インセンティブ制度とは
インセンティブには、行動のきっかけとなる「動機」、「刺激」といった意味があります。
つまり、インセンティブ制度は個人が残した成果に伴った報酬を与える評価制度なのです。
そして、インセンティブ制度で与えられる報酬は金銭的なものだけではありません。
一般的なインセンティブには以下の5種類があります。
インセンティブの種類
物質的インセンティブ
報酬を金銭やそれに代わるものとして与えることで社員のモチベーションを保つ
人的インセンティブ
上司や同僚といった周囲の人間の存在が原動力となり、モチベーションが上がる
評価的インセンティブ
社員の労働を表彰といった形で評価し、承認欲求にアプローチをかける
理念的インセンティブ
社員の持つ価値観に働きけることを目的とし、目的達成のモチベーションを高める
自己実現的インセンティブ
社員に大きな裁量権を与えたり、望む分野の業務に従事してもらい自己実現をかなえることで満足感を満たす
インセンティブと歩合・ボーナスの違い
歩合制度は成果に応じた報酬が与えられる制度です。
そういった意味では、インセンティブ制度は歩合制度の一部と考えられます。
歩合制度との一番の違いは、報酬が金銭的なものだけではなく、様々な形で与えられる点にあります。
一方、ボーナスとインセンティブにも大きな違いがあります。
インセンティブは個人の出来高や成果に応じて与えられるものですが、ボーナスは企業の業績に伴って支給されるものです。
つまり、個人の努力が報酬に直結するのがインセンティブ制度の特徴なのです。
インセンティブ制度の3つメリット
本パートでは、多くの企業で導入されているインセンティブ制度のメリットを3つ紹介します。
社員のモチベーションが高水準に維持できる
1つ目のメリットは社員のモチベーションを高水準に維持できる点です。
目標達成後の報酬を明確にすることで業務へのモチベーションが高まります。
目標を達成した先の報酬の有無は、社員のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
さらに先述のように、金銭的な報酬だけでなく、周囲からの評価や賞賛もインセンティブの一つです。
目標達成後の自身の状況を具体的にイメージさせることで大きな原動力にもなります。
成果に対する正当な評価が可能になる
2つ目のメリットは成果に対する正当な評価が可能になる点です。
インセンティブ制度における報酬は経験や役職にかかわらず与えられるものです。
達成した内容に応じた評価や報酬が得られるので個人の実績が直接的に評価の対象となります。
万人にインセンティブを獲得するチャンスがあるので、大きな評価を得るチャンスにもなります。
達成すべきことが明確になる
3つ目のメリットは達成すべきことが明確になる点です。
達成すべき事柄と報酬があらかじめ提示されているので、こなすべき業務が明確になります。
設定される報酬は業務の優先度や重要度によっても決まるため、自身のスキルと照らし合わせて業務を選択することができます。
さらに、業務の計画を立てる上でもインセンティブは一つの目安になります。
インセンティブ制度の3つのデメリット
メリットのあるインセンティブ制度ですがデメリットも存在します。
本パートではインセンティブ制度のデメリットを3つ紹介します。
社員のモチベーションが下がる可能性がある
1つ目は、社員のモチベーションが下がる可能性がある点です。
インセンティブ制度にはモチベーションを上げるメリットがある一方、下げるデメリットも内包しています。
インセンティブは成果に対しての報酬なので、成果を出すまでの過程には焦点が向きません。
社員の努力が成果につながらなかった場合、モチベーション低下の原因になる可能性があります。
その対策の一つとして、多くの社員が対象となるインセンティブを制度に組み込みましょう。
仕事における視野が狭くなる
2つ目は、仕事における視野が狭くなる点です。
インセンティブに目が眩んだ結果、インセンティブに関係のない業務に取り組まなくなる社員が生まれる恐れがあります。
インセンティブ制度において結果を出すことは重要ですが、インセンティブにとらわれて仕事全体が俯瞰できなくなってはいけません。
対策の一として、広い視野を持てるように、普段から周囲とのコミュニケーションを円滑なものにしておきましょう。
組織力の低下につながる
3つ目は、組織力の低下につながる点です。
インセンティブ制度の評価の対象は「個人の実績」です。
制度の性質上、個人主義に傾倒しがちなデメリットがあります。
個人として実績を残そうとするあまり、周囲の人を蹴落としたりする人が生まれ、チームワークに悪影響を及ぼす恐れがあります。
対策の一環として、お互いが切磋琢磨できる環境を作るためにチームで達成することによって与えられるインセンティブを制度に組み込むとよいでしょう。
