【事例付】ジョブ型人事制度とは?メンバーシップ型との違いや、メリット・デメリット、導入方法を解説

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【事例付】ジョブ型人事制度とは?メンバーシップ型との違いや、メリット・デメリット、導入方法を解説

新型コロナウイルスの流行により、テレワークやフレックスタイム制といった働き方の多様化が急速に進みました。
その中で業務の振り分けやコミュニケーションに難しさを感じ、人事制度、ひいては雇用形態の改善を考えている企業も多いのではないでしょうか。

また、内閣府の規制改革推進会議は、2019年に「ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化に関する意見」を発表しました。
参考:内閣府 規制改革推進会議 議事次第 第45回規制改革推進会議 2. ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化に関する意見について(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/committee/20190520/190520honkaigi02.pdf

このような事実から、雇用制度に関する改革の動きは国レベルで促進されるべきとされるていることがうかがえます。

本記事では、その中で注目を集める「ジョブ型」について、その定義や注目の背景、メリット・デメリット、「メンバーシップ型」との違い、導入事例を解説していきます。

ジョブ型人事制度とは?

ジョブ型雇用人事制度とは?

ジョブ型人事制度とは、企業が求める職務に適した人材を採用する人事制度を指します。職務とは、担当する仕事や役割を意味します。

ジョブ型人事制度では、会社の中での仕事内容や責任範囲がそれぞれ定義され、その職務価値に応じて報酬が定められるため、仕事量や責任の大きさにより報酬が上下することが特徴です。

中途採用においてはすでに浸透している制度であり、企業の戦略や業務ニーズに合わせて、適切な人材を採用し、効果的な人材管理を行うための制度として活用されています。

ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度との違い

メンバーシップ型人事制度とは、日本型雇用システムという概念の一要素に含まれるものです。
この制度では、新卒の一括採用のようにまず採用し、採用後にさまざまな経験を積んでもらった後、それぞれのスキルや特性に合った部署に配属する形式をとります。

ジョブ型と違い、採用時に業務内容や責任範囲、勤務場所や労働時間などを事前に決定しないことが特徴です。メンバーシップ型は適材に適所を配置する形式ですが、ジョブ型は適所に適材を配置する形式と言えるでしょう。

ジョブ型人事制度が今注目されている背景

近年、次第に注目されつつあるジョブ型人事制度ですが、その注目の背景にはいったい何があるのでしょうか?本パートでは、ジョブ型人事制度が今注目されている背景について解説します。

終身雇用の崩壊

ジョブ型人事制度が今注目されている1つ目の背景として「終身雇用制度の崩壊」が挙げられます。

従来の日本では、終身雇用や年功序列が当たり前であり、1つの会社で長く働くことが一般的でした。

しかし、近年では2010年に制定された「女性活躍推進法」の影響もあり働き方の多様化が見られるようになりました。さらに、最近では転職が一般的になり、人材の流動が大きくなる中で定年まで勤める終身雇用のスタイルは当たり前ではなくなっています

そのため、メンバーシップ型の見直しや、高齢化による人材確保の困難化に合わせ、ジョブ型人事制度が注目されるようになってきているというわけです。

リモートワークの普及

ジョブ型人事制度が今注目されている2つ目の背景として「リモートワークの普及」が挙げられます。

コロナウイルスの影響でリモートワークが普及し、今では働き方の1つとして一般化しつつあります。

オンライン上でのやり取りが増えたことで、対面同様のコミュニケーションの量や質を保つことが難しくなり、勤務態度や業務進捗管理など、マネジメント面での困難が見えて来るようになりました。

勤務場所や勤務時間の制限が少なくなった今、メンバーシップ型人事制度を見直す動きが増え、個人の役割が明確であるジョブ型人事制度が注目を集めています。

国際競争力の強化に伴う専門職不足への対応

ジョブ型人事制度が今注目されている3つ目の背景として「国際競争力の強化に伴う専門職不足への対応」が挙げられます。

国際競争力の強化にもジョブ型人事制度が重要です。

現在の日本の国際競争力は低下しており、主な原因としてIT技術の発達に対する遅れや、国際的観点からみた各分野における専門性の劣りが挙げられます。
国際競争に対応できる、専門性の高い人材を獲得するにはジョブ型人事制度の導入を検討する必要があるでしょう。

