目次
文鎮型組織とは
文鎮型組織とは、経営者を組織のトップに位置付け、他の従業員はほぼ同じ立場に置く組織形態です。
組織図で表すと、横長の組織図において経営者だけが突出しているため、文鎮の形状に似ていることからこのように呼ばれます。傾向として、従業員数が100人以下の規模があまり大きくない中小企業がこのような組織形態を採用することが多いです。
また、このような企業において、ピラミッド型組織として組織化できていない中途半端な組織形態を指している場合もあります。本記事では、文鎮型組織の基本構造からメリット・デメリットについて解説します。隠れ文鎮型組織からピラミッド型組織への脱出方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
文鎮型組織(フラット型組織)の基本構造
文鎮型組織(フラット型組織)は、従業員間における意思決定が上から下へと順次伝達される階層構造をよりシンプルにした組織形態です。
この形態では、上司と部下の距離が比較的近く、社員同士で意見交換が自由に行われます。これにより、チームで協力し合いながら、会社の目標達成に向けて仕事を進めることが可能となります。また、社員一人ひとりが業務に対して責任を持ち、自らの判断で行動するため、それぞれに高い自己管理能力が必要とされます。
このような環境では、社員の自主性や主体性、創造性が育まれ、会社全体として柔軟性や効率性を向上させることができ、結果的に生産性向上につながります。
文鎮型組織の運用方法
文鎮型組織では、意思決定の権限が一般社員に分散されるため、社員一人ひとりの業務に対する責任感と自己管理能力を育成することが重要となります。
もしかすると、多くの社員に意思決定権が与えられている会社は、社員間で協働する機会が少なく、基本的に自分一人の力で業務を遂行するイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかしながら、この組織形態では、積極的に社員間でコミュニケーションを取り、お互いの弱点を補うための協力関係を構築することが不可欠です。
このような職場環境は、チームとして成果や業績を上げようとするモチベーションの向上につながります。
文鎮型組織以外の組織の形
文鎮型組織以外にも、さまざまな組織形態が存在します。ここでは、4つの代表的な組織形態を説明します。
階層型組織(ピラミッド型)
階層型組織(ピラミッド型)は、社員の役割や立場が、明確に階層化された構造を持つ組織です。指揮命令や業務情報は上から下へと伝達され、各階層で意思決定が行われます。また、社員は指示を受け、上司や管理者に業務報告を行います。この組織形態は、大規模で複雑な業務プロセスを持つ組織で採用される傾向にあります。
マトリックス型組織
マトリックス組織は、機能別部門とプロジェクト別チームなど、複数の組織構造が重なり合った形態を持ちます。社員は複数のチームに所属し、プロジェクトごとに異なるチームで作業を行うことがあります。この組織形態は、柔軟性と専門性を両立させる業務が求められる場合に適しています。
機能別組織
機能別組織は、組織を機能ごとに分割し、各機能ごとに専門化されたチームや部門を持つ形態です。たとえば、営業部門、マーケティング部門、人事部門などが挙げられます。この組織形態は、各機能が独立して効率的に作業を行うことが可能です。
プロジェクト型組織
プロジェクト型組織は、プロジェクトごとにチームが編成され、プロジェクトの目標達成に向けて作業を行う形態です。プロジェクトが完了すると、チームは解散されることがあります。この組織形態は、特定の目標達成に向けた短期的な作業に適していると言えるでしょう。
文鎮型組織のメリット
まずは、文鎮型組織のメリットを3つ説明します。
- 意思決定が早い
- 上下関係に縛られない
- 頑張った社員を表彰できる
意思決定が早い
文鎮型組織のメリット1つ目は、意思決定が早いことです。
文鎮型組織では、従業員の間に階層が少ないか、ほとんど存在しないため、意思決定が上層部から下層部へと伝達される段階が少なく、意思決定プロセスが簡素化されます。ま
た、上司と部下が気軽にコミュニケーションを取れる職場環境では、意思決定に必要な意見や情報が会社全体で迅速に共有されることが可能となります。結果として、重要な問題や機会に対して素早く対応することができ、市場の変化にスピーディーに対応する柔軟性が得られます。
