクロージングしても、顧客の不信感を招くだけです。

BANTは今クロージングすべきかを判断する客観的な指標として機能します。導入時期から逆算して提案のタイミングを計り、決裁者への最終プレゼンを設定するなど、戦略的な商談設計が可能になります。

BANT営業を導入すべき組織の特徴

BANT営業の導入効果が特に高い組織の特徴は以下の3つです。

  • 商談件数が多く属人化している
  • 営業とマーケの連携を強化したい
  • SFA/CRMを導入済みで活用しきれていない

商談件数が多く属人化している

月間で数十件以上の商談を抱える組織では、担当者ごとに案件管理の方法がバラバラになりがちです。ベテラン営業は長年の経験からこの案件は脈があると判断できますが、その基準が言葉になっていなければ、新人への引き継ぎや育成が難しくなります。

例えば、保険会社で月間50件の商談を抱えるチームがあったとします。ベテランは経験から優先順位を判断できますが、新人は何を基準に案件を選べばよいかわかりません。その結果、見込みの薄い案件に時間を使い、有望案件を逃してしまうことが起こります。

BANTという共通の評価軸を設けることで、この案件は予算と時期がクリアだから優先度が高いといった判断を誰でも同じようにできるようになります。属人化の解消は、組織としての営業力を底上げし、特定の個人に依存しない安定した成果につながります。

営業とマーケの連携を強化したい

マーケティング部門が獲得したリードを営業部門が引き継ぐ際、どの程度まで育成されたリードなのかが曖昧だと、双方にフラストレーションが生まれます。営業はまだ検討段階が浅いリードばかり渡されると不満を持ち、マーケはせっかく渡したリードをフォローしてくれないと感じます。

例えば、SaaS企業でマーケティングが月間100件のリードを獲得しても、そのうち商談化するのが10件以下という状況があったとします。BANT条件をリード評価の基準として共有すれば、予算感とニーズが確認できたリードのみを営業にパスするというルールを設定できます。

営業とマーケティングの連携が取れている企業は、そうでない企業と比較して成約率が高くなります。BANTは両部門をつなぐ共通言語として、スムーズな連携を促進する役割を果たします。

SFA/CRMを導入済みで活用しきれていない

SalesforceやHubSpotなどのSFA/CRMを導入したものの、入力が形骸化している組織は少なくありません。入力項目が多すぎる、何を記録すべきかわからないといった理由で、現場の入力率が低下し、データの信頼性が損なわれているケースです。

例えば、人材紹介会社でCRMを導入したものの、入力項目が30以上あり、営業担当者が面倒に感じて入力率が30%以下という状況があったとします。BANT4項目に絞って必須入力とすれば、負担が減り入力率が80%以上に改善することも珍しくありません。

BANT項目をSFAの必須入力フィールドとして設定し、確度判定と連動させることで、入力する意義が明確になります。入力されたデータは売上予測の精度向上にも活用でき、ツールへの投資対効果を高められます。

BANT営業のヒアリング質問例

BANT条件を効果的に収集するには、質問の仕方が重要です。単刀直入に予算はいくらですかと聞いても、顧客が正直に答えてくれるとは限りません。相手が答えやすい文脈を作りながら、自然な会話の流れの中で情報を引き出す技術が求められます。各項目のヒアリングポイントは以下の4つです。

  • 予算の聞き出し
  • 決裁ルートの把握
  • 潜在ニーズの引き出し
  • 導入時期の確認

予算の聞き出し

予算に関する質問は、相手にとって最も答えにくいテーマの一つです。いきなり金額を聞くのではなく、検討状況や優先度を確認する流れから入ると自然に聞き出せます。

まず「今回のプロジェクトは社内でどの程度の優先度で進められていますか」から入り、「予算取りはこれからでしょうか、それともすでに枠が確保されていますか」で状況を把握します。金額感を探るには「他社様では月額30万円程度でご導入いただくケースが多いのですが、ご予算感としてはいかがでしょうか」のように事例を示すと、回答のハードルが下がります。