現在、専門職の競争率は激しく、年々人材の確保が難しくなってきています。また、インターネットの普及により、世界中から優秀な人材を獲得できるようになった今、世界的な人材獲得競争に対応していくには、グローバルスタンダードであるジョブ型人事制度を考慮する必要があると言えるでしょう。このような背景から、ジョブ型人事制度は注目されていると言えます。

ジョブ型人事制度のメリット

前述したように、今日高い注目を集めているジョブ型人事制度ですが、実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか?本パートでは、ジョブ型人事制度のメリットについて解説します。

賃金の適正化ができる

ジョブ型人事制度の1つ目のメリットは「賃金の適正化ができる」ことです。

従来の日本の雇用制度では、在籍年数やポジションによりある程度決まった賃金を支払う必要がありました。
能力や業務成果に関係なく賃金が決定するため、賃金に見合わない人材にも割高な給与を支払わなければいけないという状況も少なくはありませんでした。

ジョブ型人事制度を導入することで、職務内容や責任範囲に応じた給料の支払いが可能になり、賃金の適正化を図ることができます。

組織の生産性を向上できる

ジョブ型人事制度の2つ目のメリットは「組織の生産性を向上できる」ことです。

ジョブ型人事制度では、募集の際に募集業務を定義する必要があるため、必要な時、必要な業務に対し必要な人材を得ることができます。
そのため、企業側は無駄な人材を削減することができ、また労働者側も自身の能力を活かせる業務を行うことができます。
即戦力の採用・専門性の向上・人件費の削減により、組織全体の生産性を向上させることが可能になります。

3. スキルや能力のある若手が活躍できる

ジョブ型人事制度の3つ目のメリットは「企業全体としてスキルや能力のある若手が無条件に活躍できる」ことです。

ジョブ型雇用では、担当する業務の難易度や成果によって給与や処遇が変わるため、年齢に関係なく高収入を得ることができます
これをモチベーションとして、若手であっても成果を評価されて重要な仕事につくことができるのです。

その結果、年齢にかかわらず評価されることから、ベテランも成果を出すことが最重要とされ、会社全体として成果を上げる、すなわち業績を伸ばすことができます。

ジョブ型人事制度のデメリット

日本国内で広く普及していないことからもわかるように、ジョブ型人事制度は(日本企業での)導入が困難であると言えるでしょう。

ジョブ型人事制度には大きなメリットがある分、いくつかのデメリットも存在するのです。本パートでは、ジョブ型人事制度のデメリットについて解説します。

従業員は自主的にスキルアップする必要があり、スキルや知識にムラが発生する

ジョブ型人事制度の1つ目のデメリットは「従業員は自主的にスキルアップする必要があり、スキルや知識にムラが発生する」ことです。

ジョブ型人事制度の場合、採用時点でそれぞれの業務が分かれているため、企業側からまとまった社内研修を提供することが難しく、スキルアップは従業員それぞれに委ねられてしまう傾向にあります。
そのため、従業員は自主的にスキルアップをする必要があります。また、まとまった研修が行えないことにより、スキル向上や知識量にムラが生じてしまう可能性もあります。

ジョブディスクリプション以外の業務を原則依頼できない

ジョブ型人事制度の2つ目のデメリットは「ジョブディスクリプション以外の業務を原則依頼できない」ことです。

ジョブ型人事制度では、ジョブディスクリプションにより職務や職務内容が定義されます。そのため、ジョブディスクリプションに記載されていない仕事はやらなくて良いというのが前提の考え方として存在します。
つまり、業務の状況によりジョブディスクリプションに記載のない業務が発生した場合、誰も対応しないということが起こりうる可能性が生じることになります。また、ジョブ型人事制度で雇用している場合に、他の部署で急な欠員が出た際、その部署にすぐに移動してもらうことができないなどの問題も出てくるでしょう。

関係性が弱体化する恐れがある

ジョブ型人事制度の3つ目のデメリットは「人材との関係性が失われる恐れがある」ことです。

従来のメンバーシップ型では、コミュニケーションや関係性を重視する傾向が強く、必然的にお互いを助け合う組織マネジメントが行われていました。

しかしジョブ型では、自身に定義された職務を遂行することを前提とし、自分の仕事は自分で行うことが求められます。
そのため、日本従来の助け合いや、組織としての結束力が失われる恐れがあり、また、組織と人材との関係性も弱体化する恐れがあります。