上下関係に縛られない
文鎮型組織のメリット2つ目は、上下関係に縛られないことです。
職場において、従業員同士や部門間で上下関係を気にせず、コミュニケーションを取れることで、会社全体で自由な意見交換が促進され、リアルタイムで課題の解決策が生まれやすくなります。
さらに、上下関係が無いことで、リーダーシップが階層によって制限されることがなく、従業員が自らリーダーシップを発揮する機会が与えられます。このような環境では、従業員が自らの能力やパフォーマンスを最大限に発揮し、組織全体の成功に貢献することができます。
頑張った社員を表彰できる
文鎮型組織のメリット3つ目は、頑張った社員を表彰できることです。
上司が直接社員とコミュニケーションを取りやすい環境では、上司は従業員それぞれの成果をリアルタイムで見ることができ、頑張った社員の努力や成果が直ちに認識されやすいです。
さらに、意思決定の透明性が高いため、従業員同士や上司から従業員への評価基準や報酬の公平性が保たれやすくなります。その結果、頑張った社員が公平に評価されるシステムが整い、社員間で優秀な成果を残そうとするモチベーションが高まるでしょう。
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文鎮型組織のデメリット
次に、文鎮型組織のデメリットを3つ紹介します。
- マネジメント層の育成が難しい
- 従業員の負担の増加
- トップの意思決定が従業員の働きやすさに影響を与える
マネジメント層の育成が難しい
文鎮型組織のデメリット1つ目は、マネジメント層の育成が難しいことです。
階層構造がほとんど存在しない文鎮型組織では、明確なキャリアパスが欠如していることがあります。従業員が昇進してマネジメント層に進む機会が少ないと、業務に対するモチベーションの維持が難しくなります。
さらに、マネジメント層が限られている場合、マネージャーになることを志す部下が目指すべきモデルとなる人材が不足してしまうリスクがあります。その結果、従業員に対する適切な指導やフィードバックが減り、マネージャになるために必要なマネジメントスキルを習得する機会が限られてしまうことが懸念されます。
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従業員の負担の増加
文鎮型組織のデメリット2つ目は、従業員の負担の増加です。
文鎮型組織では、従業員が担当する範囲が広く、複数の役割や責任を兼任することがあります。そのため、各従業員は常にいくつかの業務やプロジェクトを同時に進行させる必要が出てきます。
また、複数の業務やプロジェクトを同時に進める場合、限られた時間の中でリソースを効率的に管理することが求められ、タスクの優先順位やスケジュールを決めるることが難しくなります。
その多忙すぎる結果、残業時間の増加により従業員のワークライフバランスが崩れてしまう恐れがあり、長時間労働による負担・ストレスが増えることが予想されます。
トップの意思決定が従業員の働きやすさに影響を与える
文鎮型組織のデメリット3つ目は、トップの意思決定が従業員の働きやすさに影響を与えることです。
文鎮型組織では、一般従業員に広い責任範囲が与えられる一方で、経営トップの意思決定が会社全体に速やかに反映されます。そのトップの意思決定が現場で働く従業員にとって腑に落ちなかった場合、従業員が急な業務体制や業務プロセスの変化に苦戦することが考えられます。
その結果、職場の満足度や働きやすさに悪影響を及ぼし、組織全体の生産性が低下してしまうリスクがあります。
日本企業に文鎮型組織が増えた背景
ここでは、日本企業に文鎮型組織が増えた背景を3つ解説します。
- 市場環境の変化と組織適応
- イノベーションへのニーズ増加
- 労働力の多様化と組織への影響
市場環境の変化と組織適応
日本企業に文鎮型組織が増えた背景の1つ目として、市場環境の変化と組織適応が挙げられます。
近年、日本企業が活動する市場において、デジタル技術の重要性が上がり、市場がますます複雑化する中、グローバル競争が激化してきています。このような環境下では、迅速かつ柔軟に対応できる経営体制が必要とされます。従来のヒエラルキー型組織では、なかなか新しいアイデアが生まれず、市場の変化に適応するまでに時間がかかってしまう傾向があります。