事例を示すことで、相手はそれより高い・低い・同じくらいという形で答えやすくなります。また、予算と自社の価格帯に大きな差がある場合は、早めに見極めをつけることで双方の時間を無駄にしない判断ができます。

決裁ルートの把握

決裁権に関しては、相手の立場を尊重しながら組織の意思決定プロセスを確認します。あなたには決裁権がないんですよねという聞き方は相手のプライドを傷つけてしまうため、避けなければなりません。

効果的な質問としては、「ご検討を進める中で他にご確認が必要な方はいらっしゃいますか」、「最終的なご判断はどなたがされますか」、「稟議を通す際に特に重視される観点はありますか」などがあります。日本企業では稟議による承認プロセスが一般的なため、決裁者ではなく決裁プロセスとして捉えることが大切です。

例えば、金融機関向けの営業であれば、複数の部署の承認が必要なケースが多いため、関係する部署や承認者の人数、過去に同様のシステム導入でどのくらいの期間がかかったかも確認しておくと、商談スケジュールの設計に役立ちます。

潜在ニーズの引き出し

顧客が語る要望の裏にある本質的なニーズを引き出すには、なぜを掘り下げる質問が効果的です。最初から結論を急がず、相手に多くを語ってもらうオープンクエスチョンを使います。

「そのお取り組みを始められたきっかけは何でしょうか」、「現状の運用で特にお困りの点はありますか」、「もし○○が解決したらどのような状態になっているのが理想ですか」といった質問が有効です。特に未来像を聞く質問は、顧客自身も気づいていなかった潜在的な課題を明確にする効果があります。

例えば、物流会社で配送効率を上げたいという要望を聞いた場合、「なぜ今そのテーマが重要なのですか」と掘り下げると、実はドライバー不足で既存の配送体制が限界に来ているという根本課題が見えてくることがあります。聞き出した情報は提案のストーリー構築に活かせます。

導入時期の確認

導入時期については、希望だけでなく、その背景にある制約や動機を把握することが重要です。いつまでにという時期となぜその時期なのかという理由をセットで確認します。

「いつ頃までに稼働させたいというご希望はありますか」、「その時期を目指されている理由を教えていただけますか」、「具体的には何月頃のスタートを想定されていますか」といった質問で詳細を詰めます。「来年度から」という漠然とした回答であれば、具体的な月まで確認することが大切です。

例えば、小売業で来年4月の新店舗オープンに合わせてPOSシステムを導入したいという顧客であれば、逆算して1月までに契約、2月に設置、3月にスタッフ研修というスケジュールを提案できます。期限が明確な場合は、商談の進行を促す材料としても活用しましょう。

BANT条件が揃わないと起こる問題

BANT条件が揃わないまま商談を進めると、営業担当者の時間と労力が無駄になるだけでなく、顧客側にも不要な検討負担をかけることになります。各項目が欠けている場合に起こりやすい問題は以下の4つです。

  • 予算が確保できない
  • 決裁権者を把握できない
  • ニーズを特定できない
  • 導入時期が決まらない

予算が確保できない

予算が未確定または不足している状態で商談を進めると、最終段階で予算がつかなかったという理由で失注するリスクが高まります。見積書を提出し、提案内容に納得してもらっても、社内で予算承認が得られなければ契約には至りません。

例えば、コンサルティング会社が3ヶ月かけて提案を練り上げ、担当者からは高評価を得たものの、最終段階で「今期は予算が確保できませんでした」と断られるケースがあります。この場合、提案フェーズへの投資が回収できないリスクがあります。

商談初期に予算の確保状況や金額感を確認し、自社の価格帯と大きな乖離がないかを見極めることが重要です。予算確保の見込みが立たない案件は、深追いせずに長期フォロー案件として管理する判断も必要です。

決裁権者を把握できない

商談相手が決裁権を持たない担当者のみの場合、いくら関係構築を進めても、最終判断を下せる人物に自社の価値が伝わりません。担当者が好意的でも、上申した際に決裁者から却下されるケースは珍しくありません。