ジョブ型人事制度の導入パターン

ジョブ型人事制度の導入にはいくつかのパターンが存在します。一般的にジョブ型人事制度は導入が難しいと言われているため導入パターンも慎重に検討することが重要です。本パートでは、ジョブ型人事制度の導入パターンについて解説します。

一部職種に限定

ジョブ型人事制度の1つ目の導入パターンとして「一部職種に限定」して導入することが挙げられます。

現在一般的とされているのは、エンジニアなどの特定専門職などで導入されるパターンです。
また最近では、いきなり全社的にジョブ型を導入すると大きな混乱が生じる可能性があるため、まずは責任範囲や責任の大きさが比較的明確に定義できる管理職での導入を検討する企業なども見られます。

全面切り替え

ジョブ型人事制度の2つ目の導入パターンとして「全面切り替え」で導入することが挙げられます。

全面的な切り替えを行うのは外資系企業などでよく見られてきましたが、近年では、段階的に導入したのち、全面的にジョブ型人事制度に切り替える企業も出て来るようになりました。
もちろん、全面的な切り替えは、組織制度や体制を大きく変更する必要があり、大きな混乱を招きかねません。そのため、全面的に切り替えるとしても、時間をかけ慎重に行うことが重要です。

ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド

ジョブ型人事制度の3つ目の導入パターンとして「ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド」で導入することが挙げられます。

近年、特に日本で増えているのが、このハイブリッド導入と言えるでしょう。ハイブリッド型では、メンバーシップ型のメリットを残しつつ、終身雇用制度や年功序列による世界的競争力の低下を抑えるために、ジョブ型を取り入れるという手法です。

新卒一括採用を残したまま、ジョブ型人事制度を取り入れることで、ジョブ型のデメリットをカバーしつつ、年功よりも生産性を重視した雇用制度を実現できます。

ジョブ型人事制度を構築する流れ

ジョブ型人事制度を導入するには、きちんと段階と流れについて理解しておく必要があります。本パートでは、ジョブ型人事制度を構築する流れを解説します。

ジョブ型人事制度の適用範囲を検討する

ジョブ型人事制度を構築する際は、まず初めに適用範囲を検討しましょう。
ジョブ型人事制度をはじめから全社的に切り替えるのは大きなリスクを伴い、困難を極めます。
そのため、初めは責任範囲が明確な管理職のみに適用するなど、小さい範囲から切り替えていくことがいいでしょう。試験的に様子を見ながら導入することがおすすめです。

ジョブディスクリプションで、職務や職務内容を定義・記述する

適用範囲を決定した後は、ジョブディスクリプションで、職務や職務内容を定義・記述しましょう。

ジョブディスクリプションとは職務記述書であり、ジョブ型人事制度で用いられます。特定の職務や役割を定義する項目が記入された文書、あるいは記述を指します。

 主に記述されている項目として、 

  • 職務の目的や業務内容などの職務概要 
  • 責任範囲 ・必要なスキルや資格 
  • 労働時間や勤務地・報酬・福利厚生

等の労働条件などが挙げられます。

職務の定義の方法には、自分で職務を書き出す「記述法」、と人事担当者などが職務をヒアリングする「面接法」があります。
前者は、従業員自身が自分自身が担当している職務を自ら書き出す方法です。効率がいいというメリットがある反面、虚偽の報告などが起こりうるリスクもあります。
後者は、人事担当者などが対象の職務担当者に職務をヒアリングし書き出す方法です。面接法は、不正などを防げるというメリットがありますが、効率が悪く人事担当者の負担が増えてしまうというデメリットもあります。
自社の組織環境などを考慮して適した方法を選択するといいでしょう。

また、ジョブディスクリプションは簡潔に、かつ具体的に書くことが重要です。 社会情勢や環境の変化に合わせ、定期的にアップデートすることも大切でしょう。
しかし、ジョブディスクリプションを必ずしも導入しなければいけないわけではありません。あくまで手段の一つに過ぎないため、運用負荷が大きくなってしまう場合などは、ジョブディスクリプションを導入しなくても問題ありません。

