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S級産業医#2/小橋正樹産業医「会社を動かさないと産業医じゃない?! 」

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株式会社O:が主催する、S級産業医#2が6/13(水)19:00~赤坂見附のイベントスペースにて開催されました。※こちらは2019年のイベントレポートとなり、「S級マネジメント」メディア運営元でインターンをしている糸井が寄稿しました。

経営と健康をリンクさせるのが健康経営


「S級産業医」は毎回、第一線で活躍されている産業医の方をゲストに招き、ゲストの経験をもとに産業医の在り方や健康経営の進め方などについて話していただくイベントです。

会場となった部屋を埋め尽くすほどの参加者。定員30名でしたが、それを上回る方にお越しいただきました。

今回は産業医の実務寄りの内容だったためか、現役の産業医をやっている参加者が多かったようです。

O:代表取締役CEO谷本氏からメインサービスCo:TEAMについて、本イベントの司会である健康経営推進産業医会理事 鈴木健太先生経営推進産業医会についてイベント紹介がされた後、今回のイベントのメインとなる小橋先生の講演が始まりました。

「どうもこんばんは!小橋と申します!今スライドを作り終わりまして、もう一仕事終えたなー!という感じなんですけれども笑 45分間よろしくおねがいします!」

良く通る小橋先生の第一声。人当たりが良く、人を惹きつける魅力のある方だなという印象でした。

小橋先生は、産業医科大学卒業後、救急救命に従事。一度産業医科大学に戻った後、現在は建設業の統括産業医と複数の嘱託産業医を兼業されています。
その他にも、Facebookグループ「産業保健オンラインカフェ」の設立や、産業医スキルアップ研修「OHAS」実行委員など精力的に活動なさっています。

産業医未経験や経験が浅い産業医の方もいらっしゃったため、そもそも産業医とは何?というところから話がスタート。

産業医とは、労働安全衛生法という働く人々のための法律により専任が義務付けられているもので、専門的な立場から会社の健康経営をサポートするチームドクター。

「本人のサポートだけでなく、チーム全体が勝てるようにサポートするのが産業医」

とのこと。

具体的には面談やストレスチェック、健康診断結果のアドバイスなどを行うそうです。


そんな産業医に対するニーズは時代とともに多様化し、今後焦点が当たってくるのが「健康経営」。


健康経営とは、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること。

「健康経営の進め方というのは、まず会社として経営理念や方針があって。その次に組織体制を固めて。健康経営をやりますと大風呂敷を広げるだけでなく、やった結果どうだったのか、結果をもとにどう改善したらいいのかというPDCAにのっけてやっていくことです。」

そんなお話を図示したのがこちら。


①経営理念・方針に健康経営の考え方を組み込み、それをもとに②組織体制を整備。そこで初めて、③制度・施策実行、④評価・改善というPDCAサイクルを回すことになります。

また、具体的な進め方については亀田先生の「課題ごとに解決!健康経営マニュアル」がオススメとのこと。

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そして、健康経営を進める上で一番大事なのが、

経営と健康をリンクさせること。健康をひとりぼっちにしないこと。

組織体制や経営計画、会議体系、文書体系などに健康を組み込む必要があります。

ではなぜ経営と健康をリンクさせる必要があるのか?リンクさせていないとこんなことになるそうです。

(文書体系において経営と健康がリンクされていない会社にて)
産業医「就業制限ですね。」
従業員「何を根拠に言ってんの?」
産業医「厚生労働省のガイドラインです。」
従業員「ガイドラインって法的拘束力ないでしょ。うるせーよ。」
産業医「ぐぬぬ。(なにも言い返せない…)」

口調はともかく、本当にありそう…。
また、ルール作りをせず産業医が個人の能力で属人的な業務を行うと、産業医が交代した際に大きく産業衛生のレベルが変わってしまうことも。

しかしながら、疾病防止・健康増進といった派手で自由度の高い1次予防ばかりで、地味で法律での縛りが多いために自由度が低いものの、大事な早期発見・対策の2次予防や社会復帰・再発防止の3次予防がされていない、健康経営が存在しているのが現状だそう。

とはいえ、経営と健康がリンクした適切な産業衛生体制を作ることが大事でも、やるのは難しい…。というのが産業衛生に携わる方々の抱える思いなのではないでしょうか。

かく言う小橋先生も同じ思いを抱えていたそうです。

健康は手段。相手の価値観に沿ったアプローチを

1~2年目は、産業医とはいっても医療知識に詳しいただの新入社員と同じで、ビジネスマナーから、産業医の仕事をする上で必要な労働者や会社のことを勉強しながら試行錯誤の毎日だったそうです。