例えば、システム開発会社が現場の担当者と半年間にわたって要件定義を進め、完璧な提案書を作成したものの、経営会議で役員から「費用対効果が不明確」と却下されるケースがあります。担当者の関心事と決裁者の判断基準が異なっていたことが原因です。

特に高額な商材や全社導入を伴うプロジェクトでは、担当者が機能の充実度を重視していても、決裁者は投資対効果やリスクを重視していることが多いです。決裁ルートを早期に把握し、キーパーソンへのアプローチ方法を戦略的に考えることが失注を防ぐ鍵となります。

ニーズを特定できない

顧客のニーズが曖昧なまま提案すると、的外れな内容になり、相手の関心を引けません。何となく便利そうという程度の認識では、導入を推進する強い動機が生まれず、検討が停滞しがちです。

例えば、クラウドサービスの営業で業務効率化に興味がありますという顧客に対して、機能一覧を並べた提案をしても響きません。具体的にどの業務にどのくらい時間がかかっていて、それをどこまで削減したいのかが不明確では、導入の必然性を示せないからです。

顧客が解決したい課題と、それによって得られる具体的なメリットを明確にできなければ、価格だけで比較されてしまいます。ニーズが曖昧な場合は、提案を急がず、ヒアリングを深めることを優先しましょう。

導入時期が決まらない

導入時期が未定の案件は、検討の優先度が低く、商談が長期化しやすい傾向があります。いずれ検討するという状態が続き、何度フォローしても進展しないケースです。

例えば、人材派遣会社が半年間フォローし続けた案件で、毎回「まだ検討中です」という回答しか得られず、結局その間に担当者が異動して振り出しに戻るということがあります。営業担当者はパイプラインに案件を抱え続けることになり、正確な売上予測も困難になります。

具体的なきっかけや期限がない案件は、条件が揃うまで深追いしないという判断も必要です。「○○というイベントがあれば検討が本格化しますか」と確認し、そのタイミングでフォローを再開する計画を立てましょう。

BANT営業を組織に定着させる方法

BANTのフレームワークを導入しても、現場で活用されなければ意味がありません。組織として定着させるには、仕組みとルールの整備が不可欠です。SFAやCRMの設定を見直し、入力のハードルを下げるとともに、確度判定の基準を明文化してチーム全体で共有します。

例えば、BANT導入後3ヶ月で売上予測の誤差が月間20%から5%に改善するといったことも可能です。定着には時間がかかりますが、継続的な取り組みが成果につながります。

SFA/CRMに設定する

BANTの4項目をSFAやCRMの入力フィールドとして設定し、商談レコードに紐づけます。自由記述欄ではなく、選択式のフィールドを用意することで、入力の手間を減らしつつ、データの一貫性を保てます。

例えば、予算の項目であれば、確保済み・検討中・未確認・予算なしという4つの選択肢を用意します。決裁権は決裁者と接点あり・担当者のみ・未確認、導入時期は3ヶ月以内・半年以内・1年以内・未定といった形です。

入力率や更新頻度をダッシュボードで可視化し、マネージャーが定期的に確認する体制を作ることが重要です。なぜ入力するのかという目的が明確になれば、現場の入力率も向上します。入力が習慣化されれば、蓄積されたデータを分析して受注率の高いBANTパターンを特定するなど、さらなる活用が可能になります。

確度判定基準を統一する

BANT条件の揃い具合に応じて、案件の確度ランクを定義します。全員が同じ尺度で案件を評価できるようにすることで、パイプライン全体の健全性を正しく把握できるようになります。

ランク条件対応方針
A4項目すべて確認済み積極的にクロージングへ
B3項目確認済み不足項目を早急に確認
C2項目確認済み定期フォローを継続
D1項目以下長期フォロー案件として管理