記述した職務を評価し、価値を測定する

ジョブディスクリプションに職務定義を記入した後は、職務の評価を行い、価値を測定しましょう。

業務の評価には、評価者の感覚をもとに評価する「直感法」と、職務に対して構成要素を設定し、点数を付け職務価値をつけていく「要素比較法」があります。職務の構成要素の点数付けの例として、「クレーム対応 5点」などがあります。
前者は工数を大幅に削減できますが、評価者の感覚での評価になるため、評価対象者への説明や納得を得ることに苦戦する可能性があります。
後者は、工数がかかりますが、客観的な評価を行えることで、評価対象者への説明や納得を得られやすくなります。

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職務価値(ジョブサイズ)を等級に分ける

職務を評価し、価値の測定が完了した後は、職務を等級に分けましょう。

「等級」とは、職務価値(ジョブサイズ)を階層やレベルに分けるために使用される分類のことを指します。組織内で異なる職務の相対的な重要性や貢献度を区別するために、職務に応じて異なる等級が設定されます。
一般的に、高い等級に位置する職務は組織の中核的な役割を果たし、重要な意思決定を行い、広範な責任を担当する傾向にあります。一方で、低い等級に位置する職務は、より具体的でタスク指向の役割やサポート業務などを担当することが多いです。

この時の注意点として、等級の刻みが細かいと、後々柔軟な移動を行いにくくなり、また刻みが粗いとジョブ型人事制度としての意味が薄れてしまいます。そのため、異動などの可能性を考慮し、柔軟な対応ができるよう、自社の組織環境に合わせた等級を設定しましょう。

職務に対する報酬を設計する

等級に分けた後は、その等級に応じて報酬を設計しましょう。
報酬設計の注意点として、自社の報酬基準ではなく、市場で形成された相場に合わせることがジョブ型人事制度では重要です。人材獲得競争の優位に立つために、職種別・業務別の報酬相場を踏まえることは必要不可欠と言えるでしょう。

定期的にジョブディスクリプションのメンテナンスを行う

作成したジョブディスクリプションは、経営状況や社会情勢に合わせて、常にメンテナンス・アップデートすることが重要です。
また、組織は時間とともに成長し変化していきます。新しいプロジェクトや業務プロセスの改善、技術の進歩などの変化に伴い、職務の責任や任務も変化する場合があります。

ジョブディスクリプションの定期的なメンテナンスにより、職務の最新の要件や期待される業績基準を反映することができるでしょう。加えて、ジョブディスクリプションは、組織内での役割と責任を明確にするための指標となります。
メンテナンスを怠ると、職務の範囲や役割の重要性について混乱が生じる恐れがあるため、定期的なメンテナンスを行い、各職務の役割を常に明確にしましょう。

ジョブ型雇用人事制度の導入事例

以上のように、ジョブ型の概念的な面や他の雇用形態との違いを解説してきましたが、ジョブ型雇用は実際の企業にはどのように導入されているのでしょうか。ここでは3つに分けて解説していきます。

1. 株式会社日立製作所

株式会社日立製作所(以下:日立)は、国内で5位の家電シェアを誇り、グローバルに事業を展開している家電を主軸とするメーカーです。

日立では、2021年4月からジョブ型雇用を導入する方針を打ち出しました。

それ以前はメンバーシップ型を採用していた日立ですが、ホットなマーケットに近い点から2014年に本社機能をロンドンに移すなど、グローバル化が進んでいました。
その中で、地球規模で社員が行き来する時代になったことで、グローバルに統一された人事制度の必要性を感じ、数年前からジョブ型への移行の準備が進んでいたとのことです。

特に、中高年層の社員の給与が割に合わなくなることをメンバーシップ型の一番のネックになっていることから、役割や職責の大きさに応じてポストに対して給与を支払う「グローバルグレーディング制度」を導入し、その解決を図っています。

参考:対談「ジョブ型雇用」とこれからの人材マネジメントその1 「ジョブ型雇用」の定義 – Executive Foresight Online:日立( https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/17419376) 2021年1月4日

2. 富士通株式会社

富士通株式会社(以下:富士通)は、PCなどのハードウェア製品から、ソフトウェア、企業へのDX支援などテクノロジー系に幅広い事業領域を持つ企業です。

富士通では、2020年4月から幹部社員にジョブ型人事制度を導入し、2021年4月より全社的なジョブ型人事制度の導入を開始しています。

富士通においても日立と同様に、グローバル化から全社的に統一された基準による人事制度を用いることを目的に日本国内においてもジョブ型雇用が導入されています。

具体的には、定量的な規模の観点、レポートライン、難易度、影響力、専門性、多様性などの観点、職責の大きさ・重要性の観点から格付けされる「ジョブ」(職責)をFUJITSU Levelと呼び、そレに基づいて給与を支払うというシステムになっています。

