部下のやる気を引き出す方法とは?管理職が注意すべき基本姿勢

部下のやる気を損なわないための基本姿勢

部下のやる気を引き出すにあたっての前提条件として、「信頼を損なわない=失点をしない」ということが重要となります。

一方で、自分自身のコミュニケーションの癖や何気ない振る舞いによって、部下のやる気を削いでしまったという経験がある管理職の方も少なくないのではないでしょうか。

本パートでは、管理職として部下のやる気を削がないために持つべき基本姿勢と考え方について解説します。

対等に振る舞う事

1つ目の基本姿勢は「対等に振る舞う事」です。上司と部下という関係は、あくまで会社組織における役割に過ぎません。

しかし、権力は時として人の傲慢な振る舞いを促します。

上司である事は、自身が「優れている」と錯覚させ、高圧的であったり、配慮に欠けたコミュニケーションに対する感度を鈍らせます。

もし仮に、権力を傘に到底対等ではない態度を上司が取るようであれば、多くの部下は心を閉ざし、信頼関係を醸成するための第一歩を失う事となります。

あくまで上司と部下は人間として対等である事を忘れず、部下にも十分に敬意を払ったコミュニケーションを取る事に注意しましょう。

上司と部下の信頼関係が構築されているかどうかによって、フィードバックや評価に対する納得度も大きく変わります。


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自然に振る舞う事

2つ目の基本姿勢は「自然に振る舞う事」です。

上司として、部下の仕事ぶりや貢献を承認したり、称賛するシーンは、管理職を務めているのであれば枚挙に暇がありませんが、特にポジティブなフィードバックは、率直な気持ちを伝えるのが最も有効です。

しかし、巷のマネジメント論では、部下を「褒める」ことの重要性が強調されたことによって、演技的に称賛するしなければならないという強迫観念に迫られている管理職の方々も少なくないのではないでしょうか。

ですが、あまりにも作為的な態度は、部下に別のメッセージを伝える結果となってしまいます。

「媚びている」「本当は思っていないにも関わらず褒めている」という印象を与える事によって、逆にやる気を削いでしまう結果となります。

したがって、部下の成長や貢献に対しては、無理に褒める必要はなく、「受け止める」「承認」する事を意識した方が良いでしょう。

「褒める」という行為は、心から上司自身がそう思えるシーンで使ってこそ、その有効性を発揮します。

これを組織全体において考えると、称賛文化の定着のための社内表彰制度ピアボーナスの導入などが有効です。

真摯に振る舞う事

3つ目の基本姿勢は「真摯に振る舞う事」です。

部下は上司が思っている以上に、その姿や挙動に目を配っています。

もし、あなたが管理職で、顧客をぞんざいに扱ったり、社内の不平不満ばかりをこぼしているようであれば、自身の知らぬ間に部下の信頼を損ね、やる気を失わせている可能性があります。

多くの場合、上司は部下の将来の姿を写す鏡でもあります。

「この会社で仕事を続けて、成果を出した結果の姿」として、部下は上司を認識します。

つまり、真摯でない振る舞いを上司がする事は、自身もそうなる可能性が高いという部下にとって望ましくない想像を促す可能性があります。

結果として、部下は職場に幻滅し、やる気を失うだけでなく、近い将来退職に至るリスクを抱える事になります。

マネージャーは、自身の役割や立ち位置の重要性を認識し、顧客にも、会社にも、部下にも真摯に振る舞う事で、ロールモデルとして部下のやる気を引き出していく必要があります。

部下をやる気を引き出す方法「達成動機の4P」とは

職場で働く従業員には、一人ひとりその環境を選んだ理由があります。

上司が部下のやる気を引き出すためには、「この会社で働く事に求めているものは何か?」という根本的な達成動機を知る必要があります。

本パートでは、採用のフレームワークとして「4P」を参考にし、上司が部下のやる気を引き出す上で必要な達成動機の種類について解説します。

Philosophy(理念・目的)

達成動機の1つ目は、「Philosophy」です。

目的や理念は、最も抽象度が高い達成動機です。

例えば、「自社(事業)は世の中に対してどの様な価値を生んでいるのか?どの様なビジョンを目指しているのか?」といった問いを立てることが多い方は、この達成動機を重要視していると考えられます。