この基準は営業会議や1on1の場で繰り返し確認し、判断に迷うケースはチームで議論して目線を合わせます。この案件はBランクだと思うが決裁ルートが複雑なのでCランクとして慎重に進めたいといった議論を重ねることで、組織全体の判断力が向上します。


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インサイドセールスと連携する

インサイドセールス部門がリードの初期対応を行う場合、BANT項目の一部をインサイドセールスが確認し、条件が揃ったリードをフィールドセールスに引き渡すフローが効果的です。

例えば、インサイドセールスが予算感と導入時期を確認し、予算100万円以上かつ導入時期6ヶ月以内の条件を満たしたリードのみをフィールドセールスにパスするルールを設けます。引き渡し時には、確認済みのBANT情報をSFAに記録し、フィールドセールスが商談でスムーズに活用できるようにします。

部門間で役割を分担することで、営業プロセス全体の効率が向上します。引き渡し基準を明確にすることで、質の低いリードばかり渡される、せっかく渡したのにフォローされないといった部門間の摩擦も解消できます。

BANT収集後のネクストステップ

BANT情報の収集はゴールではなく、受注に向けた営業プロセスのスタートラインです。収集した情報を活かして、顧客に響く提案資料を作成し、商談を確実に前進させるアクションにつなげます。具体的なネクストステップは以下の3つです。

  • 提案書・見積書を作成する
  • 商談スケジュールを設計する
  • PDCAで継続的に改善する

提案書・見積書を作成する

収集したBANT情報をもとに、顧客の状況に最適化した提案書と見積書を作成します。汎用的なテンプレートではなく、顧客固有の課題と解決策を盛り込んだ資料にすることで、自分たちのために作られた提案という印象を与えられます。

予算感に合わせた価格プランの提示、決裁者が重視するポイントの強調、顧客ニーズに対応した機能やサービスの訴求、導入時期から逆算したスケジュール提案など、各BANT項目を反映させます。例えば、決裁者がコスト削減を重視しているなら、導入後3年間で約1500万円のコスト削減効果が見込めるといった具体的な数値を前面に出します。

決裁者が社内説明に使いやすい構成を意識することも重要です。担当者が上申する際にそのまま資料として使える内容になっていれば、社内での検討がスムーズに進みます。

商談スケジュールを設計する

導入時期から逆算して、提案・デモ・トライアル・契約・導入支援といった各フェーズのスケジュールを設計します。顧客の社内稟議に要する期間や、繁忙期などの制約も考慮に入れます。

例えば、来年4月に導入したい顧客であれば、1月中に最終提案と契約締結、2月に導入準備とデータ移行、3月にスタッフ研修とテスト運用、4月に本番稼働というスケジュールを提案します。稟議に2週間かかるなら、1月中旬までに見積書を提出する必要があることも明示します。

スケジュールを顧客と合意しておくことで、次に何をすべきかが明確になり、商談の停滞を防げます。特に決裁者へのプレゼンテーションの場は、できるだけ早い段階で日程を確保することが重要です。

PDCAで継続的に改善する

BANT活用の効果を測定し、改善を繰り返すことで営業プロセスの精度を高めていきます。受注案件と失注案件のBANTパターンを分析し、どの条件が揃っていると受注しやすいか、どの段階で失注が多いかといった傾向を把握します。

例えば、過去1年間のデータを分析した結果、予算と時期が確定している案件の受注率は80%だが、ニーズが曖昧な案件は30%に留まるという傾向がわかれば、ニーズの深掘りを強化するという改善策が導き出せます。

営業会議で定期的にBANTデータをレビューし、成功事例や改善点をチームで共有する習慣をつけることが、組織全体のスキル向上に効果的です。この案件はなぜ受注できたのか、失注した案件の共通点は何かを振り返ることで、ヒアリングの質問項目や確度判定基準をより実態に即した形にアップデートできます。