一方、文鎮型組織は階層が少なく、従業員が自らのアイデアを積極的に提案しやすいため、提案されたアイデアの中から最適なアイデアを素早く採用することで、柔軟かつ迅速に市場変化に適応することが可能となります。
イノベーションへのニーズ増加
日本企業に文鎮型組織が増えた背景の2つ目として、イノベーションへのニーズ増加が挙げられます。
インターネットの普及によるグローバル化が進んだことで、日本企業は海外企業との厳しい市場競争に直面しています。さらに、顧客のニーズが多様化し、個別化される中、企業は顧客の期待に応えるために新しい価値を生み出し続け、提供する必要があります。このような近年急激に変化してきた市場において、常に新しい事業や商品、ビジネスモデルの開発が求められ、従来のやり方ではなかなか競争力を維持することが難しくなっています。
文鎮型組織では、柔軟な意思決定やイノベーションの促進が容易であり、新しいアイデアやプロジェクトを積極的に生み出すことができます。
労働力の多様化と組織への影響
日本企業に文鎮型組織が増えた背景の3つ目として、労働力の多様化と組織への影響が挙げられます。
性別、年齢、スキル、価値観などにおける労働力の多様化により、従業員の働き方に対するニーズは多岐にわたっています。具体的には、フレックスタイムやリモートワーク、フリーランスなど、柔軟な働き方を求める声が増えています。
文鎮型組織では、従業員が自らの働き方を選択しやすい環境が整っており、多様な働き方の需要に対応しやすい特徴があります。さらに、このような包括的な職場環境を提供することにより、異なる背景や経験を持つ従業員が協力して仕事を進めることで、より創造的なアイデアや解決策が生まれ、組織全体の生産性が向上することが期待されます。
「隠れ文鎮型組織」の危険性
一見、隠れ文鎮型組織の特徴として、組織図上では階層的なピラミッド型組織に見えることが挙げられます。しかしながら、実際には組織図上のピラミッドを無視して、トップの経営者が中心に意思決定や組織運営を行い、従業員が自律性や意思決定の権限をほとんど持たない状態にあります。
ここでは、文鎮型組織の危険性を2つ説明します。
会社の将来を担う人材が育たない
「隠れ文鎮型組織」の危険性1つ目は、会社の将来を担う人材が育たないことです。
経営者がほとんどの意思決定や組織運営の役割を担ってしまうことで、一般従業員は自らの考えや判断で行動できず、経営者からの指揮命令に従うことしかできない「指示待ち社員」になってしまうことが危惧されます。
さらに、そのような職場環境では、上司の持っている技術や経験を部下に引き継ごうとする意識が低下し、育成機会も減ってしまうでしょう。その結果、将来的に会社の中核になるような優秀な人材を育成することが困難になります。
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業績が経営者の手腕頼みになる
「隠れ文鎮型組織」の危険性2つ目は、業績が経営者の手腕頼みになることです。
経営者自身が企業の全ての意思決定を行う隠れ文鎮型組織において、経営者が市場や組織にとって不適切な判断を下した場合、直接的に企業業績に悪影響を及ぼします。これは、「経営者としての限界=企業の限界」を意味しています。
また、長期的には、会社規模が大きくなるにつれて、いずれ経営者一人で判断できる数に限界が来ることで、他社員に意思決定を任せるようになるでしょう。急な部下への意思決定責任の一任によって、現場は混乱し、業績悪化につながることが予想されます。
隠れ文鎮型組織になってしまう理由とは
隠れ文鎮型組織になってしまう理由は、主に経営者本人にあります。
例えば、「創業して間もない時期」「優秀な剛腕経営者がいる」などに当てはまる会社では、一般社員に任せるよりも経営者自身が業務をした方が効率よく短時間で終わらせられるといった理由から、経営者が従業員の仕事を奪ってしまうことがよくあります。
そのため、中長期視点で見ると、深刻な問題が多く発生するものの、短期的に見ると、会社の生産性が向上することが、隠れ文鎮型組織の罠にハマりやすい原因と考えられます。
隠れ文鎮型組織を脱出するには?