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インセンティブ制度の導入手順
本パートではインセンティブ制度の導入手順を6つのステップで紹介します。
STEP1:インセンティブ制度導入の目的を明確にする
1つ目の手順は、インセンティブ制度導入の目的を明確にすることです。
インセンティブ制度導入の目的や、導入にあたっての目標を設けます。
また、インセンティブに対する達成度の指標を明確にすることで、社員のモチベーション向上への影響は大きくなります。
STEP2:社員へのヒアリングを行う
2つ目の手順は社員へのヒアリングを行うことです。
社員が求めるインセンティブを用意しましょう。
もし、社員が求めるインセンティブとのマッチングが取れないと、制度の効果は発揮されません。
また、金銭的なインセンティブだけでなく、様々な形のインセンティブを用意して与えられる制度にしましょう。
STEP3:設計可能なインセンティブの抽出
3つ目の手順は設計可能なインセンティブの抽出です。
会社が提供できるインセンティブを明確にします。
もし、社員が求めるインセンティブが明確になっても会社がそれに応えられなければ、制度そのものが成り立ちません。
そして、会社が提供できるインセンティブと社員が求めているものの差を確認することも重要です。
STEP4:インセンティブ制度の内容を決める
4つ目の手順はインセンティブ制度の内容を決めることです。
「会社が提供できるインセンティブ」と「社員が求めるインセンティブ」の整合をとって制度の詳細を決めます。
しかし、会社が達成したい目標をインセンティブに盛り込むことを忘れてはいけません。
インセンティブ制度は多くの要素を考慮しなければならないので最適解を導き出すのは難しいです。
会社が達成すべき事項の元、会社から提供できるインセンティブと社員が求めるものがともに実現できるようにしましょう。
STEP5:社員へ提示する
5つ目の手順は社員への提示です。
インセンティブ制度には先述したようにデメリットも内包するので社員へ十分な説明をして理解を得る必要があります。
メリットだけでなくデメリットも理解してもらうことで、制度の悪い側面を目立たせないように努めてもらいましょう。
STEP6:運用することで修正点を見つけ、改善する
最後となる6つ目の手順は運用する中で改善を重ねることです。
新制度の運用は、はじめからうまくいくものではありません。
運用していく中で「期待した成果は出ているか」、「制度の理解度は充分か」、ヒアリングなどを通して分析、修正して会社と社員にとって良い制度に改善を続けていきましょう。
インセンティブ制度の事例
実際にインセンティブ制度はどのように運用され、どのような効果を得ているのでしょうか。
本パートでは、インセンティブ制度の事例を2つに分けて紹介し、その具体的な制度の実態や効果について解説します。
メルカリ
株式会社メルカリでは社員同士でのインセンティブの授受が行えるピアボーナス制度を採用しています。
ピアボーナス制度とは、お互いに感謝や少額のチップを送り合うメルカリ独自の制度です。
送られたチップは蓄積され、1ポイント = 1円として給与と共に支払われます。
メルカリ社内で実施されたアンケートでは社内満足度87%と、多くの社員がこの制度に高い満足度を示しているそうです。
贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。 | mercan (メルカン)(https://mercan.mercari.com/articles/2017-10-24-151523/)2017年10月24日
オリエンタルランド
株式会社オリエンタルランドでは様々なキャストを対象とした表彰制度をインセンティブ制度として設けています。
その一つに「長時間勤務表彰 / サービス・アワードプログラム」があります。
付与条件が明確であり、努力次第で誰もが達成可能なので、社員のモチベーションを高く維持できるのです。
この表彰制度による成果の一つとして、新入社員の3年後定着率が常に90%を超え続けているといったことが挙げられます。
企業風土とES(従業員満足) | 従業員とのかかわり | CSR情報 | 株式会社オリエンタルランド(http://www.olc.co.jp/ja/csr/relation/recognition.html)20219月10日
まとめ
本記事ではインセンティブ制度のメリットとデメリット、導入手順と事例について紹介しました。
インセンティブには様々な種類があるので自社の風土に合った形での導入が可能です。
本記事を参考にインセンティブ制度の導入を検討してみてはいかがでしょう。
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