BANT以外の営業フレームワーク

BANTは汎用性の高いフレームワークですが、商品や業界によっては他の手法が適している場合もあります。代表的なフレームワークは以下のとおりです。

  • BANTC・BANTCH
  • SPIN
  • MEDDIC

BANTC・BANTCHとの違い

BANTCは、BANTにCompetitor(競合)を加えた5項目のフレームワークです。競合他社の検討状況を把握することで、差別化ポイントを明確にした提案が可能になります。BANTCHはさらにHuman Relations(人間関係・組織力学)を追加した6項目で構成されます。

BANTはシンプルで導入しやすく標準的なBtoB営業全般に適しています。BANTCは競合との差別化を意識する必要がある競争の激しい市場に向いています。BANTCHは組織内の力学を把握する必要がある大企業向けの大型案件に効果的です。

基本のBANTで運用を始め、必要に応じて項目を追加していくアプローチが現実的です。例えば、広告業界のように競合コンペが常態化している市場であればBANTCを、官公庁や大企業向けの数千万円規模の案件であればBANTCHを検討するとよいでしょう。

SPIN・MEDDICとの使い分け

SPINとMEDDICは、BANTとは異なる切り口で商談を整理するフレームワークです。商品の特性や案件の規模・複雑さに応じて使い分けることで、より効果的な営業活動が可能になります。

フレームワーク構成要素適した場面
BANT予算・決裁権・ニーズ・時期標準的なBtoB営業、案件の優先順位付け
SPIN状況・問題・示唆・解決価値ソリューション営業、課題発掘フェーズ
MEDDIC成果指標・経済的決裁者・意思決定基準など6項目数千万円以上の複雑な大型案件

例えば、数十万円から数百万円の標準的な商談はBANTをメインに使用し、顧客の課題が曖昧な場合はSPINでニーズを深掘りします。数千万円以上の大型案件であればMEDDICで精緻に管理するという使い分けが効果的です。

BANT営業の注意点

BANTは優れたフレームワークですが、万能ではありません。機械的に適用するだけでは、期待した効果を得られないケースもあります。BANT営業を実践する際に押さえておくべき注意点は以下の4つです。

  • 日本企業の決裁文化を考慮する
  • 直接ヒアリングで情報を得る
  • BANTに頼りすぎないようにする
  • 収集状況を定期的にモニタリングする

日本企業の決裁文化を考慮する

日本企業の多くは稟議制度を採用しており、単一の決裁権者ではなく、複数の承認者による合意形成が一般的です。そのため、決裁権者は誰かという質問に対して、明確な回答が得られないことも珍しくありません。

例えば、大手製造業では課長、部長、本部長、役員という4段階の承認が必要で、それぞれが異なる観点で評価することがあります。現場担当者に好感を持ってもらえても、経営層の判断で覆されるケースは少なくありません。

Authority(決裁権)の項目を決裁者ではなく決裁プロセスとして捉え直すことが有効です。誰が決めるかだけでなく、どのような流れで決まるか、どの部署が影響力を持っているか、反対しそうな人物はいるかといった組織力学を多角的に把握しましょう。

直接ヒアリングで情報を得る

BANT情報は、可能な限り顧客との直接対話を通じて収集することが望ましいです。ウェブサイトの情報や第三者からの伝聞だけでは、正確性に欠ける場合があります。特に予算や導入時期は、検討状況の進展に応じて変化するため、定期的なアップデートが必要です。

最も信頼性が高いのは決裁者からの直接ヒアリング、次いで担当者からの直接ヒアリング、その次が顧客の公開情報、最も信頼性が低いのは第三者からの伝聞や推測です。例えば、IR資料で今期のIT投資は前年比20%増と発表されていても、自社案件への予算配分は別の話です。

顧客との商談やフォローアップの電話・メールを通じて、最新の状況を確認する習慣をつけましょう。「前回お伺いした予算感に変化はありますか」と定期的に確認することで、常に正確な情報をもとに商談を進められます。

BANTに頼りすぎないようにする

BANTはあくまで案件評価の一つの指標であり、すべてを判断できるわけではありません。4条件が揃っていても、競合との関係性や顧客の組織文化など、定性的な要素が受注を左右することがあります。