先代から社長を引き継いだ2代目社長が、先代の経営スタイルの改革に乗り出すことで隠れ文鎮型組織から脱出しようとする企業も増えてきました。
経営者の世代交代により経営者と従業員の距離が縮まることを上手く利用することで、それまでは変えることが難しかった企業の経営体制・社風を再構築し、従業員が自主的に動ける仕組みを取り入れることが可能となります。
このような従業員中心の会社への転換を実現するためには、従業員が自ら考え行動できる機会を提供する必要があります。ここでは、従業員の主体性を促進できる取り組みを紹介します。
- プロジェクトベースの働き方の導入
- 定期的な1on1面談の導入
プロジェクトベースの働き方の導入
プロジェクトベースの働き方を導入することで、各チームメンバーが自ら計画・実行し、協力しながら成果達成を追求するようになるでしょう。
例えば、ソフトウェア開発部門において、「新しいモバイルアプリの開発」のプロジェクトを立ち上げたとします。この場合、プロジェクトマネージャー、デザイナー、フロントエンド開発者、バックエンド開発者、などの役割が分担され、各メンバーに責任が与えられます。
自身の役割や責任が明確になることにより、自主的に計画・実行するなど自己管理能力を高めることができます。
定期的な1on1面談の導入
定期的な1on1面談を通じた各従業員へのフィードバックの提供も、彼らの自主性を高めるための有効策と言えるでしょう。
直属の上司からの定期的なフィードバックは、従業員が自身の強みや改善点を認識し、自分自身を見つめ直す機会を提供します。自己理解が深まると、自身の行動や選択に自信がつき、上司からの指示に頼らずに自ら進んで行動する自主性が育まれます。
1on1面談とは
1on1面談とは週に1回30分や、隔週に1回30分といった短いサイクルでリーダーとメンバーが定期的に1対1で話すことです。1on1は、定期的に部下の業務での悩みを聞き出し、それに対してアドバイスやフィードバックを行うことで、効果的かつ効率的に人材育成を行うことができます。
1on1面談は簡単に始められるという良さがあります。実施する際には、リーダーは何を話すべきか事前に決めておきましょう。また、メンバーには事前に聞きたいことを整理しておいてもらいましょう。この準備によって1on1ミーティングを有意義な時間にできます。
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文鎮型組織からピラミッド型組織へ組織改革をする方法
文鎮型組織から、より階層の多いピラミッド型組織への移行は、会社を拡大するにあたり必要不可欠です。では、どのように会社の階層を増やしていけば良いのでしょうか。
まず階層を増やすには、将来的に幹部を任せられる従業員の育成が必要となります。具体的には、部下の中から幹部になる適正がある人材を厳選し、幹部として必要なスキル・経験を積ませていくことが必要です。
例えば、「メンターシッププログラム」「プロジェクトリーダー」「外部研修」などの機会を幹部候補者に提供することが挙げられます。さらに、幹部となった従業員も、同じような機会を部下に与えていくとなお良いでしょう。このような連鎖を続けることで、より多くの従業員が幹部としての権限・責任を持つことに慣れ、将来的に持続可能なピラミッド型組織へとなっていくでしょう。
まとめ
文鎮型組織には、「迅速な意思決定」や「フラットな上下関係」「頑張った社員を表彰できる」といったメリットがある一方、「マネジメント層の育成が難しい」「従業員の負担の増加」「トップの意思決定が働きやすさに影響を与える」などのデメリットも存在します。
これらのメリット・デメリットの両方を考慮した上で、デメリットの対策を策定することはもちろん、文鎮型組織からピラミッド型組織への組織改革を視野に入れることも重要です。
本記事が、少しでも自社にとって最適な組織形態の採用に役立てば幸いです。
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