参考:評価・処遇と職場環境整備:富士通( https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/employees/system/

3. 株式会社資生堂

株式会社資生堂(以下:資生堂)は、化粧品市場における国内No.1のシェアを持ち、海外にもその流通を広げる化粧品メーカーです。

資生堂では、「真の意味での適材適所」を勧めるために2015年から導入されていた役割等級制度を発展させる形で「ジョブグレード制度」の導入を進めています。

20以上のジョブファミリー(領域)と、それぞれのジョブディスクリプションを設計し、同じジョブファミリーの中で役割・グレードに応じて期待されるジョブを明確に定義しています。

2021年から国内の一般社員に対しても「ジョブグレード制度」が本格的に導入されており、2022年には国境を越えての異動やキャリアアップを効率的・効果的に実現するためにグローバルグレード制度の導入を行うとしています。

参考:統合レポート2020|資生堂グループ企業情報サイト(https://corp.shiseido.com/report/jp/2020/value/people/?tab=1

ジョブ型人事制度導入の注意点

前述したように、ジョブ型人事制度の導入には大きな困難が伴う恐れがあり、安易な導入は失敗を招きかねません。そのため、導入を検討する前に、いくつかの注意点を確認しておく必要があるでしょう。

本パートではジョブ型人事制度導入の注意点について解説します。

業務内容が変わる場合には再契約が必要

ジョブ型人事制度導入の1つ目の注意点は「業務内容が変わる場合には再契約が必要」ということです。

ジョブ型人事制度ではジョブディスクリプションをもとに契約を交わしているため、原則、業務内容を変更することはできません
業務内容を変更する場合は、対象の従業員との間で、あらためて契約を結び直す必要があります。この際、従業員の納得を得ることが最も重要です。

ジョブ型人事制度が向いている企業の特徴を知る

企業ジョブ型人事制度導入の2つ目の注意点は「ジョブ型人事制度が向いている企業の特徴を知る」ことです。

ジョブ型人事制度を無闇に導入すると、大きな困難を招きかねません。
まずは、自社にとってジョブ型人事制度は必要なのかどうかを確認しましょう。

 代表的な特徴として

  • 専門的な技術や知識が必要な業務が多い 
  • 業界変化があまり大きくない 
  • 業務のプロセスが明確で、1人作業が主 
  • 人材育成期間が短い

などが挙げられます。上記を踏まえながら、まずはジョブ型人事制度についてよく理解し、自社で運用するのに適しているのかどうかを検討することが重要です。

導入前に会社全体の周知と浸透に努める

企業ジョブ型人事制度導入の3つ目の注意点は「導入前に会社全体の周知と浸透に努める」ことです。

ジョブ型人事制度に切り替える際には、さまざまな混乱が生じかねません。そのため、切り替える際には、従業員全員に対して詳細な説明を行い、理解と納得を得ることが重要になります。
ジョブ型人事制度に切り替える目的や自社にとってのメリット、今までの体制とどう変わるのかなどを説明するようにしましょう。

また、切り替えにより給与が下がる従業員に関しては、丁寧なケアが必要です。スキルアップの意欲向上を促し納得を得ることが大切です。

離職を防ぐ必要がある

企業ジョブ型人事制度導入の4つ目の注意点は「離職を防ぐ必要がある」ことです。

ジョブ型人事制度では、より良いポジションを求めるため、転職をする従業員が増えるという特徴があります。
そのため、離職防止施策を行うことも重要になります。例えば、充実した福利厚生の完備や、従業員エンゲージメントの向上を促す工夫を行うなど、組織一体となり離職防止に取り組むといいでしょう。

まとめ

本記事では、ジョブ型雇用の定義や背景、メリット・デメリット、導入事例について解説してきました。

不確実性の高い時代と呼ばれる現代において、より効果的な雇用形態のために、本記事で紹介したジョブ型雇用を採用することも有効です。

しかし、会社経営の個別性の高さから、自社に合った人事制度を導入することが第一に優先されるべきです。

メンバーシップ型とジョブ型の2項のみで考えず、折衷型など自社に合った制度を検討してみてはいかがでしょうか。