例えば、BANT条件は完璧に揃っているのに、競合が長年の取引先で強い信頼関係を築いているために負けるケースや、顧客の組織文化が保守的で新しいベンダーを受け入れにくいケースがあります。また、BANT条件が揃っていない初期段階の案件をすべて切り捨てると、将来の有望顧客を逃す可能性もあります。

長期的な関係構築が重要な顧客や、新規開拓フェーズの案件には、BANTとは別の育成アプローチも並行して取り入れましょう。今すぐ受注できるかだけでなく、将来的に大きな取引につながるかという視点も忘れずに持っておくことが大切です。

収集状況を定期的にモニタリングする

BANT情報の収集・入力が形骸化しないよう、マネージャーは定期的に運用状況をモニタリングします。SFAのダッシュボードで入力率や更新頻度を確認し、入力が滞っている担当者には個別にフォローを行います。

確認すべき項目としては以下のようなものがあります。

  • BANT項目がどの程度入力されているかという入力率
  • 情報が定期的にアップデートされているかという更新頻度
  • ランク付けが適切に行われているかという確度判定の妥当性
  • 担当者によって入力精度に差がないかというチーム間のばらつき

週次や月次の営業会議でBANTデータをレビューし、確度判定の妥当性をチームで検証する機会を設けましょう。運用の質を維持することで、蓄積されたデータの信頼性が高まり、分析や予測の精度向上につながります。

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よくあるご質問(FAQ)

Q1. 「決裁者は誰ですか?」と聞くと失礼になりませんか?

A. 「検討の進め方を確認する」というスタンスで聞きましょう。 「あなたには権限がない」と捉えられないよう、「スムーズに稟議を通すために、どなたの承認が必要か教えていただけますか?」と、相手の味方としてサポートする姿勢を見せるのがコツです。

Q2. 初回商談で4項目すべて聞くべきですか?

A. 無理にすべて埋める必要はありません。 関係性ができていない段階で深掘りしすぎると警戒されます。まずはNeeds(課題)を深く聞き、信頼を得た上で、次回の商談までにAuthority(決裁ルート)やTimeframe(時期)を確認していくステップで十分です。

Q3. 予算が「ない」と言われたら、その案件は捨てるべき?

A. 「中長期フォロー」に切り替えましょう。 今すぐの予算はなくても、ニーズがあれば次期の予算取りを提案できます。BANTが揃わない案件は「今すぐ客」ではないだけで、将来の優良顧客(ナーチャリング対象)として管理を続けることが重要です。

Q4. 日本企業における「Authority」の注意点は?

A. 「担当者=決裁者」ではないケースがほとんどです。 日本は合議制(稟議)が多いため、「誰か一人」を見つけるよりも「どの部署の、誰の判子が必要か」というフロー図(DMUマップ)を把握する意識を持ちましょう。

Q5. SFA(Salesforce等)への入力項目はどう設定すべき?

A. 「選択肢形式」で必須項目にしましょう。 自由記述だと分析が難しいため、「予算:確定・検討中・未確認」などのプルダウン形式に設定します。これにより、マネージャーはダッシュボードで一目でチームの案件状況を把握できるようになります。

まとめ

BANTは、予算・決裁権・ニーズ・導入時期の4項目で案件の受注確度を判断するフレームワークです。1960年代にIBM社が開発して以来、BtoB営業の現場で広く活用されてきました。

BANT営業を導入することで、案件の優先順位付けが明確になり、チームでの情報共有が促進され、成約率の向上と営業活動の効率化を同時に実現できます。組織への定着には、SFA/CRMへの項目設定、確度判定基準の統一、インサイドセールスとの連携フロー構築が欠かせません。

ただし、日本特有の稟議文化への配慮や、フレームワークへの過度な依存を避ける柔軟性も必要です。本記事の内容を参考に、まずは自社のSFAにBANT項目を設定するところから始めてみてください。

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