目的や理念を重要視する部下の場合は、組織や事業の掲げるビジョンやミッションと自身が重視している整合性に敏感な傾向があります。

そのため、掲げている理想の姿と現実に乖離があると感じた場合に、やる気が損なわれてしまう可能性が高まります。

目的や理念を重視するタイプの部下のやる気を引き出すためには、現在の仕事がビジョンやミッションとどの様に関連しているかを、紐解いて説明する努力が必要です。

ビジネスにおいては、時に理想と現実に乖離があるように感じられるケースも少なくありませんが、上司の役割は、「意味付け」のサポートであると肝に銘じてコミュニケーションを取りましょう。

Profession(仕事・成長)

達成動機の2つ目は「Profession」です。

「スキル・知識・マインドの面でどれだけ自身が成長したか?」「この仕事は自分自身がやりたい事なのか?合っているものなのか?」といった問いを立てることが多い方は、この達成動機を重要視していると考えられます。

仕事の種類や成長を重視する部下の場合は、自身のキャリアプランややりたい事と今の仕事の合致度や、時系列で振り返った時の成長の「幅」や「角度」に敏感な傾向があります。

そのため、希望しない業務や成長を感じられない仕事のアサインが続くとやる気が損なわれてしまう可能性が高まります。

仕事の種類や成長を重視する部下のやる気を引き出すためには、定期的に1on1や面談を通じて、振り返りのサポートをしていく事が有効です。

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特に「成長の幅や角度」というものは本人が正しく評価をすることが難しい傾向にあります。

上司や時系列に沿って、部下が経験してきた内容を丁寧に整理するとともに、対話を通じて、「成長の総量」について部下が正しく認識するサポートをすることを心がけましょう。

People(組織・ヒト)

達成動機の3つ目は「People」です。

このタイプの部下は、一緒に働く組織やヒトとの親和性を重視します。

「どんな人と働きたいか?」「働きやすい組織風土はどのようなものか?」といった問いを重視している場合は、このタイプに該当します。

組織重視のタイプの部下は、組織が転換点を迎えた時にやる気を失いやすくなる点に注意が必要です。

異動の時期や、事業フェーズの問題で退職者が大量に出た場合、他のタイプよりもより強い影響を受ける事になります。

この手のタイプは、上司一人の力で対応することが難しいケースも多いですが、組織の「風土」を維持・醸成していく取り組みを行う事で、「ヒト」が入れ替わったとしても、組織全体で見た時の特徴や傾向を維持する事はできるでしょう。

Previledge(地位・待遇)

達成動機の4つ目は「Previledge」です。

地位や待遇は、「外発的動機づけ」や「衛生要因」とも呼ばれ、不満を解消したり、短期的なやる気の向上には寄与する一方で、中長期的な仕事への動機づけにはなり辛いと言われています。

地位や待遇を重視する部下の場合は、1on1や面談の際に、分かりやすく昇進や昇給を口にする事で確認ができます。

一方で、日本においては、待遇について職場で言及する事はタブー視されている組織も少なくないため、上司から見て表面化し辛い点には注意が必要です。

組織において、昇進・昇給は結果についてくるものであるため、達成すべき目標の明確化と達成に向けたサポートが、この手の部下には求められます。

一方で、前述の通り、衛生要因は、中長期的なモチベーションの向上に寄与しません。

したがって、理念や目的、仕事や成長といった内発的動機付けに貢献する要素を探求する事が重要です。

まとめ

ここまで、部下のやる気にさせるためのポイントや注意点について解説してきましたが、最後にお伝えしたいのは、「他人を変えるよりも、自分を変える事の方が容易である」という事実です。

部下の成長や変化を一方的に期待するばかりで、自分自身は全く変わろうとしない上司や管理職を見て、やる気が湧いてくるという部下の方々は決して多くはないでしょう。

また、人が変化をするためには、長い時間を要するケースがあります。

「やる気に溢れ、成果もモチベーションも高まっている状態」と理想としつつも、管理職は、部下と中長期の目線でじっくり向き合いながら、やる気を引き出すための取り組みを地道に継続してく事が重要です。

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