そんな日々から生まれた考えが、「健康は目的ではなく手段」であるということ。

「人間、健康が大事だと思って医療の世界に飛び込んでみたけれど、働く人たちは健康を第一に考えているわけじゃないんだな。みんなそれぞれ違う目的があるんだなと気づきました。

企業の目的は存続や発展で、健康のために営利企業をやっているわけじゃない。利益とかブランディングとか法令遵守とか、リスク回避とかが大事。
労働者に関しては、人によって人生観や健康観は全然違うので。短期短命がいいとか。

その価値観を尊重した上で、目的に沿うようなアプローチをすればいいんじゃないかと思い至りました。」

その具体的なアプローチの仕方を模索し始めたのが3年目以降でした。

3年目、小橋先生は建設業の統括産業医と複数社の嘱託産業医としての活動を始めました。
その活動をする中で浮かび上がってきた課題が、全社統一的な健康推進活動と活動の見える化の必要性でした。

そこからは、3年間をかけてこの課題解決に取り組まれました。

進め方は、言って以下のようなものです。
①やるべきことの優先順位付けと一緒に課題解決に取り組める人材の確保
②経営理念・方針、組織体制と連動した健康経営の年度計画策定
③施策を実施し、策定した評価基準をもとに評価、改善
④健康規定の作成

試行錯誤を繰り返しながら、ルール文書体系を作成・施行し、経営と健康がリンクした仕組みづくりを整えていきました。

また、会社を動かす産業医という点で面白いなと思ったのがこんな話。

「我々(産業医の考える)労働生産性の単位ってあくまでヒトなんですけれども、企業からすると「付加価値÷労働力」で、あくまで単位はカネなんですよ。そのため、言葉の整合性の部分で軋轢を生むことが多い。

そうなってくると、健康と生産性の因果関係はわからないけれども、経営する上ではヒトって大事だよ!そして人を支えている健康って大事だよ!(キラキラ)みたいに攻めるしかないのかなと。」

会社を動かす上では、自分と会社それぞれが持つ価値観の違いを認識し、相手の価値観に沿った説得が大事なのかもしれません。

良い産業医とは、○○

講演のあとは、鈴木先生も交えて参加者の方々からの質問に答えるパネルディスカッションが行われました。

多くの質問が寄せられましたが、その中から産業医向けと人事労務担当者向けのものをご紹介します。

人事労務担当者向けのQ&A「良い産業医とそうでない産業医の見分け方とは?」

鈴木先生の回答がこちら。

「頑張るという気持ちがあるかが線引きだと思います。

私が取り組んでいる健康経営推進産業医会では、知識が0でも頑張りたいという思いを持っている先生方に仲間になってもらっていて、そういった方は吸収して成長できます。

一方で、極端な例ですけど「私は健康診断をみない」といった決めつけがある方だとそれ以上の成長がありません。

企業からお金を頂いてコンサルティングしている立場ですので、あくまで我々はお客様のニーズに立たないといけない。ニーズを汲み取ってコミュニケーションを取ることが信頼を得る肝なのではないかと思います。」


また、小橋先生の回答がこちら。

「誠実に職務に取り組んでくれる先生がいいんじゃないかなと思います。

産業医の法令で「誠実に職務すること」とあります。内心、法律に書くほど誠実ではない先生がいるのか、という感じなんですけれども笑 とはいえやはりそれほど重要なことなので。

私は経営陣と話すのが得意な方ではなく、一例一例きちんとやって人事の方に信頼していただいて、その後経営層の信頼を得ていく方が得意なので、目の前のことをちゃんとやっていくことなのかなと思います。」


そして、会場で一番聞いてみたいという声の多かった産業医向けのQ&Aがこちら。

「あらかじめ就業規則で決まっているものを変えるのは難しいと考えています。例えば、一定の休職期間を終えても復職できなければ退職扱いになってしまうなど。

こういった就業規則で定められている内容を変更することはありますか?もし変更を提案する場合はどのように説得されますか?」


小橋先生からはこんな回答が。

「どんな制度を作っても悪用する人は必ず出てくると思います。そのミニマムな一人を消すために厳しくした方がいいのか、それとも組織全体のことを考えたら今の制度のままの方がいいのか。そのバランスをみて提案することが多いです。

その制度があることで、全社的に見てデメリットがメリットを上回る時は変え時なのかもしれませんねと提案します。

現行の就業規則では退職扱いになってしまうが、残ってほしい社員がいるんですという会社には、メンタル不調の平均的な休職期間がこれくらいですから、もう少し伸ばしてもいいんじゃないですか、と社労士に相談しながら提案したことがあります。」

かなり実務寄りの内容でしたが、現在実務に取り組んでいる方にとってはヒントになったのではないでしょうか。

最後には懇親会が行われ、参加者の方同士で大いに盛り上がり、小橋先生や鈴木先生に質問されている方も大勢いらっしゃいました。
そんな様子を見ながら、これを機に実践的な健康経営の取り組みがさらに広まっていくのではないか。そんな思いを抱きました。

そんな大好評のイベントS級産業医#3も開催予定です。
今回参加できなかった方も、是非ご参加ください!

こちらは今回ご登壇いただいた小橋先生のnoteです。よろしければ合わせてご覧ください。

また、エンゲージメント向上は離職率低下やパフォーマンス向上につながるというお話がありましたが、実はこれに作用する大きな要素がもう一つあります。

谷本がご紹介させていただいた、睡眠医学者志村哲祥氏の研究結果「生活習慣(特に睡眠と食事)」がパフォーマンスに大きく関わっている事実です。

学術的にも、休退職リスクを最も引き上げる要因となるのは睡眠習慣であり、

ライフスタイルに問題があるとパフォーマンスに強烈な悪影響を及ぼすということが証明されています。

(前夜の睡眠が6時間を下回ると14%作業スピードが遅延し、ミス確率は20%上昇する [Van Dongen et al. SLEEP, Vol. 26, No. 2, 2003. 117.]

しかし、個人の生活習慣にまで目を向けられていない企業様が多いのではないでしょうか。

そんな企業様にご紹介したいのが、「体調」や「モチベーション」「エンゲージメント」をカンタンに毎日取得して把握できるCo:TEAMです。

Co:TEAMは上記取得したデータを基にチーム間のコミュニケーションから「タイムリーなフィードバック」を増やし、「1on1」で困っているメンバーを支援しながら、最終的には「目標管理」「評価支援」機能が連携してエンゲージメントを育成するパフォーマンス・マネジメントプラットフォームです。

導入によりエンゲージメントが向上されることで、休退職リスクやメンタルリスクの低下、生産性の向上などが期待できます。

ご興味がございましたら、こちらをご覧ください。


<S級産業医#2 登壇者(敬称略)>

■小橋正樹

医師・産業医
日本産業衛生学会専門医
社会医学系専門医
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
メンタルヘルス法務主任者

2009年度 産業医科大学医学部医学科卒業
2010年度 福岡記念病院 初期研究医(2年間を通じ初期救急救命に従事)
2012年度 南部徳洲会病院 救急診療部(救急救命、内科外来、および病棟主治医に従事)
2013年度 産業医科大学産業医実務研修センター(嘱託産業医として中小企業を計20社程度担当)
2015年度 建設業の統括産業医をはじめ、保険、IT、卸、イベント業など約10社の嘱託産業医を務める
産業医として勤務する傍ら、SNSを中心に積極的な情報発信を行なっており、メディア掲載多数。 2019年1月、オンラインで産業保健に関する相談をし合える場としてFacebookグループ「産業保健オンラインカフェ」を開設。 現在400名を超えるコミュニティとなっている。

■鈴木健太

医師・産業医
健康経営推進産業医会/理事

2013-2014 Arizona State Universityへ留学
2016 筑波大学医学部卒業
2016-2018 国立国際医療研究センター国府台病院 初期研修医
2018 健康経営推進産業医会 創業
2018- 帝京大学公衆衛生大学院
現在は、嘱託産業医と共に、公衆衛生学修士として健康経営の研究を行い、 健康経営推進産業医会として産業医・企業向けに 健康経営のセミナー・研修会の開催、産業医の教育や業務バックアップなどを行う。

健康経営推進産業医会では、健康経営推進産業医会は、新任の頃学びの場がなかなかなかった鈴木先生ご自身の経験から生まれたもので、産業医同士での知識経験の共有や企業の健康経営の普及、健康研究の推進と実践、産業医と企業のマッチングなどを行っている。

■谷本 潤哉
株式会社O: Founder/CEO

広告代理店でリーダーとして採用、中間層の定着に従事しながら「社員のモチベーションデザイン」を実現するためスタートアップ経営者と伴走。 HR/業務データを活用し「楽しく持続的にハイパフォーマンスを発揮できる」組織の一般化を目指して、2016年にO:を創業。 「社員間のフィードバック」「OKR」「1on1支援」を組み合わせたパフォーマンス・マネジメントサービス「Co:TEAM」を運営。
経済産業省J-startup採択|週刊ダイヤモンド「日米ヘルステックスタートアップ20選」選出。

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